「不味い!」
「ふむ、中々の出来だな」
「不味いわ!」
「不っ味い!」
「美味いではないか」
審査員席に次々と出されるカレー皿を即座に判断しては次を要求する腹の出た
オーク。とても太っている。
「氏はちゃんと味わっているのか?」「ああ見えても舌だけは確かだからな…大凡の味は分かるんだろう」「氏が評価を付けているのは賄賂を渡した者だけだからな」
異世界で食材を扱う商人の中でも勢い明らかなターニチードゥ氏。
扱う食材は全て食べて味を確認し、料理界にも精通していることから相当な食通でもある。今コンテストにはそのことから審査員として招かれたのだ。
しかし、彼には一つ問題点があった。
商人として儲け第一であるためか兎に角金にドギツイ性格なのである。金が最優先である。
今回も何の臆面もなく事前に賄賂を持ってきた参加者に高評価を付けている。
「カルアイノ氏の頼みだからやってきたものの退屈でつまらぬ大会だ。賄賂で懐を潤さなければやっておれるか。 早く次を持ってこい!」
「どうだっ!食ってくれ!」
それは見るも明らかにカレーとも料理とも言い辛い形容をしており、皆一様に顔を強張らせて固まっている
見た目と相まって鼻を衝く強烈な臭いは否が応にもおぞまし味を連想させ、誰一人として匙ですくう者はいなかった
人間の男性と青鬼人の少女が審査員に皿を配るが一口も食べずに最低評価を下していく。
「賄賂ももらってないのにこの様な出来損ないなど食えるか…点無しで終いだ終い」
ターニチードゥ氏も同じく一口も食さずに皿をさげさせようとしたが、そこに当の男が食い下がったのだ。
「何で誰も食いもせず0点なんだ?!ふざけんのも大概にしろよオッサン!とりあえず食えよ!」
「こんなもの食えるわけないだろうが!貴様ちゃんと味見したのか?!」
「食材はここでもらえるけどよ、カレー粉だけは用意しなきゃなんねーからな。何とか用意したカレー粉が審査員分のカレーで使い切ったんだよ!文句あんのか!」
要するに味見なしで出してきたのである。
「いいから食えよ!最初から不味いって決めつけるなよ!」
「絶対に美味いから食べてくれよ!食べもしないのに不味いって決めつけるなよ!」
下働きから毛の生えた程度の若造オークが集めた食材など見向きもされなかった
どんなに説明し勧めても誰も試すことはなかった
「何で誰も食わないんだよ!一口だけでも食ってみろって!」
「…」
「何だよ、何が問題なんだ?」
「…貴様らが調理するところを見ておったが問題だらけだったぞ。挙げるだけでもキリがないわ。兎に角これは食すに値せ…ん…ンン?」
審査員を前に退かず迫る男の声に誰も耳を貸さなかったのだが。
(何だ、あの後ろの鬼娘…とんでもない気迫だぞ)(さっきから包丁をちらちら見せて…なんのつもりなんだ)(「食べなかったら後で首を掻っ切る」と顔に書いているような…)
「って板に書いて持ってるではないか!」
「ん?何だ?後ろがどうかしたのかよ。柚鬼?」
「丈児、何でもない(ヒュッ」
何事もなかったかのように背に隠される板。
「いいか?一口だけだからな!」
躊躇う審査員の中でターニチードゥ氏が匙を取りずいっとカレーらしきものに突き刺し一杯すくい、一気に頬張ったのである。
「おぉっ!オッサン話せるじゃねーか!」
「んぐぐ…ってやっぱり不味いわ!予想通りだ!」
そう高くない背ではあるが大きな腹のせいか存在感のある体が立ち上がり憤慨する。味について微かな希望を持っていたのだろうが、見事に打ち砕かれた様子。
「そもそも貴様ら、選んだ食材をどう調理すればいいのか分かっていたのか?!」
「そんなの見た目で大体決めたけどよ、何か駄目だったんか?」
「私は焼いたり煮込んだりした」
プルプルと震えていたターニチードゥ氏の何かが爆発したのか、立ち上がり厨房へと進んでいと元原達が選んだ食材と同じものを並べる。
「まず釜に入れて煮込んだこれだ!」
「米だろ?持ってきたレトルトパックじゃ足りなくてよ、代わりがあって助かったぜ」「白米に似てる」
「これは果実だ!小さい実を山ほど付けるフルユキの実!煮込んでどうする、ぐずぐずに煮崩れしておるだろうが! 次にこの…」
「人参だろ?野菜の」「皮を剥いて切った」
「これはドヤ貝柱の乾燥させたものだ!剥いた?折角乾燥してできた厚皮で生臭さが出ないようになっているのに何をするか!
それを汁で似れば海臭さがあふれ出してしまうだろうが! そしてこの…」
「肉だろ!」「焼いた。肉汁いっぱい」
「二年に一度しか収穫できないモロヘ菜、野菜だ!焼いたら汁が出て旨味も消し飛ぶわ!」
「へーそうだったのか。オッサン物知りだな」「丈児、全然調理法が違う。まずい」
「そうか!誰も見向きもしないのなら食べたくなるように調理すればいいんじゃないか!やってやるぞ!」
多くの調理場に雑用で入った。多くの料理人に頭を下げて調理を頼んだ。多くの食材で試行錯誤した
やがてオーク商人の集める食材は魅惑の試食も相まって美味さの伴う「外れなし」と評判を呼び飛ぶように売れた
「いやはや試練でしたなターニチードゥ氏。熱心な説明で彼らも納得したようで何より」
「納得させなければ帰りそうもなければ首が危なかったからな。しかし礼が謝辞一言とは割に合わなさすぎる!…カルアイノ氏、まさかアレを平らげたのか?試練越者、恐れ入る」
「はっはっは。カレーであれば大丈夫。まぁ点数は無しですがの。 …おや?ターニチードゥ氏は点を与えるので?まぁ他が点を付けない中なので特に変わることはありませんがの」
「ふん。熱意と用意してきたカレー粉だけは評価に値するのでお目こぼししたまでよ」
「丈児、コンテストだめだった」
「カレー屋でバイトした時に粉だけじゃなくて異世界の調理法も教えてもらっとくんだったなァ失敗した。
まっコンテスト一発優勝して旅の資金とかムシが良すぎたか。もうちょっとバイトして他の国でも回るか?
厄介ごとも片付いて自由の身になって初めての大
ゲート祭だしよ!」
「丈児、このビラ見る。ニシューネン市で乗獣レース大会」
「
新天地か!いいな、行ってみるか!」
そう言うと二人は都で新たなバイトを探すために市場へと突撃するのだった。
カレーコンテストで元原&柚鬼ペアの結果を想像しました
- 人だからいい面も悪い面もあるって感じでさっぱりしてていいんじゃないか?ただしカレーは食わない -- (名無しさん) 2016-11-24 00:11:11
- ツッコミのいないボケ担当だけのコンビか! -- (名無しさん) 2016-11-25 01:57:21
- 調理はできるんだろうけど味見はやっておかないといかんだろう -- (名無しさん) 2016-11-26 18:00:30
最終更新:2016年11月23日 22:01