【海賊鬼人クッキング】

香辛都市メッチャ・カーラーそのものを土台として作られた巨大な料理闘技場にてカレーコンテストは行われる。
大会はある程度の期間を設けて審査を行う。それは二人一組という前提がありながらも巨大会場に受け止められない参加人数、
そして異世界や地球から続々と押し寄せる新規参加者の波を全て許容するためである。
大会にて参加者が作りあげるカレーの全てを味わうことこそ試練である!と位置づけた主催者のカルアイノ氏の気合も十分であり
大会は初日から都市を振るわせる熱気と歓声に包まれることになったのである。


「すごい香辛料の香りですね。酒場の酒の匂いにも勝るとも劣りませんね!」
新天地とドニーで酒場経営の成功者として大会解説者として招かれたノーム少女のラニが熱く語る。
風精マイクによって肥大した声は会場を駆け巡り響く。
「ふんっ!」
力強い女性の声。
「はっ!」
芯の通った女性の声。
掛け声と共に一種異様な空気と波動を放つ鬼人女性の二人組。調理場、その手元のまな板に次々と転がり落ちるのは ──
「なんと…香辛料を圧縮して丸めてます!凄い腕力です!」
異世界ではほとんど見かけることのないゴスロリチックな台所衣装は引き締まり盛り上がる筋肉を明々に浮かび上がらせ少し伸びる。
美しさと凛々しさと力強さの同居する大柄な体躯を包む可愛い振りのひらひら付き衣装が一層目を引く。
「えぇと、ドニー・ドニーから参加のイツクシモ&カスミ組ですね。鬼人ならではの腕力の成せる技ですね!」
「あれは単に腕力任せで素材を丸めているわけではないようだ。彼女達の厨房をよく見て御覧なさい」
豊かな髭を蓄え太い眉毛で目を隠すカルアイノ氏が語る。
「何か変わったところでも? …あれ?鍋に火がついてませんね?」
「そうですな。彼女達は一切水を使わずに料理を行っているのですな。 恐らくはあの衣装に水や汁が飛ぶのを避けているのでしょうな」
「何という美の追求!意識の高さでしょうか!」
実際二人の参加動機は世にゴスロリや可愛い服を広めようというもので、一張羅を汚すことは有り得ないという強い信念を持っていたのだ。
「丸めているのは香辛料だけではありませんね。ドニーではよく見かける乾燥野菜や魚介類の乾物なども丸めているようです」
カゴに丸まったいくつもの素材が入ったところで徐に黒い鋼のまな板を取り出す。
「はい!」
「そぉい!」
ドンッ
「はい!」
「そぉい!」
ドンッ
幾つかの丸をまとめて潰して一つの丸にする。必然としてそこで味が混ざり合う。
火も水も使わず素材を混ぜて一個にしてしまう。何という剛力なる料理か。
やがて幾つかの丸薬が出来上がり皿に乗せられたのだ。
「「ドニー・ドニー風、野菜と海の幸カレー丸!」」
差し出されたそれを馬鹿正直に噛んだ審査員が悶絶している。
「う~ん、舌の上で転がすことで口の中に味が広がって行きますね」
「カレーと言えばカレーなのですが…ふんぬっ!」
これも試練かと鍛えられた歯と顎でカレー丸を砕いたカルアイノ氏は、確かにドニーの風味を味わったのだ。
「でもちょっと香辛料と素材の味がくっついてないというかまだ別々と言うか…船に常備しておく非常食とか間食にはよさそう、店でお持ち帰り品コーナーに並べたいですね」
頬を丸くして評するラニ。
ある種パフォーマンス的な料理風景に拍手喝采が起こり、それでもう満足したのか鬼ウーマンズは大手を振って満面の笑顔で厨房を出るのだった。
「「可愛いは力!可愛いを世界に!」」


カレーコンテスト、カスミさん&イツクシモ姫のタッグの料理風景を想像して一本

  • カレー優勝が二の次になってるカワイイコンビ吹いた -- (名無しさん) 2016-06-06 22:15:55
  • 点数はそこそこだろうけどアイデア食品としてのポイントは高いんじゃないか?! -- (名無しさん) 2016-06-06 23:24:04
  • 機能性ほぼ皆無のゴスロリ服なんて異世界じゃ珍しいし宣伝になったけど広まりはしなさそう! -- (名無しさん) 2016-06-21 03:25:48
  • 無水カレーは実際あるけどあれ野菜の水分出すものだからなー。このカレーは無水凝縮カレーになるのか -- (名無しさん) 2016-06-21 13:07:03
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最終更新:2016年06月06日 00:05