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自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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匿名ユーザー

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「誰が見てなくても表に出なくても永々と抜かない刀を磨いている。
そのための訓練だ。ことさらレンジャーバッチを誇る必要もない。
いぶし銀のように内側から光っていればいい……」
 寝れず、休めず、喰えず、飲めない地獄の訓練を潜り抜け
帰還式でようやく聞けた教官からの手向けの言葉。
今この瞬間から私は陸上自衛隊の栄えあるレンジャーに加わる。

 日本は平和な国である。
周囲を海に囲まれ、強大なアメリカの傘下にあり、政治経済共に安定している。
クーデターや内戦も起こることなく、国内における自衛隊の出動もせいぜいが災害派遣だ。
軍が出て銃で互いに撃ち合うことなどありえず、ゲリラ戦を想定し山奥にひとり取り残され
糞みたいな臭いの蛇を喰うなんてこともない。
 日本国内で山岳戦闘が想定されるのは、ロシアか中国に上陸を許し山岳部に追い詰められ
内地持久しなければいけない場合だろう。工作員やテロリスト相手と言うのもあるが。
本格的に日本の陸軍が戦う、山岳戦をする事はある意味、日本の終わりを意味している
中ロ相手に橋頭堡を築かれるとは敗北と同じ意味である。

 それを知りつつレンジャーは体を苛め抜く。
いつか役立つ日の為に抜かない刀を延々と磨いている。
はずだった。

それが私の最後の記憶。
「どうしてこうなった」

――――米ソ冷戦崩壊から遠い未来
かつて地上の支配者だった人類は、自らが汚染した地上を見限り
汚染を免れた僅かな土地でしがみつく様に生きていた
 既に人類の過半は死滅し
地上は、かつての戦争の名残である無人兵器と生物兵器が跋扈する
荒れ果てた大地であった

「きろ・・・・・・お・・・き・・・・・起きろ!」
 頬を思い切り叩かれた。

「痛ってえ!誰だ!」
 真っ暗な中目覚めると見知らぬ男が私の肩を掴んでいた。
ゴツイ肉ダルマのような男だ。指は節くれ立っていて葉巻のように太い。
胸にはパラシュートと翼が組み合わさった記章と
ダイヤモンドと葉の付いた記章が見える。空挺レンジャーだ。
「早く出ろ、死にてえのか!荷物持って付いて来い!」
 空挺レンジャーは私を部屋から引きずり出すと物陰へ身を隠し
ハンドサインで付いて来いと示した。
男の様子がただならぬものだったので、横に置いてあったリュックを背負い黙って身を屈めついていくことにした。

 寝起きから頭がはっきりしてくるにつれ、私は異常な状況に置かれていると感じるようになった。
まずは寝起きにも拘らず装具一式を身に着けていたことだ。
頭にはテッパチ、戦闘服の方の迷彩服、ブーツにベルト、更にポケットは中身が入っている。
背負ったバックの中にもまだ色々入っているだろう。
 たぶん私は宿舎に戻り作業服で寝ていたはずだ。
何処の世界に完全武装したままベッドで寝る馬鹿がいるのだろうか。
ありえない。作為的なものを感じる。

「生存者は何人だ」
 空挺レンジャーに連れて行かれた先にはもう1人男がいた。
所属を示す記章を外し、髪は丸刈りでなく伸び放題、若く自衛官らしくない1等陸尉で軽薄そうな顔をしている。
何か警戒しているのか、音に過敏だ。
「落盤で潰されていた。生存者はこれだけだ」
 1等陸尉に空挺レンジャーが答えた。
空挺レンジャーと言えば泣く子も黙る第一空挺団のことだ。
自衛隊の精鋭である、とすると空挺レンジャーが従う相手とは相当な人物であるわけで。
この隊の先任だろうか。
「そうか、装備の回収は出来たか?」
「背嚢が二つ、89の弾薬箱が一つ、89が一つ」
 二人は私を無視し淡々と会話を進めていく。
我慢できなくなり口を開いた。
「此処は何処で、何が起こっているんですか」
 突然、シッと1等陸尉が指を立て手の平を下へ向けた。黙れ伏せろサインだ。
訓練された体は反射的に命令に従い、地面へ伏せる。
「!!!!!!!」
 地響きと金属音、象ほどもある巨大な何かが森を掻き分け進む。
「……嘘だろ、おい」
 金属製のナナフシに似た巨大な機械が目の前を通り過ぎた。
生物的な緑に塗装された体と戦車の砲身にも似た頭、まるで蟻の足のような昆虫状の4本足。
異形は私達が先程出てきた建物に頭を向けると、大地に4つの足を突き刺した。
「両耳を塞いで口を空けろ」と空挺レンジャーが言った。

 轟音

 ナナフシの砲口から発射された砲弾が建物を粉砕する。
何度もナナフシの砲口は火を吹き、コンクリで出来た建物の壁は削られ砕かれついに瓦礫となった。
ナナフシが遠く去った後も私は唖然として、同じ場所を見つめていた。
「足元だ!糞!」
 気付くと30cmもある蟻が私の足に居た。
小さなナイフにも似た鋭い歯で噛み付こうとしている。
空挺レンジャーが手にした89式の銃床で蟻を叩き潰した。
「なんだよなんだよ一体なんだあれは」
「大丈夫か?しっかりしろ」
「あんたら誰だよ目的は何だよここ何処だよ」
「ははは、混乱してるねぇ、初めは誰でもこうなるよフツウ」
 1等陸尉がいけ好かない笑みでにや付いている。
「陸尉なら、今のは助けられたはずだ」
「ははは、使える人間か見たかっただけさ。甘ちゃんが生きられるほどこの世界は甘くない」
 空挺レンジャーが1等陸尉を睨んだ。
「なら、陸尉が死に掛けてもほうっておくよ」
「あはは、それは困るな」
 1等陸尉が倒れた私へ手を貸した。
「ようこそ、新たなる世界へ」

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