【砂塵壁連絡トンネル】

「これで…どうだろうか?」 異世界自衛隊、通称“門自”の作業制服姿の男が這いつくばりながらアクションフィギュアのポーズをあれやこれやと変えている。
「反応がない…それじゃあこっちは?」 バッグより取り出したのは手の平サイズの仁王像阿吽セット。向かい合わせて立たせて見せる。も、何も起こる気配がない。
「それじゃあ東大寺門もセットだ…!」 さらに取り出した同サイズの門の中に仁王像を収め一つの風景を作る。
 ぐらぐらぐら むくくっ
洞穴の地面がゆっくりと隆起すると、仁王セットの隣に同じ仁王像を土くれが形成する。
「土精霊とのコンタクト成功!これより交渉に入ります!」

未踏破領域を目指して前人未踏の砂塵の壁越えを達成した一団。
倒れ失ったものは多けれど、遂に辿り着いた地に国を広げるべく行動を始める。
周辺を調査して拠点と生活基盤を築いた彼らは、さらなる調査を進めるものと砂塵の壁を越えて新天地に戻る道を作るものとに分かれた。
海を隔てた大陸間でも互いを指し示すのを証明しているミスリルのコンパスによって壁を越える前の拠点の位置は把握できる。
砂塵の壁を越える道、地中を進むトンネルの掘削が始まった。
大体の距離にして1000km前後。それを今以上の人員補充の無い状況で完遂させなければいけない大事業。
だがしかし、数は減ったと言えども彼らは新天地が選りすぐった地球異世界問わずの人材である。素早く各々がその力を発揮するため行動を開始する。
「地盤の軟化は無理そうですね。砂塵の侵食を防ぐために土精霊全体が維持に注力しているようで、でも掘削は可能の様ですよ」
「地面の中まで硬化されてないなら何時もと同じ要領で掘っていけばいいんだな。よっしゃ掘削班やるぞ!」
用意された道工具はどれも一級品。それらを手に手に力自慢の猛者達が挑む。
「レールが用意出来たぞぃ!ざっと50m分、とりあえず先出で使用感と改善点を探ってくれぃ」
拠点にて鍛冶工房が完成し、人員と物資運搬用の路線部材の製造が始まる。
トンネル進行に合わせて現地で敷設し使用しフィードバックしていく。
新天地で活動する米軍と、それと共同活動していた門自隊員はじめ多くの種族が一致団結協力の下で地下を掘り進む。
「掘削された残土は土精霊に圧縮してもらいますか。重量はそのままですけど体積はぐっと小さくできますので」
「掘り進めば進むほど土出しも大変になってきたもんな。協力してくれる土精霊は増えてくれそうか?」
「重量はそのままかぃ?ならトロッコの車軸を強化せんと運びきれんな。工房の皆に伝えて置くぞぃ」

延々と続く掘削作業だが彼らのモチベーションは下がることはなかった。何せ彼らは壁を越えて来た者達だからだ。
ゴールは見えている。ただそれに向かって進むのだ。
そして遂に壁を越える。まだ人の出入り程度の大きさの穴ではあるが、彼らは成し遂げたのである。
早速、歌で風精霊を呼び寄せて風の噂伝達でその成果を都市へと送るのだった。
「いくらか送ったは良いが風の噂だと確実性に欠ける。こちらの拠点から都に伝令を走らせるのが確実か」
新天地の国拡事業はまだまだ始まったばかりである。


【未踏破領域を目指して】であった連絡坑を想像して一本

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最終更新:2021年04月18日 19:16