何故この子には私の考えることが見透かされてしまうのだろう。
「先輩!先輩には私がいます」
この子、雷砂はいつも私の一番欲しているものを与えてくれる。
「私を、私だけを見てください!」
―――でも、頼っちゃ駄目なんだ。いつものようにしていては駄目。
「先輩!先輩には私がいます」
この子、雷砂はいつも私の一番欲しているものを与えてくれる。
「私を、私だけを見てください!」
―――でも、頼っちゃ駄目なんだ。いつものようにしていては駄目。
私は、取り返しのつかないことをしてしまったのだから。
そして、決めたんだ。
決意を形にすべく、喉の奥から絞り出す。
「嫌よ、さよなら」
これが私の声か、と自分でも驚いてしまった。
いつもの冗談とは違う、口から鬼が吐き出されたかという声が出た。
全て壊してしまったかもしれない。いや、この決意は壊してでも成そうとするものだ。構わないはずだ。
夜の闇に向かうときの、身体を押し戻される感覚を背中に受けて走った。
彼女の声が聞こえた気がするが、忘れる。
無心で走って、休んで、また走って、気が付いたら辺りは闇に包まれていた。
細く、折れそうな月が夜空に輝いている。
そういえば、昨日の夜は新月だったな。何とはなしに足を止めると、耳に残った声が響く。
『先輩ですね。』
どういう意味だろう。いつもなら、彼女の言葉にわからないことはなかったのに。
いや、いい。彼女のことは今は忘れよう。今は、これだ―――
そして、決めたんだ。
決意を形にすべく、喉の奥から絞り出す。
「嫌よ、さよなら」
これが私の声か、と自分でも驚いてしまった。
いつもの冗談とは違う、口から鬼が吐き出されたかという声が出た。
全て壊してしまったかもしれない。いや、この決意は壊してでも成そうとするものだ。構わないはずだ。
夜の闇に向かうときの、身体を押し戻される感覚を背中に受けて走った。
彼女の声が聞こえた気がするが、忘れる。
無心で走って、休んで、また走って、気が付いたら辺りは闇に包まれていた。
細く、折れそうな月が夜空に輝いている。
そういえば、昨日の夜は新月だったな。何とはなしに足を止めると、耳に残った声が響く。
『先輩ですね。』
どういう意味だろう。いつもなら、彼女の言葉にわからないことはなかったのに。
いや、いい。彼女のことは今は忘れよう。今は、これだ―――
今日もここを開けば飛龍の槍はないだろう。
紺色をした夜空の下でロックにカードキーを通し、暗証番号を入力する。
ゆっくりと広がる金属板の隙間へと月の光が差し込む。
最初は一本の線として。
広がる光の帯は真珠のように白いシルエットで反射する。
ジンガクセイザバー。
月下美人、という言葉が正に当てはまるこの高貴な機体はコーラス王家の名機ジュノーンを参考に作られている。
故に、その瞳は王の如く強い。
「頼むわ、ザバー」
扉が開ききる。
工場の中に足を踏み入れる。
私は一歩ずつ近付いていく。決戦へと。
紺色をした夜空の下でロックにカードキーを通し、暗証番号を入力する。
ゆっくりと広がる金属板の隙間へと月の光が差し込む。
最初は一本の線として。
広がる光の帯は真珠のように白いシルエットで反射する。
ジンガクセイザバー。
月下美人、という言葉が正に当てはまるこの高貴な機体はコーラス王家の名機ジュノーンを参考に作られている。
故に、その瞳は王の如く強い。
「頼むわ、ザバー」
扉が開ききる。
工場の中に足を踏み入れる。
私は一歩ずつ近付いていく。決戦へと。
「システム・オールグリーン。ジンガクセイザバー、起動」
コクピット中に緑色の光が点灯する。上の方から順に工場内の風景が画面に映し出される。
月明りに照らされる白い顔の中で双眸が紅く輝き、戦乙女に命が吹き込まれた。
「さて……行きましょうか」
夜空の下へ踏み出していく戦乙女は、しかし、左手には身の丈ほどもある武骨な巨砲、パリンパイパス波動砲を持ち、右手にはテニスラケットを持つ。
そのアンバランスな外見に元の清楚さはなく、まさに現実の戦乙女といえよう。
バーニアをふかす。
波動砲の重さに左半身がやや遅れるが、直ぐに自動修正される。
白い軌跡が天へ天へと伸びていく。
ジンガクセイザバーが飛び去った後には、白い髪にオレンジ色のニット帽をかぶった長身の女性、鳴砂衝が佇んでいた。
コクピット中に緑色の光が点灯する。上の方から順に工場内の風景が画面に映し出される。
月明りに照らされる白い顔の中で双眸が紅く輝き、戦乙女に命が吹き込まれた。
「さて……行きましょうか」
夜空の下へ踏み出していく戦乙女は、しかし、左手には身の丈ほどもある武骨な巨砲、パリンパイパス波動砲を持ち、右手にはテニスラケットを持つ。
そのアンバランスな外見に元の清楚さはなく、まさに現実の戦乙女といえよう。
バーニアをふかす。
波動砲の重さに左半身がやや遅れるが、直ぐに自動修正される。
白い軌跡が天へ天へと伸びていく。
ジンガクセイザバーが飛び去った後には、白い髪にオレンジ色のニット帽をかぶった長身の女性、鳴砂衝が佇んでいた。
聖マリア女学院から南へ約3km。
コンクリートで塗り固められた大地と黒い海を目前に、発信機の反応が強くなった。
機体を林の中に着地させ、カメラを最大望遠にする。
「黒天衆か……」
港の廃倉庫の周りに数匹の大漁犬と音竹2機。中には飛龍の槍が隠されているのだろう。
この量が見張りに出ているなら中に潜む敵は相当な量だろう。幹部級もいるかもしれない。
コンクリートで塗り固められた大地と黒い海を目前に、発信機の反応が強くなった。
機体を林の中に着地させ、カメラを最大望遠にする。
「黒天衆か……」
港の廃倉庫の周りに数匹の大漁犬と音竹2機。中には飛龍の槍が隠されているのだろう。
この量が見張りに出ているなら中に潜む敵は相当な量だろう。幹部級もいるかもしれない。
装備を確認する。
テニス・ドゥエチルアーは敵のあらゆる射撃攻撃を反射する強力な武装だが、出番は気付かれてからだ。
パリンパイパス波動砲は2発分のE-キャップしか持ってきていない。今使えば中の敵に対応できなくなるだろう。
だが、気付かれて散開されれば元も子もない。かといって狙わずに撃つと飛龍の槍にあたるかもしれない……
第一射で誘き寄せ、次で仕留める。この距離なら第二射までの時間は稼げよう。残った敵は―――
手持ちは重斬刀とテニス・ドゥエチルアー。
ロングレンジで戦い、テニス・ドゥエチルアーの射撃反射能力に頼る他に勝ち目はない。近寄れば、それは死を意味する。
「わたくし、残酷でしてよ……」
波動砲を構える。照準内には外にいる敵の半数以上は入っている。
「これでお別れね……」
トリガーを引く。
バジィッゥゥゥゥッ!!
螺旋状にエネルギーを溢れさせながら白いビームが木々を薙ぎ倒し、草を炭化させ、音竹2機と大漁犬3匹を直撃した。
テニス・ドゥエチルアーは敵のあらゆる射撃攻撃を反射する強力な武装だが、出番は気付かれてからだ。
パリンパイパス波動砲は2発分のE-キャップしか持ってきていない。今使えば中の敵に対応できなくなるだろう。
だが、気付かれて散開されれば元も子もない。かといって狙わずに撃つと飛龍の槍にあたるかもしれない……
第一射で誘き寄せ、次で仕留める。この距離なら第二射までの時間は稼げよう。残った敵は―――
手持ちは重斬刀とテニス・ドゥエチルアー。
ロングレンジで戦い、テニス・ドゥエチルアーの射撃反射能力に頼る他に勝ち目はない。近寄れば、それは死を意味する。
「わたくし、残酷でしてよ……」
波動砲を構える。照準内には外にいる敵の半数以上は入っている。
「これでお別れね……」
トリガーを引く。
バジィッゥゥゥゥッ!!
螺旋状にエネルギーを溢れさせながら白いビームが木々を薙ぎ倒し、草を炭化させ、音竹2機と大漁犬3匹を直撃した。
「次っ!」
空のE-キャップを取り外し、後ろに棄てる。腰に装着されているE-キャップを取り外し、右手に持たせる。
波動砲のエネルギー・バイパスを開く……
「ぐうッ!!」
機体が震え、後ろに反る。
波動砲に刃の付いたホイールが食い込んでいる。その内から音竹が顔を出し、ミサイルをこちらに向ける。
―――刀流装備!
「この―――ッ!!」
右手に持ったE-キャップを音竹の頭に叩きつける。射線がそれてミサイルは左腕とその後ろの大木に火を付けた。
テニス・ドゥエチルアーを右手に掴み、ガットにあたるリフレクト・フィールドを展開すると同時に敵機の頭にめり込むE-キャップを叩く。
E-キャップの爆発はリフレクト・フィールドで反射し、エネルギーの波が音竹に打ちつける。音竹は頭から順に溶けていく。
「ばくはっ……ッ!!」
バーニアを吹かして右へ跳ぶ。
左手を失ったことでバランスを崩し、一瞬地面に叩きつけられる。
ザバーの白い顔に泥が付き、ディスプレイの右上が黒くなる。
カメラのオート・クリーナーが作動し水を吹き出すが、横への加速度がかかってあらぬ方向を濡らす。
空のE-キャップを取り外し、後ろに棄てる。腰に装着されているE-キャップを取り外し、右手に持たせる。
波動砲のエネルギー・バイパスを開く……
「ぐうッ!!」
機体が震え、後ろに反る。
波動砲に刃の付いたホイールが食い込んでいる。その内から音竹が顔を出し、ミサイルをこちらに向ける。
―――刀流装備!
「この―――ッ!!」
右手に持ったE-キャップを音竹の頭に叩きつける。射線がそれてミサイルは左腕とその後ろの大木に火を付けた。
テニス・ドゥエチルアーを右手に掴み、ガットにあたるリフレクト・フィールドを展開すると同時に敵機の頭にめり込むE-キャップを叩く。
E-キャップの爆発はリフレクト・フィールドで反射し、エネルギーの波が音竹に打ちつける。音竹は頭から順に溶けていく。
「ばくはっ……ッ!!」
バーニアを吹かして右へ跳ぶ。
左手を失ったことでバランスを崩し、一瞬地面に叩きつけられる。
ザバーの白い顔に泥が付き、ディスプレイの右上が黒くなる。
カメラのオート・クリーナーが作動し水を吹き出すが、横への加速度がかかってあらぬ方向を濡らす。
体勢を立て直して木陰に着地すると、復帰したディスプレイにはさっきの音竹が爆発し、2機の蜻蛉を巻き込む様が映し出された。
誘爆を防ぐために左肩のブロックが切り離される。
『ドンッ』
落下音とともにバーニアの軌跡を残して更に左へ跳ぶ。
元いた方向からビームのシャワーが降り注ぐ。
「耐えきれるの!?」
テニス・ドゥエチルアーを胴体の前に構え、反射する。
反射したビームとビームがぶつかり、光の花を咲かす。
消しきれなかったビームが足をかすめ、装甲を焦がす。
「近付きさえ、できないなんて、」
ザバーの機体を90゜回転し、シャワーの外へ出て廃倉庫の方へ飛ぶ。
「そんなの、嫌よッ!!」
倉庫側からのミサイルをテニスそのもののフォームで打ち返す。
「自分のフォームだから完璧に使いこなせてよ!」
最初の4発は煙幕にし、次の4発はビームを打つ方へ返す。
ミサイルがビームで貫かれて爆発し、ビームを減衰する煙の幕となる。
「当然!」
機体を加速し、廃倉庫へ突進する。
「―――あ」
突然、機体がバランスを崩す。
「伏兵だ」
胴体とつながっていない右足がディスプレイに表示される。
着地もできず、右手を下にして倒れる。
「神様っ!」
誘爆を防ぐために左肩のブロックが切り離される。
『ドンッ』
落下音とともにバーニアの軌跡を残して更に左へ跳ぶ。
元いた方向からビームのシャワーが降り注ぐ。
「耐えきれるの!?」
テニス・ドゥエチルアーを胴体の前に構え、反射する。
反射したビームとビームがぶつかり、光の花を咲かす。
消しきれなかったビームが足をかすめ、装甲を焦がす。
「近付きさえ、できないなんて、」
ザバーの機体を90゜回転し、シャワーの外へ出て廃倉庫の方へ飛ぶ。
「そんなの、嫌よッ!!」
倉庫側からのミサイルをテニスそのもののフォームで打ち返す。
「自分のフォームだから完璧に使いこなせてよ!」
最初の4発は煙幕にし、次の4発はビームを打つ方へ返す。
ミサイルがビームで貫かれて爆発し、ビームを減衰する煙の幕となる。
「当然!」
機体を加速し、廃倉庫へ突進する。
「―――あ」
突然、機体がバランスを崩す。
「伏兵だ」
胴体とつながっていない右足がディスプレイに表示される。
着地もできず、右手を下にして倒れる。
「神様っ!」