あんた、そりゃないよ
あんたは、欲望のまま動くわがまま野郎
あんたはそれでいいのかもしれないけれど
あんた、そりゃないよ
好き勝手に行き過ぎだ
あんたが理性を持てばうまくやれるけど
あんた、そりゃないよ
あんたがやられなければ、あんたは一生気がつかないんだ
痛みなんてわからないんだろうね
あんた、そりゃないよ
こっちはそれでよかった
こっちにはこっちの考えがあったんだ
あんたは最高の相棒だ
あんた、そりゃないよ
自分の本能に従って生きていくのさ
あんた、そりゃないよ
あんた、それはない
そいつはだめだ
☆ ☆ ☆
巨大な穴から脱出した片桐安十郎はコロッセオを見ながら言った。
「よかったじゃあねーか。くたばってくれて」
仲間のJ・ガイルにそう言った。
カーズにさんざんいじめられていたので、J・ガイルにとって彼は怖い存在だった。
そのカーズの死亡が荒木飛呂彦から知らされたのだ。
ちなみにJ・ガイルは
第二回放送の内容を片桐安十郎に話していた。
「どうするよ? 俺はこのまま駅に戻ってもおいしくないんだが。
雨もやんじまったしよ、ガキのお守りはごめんだぜ」
本来ならば、片桐とJは第二回放送後にサンタ・ルチア駅に戻る手筈だった。
同盟者の
ブラックモアがそう提案していたので。
そのブラックモアが死んでしまったのは、同盟が解消されたことを意味する。
ウェザー・リポート、
ヴァニラ・アイス、ブラックモアの3人は特に同盟の利益を持つ人物。
おいしいものが無くなった同盟はあっても無駄なのだ。
ブラックモアに「裏切ってもいい」と言われていたので、気持ちの整理は必要ない。
残る同盟者は先にコロッセオの方へむかった
ラバーソールと駅に残っている
川尻早人。
同盟を組んでいてもそこまでメリットはない。
「いい加減人の話を聞けよ」
Jは笑いが止まらなかった。
あんなに偉そうな態度で圧倒的な恐怖を備えていたカーズが死んだ。
報せを聞いて笑いが止まらなかった。
カーズを倒した相手のことよりも、カーズが死んだことに対する喜びが抑えられなかった。
笑って笑って笑いまくる。片桐に理由を問われたら素直に答えるしかないほど、笑っていた。
「そろそろ行こうぜ」
片桐はJの頭をペンでたたいた。
「俺はイライラしてるんだ」
☆ ☆ ☆
「J・ガイルの旦那……旦那じゃねーか」
しばらくしたあと、片桐とJは
ホル・ホースたちと再会した。
片桐とJが穴から脱出した後の行動を、北に移動、にしたからである。
残る同盟者として先に北へ向かったラバーソールと再会を望んでいた。
彼が駅に戻ることを読んで、南に進むつもりはなかった。そこまでするほどの友情はない。
残念ながら彼と再会することはできなかったが、代わりにホル・ホースと会うことができた。
Jの提案で片桐はラバーソールを後回しにすることにした。
彼らはホル・ホースの計らいで住居の中に招かれた。
「こいつはミューミューって奴。大事な人材ってやつです。妙な真似は勘弁してやってくださいな」
ホル・ホースにはミューミューという仲間がいる。
ミューミューはあいさつもせず、ふんぞり返って、ドリンクを飲んでいた。
コーヒーを恥じらいも無くグビグビと何杯も飲んだ後があった。
強がっていても精神的に疲弊しているのが片桐たちにもわかっていた。
「あんな足手まとい、生かす価値があるのか」
「アンジェロさん。ここだけの話、あいつは強い護衛がいるんです。
俺は上手くそいつらを取り込むことに成功したが、その代償でこいつを引き受けた」
「お前がギブ・アンド・テイクに応じたってことは相当の能力者なのか」
「J・ガイルの旦那、悪いことは言わない……味方にしといて損はないスタンド使いだ」
ホル・ホースは更にスピードワゴンと待ち合わせをしていることも話した。
そしてついさっき、この辺りで戦闘があったので、移動を迷っているということも話した。
「あたしとしては、せっかく作ったコネを上手く生かして生き延びたいんでさ」
「軟弱な野郎だな。おいJ・ガイル、こんな相棒なんかと組んでたら、お前も見くびられるぜ」
「……その通り、と言いたいところだが」
Jは椅子からたちあがり、ホル・ホースの肩にぽんと手を置いた。
「ホル・ホースの能力は俺が評価する。こいつの本当の才能はスタンドや諜報じゃない。
『他人の能力を上手く生かす』ことに価値がある。“1番よりもナンバー2”!で名前を残した有名人はいっぱいいる。
有能なリーダーには有能な右腕がついていたのはいつの時代も一緒だ。プライドもパワーも使い方を間違えたらカス同然よ。
こいつの事だ。俺たちに話していない有益な情報はまだまだいっぱいあるはずだ。大方、別の『旦那』がいる」
「なんだと!? てめーとんだ二枚舌だなぁ」
「落ち着けアンジェロ。俺はそれでもいいと思ってる。100%信頼できないのがホル・ホースのいいところなんだ。
話さないってのは、自分だけが美味しい思いをするためだけじゃない。
同じ情報でも話すタイミングを間違えるとおいしさが減るのをホル・ホースは知ってるのさ」
J・ガイルに頭を叩かれると、ホル・ホースはニニニと笑った。
冷や汗ひとつかいていない彼の顔は、くぐり抜けてきた場数に対する自信がありありと見て取れた。
「ふーん」
熱した鉄が急に冷えるように、アンジェロは気の抜けた声を出した。
そして椅子から立ち上がり、窓の外を眺めた。
「いい気になってんなテメー」
☆ ☆ ☆
「うわああああああああ――ガボボッ! 」
悲鳴をあげかけた声帯ごと、口の中の粘膜と舌を切りつけ、食道の壁に深く傷を走らせる。
胃の壁を破りぬけてあふれた胃酸が、十二指腸、心臓、肝臓、すい臓を焼付けさせる。
小腸と大腸チーズのように穴ぼこにされ。腎臓と尿道付近も容赦なく切開し、何十本という血管はぶちぶちと千切れた。
痛みと危険の信号を脳が全身に送るがもう遅かった。
内から外に広がる圧力で骨も筋肉も皮膚も風船のようにふくらんで――はじけた。
「ふうううう~~~~~~ッッ」
ずたずたになった死体を見て片桐は大きく深呼吸をする。
「はあああ~~~~~~ッッ」
深呼吸は己の感情の高ぶりを抑えるためである。
彼が抑える感情はホル・ホースへの怒りではない。
「す~~~~~っきりしたぜ~~~ッ! 」
喜びだ。
このバトルロワイアルに来てから、彼は欲求不満だった。
慎重に行動していた分、いい気になってる人間を殺す衝動を我慢していたツケが限界にきていた。
殺し損ねたッ――は論外。
殺したかどうかわからない――も論外。
殺せたかも――それも論外。
「テメーは一瞬、変えたんだよ。“自分は絶対に死にたくない”という気持ちを、“殺されずにすみそう”という余裕になッ!
あ~~スカッとした。やっぱり殺しはこうでなくちゃな! ヒーヒヒヒヒ! 」
自分の手で確実に目の前で死ぬ――それが理想的な正解。
「……何してんだあんた」
大きく背伸びをする片桐に、銃口が向けられた。
「別にお前を殺ってもよかったんだぜホル・ホース。お前にも相当ムカついてたからな。
だがテメーとJ・ガイルのよしみで後回しにしてやったんだッ! どこのアホに媚売ってたのか知らないが、そいつに言っとけ。
“強いスタンド使いに襲われて、なんとか命からがら逃げてきました”とでもな!」
ホル・ホースが構える拳銃『皇帝(エンペラー)』に、片桐のスタンドアクア・ネックレスが立ちふさがる。
「やめとけアンジェロ。ホル・ホースもいきがってんじゃねー」
ホル・ホースは、まだアクア・ネックレスの能力を知らなかった。
ミューミューが飲んでいたコーヒーにアクア・ネックレスが潜入していたことも、彼は知らない。
能力のわからない相手に正面から挑むことは無謀。
「二ヒヒさっすがJ・ガイル旦那。あっしは最初からそんなつもりはねー。厄介な仕事が増えただけでさぁ
アンジェロさんよ、死体の始末はそっちでしてくれや。久々に死体の臭いを嗅いじまった。気持ち悪くてしかたがねえ」
「ホル・ホール、まだ奴らの所には行くな。もう少しお前の話を聞いておきたい」
「……アイアイ・サー」
ホル・ホースはニヤニヤと笑いながら、屋内を出た。
「アンジェロよぉ、お前もうちょっと空気読めや」
「大物ぶんな、カーズに一喜一憂してたテメーに言われたくはねーよ」
「なんだと!テメーだって承太郎が死んで大はしゃぎしてたじゃねーか! 」
「冗談だ。テメーの相棒とやらの力量を見せてもらったぜ。ありゃ使えるな。
『不慮の事故』にあっても汗もかかず顔色も変えないし、あの殺気は本物だった。大したタマじゃねーか」
「いや、どうかな。いつもはもう少しスゴみがあるんだが、ちょっと元気が無かったように感じた」
「へぇ、あれで全力じゃないと。……ま、いいや」
片桐はそそくさと死体の処理を始めた。
「なぁ、その死体どうするんだ」
「もっとバラバラにしてトイレに流す。掃除は任せろ、こういうのは慣れてる」
「……死体処理、手伝わせてくれねーか」
「あん?」
「俺も、その、ヒヒ、しばらく、死体を触ってなかったからな」
「……ヒヒヒヒ、あんたも好きねえ」
【E-4 民家/1日目 午後】
【J・ガイル】
[時間軸]:ジョースター一行をホル・ホースと一緒に襲撃する直前
[能力]:『吊られた男』
[状態]:左耳欠損、左側の右手の小指欠損、全身ずぶぬれ
右二の腕・右肩・左手首骨折(すべて添木つき)、巨大穴に落下したときのダメージあり?
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
0.北上してラバーソールを探す予定だったけど、まずホル・ホースと情報交換
1.アンジェロとホル・ホースを可能な限り利用し、参加者を減らす。
2.自分だけが助かるための場所と、『戦力』の確保もしておきたい。
3.20時にDIOの館に向かう
[備考]
※『吊られた男』の射程距離などの制限の度合いは不明です。
※ヴァニラアイスの能力、ヴェルサス、
ティッツァーノ、
アレッシーの容姿を知りました。
※第二放送をアンジェロに話しました。
【
片桐安十郎(アンジェロ)】
[スタンド]:アクア・ネックレス
[時間軸]:アンジェロ岩になりかけ、ゴム手袋ごと子供の体内に入ろうとした瞬間
[状態]:健康、テンション高 、全身ずぶぬれ
[装備]:ディオのナイフ ライフルの実弾四発、ベアリング三十発
[道具]:支給品一式
[思考・状況] 基本行動方針:安全に趣味を実行したい
0.J・ガイルとホル・ホースを可能な限り利用し、気に入らない参加者を減らす。
1.荒木は良い気になってるから嫌い
2.20時にDIOの館に向かう
[備考]
※アクア・ネックレスの射程距離は約200mですが制限があるかもしれません(アンジェロは制限に気付いていません)
※名簿に目を通しました。
※ヴェルサス、ティッツァーノの容姿を知りました。
※第二放送をJ・ガイルから聞きました。
【ミュッチャー・ミューラー 死亡】
※ミューミューの死体はアンジェロたちに隠蔽工作の処理をされています(少し時間がかかるようです)。
※ミューミューの基本支給品は【E-4 民家】にあります。
※ホル・ホースとJ・ガイルたちが知り合いだったために、
彼らの情報を盗み聞きすることも兼ねて、彼らにジェイル・ハウス・ロックを発動させなかったようです。
☆ ☆ ☆
ホル・ホースは殺し屋である。
依頼を受ければ喜んで引き受ける。
彼はDIOに雇われてジョースター一行を始末するために現れた殺し屋である。
アヴドゥルを討ち取ったときには、彼を罵ってポルナレフを怒らせた。
J・ガイルがポルナレフに敗北したと見るや、迷わず彼を見捨てる。
一度はDIOの背後に銃をつきつけるほど彼はしたたかな男。
“ホル・ホースは仲間にしようかなって最初考えてたんです
連載を続けるうちに仲間になりそうでならないキャラクターがひとりくらいいてもいいんじゃないかって
そのときは巻頭カラーに承太郎たちと一緒に書いちゃった後だったんですけど
もうちょっと活躍させてあげてもよかったですね”
このように語られるのがホル・ホースである。
ミューミューを失ったことで、リゾットチームに溝を作ってしまった。
ホル・ホースなら上手くたちまわるだろう。
あって1日もたっていない女など世界中にはいて捨てるほどいる。
それよりはそこそこ付き合いのある商売仲間を優先する。
理不尽に殺す相手に対し文句を言う資格もないしそのつもりもない。
こんなことは彼の人生で何度でもあった。
しかし
「この気持ちは、なんなんだ……まるで“心が折れちまいそうな気分”だ」
片桐安十郎に対する感情でホル・ホースの心情は揺らいだ。
女を大事にするホル・ホース。ミューミューに対する感情。
大事にしようとしていたオモチャを近所の友人に盗られて壊されたような気持ち。
「ひどいことしやがる……“もったいねぇ”……」
これからミューミューに何をしようか、具体的に考えていたわけではない。
だがいくらでもあった“チャンス”をタイミングを全て潰されてしまったのだ。
“もったいない”という言葉が口から出たホル・ホースは、それを己の本音とみなした。
J・ガイルが連れてきた人物という時点で、読めていたはずだ。J・ガイルは婦女暴行殺人犯。
「気持ち悪い……ぐうう……」
そしてロバート・E・O・スピードワゴンにかけられたシビル・ウォーの呪いで、彼の精神は壊れかけていた。
片桐たちはうまく騙せたが、もはや限界だ。
現在午後3時間近。残り1時間ちょっとで彼の心は完全に折れてしまう。
「お嬢さん、俺は、いったい、どうすればいいんだ」
何も言わず現れた女性にすがりたくなるほど、彼の精神は限界だった。
「知らないわよ」
「ダメだ、この先にいっちゃダメだ、命が、いくつあっても足りねえ」
ミューミューの姿を重ねて扱いた。
彼女を危険な目に合わせまいと、手をつかんだ。
シビル・ウォーのせいで精神を疲れさせられているのに、ホル・ホースは女性への感傷が原因と勘違いした。
「そう、敵がこの先にいるのね? くわしく聞かせて」
哀れなホル・ホースは、最悪の女に優しくしてしまった。
【E-4 外/1日目 午後】
【ホル・ホース】
[スタンド]:エンペラー(皇帝)
[時間軸]:「皇帝」の銃弾が当たって入院した直後。
[状態]:頬、右上腕に裂傷、左肩に銃弾による貫通傷(すべて『メタリカ』による応急処置済み)、貧血気味
[装備]:腹部にダニー(身体的な異常は0だが、あと1時間ちょっとで心が折れる)
[道具]:支給品一式、チューブ入り傷薬、死の結婚指輪の解毒剤リング、ナチス駅の時刻表、不明支給品1(確認済)
[思考・状況] 基本行動方針:生き延びるために誰かに取り入り、隙を突いて相手を殺す。
0.え?
1.スピードワゴンの帰りを待つ。帰ってこないようだったら、方針を変える
2.スピードワゴン、リゾット、J・ガイルが旦那だ!アンジェロみたいなクソは旦那じゃねえ。
3.探知能力を持った者、またはレーダーを探す。
4.このネズミをどうにかしたい。
5.女は見殺しにできねー。
[備考]
※シーザーとの戦闘はみんなに隠すつもり。
※情報交換の際リゾットからブチャラティチームの能力を教わりました。
暗殺チームの名前と能力(
ペッシ含む)は教わっていません。ミューミューの能力は教わりました。
※リゾットの考察メモの内容を聞きました。
※
吉良吉影を『警戒が必要な人物』と認識しました。
※ミューミューと『知り合いの名前』を情報交換しました。名前以外の情報をどこまで伝えたかは次の書き手さんにお任せします。
※ホル・ホース、スピードワゴンの両者は、隕石を見、鉄塔とスペースシャトルの破壊音を聞きました。
※【F-4】でシアーハートアタックの爆音が響きました。ホル・ホースとミューミューには聞こえたようです。
※J・ガイル、片桐安十郎と情報交換しましたが、どこまで情報交換したのかは次の書き手さんにお任せします。
※ミューミューの死で自分が動揺していると勘違いしています。
※ネズミについて(SPWの不明支給品のひとつでした)
このネズミは【アクセル・ROの作りだした“ダニー”】です。出典SBR15巻。 解除方法は原作同様“水で清める”だけ。
ロワでの制限として“心が折れるまでには約10時間かかる”。シビル・ウォーの“罪をおっ被る”という能力は無し。
ダニー自体を破壊する事は出来ます(コミック内の描写より)が腹と一体化しているのでまず無事では済まないでしょう。
上記が記された【説明書】はスピードワゴンが破り、その一部は屋外へ捨て、残りは食べてしまいました。
【山岸由花子】
[時間軸]:4部終了後
[状態]:健康、強い覚悟
[装備]:妨害電波発信装置、サイレンサー付き『スタームルガーMkI』(残り7/10)
[道具]:基本支給品、不明支給品0~1 承太郎の首輪
[思考・状況]基本行動方針:優勝して
広瀬康一を復活させる。
0.情報を聞き出す!
1.吉良吉影を利用できるだけ利用する。
2. DIOの部下をどうにか使って殺し合いを増進したい。
3.正直知り合いにはなるべくあいたくない。けど会ったら容赦しない。
4.一応ディオの手下を集める
[備考]
※エンヤの能力が死体操作であることを知りました。生きた人間も操れると言う事はまだ知りません
※荒木の能力を『死者の復活、ただし死亡直前の記憶はない状態で』と推測しました。
そのため、自分を含めた全ての参加者は一度荒木に殺された後の参加だと思い込んでます
※吉良の6時間の行動を把握しました。
※
空条承太郎が動揺していたことに、少し違和感。
※プッチの時代を越えて参加者が集められていると考えを聞きました。
※ラバーソールのスタンド能力を『顔と姿、声も変える変身スタンド』と思ってます。
依然顔・本名は知っていません。
※スピードワゴンの名前と顔を知りました。
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最終更新:2010年04月13日 21:32