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自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

6 交戦2

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匿名ユーザー

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北九州市 午後12時32分頃

この時、陸上自衛隊の小倉駐屯地はドーラ軍の攻撃を受けていた。
港に部隊を陸揚げしたドーラ軍は港湾施設と市街地への進攻にあたり、歩兵中心の部隊と騎兵中心の部隊を編成した。
騎兵は地球に生息する種とよく似た馬に騎乗し、煌びやかな甲冑を身に付けている。
その意匠は地球の伝説上の動物であるドラゴンをかたどったようなデザインで、滑らかで艶やかな、金属とは異なる材質でできているような質感をしているのが特徴だった。
騎兵集団のは7~8種類ぐらいのそれぞれ異なる家紋を甲冑のどこかに貼り付けており、それによるグループ分けがなされている。
一つのグループの構成人数はマチマチで、少ない所は10人以下、多いところでは30人は居た。
それらからなる騎兵は200名ほど。 そして、騎兵の一人一人は西洋的なランスでもなく、和槍でもなく、先端に金属球のついた、あの炎や雷を放つ棒状の武器を握っていた。
騎兵集団は北九州の市内を真っ直ぐ南に駆け、わき目も振らずに小倉駐屯地を目指した。
そして、正門に火の玉を放って警衛の自衛官を殺傷すると、突破して敷地内に進入、以後は下馬して戦闘を開始した。
すぐさま第40普通科連隊の隊員たちは小銃を取り、弾薬を受け取って応戦を開始する。
火球や放電と銃弾が交差し、双方が倒れ激戦が繰り広げられた。

2号隊舎付近で部下と共に防御戦闘の指揮を取る内村3尉は、軽装甲機動車(LAV)の車体を掩体の代わりにしながら89式小銃を撃ち、撃ち終わると雨のように飛んでくる火の玉から隠れるために頭を引っ込めて舌打ちする。
3尉の所属する第4中隊の中隊管理棟からは炎が吹き上がり、中隊長ほか自分以外の尉官の半分は行方どころか生死が不明だ。
駐屯地を襲撃した武装勢力の着ている甲冑は、小銃弾を受けても1発程度では倒れない。
防弾プレートでも入っているのか、という抗甚性をもち、倒すにはさらに数発を撃ち込まなければならない。
だが、流石に腕や脚を狙ったものは貫通した。
内村3尉は防衛大卒ではなく、叩き上げの尉官である。 熟練の射撃能力で敵の何人かの太腿を撃ちぬいて、戦闘不能にした。
だが、敵もただ撃たれているだけではない。 拳大の火の玉が頭を下げ損ねた部下を襲い、殺傷する。
それを、別の部下が同僚の援護射撃を受けながら身を低く屈め、負傷者の襟を掴んで引き摺り救出、後退した。

「ちゃんと頭下げろ! 敵の爆発物は、手榴弾ぐらいの威力の奴とロケットランチャーぐらいの威力はある奴と、二種類ある!
大きいほうは当たったら1発でお陀仏だぞ!」

そう叫ぶうちに、「大きい方」の火の玉が近くの軽装甲機動車に直撃、一瞬車体が跳ね上がった轟音と共にLAVは炎に包まれて着地、サスペンションが断末魔の呻き声の様な音を立てて車体の残骸を揺らした。
その威力に内村3尉は身震いし、もう一度舌打ちした。
連隊の本部が置かれている隊舎の方も、炎と黒煙が上がっている。 あちらもかなり苦戦している様だ。
そこへ、その連隊本部への伝令に出していた部下2名が戻ってきた。

「小隊長!」

「おう、連隊本部はまだ生きてるか?」

「はい……ですが、富野分屯地が……弾薬支処が、攻撃を受けている模様です!」

「くそ! 頼みの綱が……ここにある弾薬で応戦するしかないぞ!? 仕方ない、軽MATでも無反動でも武器庫にある火器はなんでも使わせろ! 許可とか言ってる場合じゃない!」

内村3尉の顔に苦いものが混じる。富野分屯地には弾薬支処と通信隊と警務隊しか居ない。
弾薬はあっても装備と戦闘要員が足らないのは明白で、他所からの応援がなければすぐにでも陥落、制圧されるだろう。
そして、弾薬支処からの補給がないとこの駐屯地も戦う事が出来ない。
彼にはこの時知るよしも無いが、分屯地を襲ったのはドーラ軍が市街地に進攻するに当たって編成した歩兵中心部隊の、さらに分かれた一部だった。

「弾薬支所が身動き取れないと、福岡の連中も銃が撃てんぞ……!? 反撃に出てそのまま富野分屯地の救援と奪回に向かうか、どうするか、もう1回連隊本部に言って聞いて来い!」

「はい!」

内村3尉はもう一度部下を連隊本部に走らせると、頭上を飛ぶ火の玉の合間を縫って89式小銃をセミで落ち着いて射撃した。
そして頭を下げ、マガジンを交換する間、部下の一人が軽機関銃でカバーする。
ふと3尉は薬室に5.56ミリ弾を送り込みながら疑問に思った。

「それにしても連中、なんでここと富野分屯地を狙ってきた……? 港からまっすぐ南下すればここで、分屯地も同様に距離的には近いが、なぜこの二つが北九州の軍事防衛拠点だって知ってる……?」

ほぼ同時刻 福岡

ドーラ軍の上陸部隊は福岡市役所に隣接する天神中央公園を調度いい臨時の野外指揮所に選び、天幕を設営して本陣を置いていた。
福岡市に上陸した、ドーラ帝国ヤウフ半島南端に有するフォンザン領駐留の約3000名の集団の指揮を執るのは2名の将軍、アキツとイハマであり、
2人は共にフォンザン駐留軍を統括する5人の守将に数えられ、同格の立場であるが現在はアキツが主将、イハマが補佐する副将の立場にある。
一方、北九州市に上陸した約2000名の集団は同じく同格の将軍、ウガミとエノオに率いられている。
これに、フォンザンに残っている将軍オサワを加え、彼ら5人によって普段は駐留軍とフォンザンの軍政が行われている。
守将らは全て地位の上では同格だが、基本的に年功で序列は決まっている。
福岡市上陸部隊はアキツがイハマよりやや年長のため、主将というわけだった。

「思ったよりもあっけないものだな。 敵軍の兵は最低限の訓練はされているようだが、まるで戦の仕方を知らぬ。
後手に回るばかりで積極的に攻めかかっては来ない。 都(みやこ)は大きいのに軍は弱く、こんな連中によく本国を侵略できたものだ。
おまけに、このような詳細で緻密な地図を、書物庫に保管する訳でもなく堂々と壁に飾っておった」

副将イハマがそう言いながら机の上に眺めているのは、福岡市役所内に掲示されていたものを奪ってきた福岡市内の地図である。
そこに書いてある文字の殆どはドーラ帝国のものと多少似ているが異なる「日本語」だったので何かが書き込まれているのかまでは
読む事が出来なかったが、どの道路が何処に通じているのか、橋が何処にかけられているのか、その大きさから推定できる一度に通行できる兵力まで、充分に読み取る事が出来た。
彼の発言の中に出てくる兵、軍というのは福岡県警・機動隊の事で、揃いの制服に武器を有している事からこれをこの地の守備軍だと勘違いしたものだ。

「おおかた、本国を征服して安心しきっておったのだろう。 我らのような属領の駐留軍が戻って来る事は考えなかったと見える。
この分だと本州、そして帝都まで攻め上って皇帝陛下を蛮族の手よりお救い申すのも容易かろう」

イハマはそう続けてニヤリと笑い、自軍の優勢と敵の弱さからくる余裕に喜んだが、主将のアキツは少し違った。

「だが、敵の兵は一人一人が、我らとは異なる小型の「杖」を有し、牽引する馬や牛も無く走るという第3期文明の遺物「自動車」に乗り移動する。
その杖は連射が効く上に、鉄片を投射する魔法を封入されている。 我が軍の歩兵の鎧は熱や雷や冷気には強いが、弓矢や刃物にはさほど強いと言えぬ。
タイカとの戦に適応させた対魔法戦仕様だからだ。 多くはないとは言え、それなりの被害は出ている……」

おそらくは、奴らが本国を侵略した時にこちらの鎧の弱点を知って対応させたのだろう、とアキツは結論付けた。
が、これは誤解で、ドーラ軍は交戦した日本警察の持っている装備、銃器類を、自分たちの使う第4期文明の遺物、
「魔法」と呼ばれる技術による兵器、「杖」と勘違いしたものであり、ドーラ帝国とこの惑星の戦争では「杖」が飛び道具として
普及しているのに対して地球そして日本では金属の弾丸を発射する銃が主流であるという、技術の違いからくるコンセプトの差で偶然こういう結果になったに過ぎない。
そして、ドーラ軍は時空転移によってこの惑星に出現した日本を、彼らの故国であるドーラ帝国を侵略した敵だという誤解もしていた。

日本政府が航空機や艦艇、そして衛星によって行った調査の通り、この惑星の大陸は地球に大まかにはよく似ている。
細かい部分の形状の違いはともかく、ユーラシア大陸があり、ロシアの東沿岸部があり、朝鮮半島があり、中国があり、台湾がある。日本政府はそこに……大陸の近海に日本列島が転移によって出現したと考えていた。
だが、ここまで地球に酷似した地形をもつ惑星に、日本列島だけ無かったと考えるのは不自然ではないか?という意見もあるのは以前に述べたが、悪いことにそれは当たっていた。
元々この惑星に存在した日本列島に相当する弧状列島にはドーラ帝国という国家が存在したのである。
そのドーラ列島は日本列島が時空転移する際に消滅したのか、日本列島と入れ替わりで地球に時空転移したのかは、結局そのどちらとも、やはり現在は確認する術が無い。
そして、さらに悪いことにこの世界に元々あった列島に存在したドーラ帝国は列強国として周辺の島々や半島の一部を属領として従えていた。
日本列島の時空転移によって本国からの連絡・飛行船や船舶の行き来が突然途絶え、見慣れぬ飛行物体や大型の船舶の
往来を知ったドーラ帝国の属領駐留部隊は本国に何かが起こったことを察知、ただちに偵察部隊を密かに日本列島に潜入させた。
そして帰還した偵察部隊は自分たちが上陸したのがドーラ本国ではなく転移してきた日本列島だと知らぬまま、「ドーラ本国の都市や住民が見えず、見慣れぬ都市が建設され、見知らぬ民族が住んでいる」と報告したのである。
これを、属領駐留軍の将軍たちは「本国が外敵に侵略されて瞬く間に征服された」と判断し、本国救援のための兵力を派遣したのだった。

「いかなる国の蛮族であろうと、許しておかぬ……奴らの王にも兵にも、民の一人一人にも、我らドーラ人の強さを思い知らしめてくれん」

そう言って拳をわなわなと震わせながら握り締めるアキツと対照的に、イハマは余裕のある様子で返した。

「既に奴らの兵は地獄に送り、民は多くを俘虜にして思い知らせてやったわ! フォンザンに送るか、ヤウフの鉱山にでも売れば儲かるぞ!」

「……イハマ、本国を奪還し皇帝陛下をお救いするまでが戦ぞ。 奴隷交易の皮算用は後にしろ」

侵略者から故国を取り戻す重要な戦争であるというのに、イハマの態度はどこか真剣みが無いようにアキツには感じられた。
アキツがイハマを嗜めたその時、ちょうど報告を告げる兵が幕舎に飛び込んできた。

「申し上げます! ウゼン(北九州市方面に相当するドーラ帝国の地名)の本陣との転移門が開き、伝令が到着しました!」

「転移」の魔法は、短い一定の距離の間で人や生物、物品などを空間を跳躍して送り込んだり呼び出したりする魔法だ。
それを行うには幾つかの条件を揃え、事前の準備を整える必要があり、いつでも自由に出来るという訳ではない。
呼び出す側と呼び出す対象に魔法的処置を施さなくてはならないし、福岡と北九州までの距離はともかくドーラ帝国の属領フォンザンと日本の九州までは少し距離が足りない。
また、一度に行き来できる質量も上限があった。
だが、移動にかかる時間をほぼゼロに出来るという点では便利で、主に軍事用途に使われている。

二人の将軍は、北九州市に上陸した部隊からの伝令の報告を受けた。

「それで、ウガミとエノオの方の様子はどんなだ」

「は、両将軍は蛮族がウゼンに建てた都を攻めると同時に、ウゼン城とエーテル保管場の制圧に乗り出しましたが、
いずれも市中で遭遇した兵とは異なる練度、装備の精兵と遭遇、苦戦しております」

「何? ウゼン城の奪還には騎士団を持って当たらせるよう命じたはずだが。 精兵とは言えそれほどのものか?
我らドーラの勇猛を持ってなる名門の騎士が梃子摺るほどの」

ウゼン城は、ドーラ帝国が北九州市に相当する地域に建設させた城郭の名前である。
それを奪還するために派遣されたドーラ帝国の騎兵は軍人としての英才教育を受けた貴族の子弟で構成され、全員が「杖」を標準装備し甲冑も魔法に耐えるだけでなく矢や槍を容易に通さぬ最高のものが揃えられている。
歩兵の甲冑を貫通する銃弾も、騎士の甲冑は易々とは通さないはずだった。

「それが、敵兵はその装束も、動きも、用いる杖の性能も市中の兵と大きく異なり……騎士団に大きな被害が出ております。
さらに、騎士団からの第一報によれば、ウゼン城が……城の石垣も堀も、全く見当たらぬ、まっ平らに直されて奴らの陣屋と思しき建物が代わりに建てられていると」

「なんだと!!」

その報告にアキツは机に拳を叩きつけて怒り、イハマも唖然として口を開けるばかりだった。

「ウゼンの城は、西方鎮守府と本州を繋ぐ重要点として心血を注いで建設した、宝だというのに……!
あの美しさと威容を兼ね備えた城を、いつか皇帝陛下にご覧になっていただく筈だった……!!
それを、奴らは壊して平らにしたというのか!!」

これも誤解で、日本の北九州市の小倉には陸上自衛隊の駐屯地があり、城郭は無かったわけだが、両者が同じ地点に建っていた事によるものだが、
アキツたちドーラの将軍には拠点としても、思い入れとしても価値の高い城が永遠に失われた事による怒りは簡単に収まるものではなく、その迫力をして二人の目の前に控える兵士たちを戦慄させた。

「許さぬ……! なれば、少し早いがドラゴンを出そう。 奴らがこの地に建てた都ごと、焼き払って報復としてくれん!!」

アキツのその発言を耳にしたイハマが、驚いて慎重論に走る。
あまりにアキツの怒り様は尋常ではなく冷静さを欠き、報告を受ける前と役割が逆転していた。

「だがアキツよ、ドラゴンは本来伝令に使うもの。 数も多くは無いぞ? それに、既に撃ち落したという報告が上がっているが、
奴らの喧しい風船(かぜふね:帆走式飛行船の名称 ここで指しているのは撃墜された報道ヘリコプター)がまた出てくるとも限らん。
あれが武器を持っているかどうか未知数だ。 それに、巨大な飛行機械(空自のF-15や海自の哨戒機)にドラゴンが対抗できると決まったわけでもない」

「構わん。 出てくるなら即座にドラゴンか騎乗する騎士が杖で撃ち落してしまえばいい」

こうして命令が下され、湾内に停泊する船の一つの船倉で眠らされていた翼を持つ大型生物たちは、手綱を握る騎士を背に乗せて日本の空へと舞い上がった。

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