【仮説ミズハミシマ争乱・影】

注意:青文字の文は公式設定ではなくSS内における仮説設定です。

週刊逸話内連載 ─ ミズハミシマ推論「日本の隣の異世界」 ─より抜粋

(前号から)── というように、ミズハミシマは異世界でも有数の温和な住み易い国であるのですが過去に大きな争乱がありました。
私が興味を持ったのは平和なミズハミシマでどのようにして争乱が起こり今現在の姿になっていったのか?ということです。
これを知ることにより、世界に未だ燻り続ける紛争などを鎮め平和への道に繋げられるのではないかと考えています。

それでは現在までに調査されたミズハミシマ争乱の大きな流れを先に説明しましょう。
小[[ゲート]]発生による乙姫の失踪
竜宮城からの全島統治令発布
竜宮城からの武力侵攻による統治令の強行
統治令に反対する島々と竜宮城に属する勢力との戦いが起こる
泥沼化する争乱の中で双方の代表者による決着が行われる
決着と時を同じくして乙姫が帰還し争乱の終結と双方の講和を締結する

全ては乙姫に始まり乙姫で終わるということから、ミズハミシマの乙姫への依存や重要度の高さを知ることができる。
国土を気ままに破壊する龍神の行いを鎮めた乙姫がそうなるのは仕方のないことかも知れないが、
行方不明の乙姫が戻るための素晴らしい国を造るため、統治令発布を竜宮城内で意見大とさせたのも乙姫の光の強さなのであろう。
乙姫失踪は竜宮城でも大臣や武官など少数にしか明かされておらず、様々な憶測が飛び交いそれは海と島との不和を深めていった。
竜宮城の穏健派も「島の民は従うだろう」と想定していたが、竜宮城が威力侵攻したにも関わらず鬼人を先頭にする島の民は統治令に反対したのである。
そして争乱が始まった。

私が着目したのは【どう終結したのか?】ではなく【何故起こってしまったのか?】という点である。
それまで平和だった国が二分し戦うに至る原因の解明こそが世の争いを事前に防ぐ切っ掛けになるのでは?と。
これより並べるのは私が調査し得た証言や品から導き出した仮説である。

ことの始まりは争乱よりも前、スラフ戦役後に異世界に広まった交流と交易の活発化による富と豊かさであったとみている。
当時のラ・ムールの大商会カルカンヌの接客記録にあった竜宮城からの客の名前は、後に統一令賛成派の中心となる数名の大臣のものであった。
大臣は商人に商業で繁栄するラ・ムールの港都を案内された後、財の山である商会主の家でやがて世界の主軸になるであろう商業についてを語られたのである。
そしてミズハミシマに戻った大臣は、まだゆるやかに国内とその海で生活を営んでいた流れを変えようと、会議で大いに熱弁を振るったとされている。
だが会議でその意見は急進すぎるとして意見少数ということで取り下げられた。
そして起こったのが乙姫の失踪である。
急進派はその事件を契機にと多数派工作を始めた。
【富国と美国】という文言が、当時の竜宮城議事録に多く出てくるのは、急進派が再び熱弁を振るっていたのに他ならない証拠である。
統治令は発案当初は穏健派によって反対、見直しが打診されたものの乙姫の不在は事実であり、
失踪前より眠りについた龍神がいつ目を覚ますか分からない状況で、乙姫が帰ってくるに値する国造りという意見に押されて発布賛成に至ったと思われる。
その後、島に上陸した竜宮城の部隊と島民との間に発生した戦闘が発端となり争乱が起こった。

と、述べたものの私には解せない点がいくつも浮かび上がってきたのである。
現代戦争においてその目的と損得が当事者外の第三者などに関係することが常である様に、私は争乱の中で見え隠れする違和感の解明を進めた。
その結果、いくつかの不明瞭な点が浮かび上がってきた。
カルカンヌ大商会に竜宮城の大臣の面会を手引きしたものは?
急進派の多数派工作のために動いたものは?
争乱の先端を開いたのはどちらだったのか?
争乱が乙姫帰還まで長引いたのは何故か?

前述にあるように大商会の接客記録には確かに大臣の来訪が記されてはいるのだが、その内容は商人が商談と共に連れてきたとある。
不明瞭なのは、この商人の足取りが全く掴めないことなのである。
次に急進派が統治令発布までの短い期間で穏健派と中立派に賛成の意を持たせたことである。
当時のミズハミシマは平穏そのものであり政争や侵攻などには無縁であり、その様な知恵知識を身につける修了課程などもほとんどなかったのである。
繰り返される会議の間には他大臣への富の贈賄などもあったようだが、当時ミズハミシマではそこまでする財も先へとメリットの見通しもなかったはずである。
更に争乱が始まった海と島との最初の戦闘である発布の侵攻であるが、隊を率いていたのは穏健派の中から急進派に対して牽制をかけていた武将軍であり隊の規律も行き届いたはずである。
竜宮城側から攻撃を仕掛けたのは考えにくく、とは言え島側の戦記には竜宮城が攻撃してきたために応戦し火蓋が切って落とされたと記されている。
その場にいた生存者による備忘録には双方共に「相手から攻撃してきた」と証言されていた。
その場においては竜宮城側も島側も戦う意思ではなく話し合いを求めて相対したはずなのに起こった攻撃は一体どちらの誰の所業だったのか。
そして長期化した争乱の要因である。
竜宮城はミズハミシマ群島のほぼ中央の海底にあり、周囲の遠くない位置を鬼人が治めていた島に囲まれていた。
争乱が始まってすぐに白鬼人の当主を要する島は大結界に覆われ、屈強な赤と黒鬼人が守護する島は鉄壁堅牢であり海の軍は砂浜より先に進むことができなかったとある。
だがしかし、他の島々は北端と中立を保つ南端を残し竜宮城の支配下におかれ、残す島も総攻撃によりすぐに陥落すると思われていた。
では何故争乱は長く続いたのか?それは双方の軍事力バランスが際どいながらも拮抗していたからという意見が近年の主流である。
島側の先陣を切る鬼人が使った刀剣類の幾つかが恐るべき力を発揮し、数で勝る海側の侵攻を退けていたのだという。
それでも島側から竜宮城への侵攻は行われずにいたのは海中では鬼人には不利であり、また強力な刀剣類は短時間の使用に限られていた諸刃の剣であったからだと竜宮城の戦務官には記されている。
しかし、その強力な武器はそれまで島では見たこともない技術や工法を使われていたのか、海側にも一切の対応策が無かったという。

このように争乱の中で見え隠れする海でも島でもない第三勢力が存在したとする仮説は、これからの研究で真相を解明していきたい。
来週再来週と連載は休止となりますが、その間に私が進める調査の結果を必ず発表するとして今回の締めにさせていただきます。

このSSは仮説を多分に含んでいます

  • 争いを望む勢力が裏で糸を引いていた?欲をだした大臣が踊らされたという構図なんだろうか -- (名無しさん) 2015-01-19 15:01:24
  • 裏に黒幕がいたとしてその目的が何なのかというのが重要だな。国滅ぼしちゃったら何もできなさそうだし -- (名無しさん) 2015-01-21 01:31:28
  • 人心を操り争乱を起こしたくらいじゃないとミズハに争いなんか起きないか -- (名無しさん) 2015-01-23 20:43:52
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最終更新:2015年01月18日 21:36
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