ズンッ!!!!
爆発音にタイタンが頭部を上に向ける。
そして、タイタンの視界いっぱいに広がる多数の巨岩の塊が…
「だいなまいとというのか?なかなかの破壊力じゃの…
アレなら鉱山での掘削も楽にやれるじゃろうな」
「元々、それ用の物ですから…
ゴードンさん達からの餞別がわりだったんですがなかなか上手くいってくれました」
岩盤の崩れる音を聞きながら二人でのんきな会話をしていると、光の精霊を使って土煙の上がるタイタンの方を観察していたグラーフが険しい顔で叫んだ。
「走れ!来るぞ!!!」
その声で全員が跳ねるように逃げ出す。
そして一瞬遅れて下から伸びてきた光の束が辺りを吹き飛ばす。
「…生きとるか?みんな…」
「なん…とか」
「ぐぅっ…げほ…生きて…ます」
火口付近まで吹き飛ばされボロボロになった三人が見を起こすのと火口の縁にタイタンの手がかかるのは同時だった。
火口に現したタイタンの姿もまた三人と一緒で酷いものだった。
頭部の半分は破壊され、補修された部品は剥がれ落ち、左手は手首から先が千切れ、まともに動く四肢は右手のみ…
動いているのが不思議なくらいだ。
カールとグラーフがそれぞれの得物を構える。
さっきの攻撃の衝撃で吹き飛ばされ、ライフルを火口に取り落としたシャーリーは腰の散弾銃を構える。
蒸気船のような低く轟くような叫びが上がる。
それと同時にボロボロの三人はその場から一斉に左右に展開。
数瞬遅れてタイタンの巨腕が彼らのいた場所を叩き潰す!
カールとグラーフは地面にめり込んだ手に跳びかかり、手際よく斧と長剣を指の関節部分に叩きこむ。
金属がへし折れるような音と擦れるような甲高い悲鳴が辺りに響く。
タイタンは自分を傷つけたケシ粒のようなモノを残った目に焼き付けようとする。
ドカッ!!ドカッ!!
一瞬でタイタンの視界が黒く覆われた。
精霊に協力してもらい威力を上げたシャーリーのライフルドスラッグが、タイタンから残った光を奪ったのだ。
タイタンが潰された目を押さえて動きを止める。
シャーリーは素早く散弾銃の弾をリロードしながらタイタンに向かって走りだす。
そしてグラーフとカールに目で合図を送る。
二人は心得たとばかりに武器を構え精霊を纏わせる。
まずグラーフが、長剣を地面に突き立て僕の足元を大きく隆起させる。
シャーリーはその勢いに乗り、タイタンに向かって大きく跳ぶ!
すかさずカールが、戦斧を大地に振り落とし、タイタンのいる場所を大きく崩してタイタンの両腕を自身の体を支えるために使わせ攻撃を封じる。
すかさず、シャーリーは左手でロープを引き抜きタイタンの頭部に絡め一気に距離を縮め、大きく穴の開いた眼窩にフレッシェット弾を叩きこむ!!
薄い眼窩の壁が砕け、その奥の重要な機関まで矢のような特殊弾が突き刺さる。
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
直後、爆発音のような咆哮を間近で受けて銃を火口方向へ吹き飛ばされるシャーリー。
すぐさまベルトに差したダイナマイトを眼窩の奥に放り込もうと取り出すが、いきなり横からタイタンの手が伸び、シャーリーを叩き落す。
タイタンは目が潰されたので、体内の機関で強制的に精霊を従わせて視覚を得たのだ。
叩き落されたシャーリーが火口へと落ちて行く…
「~~~っ!!」
「嬢ちゃん!!」
「異人さん!!」
カールとグラーフがすぐに火口に走り寄るが、落ちていくシャーリーを救うことは出来なかった。
「シャーリーは本当にカウボーイが好きね…」
母は僕の名をある有名子役からつけたのに、そちらの映画には見向きもしないで古いアウトロー達の映画を見ている僕にいつもため息をついていた。
そして父親がそれを見て懐かしむような顔で苦笑する。それがいつもの家族の風景だった。
「いいか?シャーリー…
俺も神様に懺悔しなきゃいけないことは一杯やってきた。だがな、家族や友人達を愛さなかったり自分の信念を曲げたことは無かった。
これは、昔のアウトロー達も同じだ。だから彼らはアウトローながら今でも畏敬の念を持って見られてるんだ。
…お前も彼らの様に家族や友人を愛して自分の信念を曲げないようにしなさい」
牧場主だった祖父は、よくそんな事を話してくれた。
祖父は家畜を逃がす途中にハリケーンに巻き込まれて死ぬまで、よく僕を馬に乗せたり、リボルバーの撃ち方を教えてくれたりしてくれた。
僕は祖父が好きだった。両親もそれは同じだった。
そこから僕は、祖父の姿を追うようにアウトロー達の映画や小説を読み始めたのだ…
目を覚ます。少し気絶していたようだ。
回りを見ると、そこら中が炎とマグマで真っ赤になっている。
タイタンにはたき落とされた後、火口に落ちてしまったようだ。
何故無事なのかと不思議に思い、よくよく回りを見ると薄く神々しい光が自分の回りを膜のように包んでいるのが見えた。
懐のヘリオライトが輝いている。…太陽神の加護なのだろうか?
前に少し進むと奇妙な装飾のされた神さびた台が置いてあるのを見つけた。台の上には先程落とした二丁の銃が置かれている。
多分、ここが炉の中心なのだろう…
「ッ!?」
少しづつ周りの光の膜が薄れて外の熱気が内側に入って来ている。
流石に鍛冶神の炉の中では、太陽神の加護もそう長くは持たないのかもしれない…
僕は迷わず、懐の灰色の延べ棒と愛用のリボルバーを台の上に乗せた。
三丁の銃は一瞬で溶け、灰色のそれはいきなりグニャグニャと形を変えてから、ぶくぶくと苦しそうに沸騰し始めた。
炉の効果で形を変えていく4つの材料が溶けて混ざっていく。
僕は火にあぶられ、髪や皮膚を焦がしながらもじっとそれを見つめる。
と、突然、その溶けかけたモノが跳ね飛び、僕の懐にあったヘリオライトに食らいついたのだ。
僕とソレは太陽神の加護を失い、一瞬で炎とマグマに包まれていった…
甲高い音がして伍長の長剣がへし折れる。
シャーリーが炉の中に落ちた後も火口でタイタンと二人の兵隊との戦闘は続いていた。
「下がっとれ!伍長」
武器を破壊されたグラーフを下がらせカールが石突を地面に突き立て大地を隆起させ跳躍!
振りかぶった戦斧をタイタンに叩きこむ!!
ガンッ!!!
鈍い音がして渾身の一撃はタイタンの手でガードされ、そのガードした手でカールが吹き飛ばされる。
状況は明らかに悪い。
岩石で潰すのが無理でも、三人で協力してタイタンの頭部を破壊し火口に叩き落す手はずだったが、二人ではこの恐獣をどうしようもない。
下の街の対応に回っている部隊を呼ぶわけにも行かず、何とか街に下りさせないようにここで足止めするのが精一杯だ。
伍長が精霊を使って大地を砂状にして埋まるように地面に落ちたカールは歯噛みする。
「こりゃいよいよお迎えが来るかな?」
「物騒なこと言わんで下さい。今逝かれたら私が一人であの蛆虫どものお守りをしなければならなくなります」
何とか空元気でそう言い合う二人だが、もう正直打つ手がない。
タイタンが右手を思い切り振り上げ叩きつける。
二人はそれより一瞬早くその場から逃げる。
その行動が何度か繰り返され、いつまでも捕まえられないそのケシ粒のようなモノに苛立ちを覚えたタイタンが胸部を展開する。
「なんだ?あれは…」
「嫌な予感しかせんのぅ…」
二人が見ている中でタイタンの凹んだ胸部に周りの光の精霊や炎の精霊が強制的に吸い込まれていく。
「こいつは!」
「!?
全力でヤツの後ろに回るぞ伍長!!」
二人は移動を始めたが間に合わない。
胸部に十分な精霊を溜め込んだタイタンは巨岩の群れを消し飛ばした様にソレを一気に放出しようと…
静かで暗い空間でうずくまるモノと佇んでそれを見ている人がいた。
ここは寒い
マグマの中だから熱いと思うけど…
寒いんだ
何でそんなに寒いの?
分からないよ…でも寒くて寂しくてたまらないんだ
寂しいから寒いの?
…そうかもしれない。私たちはみんなから必要とされていない…昔はみんなから必要とされて『』と言われたけれど、
ずっと前に忘れられてしまった…だから…寂しくて寒く感じるのかも
僕は君達の事が必要だよ?君達に僕の事を手伝って欲しいんだ
…本当に必要?本当に私達のことが?
うん、本当だよ。だから…
僕は、こちらを見上げるうずくまるモノの手を取り引っ張り上げる。
「さあ、一緒に行こうよ。こんな所にうずくまっていないで、外のみんながいる温かい11の門がある世界へ…」
胸部に精霊を集めたタイタンは一気にそれを火口一帯に向けて撃ち放った。
その瞬間、轟音と共に万色の光線が天を貫く!
………
「?」
少しでもタイタンの破壊光線から身を守ろうと地に伏せていたカールとグラーフは、いつまでも来ない破壊と衝撃に訝しげな表情で顔を上げた。
顔を上げた先には胸部を大きく撃ち貫かれたタイタンの姿があった。
振り返ると火口が大きくえぐれ、その向こうの炎とマグマの中から何かがこちらへ向かってゆっくりと歩いて来ている。
「…まさか、お嬢ちゃん、なの…か?」
「そんな…あれじゃ……」
二人がこちらへ向かって来るソレを見て愕然とした表情になる。
ソレは至る所が溶け焼け爛れ、手足は炭化し、おおよそまともな人間の形をしていなかったからだ。
それでもソレは、古めかしく16インチはある長大なリボルバーを構え、タイタンにゆっくりと近づいていく。
受けた傷の痛さに雄叫びを上げてタイタンが右腕をソレにむかって振るう。
軽い炸裂音と重い金属音が響き渡り、タイタンの巨腕が消し飛ばされる。
それはもう、拳銃の威力では無かった。
タイタンが苦痛に喘ぐ、ソレは歩を止めること無くゆっくりとタイタンに近づいていく。
強敵と見て取ったのか、タイタンが手首を失った左腕を使って下がり、大きく口を開く。
シュゥッ!
ソレの左腕が切り落とされる。
タイタンの口から水精霊を使った9本のウォーターカッターが放たれ、その一本がソレに当たったのだ。
しかし、ソレは全く意に介さず前進する。
炭化してボロボロと崩れる体を引きずりながらも、しっかりとタイタンの方を向き歩いている。焼け崩れた体で、目だけが優しげにタイタンを見つめているのが印象的だった。
タイタンは恐ろしいモノを見たかのように固まる。
ソレはタイタンまで十分近づくと銃を構えて何事かをタイタンに向かって呟いた。
それに対してタイタンは、怒り猛り悲しみ…様々な感情が混ざったような長い長い叫び声を上げる。
その声を聞いた後、ソレはハンマーを静かに上げ、また何事かを呟きタイタンに向かって引き金を引き……崩れ落ちた。
破裂音の直後、猛烈な光と音の洪水が辺りを包み込み、天へと登っていく。
下の街で戦っていた住民達は、山頂のその光景が何を表しているのかは分からなかった。
だが、これでこの騒動が終わったのだということだけは全ての人が感じ取っていた…
- 多数入り乱れての戦闘で各自の行動が思いのほか分かりやすかったのがよかったです。ただタイタンの大きさだけが若干つかみにくかったかなと思いました。炉に落ちてからの回想と融解からの持って生き様はぐっとくるものがありました -- (名無しさん) 2013-08-17 19:30:21
- 怪獣映画というか理性失ったタイタンは怪獣だわな -- (名無しさん) 2013-11-19 23:20:38
最終更新:2013年08月17日 19:26