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【ラーの碑文】

 ラムール屈指の大豪商カルアイノ・クイターニャ。
 彼はゲート祭に先駆けてこんな御触れを出したという。
 条件はたったの二つだけ、『二人一組で最高に美味しい異世界カレーをつくる』こと。
 優勝組には財産の1/4と香辛料都市の領主でもあるカルアイノ自身から直々に将来の祝福を授けられるという。
 ああ、ちなみにだがこれは単なる祝福ではない。
 カルアイノは敬虔な太陽神の信徒であり、かつその徳と財でラムールの南西にある香辛都市「メッチャ・カーラー」を治める領主でもあり、国政の一翼を担うほどの人物である。
 つまり彼の祝福とはラムール一国とさらには太陽神のお墨付きということでもあるのだ。
 この報せは国を越え、海を越え、門を越えて世界中を駆け巡った。

── 一つの噂が流れる
事の発端は香辛都市にて建設が進む会場に物々しい護送団が到着したことと、そこから荷降ろしされた一塊の石塊が現場作業員の目に入ったこと。
そしてその石塊は優勝賞品の保管庫へと運びしまわれたという。
噂はすぐにラ・ムールを飛び交い、“カルアイノ氏が授ける祝福”がラーの碑文ではないかという憶測が生まれるのである。
“ラーの碑文”とはラ・ムールの神であるラーが民に与える試練を越えた者の前に現れるという読めぬ文字が刻まれた石のことである。
欲する者の前には現れない、というわけでもなくその碑文は全くの不確定の元に現れるというのだ。
ラーの碑文を得たとされる試練越者はラ・ムールの歴史の中でも数えるほどしかいない。
日に山一つ登頂する試練を三年続けた山越覇者が三年目最後の登頂にて目の前に空より落ちて来た白岩。
神の問いに三問連続で正解するまで試練空間から出られないのを何かの間違いからか試練受けし生後一歳の子が帰還の際に寝台にしていた黒石。
試練を愛し試練を研究し続けた王宮哲学者が腰に致命傷を受けて引退を決意しつつも越えた最後の試練の後に地より飛び出し体を支えた赤石。
他にも数人有名はいるが、その碑文の結末まで知られているのは僅かである。
試練を越えし者に神が授けし碑文。それに書かれた文。それを解読することはラ・ムールという国に与えらた試練と認識する者も少なくはなく、
王宮内にも各地より集められた碑文を解読する室が設けられているが、未だその文は謎のままである。
その存在こそ神秘である碑文であるが、意識せぬ者にすれば不思議な石くらいのものであり、それも格段に頑丈というものではないただの石。
現に白岩は新居の礎として使われたが大甲虫の行列に見舞われ家ごと粉々になり、赤子の寝台であった黒石はその後勉強机となり使われたが自立の折に家財屋に売られてから行方は知れず。
赤石と言えば研究室にて立て並べられた碑文が倒れた際に最後の荷重を受けて四散したという。
そんな碑文が賞品なのではという噂があればそぞろに活気付くのは当然であり、王宮は勿論のこと、碑文を売って大金を得ようとする者達も騒ぎ出したのである。

「ってことで俺にお鉢が回ってきたってことか」
『カーとして当然の試練で御座いましょう』
「俺がどうこうするってのよりも他人の舌を唸らせるってのは、考えようによっちゃいつもより数段難しいかもなぁ… そもそもこのカレーってのもあんま馴染みないぞ」
『珍しく弱気でおられるようですが、そこは心配御無用で御座います。 ラ・ムールの中にて考え得る中、最強最高の相方を既に用意しておりますれば』
「お?珍しくというか奇跡ってくらいに気が利くじゃねぇか」
「ニャス!」
雷と豪雪が止め処なく降り注ぐ荒山の頂上に神の門が開くと、一人の猫人とおまけがラ・ムールへと飛ばされたのであった。


  • 換金目的の参加者も増えそうな賞品だこれ -- (名無しさん) 2016-05-22 20:31:06
  • 神のメッセージか未来の予言か…何が書いてあるのか興味ある -- (名無しさん) 2016-05-28 00:33:31
  • 大ゲート発生以後の碑文はラーがゲーム中にとったメモとかかもしれない碑文 -- (名無しさん) 2016-06-21 13:05:34
  • 神のメッセージなのかなとは思うけど内容は「おめでとう!」とかだったりして -- (名無しさん) 2016-12-10 00:31:23
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最終更新:2016年05月18日 04:29