アットウィキロゴ

【こどものきょうえん】

 スラヴィアの貴族では饗宴が物事の中核を成している。
 饗宴を円滑に行う為に領地運営があり、饗宴で勝つ為に領地運営があり、饗宴で勝ったから奪った領地を運営を行う。
 気のせいか内政の方が重要じゃないかという気もしてきたが、饗宴こそがスラヴィアの独自性をより際立たせる重要な文化だ。
 しかし、必ずしもこの饗宴を楽しめない貴族たちがいる。
 有る程度の領地と力を持った為に挑む物も競うものも減り、それでいてしがらみが増えてしまって全力で潰し合える相手が居なくなるという悪循環。しかしそれでも死の旅路へ向かうほど、長く死んではいない中堅以上の貴族たち。
 誰が始めたのか分からないが、≪こどものきょうえん≫という代理饗宴で日頃の憂さを晴らして旅への出立を日延べさせていた。

 ≪こどものきょうえん≫を説明する前に、子供が屍人化する問題がある。屍人はスラヴィアの国家運営に無くては成らないし、そもそも屍人が居なくてはスラヴィアですらない。だが、貴族もその従者も揃って、成人した人物である必要があった。
 子供が役に立たないというわけではないが、出来る限り成熟した人であることが好ましい、そもそも親がいるのに子を屍人化するのは一種の惨さがある。

 ところがどこにも例外があるように、望む望まぬに関わらず必ず人は死ぬし、またスラヴィアでは屍人化してしまう事があった。そして彼ら彼女たちを扶養する大貴族の間で……。

「そうだ。こども同士で饗宴をさせよう」

 などと思いついた紳士がいた。
 また彼は紳士であった。
 子供同士を戦わせるなど可哀想。そうだ、傷つけさせないようにしよう。
 勝利の暁には、子供が喜ぶのは最高のプレゼントをあげよう。

 そして彼の友人らがあつまりルールを厳密かさせて出来たのが≪こどものきょうえん≫であった。



 ≪こどものきょうえん≫会場は、選ばれた紳士淑女しか入れない、とある貴族の管理する比較的小さな闘技場で行われる。
 今、この薄暗い闘技場で向かいある二人の子供。
 一人は奇抜で複雑な衣装の豹人の少年。ツナギのような身体を覆う服で、豹人でありながら虎柄模様という節操の無い格好だ。

「ほう。自己否定なのか自らを超越して他者を取り入れるシャーマニズム的発想なのかなかなか注目に値するファッションですな。少々脱がせにくい格好なのがマイナスポイントではあるが」
 観戦と審判を兼ねた貴族の一人が、豹族の少年を評価してポイント票に数字を記入する。勝負の行く末とは別に、ファッション性まで評価され、さらには厚着すぎると減点される。厚着が減点され、薄着が加点される理由は後述するとして……。

 対する一人はハルカ。地球から来た数少ない屍人だ。ハルカは黒い薔薇付きのカチューシャにエプロンドレスとゴシックファッションスタイルだ。地球人の感覚では、非常にスラヴィアと親和性が高い。


「ほほう、これはこれは。あの地球人の少女は我が国をほどよく優雅に理解している。小さく華奢な身体を包む黒いドレスは堪りませんな」
 と、虎人の貴族。
「あの視線を避けるような羞恥の仕草。身を庇うような竦め方。厚着の減点を無くしたいくらいだ。ああ、スカートの中に私が飛び込みたい」
 と、亀人の貴族。
 変た……紳士たちは怪しい評価をハルカに下す。

 ハルカは少女と勘違いされ続け、≪こどものきょうえん≫で戦っている。

 こどものきょうえんでは、ファッションの善し悪しに薄着厚着や服の脱がせやすさにくさまで評価されるそれは……。

「おおっと! いきなり豹人めエプロンドレスの裾を噛みに行ったか!」
「なんと! カチューシャやストッキングを後回しで跳ね舞い上がるスカートを狙うとはわかっとる! 加点だ! 加点!」
「いや、あれは受ける地球の少女の技だ! 先にあの裾を狙わせるとは妙技!」

 貴族たちは闘技場で始まった「子供同士の脱がせ合い」に、やおら興奮し始めた。

 そう。≪こどものきょうえん≫とは「服の脱がし合い」という競技なのだ! よって薄着や脱がせやすい服は最初から加点され、年間での総合評価が高くなり、厚着や脱がせにくい服は逆となる。
 もちろん、相手を下着姿にする事こそが目的で、大きなポイントを得られる。全裸は紳士の本懐ではないが、稀に大事なところがポロリやチラリするのが最高だという意見で、下着を脱がせると反則負けとなる。
 勝つ以外にもポイントを稼ぐという方法がある救済処置であり、決して変た……貴族たちの妙な趣味を満足させるシステムではない。


 誰だ、考えついた貴族! 誰か止めなかったのか! 一緒にやろうと思った奴も同罪である。
 だめだ、こいつら! 早くなんとかしないと!

 豹人の少年は、牙と爪を巧みに使い、ハルカの肌を傷つけず布を剥ぎ取っていく。傷を与えると大幅に減点されるため、思い切った攻撃を行えない。
 防戦一方と思われたハルカも、一気に更正に出た。

 胸(のエプロン)に噛み付き、引きちぎろうとした豹人の背中に手を回し、一気に飛び込んで豹人の服を剥ぎ取った。ハルカの胸は危ういところではだけていない。しかし、子供でありながら、筋骨すばらしい豹人の肉体が会場に晒された。
 幸い少年の下着は無事である。
 ここでハルカの勝ちが確定した。

「なんと! あの服はああするとズルっと剥けになるのか! 簡単に脱げるとは加点だ加点! しかしそれを見抜いた地球の少女も加点だ!」
 ポイント票に芸術点やら発想点やら追加し始める、猫人の男性。
「え? ナニがズルっと剥けてるのかしら!」
 突然、興奮し始めるエルフの女性。

 会場は酷い大人たちに溢れている。

 次の試合では、カナタが登場した。

「な、なんだあの格好は!」
 騒めく貴族たち。
「あら、わたくし知ってましてよ。あれは体操着。そう、ブルマというものですわ」
 何やら妙な事に詳しい女エルフ。
「しかし、あ、あれはノーブラではないのか? 上をハイダラもう相手方の反則ではないか!」
「いや、あれはあれで」
「うむ、上は既にサービスの限界! 狙うは下だけという潔さ! 上のポチ二つは最初からフルに曝け出しながら、下着じゃないもん! 綿の体操着だもん! というあざとさ!」
「む、むう。たしかに……あれで汗でもかこうものならば……。しかも狙われるのはあの赤いブルマのみとは……」

 大幅に加点されていくカナタのポイント。

 カナタは恐ろしい子である。

 ハルカは男とバレることを恥じて、ひたすら縮こまっているというのに、カナタの小悪魔さは、この≪こどものきょうえん≫では水を得た魚。

 カナタのセクシャル伝説はまだ始まったばかり……。




 追記

 初代、最高特典優勝者はティータです。


  • おもしろい!作者の方にはHENTAI紳士の称号を送りたいくらいだ。この発想力には恐れ入りました。それにしてもこの紳士達、HENTAIすぐる… -- (名無しさん) 2012-05-06 10:41:23
  • その子の裸がみたいわ!でも靴下だけは履かせて頂戴!といわんばかりのすがすがしい観覧者でした。解説描写が丁寧で着せ替えのように姿が浮かびました -- (名無しさん) 2014-06-22 19:19:43
  • 強さとはまた違った趣が勝利の鍵になってそうな饗宴子供の部。これでティータが優勝したんでしたっけ -- (名無しさん) 2014-07-17 23:47:07
  • スラヴィアンが成長するのであればきっと名貴族の登竜門みたいな枠になったんだろうなキッズ饗宴 -- (名無しさん) 2015-08-06 23:50:20
名前:
コメント:

すべてのコメントを見る

タグ:

d
+ タグ編集
  • タグ:
  • d
最終更新:2012年05月06日 00:44