「おっ?おおおっ!見えてきた見えてきたぞ!」
海上では尚更寒い空を切り裂いて羽毛竜が飛び進む。
「風精霊も道を作ってくれたよ。このまま行こう!」
幾層もの雪雲に囲まれた隠れ里のある島の上空に躊躇なく飛び込めば、無数の氷矢が向かってくる。しかし、それらは全て逸れる。
『ダメだよダメだよ。ここは通っちゃいけないよー』『ホラホラ帰った帰った』
『ちょっとだけで良いから道を開けてよー』『一緒に飛んだら気持ちイイヨー』
『そうなの?そうなの?』『気持ち良いの?』
『ほらこっちこっち。クルックーの翼に入るんだよー』『びゅびゅーんとぐるっと飛ぶよ歌うよ』
超高速精霊対精霊対話完了!
合図の様に高らかにそれでいて優しく歌うワンフレーズ。
エルフが本能から紡ぎ出すそれは瞬時に精霊を高揚させる。
「んっんー?精霊自然現象以外にも何かあるぞこれ。しゃらくせぇ!回転と速度で突き抜けるぞ!」
「まったく鳩使いが粗いのだわ。くるっくー」
螺旋弾丸乱気流。風精霊の歓喜がドップラーに尾を引けば、鬼の結界障壁すらも突破した。
「うむうむ。大方出来上がったのではないか?」
「そうですねぇ…、皆さんの方で何かこう付け加えて欲しいこととかありますか?」
「里のお酒の説明を、もう少し詳しくしてもよろしいですか?明日までに文を作ってきます」
「思ってた以上にやる気ですね、トクリさん。挿絵とかも増やしちゃいましょうか」
「隠れ里の秘密のガイドブック…矛盾で角が軋みそうなのですが」
「これこれセイメイや、ぬしはちと物事を難しく考えすぎじゃ。こういうのは勢いじゃぞ勢い」
ズドドーン!
屋根を豪快盛大に突き破り、余った勢いでそのまま庭にズササーと滑り小池に落っこちる羽毛竜。ひょっこり頭だけを水面から出して鳴いてみせる。
唖然とする一同。結界衆屋敷に向かい走るセイメイ。
鳩もといワナヴァンが屋根に落下する寸前で跳んだ二人がちゃぶ台の上に着地する。冒険着の
エルフを抱き抱えたワイルドな人間の青年。
「いきなりすみません申し訳ない!里の長に急用でして!」
「メノー、もっと詳しく説明しないと。あの、イスズと申します。
新天地のニシューネン市で鬼人が産気づきまして、ひょっとしたら難産になるかもと産婆が言いまして…お願いします、一緒に来てもらってもよろしいですか?」
「あい分かった」
ハクテンの即答に、散らかった部屋を片付けている仕えの鬼人達が驚嘆とする。
ハクテンがクイっと手招きすると小池からまるっとワナヴァンが浮き上がり縁側に着地する。
「では早速行こうかの。早く着く分にはいくら早くてもかまわんじゃろ?」
鞍に跨り首にしがみつくハクテンは準備万端のようだ。
「ありがてぇや、話が分かる。すぐ飛ぶぞ!イスズ、ワナヴァン!」
「ありがとうございますハクテン様。ちょっと狭いですけど、すみません」
「では出発するのだわ」
風狸が竜巻となり羽毛竜を舞い上がらせる。
ニシューネン市の方角を捉えたワナヴァンの飛翔は、鬼力を受けたこともあってまるで雷光であった。
瑪瑙とイスズとワナヴァンのごういんなとつげき
最終更新:2020年07月15日 02:36