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【新天地で!】



 ─ お母さん、お父さん、俺です
   この手紙が着く頃には、僕は新天地を歩き回っている事でしょう
   異世界はやっぱりすごいです
   日本での常識なんて通じなく、起こる事全てが初遭遇
   翻訳加護というもので誰とでも話が出来るのが救いです
    新天地の港から、新たな一歩を踏み出した息子より─

客船が港に到着する。
まるでバスターミナルの様に後から後に同じ様な船がやって来ては出航する船とすれ違う。
降りてくる乗り込んでいくのは、あらゆる姿あらゆる種族。
港に立ち並ぶ建物も、多様多種の万国ちゃんぽん。
活気と熱気の色取り取りの一つに溶け込む自分。

港、新天地の玄関口であるペンギン都市から東へ行った場所にある町。そこがとりあえずの目的地だ。
ここまでやってきた思いと共に、先輩からの手紙を開く。

─ 後輩!元気にやっているか?
  俺は今、異世界の新天地のとある町にいる
  大々的な発表から始まった異世界交流時代到来のせいか、世の中じゃアマプロの関係なしに
  写真やレポートだの何だのと重宝がられている
  卒業論文でも異世界旅行などのレポートを提出して通ったのが何人もいるって話だ
  俺もそのクチで異世界に来たんだが… 新天地は良いぞ!何せ自由がある!
  お前が好きそうな店やネコ耳娘もわんさかいるぞ!
  俺は長い滞在なのでお前がこっちに来るって言うのなら色々ガイドや世話をするぞ?
  ついでに卒論もやってしまえ!
   後輩思いの先輩より ─

今いるのが東端、海に面したここだから… 東ってーと平原と林を抜けたところのこの町かぁ。
如何にも子供が好きそうな、色彩豊かで山だの森だの砂漠だのがごった返す地図。
先輩の手紙に同封されていたものだ。
「お? 兄さん良い地図を持っているねェ。それは最新版のじゃァないか」
背後から地図を覗き込んできたのは別の船でやってきたらしい蛙の人。
ミズハミシマに最初に来たせいか、丸っきり人間大の両生類顔や魚類顔という亜人の方々はよく見かけるので耐性はついている。
しかし逞しい脚だ。惚れ惚れする。 配送のバイトをやってた頃にこんな脚があればエレベーターの無い公団の上り下りも楽だったろうなぁ。
カエルの人の服装はミズハミシマでも一般的な時代劇でよく見かける旅人風のもの。
背から腰にかけて何やら小袋を沢山並び提げている。
そして背中に穂先を覆った小振りの槍を背負う。
「ほうほう。東の町へ向かうのだったら途中までは同じ道だな。
君さえ良ければ御一緒にどうだろう?」
にこやかな幅広い顔がぷくっと膨らみ、ぬめりの有る三本指の手が差し出された。
「願っても無いです。宜しくお願いします。
唯、こっちには来たばかりなので何も分からないんですけども」
「まあまあ。旅のやり方なんてどこの国でも似た様なものさ。
とりあえずは、道中の情報が欲しい所ではあるな」
そう言うと、蛙の人は提げている乾いたヘチマの様なスポンジ状のもので頭を撫でる。
じんわり湿った冷ややかさに目を細めながら背伸びし、周囲を見渡す。
「あそこだな」
指差したのは人ごみの中から高々と伸び立つ、複数ヶ国の言葉で“獣荷車屋”と書かれた看板。
「“道”の情報ならば、ああいう店が良いだろう」

「正直、良くはないですねぇ… 場所によっては雨期になって地盤が弱くなっていたりして交通自体が悪くなっているのもありますが…」
「何やら含む処でもありそうですな?御主人」
「いえ、出入国に関して自由なのは大いに結構ですがね?この国。
おかげで最近は言葉も通じない、物騒で喧嘩っ早いのもよく見かける様になりましてねぇ…」
ふと考える。自分は翻訳加護があるおかげで会話に不自由が無いが、多種族混在の新天地、会話に於いては困難な地なのだろう。
「最近も東へ行く傭兵付きの商隊が襲われまして… あんたらも東へ行くってんなら何処か大きな隊にでも入れてもらうのが良いよ」

「とは言われたものの、私は新天地に知り合いも何もいないんだがねェ… さてはて」
「…先輩はどうやって東の町まで行ったんだろう」
港から市場、雑多な店通りをとことこ進む二人。
RPGならここいらで武具を揃えたり仲間を募ったりするのだろうけど。
「ちょっとそれ、その槍持たせてもらっても良いですか?」
と、貸してもらった槍が思いの他重たくて、とてもじゃないが突いたりコンボしたりなどできるもんじゃない。
「はっはっは。下手に動きを制限する物を身に付けるよりも、動き易い恰好の方が何かと有用でしょう」
それもそうだ。武具に関してはスルーする事にした。

「では、これより我らは東へ向かう! 星教会より受けた命を、何としても遂行するのだ!」
食料品店で旅路の物資を見繕っていると、背後の広場から大きな激が飛んできた。
ケンタウロスと狗人が混成した一団。 ケンタウロスが凡そ二十人、狗人が六人。
その先頭に立つ怒号の主は、仰々しい鎧を頭の先から蹄の先まで装備した大柄なケンタウロス。
その主の後方に立つ狗人が、ふらふら揺れる尾をブラッシングしているが…どうにもこうにもまどろっこしい。
「ちょっとそのブラシ、貸してもらっても宜しいですか?」
以前に、乗馬スクールでバイトをしていた頃に刷り込まれたせいか、動物の乱れた尾を見るとついつい、ついついブラッシングをしてしまうのだ。
「む! 急に気持ち良くなったと思えば…誰かは知らぬが中々のお手前、良いぞ!」
お?気に入ってもらえた?
「どうもどうも。私達二人、新天地での旅行記など作っておりまして…
どうやら御一団は東へ向かわれる様で、もし宜しければ私達も同行し、見聞させて頂きたいのですが…どうでしょうか?」
素早く蛙の人が間に入り、見事なまでのとってつけた説明を笑顔と揉み手と共にやってのけて見せた。
「うむ!随伴隊の狗人と共について来るのを許可する。 我らの活躍を余す事無く記すが良いぞ!」
おぉ凄い!とんとん拍子で東行きの目処が立った!
「ふぅ、郷里でイストモスから流れてきた狗人に言葉を学んでいて良かった良かった」
顎下をぷくぷく膨らませる蛙の人に、親指を立ててスマイルを送る。
整然と並ぶ騎馬人の後ろ、狗人兵の隊列に加わる。
一団は用意万端の様で、すぐに出発となった。
重厚で巨大な鋼の門をくぐり、青い草香と土の匂いが吹き抜ける平原へ出る。
何もかもが未体験の旅路に胸を膨らませて。



いざ新天地、先輩のいる町へ。
たんだいせいに なかまが ひとり くわわった! 

  • 人間と異種族の二人だけだと気にならなかったんですけど大勢の異種族が同じ場所にいた時にどんな言葉で会話するのかな?という疑問がわいてきた -- (としあき) 2012-07-29 13:18:12
  • 新天地でよく言われてますけど、西部開拓時代の雰囲気がしっくりきますね。 夢と自由と危険がいっぱい -- (とっしー) 2012-07-31 09:24:57
  • あらゆる種族が往来する港というのは行ってみたいですね。装備選びに現実味を感じました。同行者が増えるのはわくわくしますね -- (名無しさん) 2014-10-26 17:42:52
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最終更新:2014年10月26日 20:30