0373:死神なんかじゃない ◆ kOZX7S8gY.
「――隊長が行方不明?」
尸魂界 (ソウル・ソサエティ)と呼ばれる世界があった。
現世で一生を終えた者、そして死神と呼ばれる存在が住まう、いわゆる霊界の一種。
尸魂界は貴族や死神達が住む瀞霊廷と、その周囲にある死者の魂が住む流魂街に分かれており、暮らし向きや待遇などが厳然と区別されている。
瀞霊廷には、尸魂界の護衛及び現世における魂魄の保護、虚の退治等の任務をこなす実動部隊である護廷十三隊が置かれ、
その中でも
更木剣八が統括する十一番隊は、荒くれ者ばかりで構成された戦闘部隊として名を通している。
「うん。剣ちゃんがどこ探してもいないのー」
そんな十一番隊の副隊長、草鹿やちるはまだ幼児だ。
見た目は十歳かそこらがいいところ。副隊長を勤められるほどの実力は持っているのだが、如何せん子供なので威厳は感じられない。
やや大きめの死神装束を持て余しつつ言葉を振る相手は、同じく死神装束を身につけた坊主頭の男。
十一番隊第三席・副官補佐の位に就く死神、名を斑目一角という。
「またどっか一人で特訓でもしてんじゃないですか? あの人ときたまフラフラっといなくなることあるし」
「えー! でも絶対おかしーよー! だってもう丸一日姿を見せてないんだよー!? きっとどこかで迷子になってるんだよ!」
「……誰かさんじゃあるまいしそんなわけねー……」
ボソッと呟いた一角の言葉を聞いてか聞かずか、やちるは頬をぷくっと膨らませてそっぽを向いてしまった。
尸魂界の空は、本日も晴天。この空を見ていると、ここが死後の世界であることなど嘘のようにさえ思えてしまう。
「あっ」
っとやちるが口を開いた瞬間。
空を翔る白い影を視覚に捕らえた。
「あん……? ありゃ六番隊の朽木隊長じゃねーか。なにやってんだあんなところで」
屋根から屋根へ、瀞霊廷内を高所で移動しているのは、白の死神装束を身に纏った男。
剣八と同じく『隊長』の位に就く、六番隊の朽木白哉だった。
「あっ、行っちまった」
視界に入ったかと思ったのも束の間、白哉は忙しない速度で屋根の上を駆け抜けていく。
なにやら慌てているようにも見えたが、十一番隊には特に報告は来ていない。少なくとも事件ではないだろう。
「……びゃっくんも誰か捜してるのかな?」
遠ざかっていく白哉の背中を見つめながら、やちるが唐突にそんなことを言った。
「はっ? 捜してるって、誰を?」
「う~ん……わかんない」
根拠も何もない。ただそんな気がして出た言葉だった。
かくいう自分も、気がつけば剣八を捜している。
どうせその内ひょっこり顔を出すだろうと思いつつも、何故か心はざわついていた。
(剣ちゃん……?)
この漠然とした不安はなんなのか。答えは出てこない。
それも仕方がないこと。いかにやちるが死神とはいえ、全ての死を知り得るわけではないのだ。
別世界に『DEATH NOTE』を持つ死神が存在するように――死神もまた、一種ではない。
更木剣八は、どこに行ってしまったのか。
(なんなのだ……この得体の知れぬ予感は)
屋根の上を疾走しながら、朽木白哉は正体不明の不安と戦っていた。
昨日より今日まで、妹である
朽木ルキアの存在が感じられない。
たかが一日、姿を確認できなかっただけ。
ひょっとしたら現世に赴いているのかもしれないし、流魂街の方に出かけているという可能性も考えられる。
(――――違う)
見つからないのではなく、『感じられない』。
まるで世界から『朽木ルキア』という存在が抜け落ちてしまったように、影も形も、音も声も見当たらない。
(どこにいる――――ルキア)
衝動が、白哉を突き動かす。
既にそこにはいない、『存在』を追い求めて。
決して見つからない捜し人を捜して。
『三人の王』の、嘲笑う声も聞こえずに――
――誰もが皆、彷徨い人だ。
――死神でさえ、知らない死がある。
――世界がそれに気づいても、それはまた別の世界のお話。
――この事態を打破するには、その世界に住まう当事者たちが何とかする他にはないのだ。
――だからこそ――希望は大切なんだ――
(名前…………)
(皆の、名、が…………)
それを耳にした者は、どれだけの悲しみを得るだろう。
ただ名を告げるだけの言葉に、意味はない。
当事者たちだけが知っている、その名前の意味。
――死亡者の通告。
あまりにも無情で、
あまりにも非情で、
あまりにも悲惨な、
現実。
「うっ……」
搾り出すような唸りを上げて目を開けると、そこは静かな住宅街だった。
フレイザードと戦った薄暗い森ではない。朝日も昇っている。あれからどれだけの時間が経過したのか――
「目覚められたか」
「…………」
ルキアが眠りから覚めると、真っ先に髭面の男が出迎えてくれた。
太い眉毛に太い首。がっしりとした肉体。目覚めに良いと言える姿ではない。
(あれは……なんと読むのだ? 大……往……生……ダイオウジョウ?)
ぼんやりとする頭を振って、男の額に注目する。
漢字が三文字、並んでいた。
『大往生』
刺青か何かだろうか。
寝起きでまだ頭が覚醒しきっていない。
だから初めにどうでもいいことを考えてしまった。
時が経つにつれ、脳は本来の活動周期に戻る。
そして、再度思考を始める。
「……………」
――――この男は誰だ?
朽木ルキアが刃を抜いたのは、初めは『動揺』が理由だった。
目覚めていきなり現れた、濃い髭面の男。もちろん初見。
見ず知らずの人間が眼前にいれば、動揺するのも当然といえた。
「なっ!? 貴様何者だッ!? 私が寝ている間に何をしようとしたのだ、この虚けが!!」
寝起きだというのに、ルキアは顔を真っ赤にした状態で刀を構える。
「むぅ。目覚めたばかりでまだ混乱しているのか……まずは刃を納めよルキア殿。拙者に敵意はない」
「黙れこの狼藉者が! 寝込みを襲うとしておいて何を馬鹿な……ッ!?」
第二に、刃をすぐ収めなかった理由として、男の傍に転がっていた『承太郎』が原因だと考えられる。
半身を火傷で覆い、ボロボロな状態で横たわっているその姿。ルキアの怒りは急激にボルテージを高めていく。
まさか、死――――そこまで考えつくのに数秒、敵意は男に放たれた。
「破道の四、白雷!」
ルキアの指先から放出される白い雷の閃光。男を完璧に敵と見なした攻撃が炸裂した。
鬼道の中でもレベルの低い技であったのが幸いしたのか、男はこれをなんと回避する。
自分の身体をスレスレで通り過ぎていった雷を目に、男は一言。
「ぬぅ……あれが世に聞く『鬼道』! まさか実在していたとは……」
【鬼道】
死神が用いる霊術の一つ。決まった言霊を詠唱した後、術名を叫ぶことにより術が発動する。
相手を直接攻撃する「破道」と、防御・束縛・伝達等を行う「縛道」があり、
それぞれに一番から九十番台まで様々な効果を持つ術が多数存在する。
数字が大きい術ほど高度で強力であり、高位縛道の中には、ただ相手の動きを封じるだけでなく、
その状態から更に攻撃ができる「封殺型」に移行できるものがある。
また、高度な術者になると術名のみ(詠唱破棄)での即時攻撃も可能になるが、
数字が大きい術ほど威力の保持が難しく、かなりの鍛錬が必要。
民明書房刊『尸魂界観光ガイド~基礎知識編~』
などと冷静に分析している暇はない。
男はなんとかルキアの誤解を解こうと会話を試みるが、
「舞え、『袖白雪』!」
ルキアは自身の斬魄刀、『袖白雪』を解放。その切っ先を男に向けていた。
おそらく、フレイザードとの戦いで高揚した戦意がまだ治まりきっていないのだろう。だから冷静さを失いかけている。
「ええい、落ち着かれよ!」
これは言葉だけでは弁解不可能と判断し、男はルキアに対抗すべく刀を取り出す。
その刀は、ルキアの斬魄刀と同種であって同種ではないもの。
それを知らぬ者が見たら単なる刀にしか見えないが、死神であるルキアには分かった。
「斬魄刀……」
男の握る刀は、紛れもない『斬魄刀』。
男自身は死神ではないため始解の状態には至らないが、なんとなく、感覚で分かってしまうのだ。
「まさか……」
名を聞くことはできない。それは、所有者である彼にしかできないことだから。
ガラが袖白雪を知ることが出来なかったように、それもまた、持ち手である死神にしか知りえることではない。
その刀はもう、二度と本来の姿を取り戻すことはない。
だって――彼は――死んでしまったから。
「一護の…………斬、月」
確証はなかった。
ひょっとしたらこの世界に住まう別の死神――更木剣八や
藍染惣右介のものかもしれない。
だが、予感がする。男の持つ斬魄刀が、一護の斬月であるという予感が。
「…………」
男の持つ斬魄刀を見た瞬間、ルキアはそこから一歩も動けなくなってしまった。
そして、タイミングよく一人の男が覚醒する。
「…………これはいったいどういった状況だ?」
軋む身体を無理やり起こし、ルキアではなく男に説明を求める学ランの長身――
空条承太郎が目を覚ました。
これで誤解は解けるだろう。
だがルキアにはそんなことより、
男の持つ斬月が気になって、
(……一護)
死んでしまった友人を思い出してしまったことが、
痛かった。
朽木ルキアと空条承太郎。
二人が気絶している間に、放送が流れたらしい。
放送を聞き逃した承太郎とルキアのために、彼らを背負って東京に向かっていた男――雷電が死亡者を告げる。
「残り……41人か。翼やブチャラティ、カズマは無事らしいな。主催者は他になにか言っていたか?」
「今日の午前中、強い降雨があると仄めかしておった」
「雨か。奴らが言うなら、本当に降るんだろうな……」
会話をするのは雷電と承太郎、二人のみ。
その間ルキアは口を開けず、ただ一点を見つめていた。
墓前と言っても墓石があるわけではない。不自然に土の盛り上がった埋葬跡が残るだけ。
だが、この下には紛れもなくルキアの仲間である一護が眠っている。埋葬した雷電本人が言うのだから間違いない。
「拙者はその一護殿とは直接の面識はなかったが……塾長の話では、仲間思いの立派な男だったそうだ。
最期も、きっとその本懐遂げたのであろう」
「……………………そうか」
長い沈黙の後、ルキアはゆっくりと振り返り、墓前に背を向けた。
そして、懐から一枚のカードを取り出す。
「『青眼の白竜』……桑原が教えてくれた情報が本当なら、もうこのカードは使えるはずだな」
「むっ……確かにそうでござるが、いったいなにをなされるつもりだ?」
近くに敵がいるわけでもない。雷電と承太郎はルキアが『青眼の白竜』を取り出した理由が分からず、首を傾げる。
「この竜に乗っていけば、東北に舞い戻ることも容易いだろう。あの助平が早まらぬ内に、私が行ってやらねば……」
「ルキア……まさかおまえ……」
その言葉だけで、二人はルキアの考えを察知した。
承太郎がルキアの誤解を解いた後、ルキアの希望で進路を一部変更、一護の死体があったという栃木県まで移動することになった。
その間雷電は、二人が気絶している間に起こったことを説明。
ブチャラティと翼が
ヤムチャを追跡していったこと。桑原と
ボンチューがフレイザードにとどめを刺しにいったこと。
みんな勝手な行動ばかりだった。
あれだけの規模を誇っていた大団体は、フレイザードとアミバが齎した大災害によって無残に瓦解してしまった。
翼あたりなら、「チームワークがなってない」と怒り出すかもしれない。まあ、当の本人も勢いで暴走しているのだが。
そしてこの気絶中の出来事の中でも、ルキアが特別許せなかったのはボンチューの勝手な行動。
「フレイザードは……私たちの共通の敵なのだ。世直しマンに
バッファローマン、ルフィ殿にイヴ、海馬や銀髪天然パーマの男……
それを、あやつだけに任せておくわけにはいかない」
「ルキア、おまえの気持ちは分かるが、それはあまりいい判断とは言えないぜ。
いくらその竜の力が強大だとはいっても、今のおまえじゃ……」
承太郎もルキアも、先の戦闘で重傷の身。
この期に及んで更に戦闘を迎えるなど、愚行もいいところだった。
「分かっておる……分かっておるのだ!」
ルキアがはち切れんばかりの声で叫んだ。
「自分の身体のことくらい……自分で分かる。今の私では……満足には戦えない」
身体の痛みは未だに止まない。
雷電に鬼道を放った時にも、信じられないほどの疲労を感じた。
体力には自信があったのだが……一日目の激戦で、大分消耗していたらしい。
「それに私は…………」
本当なら、こんな言葉も言いたくはない。
「私は、死神なのだ」
――バッファローマンは、気にするなと言ってくれた。
――しかしそれは、覆しようのない事実ではないか。
「銀髪天然パーマの男に始まり、
海馬瀬人、バッファローマン、世直しマン、
そしていつの間にかスヴェン殿とイヴまで死んでしまった……皆、私に関わったから……」
「自暴自棄になるなルキア。なにもおまえに責任があるわけじゃあない」
「そうかもしれない。だが」
ルキアは後方――一護の眠る大地を振り返り、
涙した。
「私はもう……守られてばかりは嫌なのだ」
尸魂界に幽閉された時、助けに来てくれたのは一護と仲間達だった。
ルキアはただ助けを待つばかり……いや、待ってさえいなかった。
自ら処刑されることを受け入れ、助けを望まなかった。
だが、彼らは来た。
身をボロボロにしながら、大切なものを失いながら、死ぬ思いをしてまで。
――なんで私の周りは……こうも馬鹿ばかりなのだ。
そんな仲間がいてくれるのは嬉しく思う。
しかし、そんな仲間が死んでいくのはもう、耐えられない。
「私は、ボンチューも桑原も死なせたくない……私を気遣って戦っているというのであれば、なおさら私が行かないでどうする」
ルキアの決意は固かった。
もう誰にも死んでほしくはない。
ボンチューにも、桑原にも、承太郎にも、雷電にも、翼にも、ルフィにも。
――彼らが死ぬくらいなら――私は――
「ならぬ!」
カードを掲げ、竜を召喚しようとしたルキアを止めたのは、知り合ったばかりの雷電だった。
「ボンチュー殿は、なによりもルキア殿の無事を祈った! だからこそ拙者にルキア殿の身を預け、一人戦場へ赴いたのだ!
そなたはそんなボンチュー殿の意志を踏みにじるというのか!?」
「違う……その心遣いが間違っているんだ……そうやってみんな優しさを見せるから、みんな……」
「ボンチュー殿はカズマ殿と共に、必ず帰ってくる! 拙者はそれまで、身命に懸けてルキア殿を守る約束をしたのだ!」
まただ。また、『守る』。
「もう……その言葉は聞き飽きた……」
ルキアは、今まで多くの人に守られて生きてきた。
だが、ルキアを守ろうとした人はみんな――ことごとく死んでしまったではないか。
このままではきっと――ボンチューや雷電だって――
「私は行く。行かせてくれ、雷電」
「いかん!」
「どうしても……どうしても行かせてはくれぬのか!?」
「男と男の信義でござる! 違えるわけにはいかぬ!」
ルキアと雷電。二人の意志はあまりにも強く、だからこそ激しくぶつかり合う。
こうなってしまっては承太郎にも止めるすべはなく、あとは雷電に託して、静観するのみだ。
(やれやれ……)
ルキアの頑なな精神は凄いと思うが、それでも意見は雷電と一緒だった。
願わくば、彼女には妥協してほしい。
承太郎自身もボンチューと桑原が気にならないわけではなかったが、ルキア一人を行かせてどうこうなる話ではない。
焼け焦げた半身を、不甲斐なく思う。
戦えぬ者は、ただ守られるしかないのだ。
「なら……私にも考えがある」
雷電の頑固なまでの制止に嫌気がさしたのか、ルキアは強硬手段を取ることにした。
斬魄刀を抜き、雷電に構える。
「行かせてくれぬというのなら……この場で二人とも氷漬けにし、足を止めさせてもらう」
「……正気でござるか?」
「もちろんだ……」
そこまで――――
強固すぎるルキアの決意に、雷電は心中で敬服した。
ルキアの仲間を思う意志は、男塾魂に通じるところがある。
だからこそ尊重してやりたい。ルキアの思いも。ボンチューの思いも。
「………………あい分かった。拙者、完全に負け申した」
一歩も引かぬルキアに、雷電はついに降伏を宣言した。
「ルキア殿の決意がそこまで固いというのであれば、最早なにも言うまい。拙者、心してその背中を見送ろうぞ!」
「雷電殿……すまぬ」
「しかしその前に……これはルキア殿が持っているべきであろう。餞別として受け取ってくだされ」
戦地へ赴こうとするルキアに雷電が託したのは、もう一本の斬魄刀・斬月。
持ち主でないルキアの手には余るものだが、それでも一護が傍にいるような気がして心強い。
「ありがとう…………雷電殿。この恩はいつか必ず……」
刀を収め、斬月を受け取るルキア。
恵まれた仲間に最高の感謝を送り、そして、自分は仲間のために奮闘しよう。
今ここで誓うんだ。もう、仲間は失わないと。
「ルキア殿……」
雷電はそんなルキアを見て、居た堪れない気持ちになった。
この少女の決意は、あまりにも強い。
強すぎるが故に、危険なのだ。
(いつか……彼女自身の気負いが身を滅ぼすことになりかねん)
雷電は男として、ボンチューから託されたルキアを守らなければならない。
たとえ恨みを買おうとも。
その結果ボンチューがどうなろうとも。
これは、ボンチューが望んだことなのだ。
「………………すまぬ、ルキア殿」
「え」
シュタッ、と肉を打つ音がした。
ありとあらゆる拳法に精通し、三面拳一の業師と謳われた雷電の神速の手刀が、ルキアの首元に命中したのだ。
気を失い倒れゆくルキア。雷電は、その華奢な身体を静かに受け止めた。
「……いいのか? 雷電」
「……男と男の信義、やはり違えるわけにはいかぬ」
無意識に、ルキアの身体を見回す。
ボロボロだった。滑らかだった皮膚は埃に塗れ、戦闘で作った傷は痛々しくその跡を残している。
やはりルキアは行かせられない。こんな状態のルキアを行かせては、ボンチューとの信頼を裏切ることになる。
「安心めされい、ボンチュー殿。ルキア殿は、この男塾一号生、雷電が身命に懸けて守り通す。だから」
早くも曇ってきた、北の空に目をやる。
あの二人は、既に戦闘を始めているのだろうか。
そこは雷電の知るところではない。
だからこそ、祈ることしか出来ない。
「――おふた方も、必ず帰られよ」
言葉が届くことはない。
吹き荒ぶ風は、無常しか運ばない。
――おまえはいつだって気張りすぎなんだよ、ルキア。
(一護…………私は)
――おまえは確かに死神だ。そりゃ分かるさ。
(……そうだ。おまえが死んだのも……全ては私が……)
――あー、いや、違う。そういうことじゃないんだよ。
(……? どういうことだ)
――おまえは死神だけど、そういう意味の死神じゃなくてだな、なんつーか、えーと……
(…………言葉を整理してから出直してこい、莫迦者が)
――な!? そんな言い草はねえだろうが! 要するにだな、俺の言いたいことは……
(分かっているさ)
――え?
(一護やボンチュー……承太郎や雷電殿が言いたいことは、全て分かっている)
――だったら……
(だが、やっぱり私は守られるのが嫌いだ)
四人の死者が眠る墓をバックに、ルキアと一護はそんな会話を交わした。
死んでまで語り掛けに来てくれた一護が言うことは、他の皆と差ほど変わりないものだったが。
――励ましのつもりか、莫迦者め。
思い出したら、余計に悲しくなってしまうではないか。
時が刻まれる。
死神は、本当に死を招く生き物なのだろうか。
答えがどうであれ、ルキアが死神であることには変わりはない。
ただ、
守られるだけのヒロインにはなりたくない。
どうせなら、誰かを守るヒーローになりたい。
あの二人がそうだったように。
ルキアもまた、ボンチューと同じ願望を胸に抱いていた。
【栃木県/2日目・朝】
【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:左腕骨折、肩に貫通傷、身各所に打撲、左半身に重度の火傷(以上応急処置済み)
[装備]:シャハルの鏡@ダイの大冒険
[道具]:荷物一式(食料二食分、水少量消費)、双子座の黄金聖衣@聖闘士星矢、らっきょ(二つ消費)@とっても!ラッキーマン
[思考]:1.東京タワーに向かい、仲間と合流。
2.悟空、仲間にできるような人物(できればクールな奴がいい)、ダイを捜す。
3.主催者を倒す。
【雷電@魁!!男塾】
[状態]:健康
[装備]:木刀(洞爺湖と刻んである)@銀魂
[道具]:荷物一式(水と食料を一日分消費)
[思考]:1.ルキアと承太郎を守りつつ、東京タワーに移動。
2.何があっても仲間を守る。翼のことはブチャラティ殿に任せる。
3.ルキアが目覚めたら『青眼の白龍』を返し、使い方を説明する。
【朽木ルキア@BLEACH】
[状態]:気絶、重傷、重度の疲労、右腕に軽度の火傷
[装備]:斬魄刀(袖白雪)@BLEACH、コルトパイソン357マグナム(残弾21発)@CITY HUNTER
[道具]:荷物一式、バッファローマンの荷物一式、遊戯王カード(青眼の白龍・使用可能)@遊戯王
斬魄刀@BLEACH(一護の衣服の一部+幽助の頭髪が結び付けられている)
[思考]:1.ボンチューを助けに行きたい。
2.ゲームから脱出。
3.第五放送が終わったら東京タワーに行く。
4.いつか必ず、フレイザードとピッコロを倒す。
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最終更新:2024年07月12日 13:12