世界研究家達の間で昨今盛んになっている過去現在の異世界情勢の研究。
異世界の歴史における情勢の推移を解析していく中で重要な位置を占める“海の支配権”。
─ 神すらも手に余らせる青い世界
それを手中に収むるは、世界の半分を統べるも同然 ─
凡そ異世界にて覇権を求むる者達が渇望するその海を
国の成り立ちこそ後発ながら、最も近い場所から臨む国。
研究家達から軍事、商業面からも一際熱い眼差しを受けている国、
ドニー・ドニー。
これから述べる様々な調査結果や仮説は、これより先の異世界勢力図を占うという点でも
大きな意味を持つ事になるだろう。
─ 建国独立戦争が加速させた海の国
人を爆発的に進歩させるのは何時の世も“戦い”である
その言葉が示す様に、ドニー・ドニー(以後、ドニー)が急速に海の王者へと頭角を現したのも建国独立戦争の時期である。
ドニーを種族で見れば、個々の戦闘力においてどの国をも圧倒する可能性を持っている。
が、こと戦争に於いて重要になるのは、相手に勝る物量であり総合力であり大局の流れである。
数で劣るドニーが海と陸の両面から攻め続けられたならば、遅かれ早かれ敗北は確実だったと言えよう。
「海を抑えられた時点でこの大勝負は“負け”だ。 海へ征(で)るぞ!」
戦争開始の際にナゼフがそう主張したのも、制海権を取られ勝利の流れを失うのを避けるためだったと言われている。
戦史を紐解いてみても、本陣とされた港町での上陸戦というジョーカーを切ったのは片手の指ほども無いとされている。
宣戦布告となった独立宣言から、ドニーの総力を挙げて海での戦力を築く船舶の生産が進められた。
戦争開始時点で、“毒を流す山島”と価値無しと、ナゼフにドニー本島の所有権を売り渡した
ラ・ムールの商人は中立、静観を取ったため
それまでドニーで活動していたラ・ムール商人付きの船大工も何割かは退去せずに船舶の生産と、
奴隷や労働力でしかなかったドニー住民達への技術指導にあたった。
恐らくこの時に彼らを引き留めたのは、ナゼフが用意した“報酬”であろうというのは、ほとんどの研究家の意見である。
独立と戦いへの気運もあってか、それまで造船に携わって来なかった住民の意欲も行動力も高く
船舶は次々と生産されたが、ここで大きな問題点が発生する。
確かに船舶は次々に用意されたが、それはあくまで“運搬船”であった。
鉱山の採掘物や木材などドニーの産物を運ぶのが目的の船舶であり、
戦闘を目的にした構造ではなく、ずばり言ってしまうと外からの攻撃への防御面などが弱かったのである。
それでも、持ち前の強靭な身体で狭い湾内や近い位置から始まる奇襲戦では戦果をあげたのである。
─ 戦(いくさ)船の登場
その男は小さく何の特徴も無かった
言葉も通じぬ相対であったが、その男の“熱意”は確かに伝わった
戦争が始まる前から、ナゼフと海賊勢が抱いていた“船の脆弱さ”という危惧は次第に確かなものになっていく。
通商連合の大海軍が揃いつつあると、その全容が知らされる中で苦戦と最悪は敗北と過ぎるナゼフ達の前にその男は現れた。
造船工場に飛び込んできたかと思うと、男は聞いた事も無い言葉を叫び、その場にあった工具を手に取り製造途中の船に取り付いたという。
背は小さく凡庸な顔付きはこれといった特徴は無いが毛がほとんど無い。
服装も独特であったが、頭部はこれまた独特な結い方をしており目を引いたという。
「テヤンディテヤンディ」
顔を真っ赤にして祝詞か呪言か繰り返す男は、傍にあった罫書き用の墨を指に付け、机に何やら描き始めた。
それは見た事も無い造形であったが、誰もが“船”であると理解した
運搬量と安定を図る為に広く角張っていく構造とは違う、深さと曲線のうねりを併せ持つ船体。
長尺足虫を彷彿させる両側面から無数に突き出る櫂。
何よりも目を引いたのは、可変構造の帆柱であった。
急遽、彼を頭に置き、その指示(身振り手振りと図での説明)で作業は時を惜しむ様に夜を徹して進み
二日と経たず完成したと記されている。
その船は、男が自身を指して名前だと主張していた「タルカイ」から“タルカ船”と名付けられた。
深い船底に位置する漕ぎ手を防護する強固な櫓。
風力と人力の両方と、それの取捨選択が可能な可変構造。
そして従来の幅広い正面面積から狭く細い正面形成になった事による、装甲集中による突破力。
満を持してドニーへ攻め込んだ連合海軍を尽く打ち破り、戦々恐々の渦に叩き込んだのである。
タルカ船の運用にはドニーでは大きくなりすぎない身体で体力も力もあり、いざという場面では泳ぐのも得意な
オークが漕ぎ手として抜擢される。
数が多く大家族形態の多いオークは順応力に長け、連携行動に最適であった。
この抜擢が後世における海運を牛耳るオーク大海賊の根底を作ったとも言える。
以後、
船体長を伸ばした突破推進力重視型
帆柱を畳んだ際に突撃角になる前面特化型
漕ぎ手を交互に一列に配することで船幅を狭めた操舵交錯強化型
などなど、多様な型をドニー船大工とタルカイは開発した。
竜骨の代わりに平たい船底を実現した航(かわら)は、ドニー杉の素材力あってのものであり
従来の丸型船底よりもドッグ入りを容易にし砂浜などでの緊急修繕、補修の手間を減らした事も特徴である。
しかし、戦争の最中にも拘らずタルカイがドニーより消えてしまう。
戦史に於いて“戦争終結が遅れた大きな要因”とも言われているその事件の顛末は、
やはり故郷を捨て切れないタルカイが風精霊数人を従えて人知れず出航したと書かれている。
その際、港に船の代金にと置かれていたのは氷鯨の皮とドニー杉を使った荘厳な打楽器。
そして、その打楽器がドニーの戦力を更に一つ上の段階へと進ませるのであった。
異世界の海を駆け回る海賊大国ドニー・ドニーの歴史を(仮説)で想像してみました。
現代での七大海賊などへも繋げていきたい所存。
- 遠い昔に行われていたかも知れない交流に思いを馳せるのもいいね。歴史観点は難しそうだが意欲的で続きが楽しみだ。 -- (としあき) 2012-12-03 09:50:12
- 世界同士が関係し合っていて実は…というのは面白い。これで無事もとの世界に戻れたらいう事なしなんだろうけど -- (とっしー) 2012-12-03 22:48:11
- 江戸っ子異世界に来る。結局江戸に帰れたのだろうか -- (名無しさん) 2012-12-05 20:46:25
- クルスベルグとは対照的な船造りが面白いわー。地球人の協力とかも真実味がある -- (としあき) 2012-12-16 20:30:29
- 歴史の影に異世界交流があったというのはいいね。言葉なくとも船作りの中で通じ合うのは素敵だ -- (名無しさん) 2013-12-09 23:44:11
- 言葉が通じなくても交流できたっていいな。タルカイは地球に戻れたんだろうか -- (名無しさん) 2014-07-18 22:55:17
- 異世界の発展に人間が関わっていたというのはロマンに溢れる -- (名無しさん) 2014-08-22 20:19:07
- 世界を越えてやってきた渡来人と一緒に未来を開いた歴史というのは胸が熱くなりますね。理にかなっている説得力もありました -- (名無しさん) 2015-05-24 17:13:36
最終更新:2013年08月23日 21:00