「そう、敵がこの先にいるのね。詳しく聞かせて」

思わず掴んだ手の柔らかさ。姿よりもその感触と温かさがホル・ホースに目の前の人物が女であることを感覚的に知らせる。
まじまじと観察してみる。頭の先からつま先まで、上から下へと視線を向けていく。
整った顔立ち、大人びた中にまだ少女のあどけなさが残る。僅かに傾く太陽の光を浴び黒光りする髪の毛。それをかきあげる色白な手、細長い指。ウエストは引き締まりスカートから突き出た足が眩しい。
こんな上玉久しぶりだなとホル・ホースはぼんやりと思い、沈みがちだった気分が少しだけ浮き上がったように感じた。

ああ、この先は危ねぇぜ、お嬢ちゃん…なんてたって極悪殺人鬼、しかも女子供関係なしに襲い掛かるヤツがいやがる。その上二人組、頭も働くっていうんだから質が悪い。悪いことは言わねえ、行かないほうが身のためだぜ。
そう言おうと口を開き、だが直前にふと気づく。だらしなく口を半開きにしたまま自分のしていることに愕然とする。

おいおい、マヌケもいいところじゃねーか。俺は何をしてやがる?いきなり現れた美少女に心を奪われ、情報を垂れ流し………一体どこのガキだよ。
そもそもなんだ、『お嬢ちゃん、俺は一体どうすればいいんだ?』だって?本当に俺はどうしちまったんだ?見ず知らずの女にすがって…センチな気分ってか?

「…?どうしたの?」

マヌケ面を誤魔化そうとホル・ホースは曖昧な笑みを浮かべる。掴んだままだった手を放すと帽子の縁をつかみ表情を見えないように深く被りなおした。
ひょうひょうとしたいつもの自分を取り戻すため心の中で自分自身に言い聞かせる。

「いや、なんでもないさ、お嬢ちゃん。まあ、立ち話もなんだ、敵ってやつについてはじっくり腰を落ち着けて話すとしないか?」

そうだ、冷静さを取り戻すんだホル・ホース。利用相手の情報を垂れ流し?しかもなんの見返りもなしに?馬鹿言っちゃいけねぇ。どうせ話すにしてもコイツから情報を聞き出してからだ。
イーブンイーブン、最悪でも情報交換にしねえとまったく意味なしだ。そうだろ?だから落ち着こうぜ。
コイツがミューミューに重なるなんてことはない。そもそも星の数だけいた女の一人が死んだだけだ。それなのにさっきの俺の狼狽っぷりっていったら………目も当てられねぇ。
クールダウン、クールダウン。いつものお調子者、つかみ所のない風来坊、根っからのウソつきハンサムガイ、ホル・ホースはどこに行った?

「あら、そんな誘い方じゃなんかやましい考えがあるみたいよ。誘うならもっと気のきいた言葉じゃなきゃ」
「こりゃ失礼。若い人には縁がなくてな」

互いに笑顔を浮かべるも水面下では腹の探り合いは続く。微笑を交わしつつも目は一切笑っていない。
近くの民家のひとつを適当に選ぶとホル・ホースはレディファーストです、とドアを押さえ由花子に入室を促す。
上品な礼をし、先に家内に入っていく山岸由花子。玄関にのぼる時に靴を揃えることも忘れない。可憐な少女を演じることは由花子にとって訳ないことだった。
入った先のリビングの向かい合うソファー。足の低いテーブルを挟んで二人は座る。何気ない一連の流れの中、ホル・ホースはまたしても自問自答を始める。

レディファーストです、なんて扉を押さえてやったのはやりすぎだったかもしれねぇな…。いつもの自分でもやったか?まだ俺はミューミューの野郎のことを引きずってるんじゃねーか?
とにかく今のこの俺の席はよろしくないぜ。窓に背を向けてるこの席じゃJ・ガイルの旦那やアンジェロの奴らが道路に出てもまるでわからねぇ。もしもあいつらが勝手に動き出したら………

「それで…なんて言ったかしら?命がいくつあっても足りない、この先は危ない、敵がいる…だったかしら?どういうことなの?」

冷や汗がホル・ホースの額を伝う。自分はこの女を騙すわけじゃない。ただ情報交換をするだけだ。なんの見返りもなしに一方的に情報を垂れ流す、そんなお人好しいないだろう?当然のことなんだよな?なあ、そうだろ?
そう自分に言い聞かせても自分の中で罪悪感が沸き上がる。正しいことをしているのか、いつもの自分になれているのか、不安感が次々と募ってくる。心が揺れ落ち着きがないことを自覚する。

「まあ、そう焦るなって。俺の名前はホル・ホース。お嬢ちゃんの………」
「由花子。山岸由花子よ」

この女に、由花子に全てぶちまけてしまいたい。自分がいかに悪党であるかを。
天性のウソつきである自分の心中を全てさらけ出したい。
ホル・ホースの心は決壊寸前だった。

どうしてこんな弱気になってるんだ、俺は。女一人騙すなんて日常茶飯事だろ?いやいや、騙すんじゃない。今からするのは情報交換だ。対等だ。イーブンだ。それどころか俺はコイツの命を救ったんだ。
あのまま俺がコイツの手を掴まずにいたらどうなってたと思う?J・ガイルの旦那とアンジェロだぞ?コイツだってあのさっきのミューミューみたいに………

自覚はなく、まるで忍び寄る病魔のように。じわりじわりとホル・ホースの心は折れていく。
あれ、いつもと違うぞ、自問自答。
必死に言い聞かせるも沸き上がる疑問。
何が正しく何が間違っているのか。答えは出ない迷宮へ、さあいらっしゃい。

―ジョニィ・ジョースターは心が折れるなか、遺体に導かれ答えを出した。
 心が迷っているなら撃つのをやめなさい。
 それに対してジョニィはこう答えた。
 もう迷っちゃいないさ。




遺体のため、自分のため、動かない脚のため。
『生きる』とか『死ぬ』とか誰が『正義』で誰が『悪』だなんてどうでもいい。自分のマイナスをゼロに戻したいだけ。
それがジョニィの答えだった。自分を貫き通す、ジョニィ・ジョースターとしての言葉だった。
ジョニィは折れなかった。

だが

「由花子…由花子嬢よォ」
「お嬢ちゃんでいいわよ、ホル・ホースさん」
「お嬢ちゃん…俺は…どうしたらいい………?」

フラリフラリの根なし草。次から次へと主を変え、女を変え、渡り歩いていく放浪者。
都合が悪けりゃ我関せず。下手をうったらそれ、逃げろ。
No.2にはNo.2の苦労がある。世渡りするにはそれなりの実力がなければならない。

だが心が折れそうな時、彼は何を信じればいい?
自分の腕?いやいや、それがないからホル・ホースはNo.2であり続けるのだ。
自分の頭脳?決して悪くはない。だが幾度となくドジを踏み逃げ回り、高跳びしてきた。
自分の信念?何が信念?何が自分?ホル・ホースという男の根本は?自分は一体………

「俺は………何を信じればいい………?」

心が折れそうな時、支える仲間もいない。苦楽をともにした相棒もいない。一生を誓った伴侶もいない。
皇帝(エンペラー)気分でホル・ホースは好き放題してきた。腹の底では舌を出し、相手を見下し自分の利益ばかり考えてきた。
ホル・ホースは皇帝(エンペラー)、しかも飛びっきりの暴君だった。

「何も心配する必要はないわ、ホル・ホースさん。信じて。私を信じて教えて。何があったの?何があるの?」

つまるところ、全ては簡単なところ。
ホル・ホースは利用していた女に利用されただけ。
ただそれだけのことだった。

因果応報というのならばなんという皮肉だろう。
だがそれも仕方のないこと。
それこそがホル・ホースという男の答えなのだから。

―――ニーチェ曰く
『男が本当に好きなものは二つ。危険と遊びである。男が女を愛するのはそれが最も危険な玩具であるからだ』







「ホル・ホース、お前どこ行ってた?」
「なに、ちょっとした野暮用ですよ、旦那」

野暮用…野暮用か。フン、どうも気にかかるな。
アンジェロとJ・ガイルがそれぞれの趣味をたっぷり味わい終わった頃、フラリと姿を消していたホル・ホースは帰ってきた。
リビングの扉をバタンと開けるといつものお調子者顔で軽く謝るホル・ホース。それを見てアンジェロは鼻をならす。

どうも気にくわねぇな…野暮用で誤魔化してるけど結構な時間があったはずだ。その間なにしてやがった?別の『旦那』とやらに媚びへつらっていたんじゃねぇのか?
アンジェロは思った。しかし同時にまあいいかという気持ちも沸き上がっていた。
久しぶりの死体。ほんのりと暖かみが残る中、硬くなっていく体。醜く歪んだ表情。苦痛と恐怖をくっきりと残し、何かを掴もうと伸ばしたまま固まった手のひら。
背筋がゾクゾクするような久しぶりの喜びにアンジェロは上機嫌だったから。

「ところでこの後どうするか、予定はあるんですかい、旦那?」
「いや、俺はこれと言ってないな。アンジェロ、お前は?」
「やっと一人殺せたけどよ…まだ満足してねぇな。どうもここにはイイ気になってるやつらばっかいるみてえだ。ぶっ殺してやりてえって気持ちが次から次へと沸き上がってきやがる。
「ほう………」
「南のサンタ・ルチア駅から北上してきたわけだから今度は東、繁華街か特別懲罰房辺りに参加者が固まってる気がする。まぁ、向かうならここらあたりだろうな」
「そうかい。となると俺たちとは別行動になりそうだな」
「ってことは何か行く先が決まったのか、ホル・ホース?」

J・ガイルが尋ねる。答え代わりに、机に広がっていた地図を引き寄せるとニヤニヤしながらホル・ホースはある一点を指し示す。指先はDIOの館。

「アンタたち二人がお楽しみだった時、何も俺はボーッとしてたわけじゃねえ。ちょいと情報を集めに出かけてな…スピードワゴン、さっき言ったよな?俺の約束の相手がどうやらここにいるらしい。そして、旦那、あのDIO様もいるとのことだ」
「ククク…ホル・ホース、お前やっぱり抜け目ねぇな。DIO様がいるんだったら話は早い。アンジェロ、お前とはここでお別れだ」

地図を手早く片付ける。慌ただしくデイバッグを担ぐと席を立つ。ホル・ホースもそれにならい、出発の準備を整える。一足早く終わらせると先に待ってると言い残し玄関のドアを開け出ていった。リビングに取り残されたのは二人の快楽殺人鬼。

「ククク…短い付き合いだったがお前とは気が合いそうだと思ったんだがな」
「…いい気になってるんじゃねえぞ、J・ガイル。俺はお前と仲良しこよしした覚えはねぇ」
「確かにそうだ。まぁ、いい。それより20時にDIOの館集合っていう例の約束はどうする気だ?」
「ブラックモアもいねぇ。ウェザー・リポートもいねぇ。ヴァニラ・アイスもいねぇ。全く魅力もねぇクソみたいな約束だ。俺は俺のやりたいようにやるし、そもそも俺がどうしようかをお前に言う必要もねえ。違うか?」
「ククク…違いない」

それだけ言い残すとJ・ガイルは家から出ていった。別れの言葉もない。捨て台詞も皮肉も何一つない。やけにアッサリしやがるな、アンジェロがそう思うほど呆気ないものだった。
そしてそれが逆にいかに今J・ガイルが上機嫌であるかを示しているかのようでアンジェロはたちまち不愉快な気分になる。
イイ気になってやがる、ぶっ殺してやればよかったぜ。誰にともなくそう呟いた。
自分も上機嫌だっただけにJ・ガイルと同等と扱われた気がしてさっきまでの高揚感は割れた風船のように萎んでいく。空気を入れ換えるようにイライラがあっという間に広がった。

このイライラを解消するには誰かを殺すしかねぇ。さっきみたいにスカッとザマアミロって気分が味わいてぇな。いや、今度はじっくりいたぶってみるか?いやいや、最初の野郎みたいにラジコンカーにするのも面白えかもな。
とにかく東に向かうか。そう決心するとアンジェロは動きだす。ホル・ホースとJ・ガイルがやったように荷物をまとめ出発の準備を整える。部屋を出ていく直前、アンジェロは何かを忘れてるような気がして部屋を振り返った。
視界に何かキラリと反射するようなものがみえた、そんな気がした。
もう一度部屋の中央に立ち、辺りを見渡してみる。気のせいではなかった。キラリ、キラリと光が反射し次から次へと光が『渡っていく』。不思議な、奇妙な光景にアンジェロは本能的に身構える。
何か、ヤバい。そう感じた瞬間、台所でガラスが割れた音が聞こえた。侵入者だろうか。だが確認する暇もなく、迎え撃つかどうかも考える暇なく

―――住宅街に轟音が響いた




「ククク…バァ~カめッ!!ヘヘヘ…イイ気になってるって?なってるのはお前だろうが、アンジェロッ!」
「ヒヒヒ…旦那、それより急ごうぜ。あんなアホ野郎のせいで遅れたらつまらんことになるぜ」

先を行くJ・ガイル。後ろを歩くホル・ホース。互いの健闘を称えるように満面の笑みを浮かべ下品な笑い声をたてる。
J・ガイルは腹のそこから面白そうに、始末した相手を見下すように。ホル・ホースは厄介ごとを片付けホッとしたように。
作戦事態はシンプルそのものだった。
J・ガイルのスタンドで偵察且つアンジェロの注意を引く。その隙にホル・ホースのエンペラーでガスタンクをぶち抜きボンっ!
そして結果は大成功だった。

これで借りは返した。敵討ちというわけじゃないがどこかスッキリしたものをホル・ホースは感じる。ミューミューの無念を晴らすだとか、冷静に考えればそんなものはないはずだ。二人の間はそんな深いものでないのだから。
けれども心が落ち着いている。なぜか。
きっと一度自分の心をさらけ出したからだろうか。山岸由花子に全部吐き出したからだろうか。

ホル・ホースは全て語った。今までホル・ホースがどんなに女を裏切ってきたか。そしてどれだけ女を愛してきたか。
自分は都合がいい方につく軟弱野郎で、天性の大嘘つきです。そこまで告白してしまった。
心が折れかけていたホル・ホースは由花子の言葉に呆気なく陥落した。そして語っている内に怖くなってきた。今自分が否定されたら俺はどうなるんだろう、と。
そして同時に並の人間なら嫌悪を示さない訳がないこともわかっていた。そういうことをやってきていたのも心では理解していた。

だが山岸由花子は違った。まるで聖母のように優しくホル・ホースを受け入れた。全てを聞き終えても眉一つ動かさず、むしろホル・ホースが生き抜いてきた世界の過酷さに同情し、そしていくつもの修羅場を潜り抜けてきたことを褒め称えた。
折れかけた心は再び元に戻った。完全とは言えない。タイムリミットも当然変わらない。だがホル・ホースは確かに救われた気がしたのだ。

少しボンヤリしていたようだ。気づくとJ・ガイルの背中が大部遠くなっていた。J・ガイルはアンジェロをぶっ殺せたことが相当嬉しかったのだろう、DIOの館に向かう足取りは軽く、ホル・ホースのことなどかまわずズンズン進んでいく。
やれやれ、ため息を一つつくとホル・ホースは少し小走りになる。冷静に考えればホル・ホースだって時間はあまりない。J・ガイルを仲間としてスピードワゴンとの約束を果たさなければ。そうすればようやく白ネズミから解放されるのだ。

俺も急ぐとするか、そうホル・ホースが考えて駆け出した時だった。突然足を何かに取られる。あっ、と叫ぶ間もなく地面が近づいてくる。手をつこうにも金縛りにあったように体は動かない。
きれいな『気を付け』の格好のままホル・ホースは顔を激しく打ち付けた。痛ェ、そう反射的に言おうにも下もまるで何かに縛り付けられたように動きはしない。
何がおきているんだ、確認しようにも首が動かない。そのホル・ホースの視界に動くものが移る。ゾワリゾワリと視界を黒が埋め始める。顔の後ろから大量に視界を埋め尽くす程の髪の毛。目の前の光景が一体何が起きているのか、ホル・ホースにはまったくわからなかった。
そして一面真っ黒となる。

一体何が起きてる?何だ、何だ、何だ?
パニックにも似た感情がホル・ホースを襲う。得体の知れない恐怖と暗闇に押し潰されそうになる。

旦那、助けてくれ。旦那、気づいてくれ。
一体何がどうなってやがる。

そして轟音。
ホル・ホースは自分がなぜ死んだか、どうやって死んだか、誰に殺されたか。
何一つわからぬまま死んだ。

爆発音に振り向いたJ・ガイルが見たものは首輪が爆破し頭と胴が離れ離れになったホル・ホースの死体だった。






さて…

「どうしようかしら」

山岸由花子は考える。眉間にしわをよせ悩ましげに考える姿はまるでデートコースに悩む乙女のようで。意中のあの人の心を思う少女のように由花子の悩みはつきない。
今しがた人を一人始末したとは到底思えない、普通の女の子がそこにいた。

ホル・ホースは由花子にとって最も嫌悪すべき男だった。
多人数の女に言い寄る尻軽男、使い捨てかのように女を扱ってきたことを聞いた時はその場で絞め殺してやろうかとも思った。
純愛。年に相応しく、恋に一途な由花子にしてみればホル・ホースは汚物のような存在だった。
何もホル・ホースに騙された女性へ同情し彼女らに代わり神の鉄槌を!…そう言った気持ちはさらさらなかった。由花子はホル・ホースを一切信頼してなかったし、そのためにも遅かれ早かれ口封じの目的でホル・ホースを始末する気であったから。

「………ほんと困ったわ」

そんな彼女の悩みの種。行く先はもう決まっている。由花子の次の目的地はF-2のナチス研究所。ならばその悩みとは?

「首輪を外して…脱出…か………」

歩きながらも手の中の妨害電波発信装置をもて遊ぶ。お手玉のように軽く放り投げ、落ちてきたのをまた掴む。そしてまた投げ掴み投げ掴み投げ………。
由花子の中には確信があった。手の中のこれを使えば間違いなく首輪を外すことができると。吉良吉影の携帯電話の電波を止めることができたのだ。首輪にしても遠隔操作ならば電波を送っているに間違いない。
ならば携帯電話の電波を止めることができたこの妨害電波発信装置で首輪への電波はシャットアウトできるのではないか。

「それが困るのよ…」

だがもし首輪を外したとしたら?それは間違いなくイレギュラー。何らかの措置は取り計らわれ、最悪『GAME OVER』、優勝賞品も取り上げ。なんてことも考えうる。

「それに…」

だがもし『イレギュラー』でなかったら?由花子はそちらの確率のほうが高いと踏んでいる。なぜならそもそも妨害電波発信装置などを支給した意図がわからない。首輪を外すキーアイテムとなるものを配るメリットは荒木にまったくない。
強いていうならば希望にすがった参加者の首が吹き飛ぶのを馬鹿にするといった悪趣味な楽しみかただろうか。
どちらにしても荒木の狙いは不明慮だ。
荒木は首輪を外して欲しいと思っているのか?それともこれじゃ外せないのか?ただの罠なのか?外したにしてもどうしようもないなにかがあるのか?

「………まあいいわ」

どっちみち変わらないわ、と由花子は呟く。これは最後まで隠しておくべきだ。ホル・ホースからの情報によるとリゾットとペッシ、両名の敵対者は多い。そしてその中にはあのジョルノ・ジョバーナも含まれているのだ。ならば話は簡単だ。
DIOの館はあのニセ早人が、ナチス研究所は自分が。それぞれがつつきあえば勝手に潰しあってくれるだろう。この妨害電波発信装置は信頼を勝ち取る最終手段としなければ。
行く先に足を勧めながら由花子は考えをまとめた。そしてそこまで考えて思わず苦笑する。

なんだ…

「私がやってることもホル・ホースがやってることと一緒じゃない」

空を見上げる。少し紅く染まった視界の中でゆっくりとラジコン飛行機が旋回してるのが見えた。








J・ガイルは戸惑いながら逃げる。ホル・ホースの首輪が爆発した理由はわからない。原因不明、謎の爆発。だがそこに留まっていては間違いなく殺られる。
ひとまず距離を取るため逃げる。逃げながら考える。
どういうことだ…?アンジェロの野郎を殺り損ねたのか?いや、まさか。ホル・ホースのエンペラーは操作可能、間違いなくガス爆発で木っ端微塵に吹き飛ばしたはずだ…。
だがなら誰が?どうして?どうやって?どんなスタンド能力だ?
とにかく逃げねば。DIOの館はもうすぐだ。










アンジェロは怒り狂っていた。未だかつてない怒りに震え完全にプッツンしていた。
窓ガラスが割れた瞬間、何だかわからんがヤバい、そう判断したアンジェロは直ぐ様アクア・ネックレスで全身を包むと窓を突き破り家内から脱出した。
それでも直後のガス爆発の熱風は防ぎきれず身体中に火傷を負い、また地面に叩きつけられた時のダメージも吸収しきれずに、まさに満身創痍だった。
そんな体も今のアンジェロは気にならない。痛みよりも怒りが勝っているのだ。

ホル・ホース、J・ガイル、二人ともブッ殺してやるッ!俺の痛みよりも何倍も、何十倍も痛みつけ、身体中をギッタギタのめった切りにしてブッ殺すッ!俺の受けた屈辱よりも下劣な、這いつくばるような敗北感を味わせてやるッ!
そう思ったアンジェロがアクア・ネックレスで死んだホル・ホースを見つけるのに時間はかからなかった。
クソッタレ、先をこされたッ!J・ガイルの野郎、絶対ブッ殺してやるッ!口封じか、それともただ単に利用価値がなくなったのか。とにかくお前は許さねェ!泣こうが喚こうが必ずお前は俺がブッ殺してやるッ!

荒木によってか、アクア・ネックレスはいつものようにどこまでも広がってはいけなかった。いつものアンジェロならば自分に枷をかけた荒木の態度に腹を立てただろう。しかし今のアンジェロに荒木は映らない。
スタンドを手元に呼び戻すと自らも一緒に北上していく。J・ガイルが目指すであろう、DIOの館を目指しアンジェロも走る。










【ホル・ホース 死亡】

【残り 33名】






【F-3 北東/1日目 午後】
【山岸由花子】
[時間軸]:4部終了後
[状態]:健康、強い覚悟
[装備]:妨害電波発信装置、サイレンサー付き『スタームルガーMkI』(残り7/10)
[道具]:基本支給品、不明支給品0~1 承太郎の首輪
[思考・状況]基本行動方針:優勝して広瀬康一を復活させる。
0.ナチス研究所に向かい、ペッシ・リゾットと接触。信頼を勝ち取り利用する。
1.吉良吉影を利用できるだけ利用する。
2. DIOの部下をどうにか使って殺し合いを増進したい。
3.正直知り合いにはなるべくあいたくない。けど会ったら容赦しない。
4.一応ディオの手下を集める
[備考]
※荒木の能力を『死者の復活、ただし死亡直前の記憶はない状態で』と推測しました。
 そのため、自分を含めた全ての参加者は一度荒木に殺された後の参加だと思い込んでます
※吉良の6時間の行動を把握しました。
※空条承太郎が動揺していたことに、少し違和感。
※プッチの時代を越えて参加者が集められていると考えを聞きました。
※ラバーソールのスタンド能力を『顔と姿、声も変える変身スタンド』と思ってます。
 依然顔・本名は知っていません。
※スピードワゴンの名前と顔を知りました。


【D-4 中央/1日目 午後】
【J・ガイル】
[時間軸]:ジョースター一行をホル・ホースと一緒に襲撃する直前
[能力]:『吊られた男』
[状態]:左耳欠損、左側の右手の小指欠損、全身ずぶぬれ、右二の腕・右肩・左手首骨折(治療済み)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
0.とにかくのこの場を離れる。目指すはDIOの館。
1.アンジェロとホル・ホースを可能な限り利用し、参加者を減らす。
2.自分だけが助かるための場所と、『戦力』の確保もしておきたい。
3.20時にDIOの館に向かう?
[備考]
※『吊られた男』の射程距離などの制限の度合いは不明です。
※ヴァニラアイスの能力、ヴェルサス、ティッツァーノ、アレッシーの容姿を知りました。
※第二放送をアンジェロに話しました。
※ホル・ホースのデイバッグ一式がD-4 中央に放置されてます。



【D-4とE-4の境目/1日目 午後】
【片桐安十郎(アンジェロ)】
[スタンド]:アクア・ネックレス
[時間軸]:アンジェロ岩になりかけ、ゴム手袋ごと子供の体内に入ろうとした瞬間
[状態]:全身を火傷(中度)、身体ダメージ(中)、プッツン
[装備]:ディオのナイフ ライフルの実弾四発、ベアリング三十発  
[道具]:支給品一式×2
[思考・状況] 基本行動方針:安全に趣味を実行したい
0.J・ガイル、ぶっ殺すッッッ!
1.荒木は良い気になってるから嫌い
2.20時にDIOの館に向かう?
[備考]
※アクア・ネックレスの射程距離は約200mですが制限があるかもしれません(アンジェロは制限に気付いていません) 。
※ヴェルサス、ティッツァーノの容姿を知りました。
※第二放送をJ・ガイルから聞きました。
※ミューミューの基本支給品を回収しました。

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162:ビッチ・ボーイ J・ガイル 173:For no one - 誰がために?
162:ビッチ・ボーイ 片桐安十郎(アンジェロ) 173:For no one - 誰がために?
162:ビッチ・ボーイ ホル・ホース GAME OVER
162:ビッチ・ボーイ 山岸由花子 174:流される人、流されない人

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最終更新:2010年05月27日 20:29