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【母の日の夕餉】

「「お母さん!いつもありがとう!」」
台所で今まさに夕飯の準備に取り掛かろうとする妻に一輪の花を手渡す娘二人。突然の出来事に驚く妻。
 世界同士の交流が進むにつれ互いの世界にある祭事行事などが伝わり変化したり合わさったりなどすることも多くなってきているのです。
 去年までは特定の日に肉親への~と言えば誕生日などでしたが、町などで情報を得たのでしょうか、子らは“母の日”を実践したのです。
「あらあら。嬉しいけどかしこまって贈り物となるとちょっと恥ずかしいわ」
花を受け取った妻は照れ隠しに一度微笑むと二人の頭を優しく撫でる。
「…これは“鉱(いし)ノ花”?!とても珍しい花よ?」
目を丸くする妻を見上げてこれ見よがしに胸を張る姉妹が何とも微笑ましい。
 “鉱ノ花”とは植物と鉱物との合いの子の様な花であり、その名の通り石の様に硬い花弁と葉を持つ。
 これをして珍しいと言わしめるのは人の目では花が咲かない限り植物として認識できず発見できないということであり、
 花が咲く期間も短いために発見できたとしてもすぐに枯れてしまうというからである。
「あのね市場におつかいにいったときにね、おっきなムークがまいごになっていたの」
「ムークさんがあたまにのせているドワーフのおじいさんがかじやさんにいきたいっていってたから」
「「あんないしたらおれいにってくれたの」」
鍛冶屋に用事があると山を下りてきたが市場に遭遇して入り口も出口も分からなくなってしまったとのこと。
二人はムークとドワーフを市場から抜け出すところまで案内すると、ドワーフの娘と人間の男がこちらを見つけて慌てて走ってきたという。
ドワーフの爺の娘と弟子であるという二人が礼をすると、ムークがその毛並みの中から花を一輪取り出し差し出してきたとのこと。
妻が微笑みながら再度二人の頭を優しく撫でると姉妹に満面の笑みがこぼれる。
 クルスベルグの市場はどこも活気があり人と店でごった返しであり、午前午後でもその配置や流れが変わってしまうのです。
 クルスベルグに住んでいる人でも、たまに山から下りてきて市場に遭遇などすればたちまちに迷ってしまうこともあると言います。
 そして毛むくじゃらのムークという種族は視覚とは別に気配で周囲を見渡すという性質を持っているのです。
 そんなムークが人混みの中に入ってしまうと目を回して右も左も分からなくなってしまうことがあると言います。

「さっそく使っちゃおうかしら」
妻が徐に花をまな板の上に置くとクルス包丁の背で一閃。続いて小刻みに叩いてまとめて粉々に砕いてしまいました。
「鉱ノ花を混ぜると円やかな塩味がつくのよね」
 ノームに多く見られる性格として“見た目より能を取る”というものがあります。
 見目麗しくともそれが消費するに利があれば躊躇いもなく使い切るということなのです。
姉妹もクルスベルグで育っているのでそれは十二分に理解しているので、夕飯のランクが上がったと喜んでいます。
「あとでふたりでかいたおかあさんの絵もあげるからね!」
「あれ?あとでわたしておどろかせるんじゃないの?」
姉妹は慌てて居間へと走っていきました。
「エーリ、とても豪勢な“母の日”になりそうじゃないか?」
「日頃の行いというものよ。ヨハン、あなたは大丈夫なのかしら?」
妻の一言に思わず考え込んでしまう。私は娘達にどんな目で見られているのだろうか?

夕餉で娘達に父の日というものもあるんだよと言ってみたところ、何やら難しい顔をされてしまった。
これからは休日にもっと娘達を意識しなければいけないと思った母の日でした。


あるクルスベルグの家庭の母の日の風景を
【クルスベルグからグーテンターク】【丘の上の爺にトンカチを届けに行きます】からシェアさせて頂ました

  • 手堅いとか現実主義とかノームっぽい性格。元気な姉妹がまぶしい -- (名無しさん) 2015-05-17 17:48:01
  • シェアありがとうございます!いろんな作者さんにいろいろな視点で書いてもらえるって素晴らしいことだなぁ -- (名無しさん) 2015-05-17 19:58:57
  • ムークの能力が面白い。あのドワ爺さんの乗り物状態なんだな -- (名無しさん) 2015-05-18 21:15:53
  • 地球で生まれた異種族は人間社会が普通になって異世界で生まれた人間は異種族社会が普通になるのは納得 -- (名無しさん) 2015-08-28 23:23:36
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最終更新:2015年05月17日 15:30