【どういうことだよ!?】




1朝食の事


「うん、出来た」
湯気を上げていた妙な丸っこい容器の蓋を開けてアンドロギュノスがそう言った。
「…?」
肉を齧りながら試作タイタン07が覗き込むと、そこには何やら炊き上がったイネ科の植物の茎や葉っぱが一杯に詰め込まれていた。
「?????」
「ウム、完璧だ。」
首を傾げる7を気にもとめずアンドロギュノスはそれを自分の皿に綺麗に盛りつけた。
「…」
「今日のお恵を我が父セダル・ヌダ様に感謝致します…」
首を折れんばかりに傾げる7の前で、お祈りを済ませたアンドロギュノスがもしゃもしゃと湯気の立つその茎や葉っぱを食べ始める。
首を傾げながら7はアンドロギュノスの皿から湯気の立つソレを一つまみすると恐る恐る自分の口に運んだ。
「おい、馬鹿!それは食い物じゃない!子供じゃないんだから何でもかんでも口に入れるなよ。このいやしんぼめ!」
そう言ってぺしっと手の甲を叩かれつまんでいた茎を取られる。
「・・・・!?!?!?!?!?」
世の中には理解出来ない事が多いな…と7はそう思った。

2昼食前の事


西方未踏破地域のある町に入った時のこと、奇妙な団体に遭遇した。
「あ!!だ、だーりん!?」
後ろから聞こえたその聞き覚えのある口調を聞いて、手を硬化させて身構えるアンドロギュノス。
しかし、そちらを振り返るとあの巌のような世紀末覇者ではなくスラリと背の高い目元がきりりとして髪をポニーテールに結い上げた16・7のエルフの美少女が立っていたのだ。
「え…ど、どなた?」
「嫌!アタシを見ないでだーりん!怪我の治療で衰えた醜い今の私の姿を!!!!」
美少女はそう言うと泣き出してその場に座り込んだ。
「お姉様…なんておいたわしい」
「大丈夫です。お姉様、私達も一緒ですから…」
トサカのような髪型や異様なほど丸く膨らんだ奇抜な髪型をしたおとなしそうな美少女たちが彼女を慰める。
「…え?……え!?」
「ありがとうみんな…
そうよ!泣いていられないわ!アタシ達はあの悪魔からだーりんを奪い返さないといけないわ!!
特訓よ!!悪魔を倒すために前の完璧な肉体を超える神の如き強く美しい肉体を手に入れるのよ!!!」
「「「「「きゃーーー!お姉様カッコイイ!!!どこまでもお供しますわ!!!!」」」」」
エルフの団体は路上で盛り上がっている。
アンドロギュノスは何故か地面に突っ伏している。
「善は急げよ!見ていなさい悪魔!次にあった時は神の如き肉体で貴方をノックアウトして愛しのだーりんを奪い返してやるわ!!!」
ビシッと7に向かってそう突きつけてからどこかへ走り去ろうとする美少女とその団体。
7は走り去る団体にぶんぶんと手を振った。彼女たちはにこやかに手を振り返してくれた。
よくは分からないがあの楽しげな知らない人達はまた遊びに来てくれるらしい。
とても楽しみだ。

3夕食の事


パリパリガリガリと小気味良い音がする。
7は目を丸くして音の発生源であるアンドロギュノスを見ていた。
「ふむ…まあまあだな。
まあ、田舎者が作ったとは言え、あの高品質の材料を使って私が教えたんだ。この程度の物ができていなければ困る」
アンドロギュノスがガラス製のとんぼ玉を口に放り込みながらそう呟く。
「ん、何だ?お前も欲しいのか?いいぞ、流砂やらでかなり無くしたが残ってる分を特別に一つ分けてやろう」
じっと見つめる7に気がついたアンドロギュノスが背嚢から一つの物を取り出して7に渡した。
ガラス製のコップだ。
薄く青い色が付いたコップは、涼しげで表面に付けられた切子細工がそれを際立たせている。
7はポリポリととんぼ玉をかじるアンドロギュノスとコップを見比べてから、恐る恐るコップを自分の口に運んだ。
「馬鹿!ガラス製品を喰う奴があるか!それは食い物じゃ無い。これはこう使うんだよ。このいやしんぼめ!!」
アンドロギュノスは7の頭をポカリと叩いた後、そう言って前の町で買った果物を潰して出た汁をコップに入れて出してくれた。
7は頭をさすりながらチビチビとその柑橘類のような味のするジュースを舐め、改めてこう思った。
世の中には自分に理解出来ないことが一杯あると…

4夜食時の事


「困ったのぅ…」
夜の山で道に迷った老人が一人、心細げに歩いている。
「今日は星も見えんし、さてどうやって家に帰ろうかのぅ…」
思案しながら歩いていると少し向こうの方からヒトの声が聞こえる。
これは助かったと老人は急ぎ足で藪をかき分けそちらに向かう。
そして、分厚い藪をかき分けて出たそこには…

「ぬぅぅぅぅおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
「ぐぉぅううあああああああおおおおおおおお!!!!!!!」
「ほぉぉおうううううあああああああああちゃあああああああああ!!!!!!!」

大量の血と汗を流しながら巨岩を運ぶナニカ、身を焼かれながらも業火の中を走り抜けるナニカ、猛烈な滝の水流に耐えるナニカ…
みな一様に全裸で、セダル・ヌダが作った大鎧の如き硬く重い筋肉に鎧われた体に年頃の美少女の頭が乗っているという異様な風体だ。
「耐えるのよ!みんな!!!あの悪魔を倒すために!この荒行に耐え、愛しのダァリンを射止める美と力の調和した神の如き肉体を手に入れるの!!!」
一段高い岩の上から、彫刻の如き恐ろしいほど美しい筋肉に鎧われた体の上に凛々しい美少女の顔が乗ったリーダーらしき物体が完璧なポォジングを行いながら他の者達を叱咤激励する。

「うぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっすううううううううううううううううう!!!!!」
他のものがその言葉と美しいポォジングに萎えかけた気力を取り戻す。

「ヒッ…ひぃ!」
その光景を見た老人は体から出るものを全部漏らしながら尻餅を付いた。
尻餅の音と共に肉塊達が座り込む老人の方を一斉に振り向く。

一瞬の静寂、そして…
「いやあぁぁっぁぁぁあああああああああああああああああああーーーーーーーー!覗き魔よぉおおおおおおおおおおおおおーーーーーー!!!!!!」
「ぎゃぁぁーーーーーーーーーーーーー!!!!!犯されるううううううううううぅうううううううううーーーーーー!!!!!!」
鋼を引き裂くような悲鳴が上がり、岩や大木が老人目掛けて飛んできた。

「ひぃいいいいいいいーーーーー!ば、化け物じゃぁあああああああああ!!!!」
老人は這々の体で何とかその場を逃げ去り、どこをどう走ったのか何とか自分の家までたどり着いた。
それ以後、近隣の村ではこの山は恐ろしい化け物が出るという理由で立ち入り禁止となったのだった。

ちゃんちゃん♪





  • 世界のどこかで不思議な者が面白おかしく生きている。異世界だから不思議じゃないですね -- (名無しさん) 2014-02-02 18:51:15
  • どういうことだよ?有機物と無機物という決定的に何か違うものが一緒に歩いている感じ -- (名無しさん) 2017-04-05 13:30:11
名前:
コメント:

すべてのコメントを見る

タグ:

c
+ タグ編集
  • タグ:
  • c
最終更新:2013年04月01日 22:31