【歴史家達は語る 〔オルニトの戦術〕】

  後世の歴史家達は語る
  ─ 純然なる闘争の遺伝子は、戦闘の繰り返しにより培われる
    オルニトにその遺伝子が無ければ、あの大陸の歴史は全く違う道を歩んでいただろう ─
 攻めては攻め、攻められては攻め返す
 国の在り方から当然の様に起こるその闘争は、オルニトを戦闘国家として彩った、と

卵が先か鶏が先か、それは誰にも分からない。
現にオルニトのある大陸に、人の生活が始まりし頃からそれは隣に在ったという。
 風の精霊
異世界各国の歴史を広げて見ても、オルニトほど風の精霊が定着、存在する国は他には無い。
まるでそれは離れられぬ様に呪縛をかけられているかのようにも思えるが、
国の栄枯衰退とは関係なく、歳月を重ねる毎に大陸の風の精霊はその数を増やしている。
また、嵐神ハピカトルの住まう地であるせいか、大陸の風には何とも言えない不思議な魅力があるらしいと
精霊を通じて歴史を調査する人間の歴史研究家が発表した。

 ─ 空を飛べるということ
ある大延国の高名な躍字家が庭で好物の饅頭を堪能していた。
そこへ一羽の鳥が降り立ち、躍字家が和んでいる隙に饅頭を一つ掴んで飛び去ってしまう。
「口惜しい哉、我に翼があればと思う。 げに空のなんと遠いことか」
躍字に通じ使いこなす者でも、一度空へ飛び去ってしまったものはどうしようもない。
翼がなければどうしようもない。 という一言である。
ただの小鳥ですら空を飛ぶ事で力ある者を翻弄する。
もしそれが小鳥ではなく屈強な戦士であればどうなるか?
戦意を持ち、隊列を組み、武器を構え降下してくる。
速度と重量を上乗せする強力な一撃の後に飛び去る戦士を空でどうにかしようにも、
風の精霊は彼らに付き従っている。
持って生まれた“空を飛ぶ身体”と、生活の中で常に隣合い繋がる“風の精霊”。
オルニトに生きる鳥人と言うだけで強力無比な戦士に成り得るのである。

 ─ 風の精霊の加護
ゲート解放からより盛んになる精霊研究から、風の精霊の特徴を読み解く。
その性格は自由にして奔放。 しかしそれでも尚、自由を求める。 故に彼らは風。
常に流動する大気、彼らを一つの事象で留めておくのは至難の業である。
型にはまりたいと言えばすぐに飽きたと言う。 景色を見て面白いと言ったかと思えば、すぐにつまらないと言う。
そんな彼らを愉しませる手段として効果的とされるのが、“歌”や“劇”である。
次々と変わる詞や場面、重なる旋律と言葉と演者達。
同じ歌や演目だとしても、精霊達はその流れと変化を堪能する。
決して物覚えが悪いので同じものを何度みても楽しめるという訳ではないようだ。
そして風の精霊が与える加護は、空を飛ぶ鳥人に更なる力を与える。
ひとつ羽ばたけば呼応する精霊が風を巻き起こし空へと運ぶ。
大きく翼を広げれば、その下に集まる精霊が空を滑らせる。
強くひと所へ向かって降下すれば、精霊が作る回廊がその速度を後押しする。
敵へ切っ先を向ければ、擦り合う風の刃が全方位より襲いかかる。
オルニトの戦史の中には、空の大劇場により紡がれた唱令により、
大量の風の精霊による一致事象行動による大気の壁が空より落下し、
高山より空を穿っていた相手の軍ごと山ひとつを押し潰し、荒野にしたとも書かれていた。

 ─ 空の劇場
今も昔でも各方面から人気の高いのがオルニトの“空中劇場”についてである。
今でこそオルニト観光の目玉となり、訪れる誰もが楽しむものとなっているが、
過去、オルニトと相対する者達からは、空の劇場より響く歌や声は破滅の導く狂災以外の何者でもなかった。
劇場より発せられるもの全てが周辺一帯へ伝播し、兵達の精神などに働きかけ強化し、精霊の力を増幅し集合させる。
それは、風の精霊の意思伝達は速く広く、一声発しただけでも精霊に“伝えたい”という意思があれば
それは瞬く間に十里百里を越えて広がり伝わっていくからである。
精霊の見たもの聞いたもの感じたものは精霊だけでなく兵にも伝わり、士気の鼓舞から運動能力の解放などを引き起こす。
演者が敵を貫けば、風の槍が敵を穿つ。
歌が攻めよと祝詞をあげれば、翼が大きく速く羽ばたく。
戦略上の最重要拠点でもある浮遊島の劇場は、戦場においても遊興に浸る神官の居場所でもあり、
その防衛には屈強なる精鋭達が就くのが慣わしでもあった。
歴史の中で次々と墜落していった浮遊島の中で、今でも空中劇場は幾つか残ってはいるものの、
オルニト最大の空中劇場とされた“広拡たる煌翼”は、浮遊群島の墜落でも口火を切って最初に墜ちたと記されている。

 ─ 変化していく戦い
兵と歌と精霊。 巨人が去っていく前のオルニトの戦術はその三点に集約されていた。
しかし、巨人が去ってしまい、浮遊島ごと侵攻出来なくなってからは
その戦術に大きな変化が起こる。
鳥人と翼人との連携体制の起こりである。
浮遊島からの援護が無くなった事で兵士だけが戦場へ向かう事が多くなり、
合わせて精霊の加護も明らかに減少していった。
そんな戦力減退を打開するべく考案された戦術が翼人の援護協力体制である。
何故鳥人ではなく翼人が?と思われる事がまず起こるが、当時それが試されなかったわけではない。
むしろ国の上層部は戦場に鳥人以外の兵が出る事に懸念を抱いていたくらいだった。
しかしどうしてもそうせざるを得ない状況だった。
鳥人は頭が悪い。
個人的、率直に言うとそうなのだが、余りにも失礼なので言い換えると
一極特化ならまだしも、戦闘と援護や補助など複数の行動を行うのが困難。
多様な戦術や援護などを一人で覚える事が出来なかった。
などなど、所謂不器用が過ぎるという致命的な理由があったと、当時の修練報告書などに多くが書かれている。
古くから鳥人の従者や使者、劇場などでの演者やその脇役など幅広く活躍していた翼人は
その行動種に対する汎用性も高く、加えて鳥人と同じ飛行能力と身体的能力の高さから戦場での援護役に選ばれたのである。
その役回りは多彩で、
戦場にて主の追撃を行ったり不意の攻撃から護る者。
様々な武具などを携帯し、不足が出たり換装に合わせて主に渡す者。
随伴し歌う事で小規模な歌唱援護を発声させる者。
あえて戦場には出ずに、主などのために道具や武具などを整備生産する者。
などなど、多く存在していた。
意外にも主従の関係は徹底しており、そこから何か特別な感情などが芽生える事はほとんど無かった様で、
軍記などにもそういった話は全く出てこない。 不器用な種族であったのかも知れない。
しかし、この体制は兵達の意識の中に鳥人選民思想を弱めたり共生意識の増加を促す事になる。
今までとは違う、変化していく環境は、それに関わる者の全てを巻き込んで意識を変革を起こしていった。


オルニトの、鳥人の戦いを描く上で想像した空の軍隊の戦い
内容はあくまで仮説なので色んな意見を合わせたり検討していきたい

  • やっぱりチートは慢心の元。どこかしらで世界のバランス取りが発生しちゃうもんなのだろうか -- (tosy) 2012-10-15 13:50:21
  • 巨人に空飛ぶ兵に強力な支援と揃っていても無限の蟲軍団は破ることができなかったのかと思うと壮絶なオルニトとマセバズークの戦争が浮かんでくる -- (としあき) 2012-10-21 15:59:43
  • 軍事大国オルニトを名実共に支えていた巨人が去っていった理由が気になる -- (としあき) 2012-10-30 22:51:16
  • 強大な国と思ってても一つ二つ要素がなくなるだけで崩れてしまうものなのかと哀愁が漂う -- (名無しさん) 2013-02-16 18:30:17
  • 鳥人とオルニトの強さが他の種族や国とのバランスを取るために頭が若干弱いというようになったのかなとも思えました。精霊の力は善悪を越えて純粋なものですね -- (名無しさん) 2015-03-15 18:07:13
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最終更新:2013年03月26日 00:11