「らいぶぅ?」
アニーがトマトジュースを飲みながら聞き返す。
「ん…ふぅ…そそ!アタシの兄貴のライブが今度あってさー!ぜひそれにアニーたんを招待したいわけよ。…チュプ」
半分美少女・沢村彪が髪をかき上げ、フランクフルトを怪しくねぶりながらアニーをライブに誘う。
何故この二人が一緒にいるかと言うと、登校初日にタレットに追い返されたアニーはリベンジをかけて次の日にフル装備で校門に向かった。
用意に時間がかかり、昼近くに閉まった校門前に来たアニーは、タレットの射程外から見つからないように宣戦布告して突撃をかけたが、またボコボコにされてアニーがあわや異界の地でお姉さまにも会えずに客死か?と思った時、昼近くまで寝ていた彪が登校して来て、そこらを穴ぼこにするタレットの銃火をものともせずひょうひょうと校門に近づき、生徒手帳をカメラに見せて事無きを得たのだった。
そして、その時の縁?からかたまに二人でつるむ様になったのだ。
(単にとばっちりを恐れてアニーに近寄る人が少ないからかもしれない)
「いやよ。らいぶって言うのが何か知らないけど、わざわざ下等な男の所に足を運ぶなんて考えられないわ」
にべもなく断るアニー。
彪はその言葉に動じず、逆にニヤニヤしながら
「あれあれぇ~?…いいの?アニーたん。あっちのお姉さまと喧嘩中なんでしょ?
仲直りのためのネタをこっちで掴まないと、愛するおねーさまがそっぽ向いたままどっかの野郎にヤラれちゃうかもしれないけどいいわけ~?」
ぐぬぬ…確かに彪の言う通りだとアニーは思った。
レシエお姉さまは
スラヴィアで男女共から多大な人気がある。
最古参の貴族であることやお姿が美しいというのもあるが、何より有能で非常に情にあふれた方で領民や部下からもとても慕われている。(お父様にそっくり!)
そして、レシエお姉さまの色々な武勲の中でアニーが一際、心を打たれた話がある。
それはスラヴィアの建国期に起こった戦争で、
イストモスから来た手強い重装騎士団と戦い、一騎打ちで団長の姫騎士を討ち取ったというもので、ここまではただの武勲だがその後、我が国の神である
モルテ神がその姫騎士を戯れに屍徒にしようとしたのを身を呈して止めたというのだ。
『この騎士は最後まで自分の任を果たすために尋常ならざる働きをしました。
敵兵ながらこの働きは評価に値するものです。功績を認め、彼女らが望むように静かに眠らせることも必要ではないかと考えます』
こう言って自分の身も顧みず、神の戯れを止めたらしい。
実力を認めたものには敵兵とは言え、その身をおもんばかるをいう非常に義理人情に厚い所にアニーは惚れ込み、お姉さまを慕うようになったのだ。
…まあ、それは置いといて、前にお姉さまはこちらの物に興味を示していた。
であれば、お姉さまが興味を引く物をこちらで探してお姉さまの所に持っていけば饗宴でお姉さまと戦うなんて事はなくなるだろうし、もっとお姉さまと親密になれるかもしれない…
親密になったお姉さまとのアレコレを頭の中で想像しながらアニーは蕩けたような顔をする。
そしてそれを逃さず彪がアニーの胸を揉みにいく。
「もうー!アニーたん、すぐ無防備になってカワイス~!
爆裂超乳のラブラブ・シテちゃんには及ばないけど着痩せするタイプだし、ちょーアタシの好み~!てか、縛ってお持ち帰りしたいんですけどー」
「ぎゃああーーーーーー」
アニーの雑巾を引き裂くような悲鳴が学園にこだまする…
「それじゃ!ライブの件ヨロシクー!
場所はチケットに書いてあるし、チケットはさっきアニーたんのおっぱい揉んだ時にブラの間に挟んどいたからー」
ちゃっかりアニーからチケット代をせしめてから彪が爆弾発言をする。
「ちょっ!?貴方いつの間に…」
「ああ!それと、屍徒だからって虫刺されをほっとくとお肌に悪いんじゃないのー?」
急な話題転換でアニーをけむにまく彪。
「…こっちに来てから何故かよく虫に刺されるのよ。
誰かがばら撒いてるんじゃないかと思うくらいに…」
「フーン…まあ、健康には気をつけてね~」
軽く言いながらひょいとアニーの右の髪をかき上げて無残に見えている百合の意匠がされた頭蓋骨にキスをする。
「きゃぁーーーーーーー!!なにするのーーーー!!!」
叫んで背中の大腕を出しベンチで彪が座っていた方を叩き潰すアニー。
それを見ながらニマニマ笑みを浮かべてさっと逃げる彪
「じゃーね♪アニーたーん!」
追いかけようにも自分がベンチを叩き潰したせいで、傾いて一緒にコケてしまって動けないアニーはジタバタと悔しがるだけだ。
「さてさて…シテちゃんにアニーたん、どんな面白いライブになるのかなー!」
逃げながら満面の笑顔でつぶやく彪。
世間知らずで変わり者な異世界人二人が引き起こすかもしれないライブでのハプニングを期待してるのだろう。
多分、恐らく、きっと…
蛇足、はい、キラーパス話です。すいませんすいませんすいません。
思いついてから脊髄反射のように書いてしまいました。領域シリーズの作者様にはお詫びと、この話が不都合な場合はなかった事にしてして頂けますようお願いします。
- いつもスレの中で語られるギャグ塊の姿ではなく恋愛感情や人を想う気持ちはまともで他人との接し方にも礼節のあるアニーが意外でしたが帰国子女のように様になっていました。そもそも彪の破天荒さが際立っているせいでの補正なのかも知れませんが -- (名無しさん) 2013-08-01 19:49:23
最終更新:2014年07月25日 22:15