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自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

4 襲来

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匿名ユーザー

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3月24日。
日本列島の時空転移よりもうすぐ2週間が経過しようとしていた。
経済統制と燃料・電力の制限は当初こそ混乱を見せたものの、少しずつ落ち着きを見せ、人々は前よりも不便ながら新しい体制の下での生活に適応し始めているように見えた。
これは、危機が目の前にあるにも拘らず、起こったことの規模の途方も無い大きさに未だ微妙な現実感の無さに包まれているのと、結局は国の制度や対応への信頼や期待が国民の精神の根本に刻み込まれているからと分析する専門家も居た。
ただし、経済統制が始まった直後には閣僚による官僚へのちぐはぐな指示、例えば燃料供給の制限に置いて流通を支える運送業に供給がなされず、別の「必要と思われる」所に一極集中したり、
災害時用として温存している備蓄が「今が災害の時期」と指示ミスによって誤って放出されたりといった混乱とその修正が度々あり、現総理は指導力の無さを指摘されて随分と株を落とした。

中でも対応の不備や遅々として進まない事を責められたのは、現地大陸の調査である。
本来ならさっさと航空機を飛ばして情報を収集するなり、船舶を派遣して現地の国家組織なりと接触を図るべきなのだろうが、
「どういう相手なのかもわからない、我々と同種の「人間」なのかも不明瞭な相手を刺激しないように接触しなければいけない」という慎重論が与野党から挙がり、過剰に慎重になり過ぎていたため、現地国家との接触に対して指示どころか方針すら全く決まらなかったのだ。

しかし、海上保安庁や自衛隊の現場レベルでは近海にて現地国家の船舶や飛行船とのニアミスは増えており、未だお互いに距離をとりつつ監視するという状況なものの直接的な接触は時間の問題と見られていた。
さらに、正体不明の巨大な鳥の様な飛行物体などの新たな報告も上がっている。
各省庁はそれぞれ独自に現地国家との接触が起こった場合の対応マニュアルの検討、特に外務省は全くの異文化かつ新規に国交を
樹立する際の相手との予想される事項について、そして具体的な外交交渉に入った際の段階までの事前準備を開始しており、あとは政府の意思決定、ゴーサインを半分苛立ちながら待ち続けていた。

こんな中、現地国家の何者かが日本に不法上陸してくる可能性が当然考えられ、沿岸、特に現地大陸に面する日本海方面の
監視強化の必要性が叫ばれるも、まだ安定とは言いがたい国内の治安のために警察でできる事は限りがあり、
現行法では自衛隊も出動の許可(外敵に侵略された訳でもなく、治安出動が必要なほど警察は国内で手を余しては居ない)が降りず、海保による監視だけが頼りとなっていた。
憲法を停止し、非常事態宣言を出す、そんな極端な意見もあった。
この未曾有の事態はほとんど戦争状態に突入したと変わりが無い。
平時の事しか想定していない憲法は邪魔な枷になるだけだから、改めて非常事態宣言を出してもっと有事に備え、対応できる体制を構築すべきだと。

だが、それは与野党両方から猛烈な反対があった。
平和憲法の停止は民主主義の敗北である、それ以上に、非常事態を楯にまた戦前の軍国主義に突入したり、独裁政治を行おうとするものが現われないとも限らない……
結局の所国の舵取りを担う政治家達は、国の危機に立ち向かう事よりも目先の議論や主義、そして己が政治に置いて主導権を握る事、与党を批判し追い落として政権首班の座に就こうとする事ばかりしか考えなかったのである。
それは、時空転移が起こる前の認識や価値観、国が滅びても自分たちだけは助かるのではないか、あるいは自分が年老いた死後のことになるのではないか、とでも言うような奇妙な思い込みが継続しているようにも、国民の目には見えた。
既にこの時点で国民世論、特にネット上での議論は政治家への不審、そして状況を解決してくれる「何者か」の登場を期待する方向に傾きつつあった。

3月25日早朝
対馬沖にて、海上保安庁の巡視船「なつい」は朝鮮半島方面より南下し領海に進入してくる複数の船を発見、急行する。
レーダー上に映し出される船団の数を見て、巡視船は福島海上保安部に緊急の通信を発した。

「こちら巡視船「なつい」! 対馬沖に大船団…数十隻の船舶を発見、船はいずれも帆船! マスト2本あるいは3本! 武装の有無は不明!」

巡視船は船団に接近し、スピーカーで警告を試みた。
管区の応援が到着するまで数十分、「なつい」一隻では帆船とはいえ、数十隻もの船舶に対応しきれないが、このまま何もしない訳にもいかない。

「こちらは日本国海上保安庁所属の巡視船、「なつい」。 貴船団はわが国領海への不法侵入を行っている。 ただちに停船し、こちらの指示に従いなさい」

日本語、韓国語、中国語、ロシア語等でも何度か呼びかけるが、船団が止まる気配は無い。
言語が通じて居ないのか、それとも通じても無視しているのかは判らなかった。
巡視船はさらに船団に接近しようとした。 危険は承知だった。

「繰り返す。 停船し、こちらの指示に従いなさい。 警告に従わない場合、威嚇射撃を実行する」

船団の帆船の幾つかに、甲板に人が集まり始めた。 遠目にも、それらが甲冑の様なものを身に付けているのがわかる。
それが「武装」であるのか、この世界の装束であるのかはよく判らない。
そして、船団の中から1席が巡視船に向かって接近してきた。 甲板上の人間たちの顔がはっきりわかるくらいに。
海保隊員の誰かが、あるものを発見して報告した。

「船長! 船の甲板で何かをこちらに向けています!」

「……危険物の可能性、警戒しろ!」

先端に卵型の球体がついた棒状の何かを、こちらに向けている人間が向こうの船の甲板上に居る。
巡視船の船長はその形状から手持ち式のロケット砲を連想し、指示を出した。
次の瞬間、帆船の甲板上で青い光が走り、それが収まると向けられていた棒状の何かの先端に拳大の火の玉が灯った。
そして、火の玉はロケット花火のように巡視船に向けて飛翔し、船体に命中した瞬間、爆発を起こした。
衝撃波で船橋、操舵室の窓ガラスが割れる。

「攻撃を受けた! 損害報告!」

「重傷者、2名! 軽傷者多数!」

「威嚇射撃を中止! 正当防衛射撃を開始する! 撃て!」

「ってー!」

カンカンカン、という戦闘開始の警報が鳴らされ、巡視船「なつい」の20ミリ多銃身機関砲が射撃を開始する。
だが同時に2発、3発、4発と次々と霰のように相手の甲板上から青い光と共に火の玉が投射される。
巡視船は攻撃を受けながら増速して一旦距離を置こうとしたが、船団のほかの船も接近して同様に火の玉を投射してきたため、激しさを増した攻撃の幾つかが操舵室に直撃した。
20ミリ機関砲もお返しだと言わんばかりに夕立のごとく激しい機銃掃射を続けたが、巡視船はやがて攻撃を受けるうちに炎上した。
そして、最初に巡視船に攻撃を加えた相手の帆船も船体を蜂の巣にされ、マストが倒れて航行不能になった。

短い交戦の後に障害を排除した船団はその後二つに分かれ、それぞれ福岡・北九州方面に向かっていった。
また、巡視船「なつい」の通報を受けて急行した他の巡視船が玄界灘に福岡方面に向かった船団を補足したが、すぐに「なつい」と同様の運命を遂げた。

そしてこの日の午前、福岡市と北九州市および下関市はドーラ帝国の上陸を受け、市内にて警察と交戦を開始した。
消防と警察は市民を避難させつつ上陸した武装集団の阻止に奮闘したが、刀剣や槍、そして爆発物らしきものを装備したこの集団に抗しきれず、夥しい死傷者と警官と一般人に出した末、正午に機動隊や銃器対策部隊の投入を決定。
その頃、陸上自衛隊福岡駐屯地(春日市)では、命令があり次第いつでも出動できるように準備が整えられつつあった。

「ごらんください! 福岡市内では上陸した謎の武装集団と、警察が交戦中です。 あっ火が上がっています! 建物が燃えています! なんでしょう、ロケット弾のようなものが飛び交い、多数の死傷者がでている模様……えっこっちに」

報道ヘリのカメラが捉え、リポーターが気づいた一瞬後には地上の市街地から幾つもの火の玉がヘリの方向に飛んできて、そして悲鳴と共に中継画面が砂嵐となった。
そして、隊舎の居室内でテレビに注目していた自衛官たちが「あーっ!」「ちくしょう!」という叫びや呻きを上げる。
一般人や報道ヘリとそのスタッフが殺されているのを見るだけで、未だ行動に移れない口惜しさが滲み出ている。

その時、居室の入り口に第4偵察隊の前原1曹が現われ、部下たちに声を掛けた。

「おい、すぐ武器庫行って装備と、あと弾薬受領して来い! 師団司令部から「情報収集」にでるよう命令が来た!」

若い部下たちはすぐさまそれに反応する。

「出動ですか!?」

「いや、まだ防衛出動の要請は来て居ない。 だが、俺たちは先行して情報収集のために福岡市内に向かう。
RCVはまだ出せない。 バイクと1/2tトラックで出る。 装備持ったら車両待機所に集合、5分後には出発だ! 走れ!」

その声で、部下たちは各々の装具を引っつかむと居室を駆け出していく。
情報収集とは名目、実際には警察と合流してのその援護、共同戦線や、一般市民を「緊急避難」によって守るために武器を使用する事が起こるだろう、と前原1曹は感じていた。
そして、彼自身も命令を受けたまま考えずに飛び出してきてしまったが、この国内での情報収集活動の命令に「武器」の携帯が許可された根拠は何故だろう? そもそも合法なのだろうか?と首をかしげた。
まさか、師団司令部の独断だろうか。 問題になっても現場の偵察隊員の独走という形で片付けられるんじゃないだろうな、と少し嫌な思いに囚われた。

それとほぼ同時刻。 対馬沖にも先の船団と同様の帆船からなる新たな十数隻の集団が現われ、上陸。
陸上自衛隊対馬警備隊は正当防衛に基づき交戦を開始していた。

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