「何故です……!」
テーブルに拳をダンと叩きつけ、我が名を捨てた
ジョナサン・ジョースターは、正面に座す吉良に対し息巻いた。
優雅に紅茶をすする当人とは対照的だ。
「聞いていなかったのか?」
「そうじゃあない……納得できないと言ってるんだ」
隣に位置するディオが煽るも、ジョナサンの視線は吉良に釘付けだ。
テーブルを振動させた結果、供えられた二つのカップから紅茶が僅かに零れたのも気にせず。
差し出された二人とも、全く手をつけていないからどうでもいいのかもしれないが。
「館に正義面して向かってきた輩を一網打尽、誰も来ないことも考えて徐々に南下。これのどこが不満なんだ?
他の二人が出向いてくれる以上、我々が無理に中央に行くこともあるまい」
露払いは他に任せ、自分たちは安全な策をとる。吉良の作戦は大方そんなところだ。
DIOの館は、名の知名度ゆえか非常に人が集まりやすかった。それゆえ施設の構造を知る者、対策を練る者もいるだろう。
そんなところにとどまって拠点にしていたら大丈夫なはずがない、大問題だ。
近くの民家に潜んで隙を窺い、奇襲をかける方が効率がいい。
「三人なんです、攻めにいったって」
「俺もお前も万全じゃあない。治療済みとはいえ無茶は出来ないだろう。道具も分け合えていない」
館に放置されていたデイパックの中身の分配が済んでいないのも、理由の一つだった。
中身があまりにも多いため、館を離れ、休憩を挟んでから中身を確認しようとした。
ちなみにディオは自身の不明支給品の確認は済ませたのだが、ジョナサンは荷物がこれ以上かさばるのを嫌がってか手をつけていない。
ついでに言うなら、馬は集団行動の枷になるので館付近に放置したままだ。
閑話休題。
休み休みの消極的攻め、ジョナサンにはそれが我慢ならなかった。
全てを取り戻そうという義務感、責任感が膨れ上がるにつれ、闘争心が比例する。
だからこの待機という選択が、ディオに宣言したことを嘘にしてしまいそうで苛立つ。
一方、ろくに対案も出ない癖に駄々をこねるのかと、ディオは頬杖をついて呆れを表した。
吉良も抗議をものとせず、紅茶を飲み干し、静かにカップを受け皿に戻して拒否の意を示す。
ジョナサンを戦いに駆り立てる感情に、いちいち付き合っていられないのだから。
勝手に出て行こうとしても、御せない以上は引き留める甲斐がない。
ジョナサンがすっくと立ち上がってみせても、依然として何のアクションも見せなかった。
「あれは……父さん!?」
この一言を聞くまでは。
★
血縁の絆によって位置を感じ取れても、探知機のように正確なものではない。
何故、ジョージはジョナサンの存在に気付いたか。
一言で言うなら偶発的なものだ。
「息子たちと話をさせてもらえないかね」
立ち上がったその時、窓越しにジョナサンと目が合ってしまったからという不運に他ならない。
これでは、不意打ちも何も出来たものではない。
三対一の構図になるのに堂々と侵入したこともあり、嫌がおうにも警戒する。
ジョージに目線を合わせず吐息を荒々しくするジョナサン、じっと見つめるだけで他の挙動を見せないディオ。
一人は対応不可、一人は出方を窺うための待機。
自然、面倒な役割を背負わされ溜息つく吉良だが、返事をしなければ始まらない。
「したければ、すればいいじゃあないか」
「プライベートな事なのでね」
「別の場所までご足労願う、ということか?」
「そうなるな」
二度目の溜息が部屋中に響き渡る。
「……ボケているのか知らないが、一応これは殺し合いだ。貴方にその気がなくても、一人でこの場にとどまるのが心細いのは分かるでしょう」
吉良は申し出を却下する。
平穏を求め保身に走り続けた彼が、この訪問を罠、策略の布石と考えるには充分過ぎた。
と言うより、要求だけ突き付けるのは常識で考えてもわがままが過ぎる。
「一人ならいいのだろう?」
吉良にしてみれば、ディオのこの提案は軽率だったろう。
「わかっているのか?」
「悪いようにはしない」
小声で、当たり障りのない会話が行われた。
角度からしてジョージから吉良の顔は見えていないが、その眼、鬼さえ怯む剣幕。
ディオが持つ生来のプライドの高さは有り余るほどに見せつけられた。
そんな彼が片腕を奪われた仇敵に、牙を向けぬ道理はない。
急ごしらえの同盟など頑丈な一枚岩ではなく、踏めば砕ける薄氷も同然。
ジョージの望み通りディオが吉良の眼に入らないところへ行けば、裏で何をされるか分かったものではない。
「第一、ジョナサンのフォローをわたしにしろと?」
「姿さえ見えなければ、動揺は収まるだろう。もう一度言うが、悪いようにはしない」
再度、念を押す。
悪いようにはしない――同盟の目的には反しない、という解釈でいいのか。
どうあれ、先方が策を用意していたとしてもこれで斥候になるし、知り合いとの邂逅による安堵も手伝って油断が生まれるかもしれない。
最悪、飼いならせないディオは犠牲になってもらうという見方もある。ジョナサンは従順ではないが同盟の利を捨てる真似はしないだろう。
その言葉忘れるなよ、と吉良は呟いて、元通り紅茶を嗜む。
迷子になった幼児のようにおろおろするジョナサンを尻目に、ディオはジョージを引っ張り外へ連れ出した。
舞台は、湖のほとりに移る。
奇襲を防ぐためにも、視界が開けたところでの対話が良好だった。
『ホワイトスネイク』の視聴覚を駆使し、外敵や伏兵がいないのも確認。
もしや無策でここまで来たのかと、ディオは半ば呆れる。
どうしてこんな調子で今の今まで生き残れてきたのだろう。馬車の事故で生き残った強運は本物だったということかと思いながら。
ジョージは湖をじっと見つめる我が子の異変に気が付いた。
自分ではない、本来の親から授かったものが無くなっているではないか。
「ディオ……おお、ディオ。腕は平気か?」
「自分の心配をしてください。あんな無茶をして……僕が出なければ、どうなっていたことか」
愛息子は冷たく切り返す。
しかし冷たさの中にも気遣いが感じられ、己が無謀を反省したのか、ジョージは罪悪感を目くばせする。
スタンド、性格、習性――どれをとっても他に類を見ない危険人物がいたのはジョージも理解していたのに、行動を優先したことを後悔して。
「
吉良吉影、だったか。ジョルノ君から聞いた話では」
「ジョルノに会ったんですか?」
「うむ。警戒すべき人物とも聞いている」
分かっていたのにか、となおさら呆れる。
ハッタリが効いたからいいものの、吉良がジョージの特徴を把握していたら死体が一つ出来あがっていただろうに。
いや、用心深さを逆手にとっての行動だろうか。
「それに、ジョナサンも同様に、殺人に手を染めたと」
「……それは、初耳です」
表向き、沈痛な面相を作るディオ。
ジョナサン本人が、殺しをチェスの駒を減らす感覚で言ってのけたのだから、いまさら驚愕に値しない。
ああそうだったのか道理でなあ、ぐらいの感想か。
「ディオ、教えてくれ。ジョナサンに何があったのだ? なぜ、お前たちは吉良吉影と同行している?」
歪んだ表情の裏で画策する。
ここからの応対が、いわゆる分水嶺。
何としても信頼を勝ち取らねばならない。味方にならなければならない。
だが、おそらくジョージはどんな現実を突き付けられてもジョナサンを擁護する。
ジョルノに話した時みたいに、悪行を捏造してあいつはとんでもない悪党だから懲らしめてやろう、という説得は効率的でない。
ゆっくりと顔を上げ、悄然とした声色で説明する。
「詳しいことは分からないですが、ジョナサンは今も殺し合いに積極的です」
淡々と事実を、事実に近いことを突き付けて行った方が効果的だ。
下手に勘ぐられて、追求されても困らないのがいい。
一切の個人的感情を挟まず、傍観者として語る。
「吉影が提案した、人数減らしの協定。ジョナサンは真っ先に参加の意を表明しました。
その場にいたのは僕含め5人。全員乗り気で、腕も吉影に吹き飛ばされた状況、僕だけ同盟結成に反抗するわけにもいきませんでした」
「そんな、事が……」
「話を聞くにジョナサンは、殺し合いをなかったことにしたいようなのです」
「……最後の一人になったあとで、荒木にそれを懇願するということかね?」
「おそらく」
ほとんど嘘は言っていないながらも、あくまで自分は乗っていないということを強くアピール。
吉良吉影の名を利用し、悪印象をジョナサンに集中させる。
ジョルノがディオをどう評したかは分からないが、露骨に煙たがるような様子は今まで無かったはず。
この場でジョージに味方するのはディオだけと思わせる。
ジョージはしばし眉間にしわ寄せ苦悩する。
しかし腹は決まっていたのかもしれない。ディオに顔を向けるまでの時間はそう長くなかった。
「経緯はどうあれ、私はジョナサンを諭さねばならん。紳士以前に、人の道を外れている」
堂々たる宣言。血統に恥じぬその態度。
それはジョージ・ジョースター1世の意志であり、誇りだ。
「僕も、そう思います」
望み通り。思い通り。
ディオは、笑いそうになるのを必死でこらえる。
これといった能力を持たないジョージ相手に、ジョナサンを止めるよう懇願すべきではない。親が子を案じるように、子も親を案じる。
自然なのは『説得』ではなく『誘導』。ジョナサンに対しては実父なのだから責務を感じずにはいられまい。
その感情を引き出させるために、徹底して感情を排したが、功を奏したようだ。
かくしてディオの望みどおり、ジョージから理想的な決断を下させることができた。
あとは、その正義感に乗っかって、共感してみせればいい。
それに、それほどディオは自分の気持ちに反していない。ジョージの言葉には同意できる。
人の道を外れている、という部分に限定すれば。
「同盟に加わるふりをしてください。一先ず僕が執り成して、上手く仕向けてみます」
「大丈夫かね?」
「昔のディオより成長したんです。やってみせますよ。それより」
少年期の間だけとはいえ、それなりの付き合いだ。
ジョージは、続く言葉を察したらしい。
「心配は有難いがね。私は、お前たちの親だ。二人とも、今はもうそんな年ではないかもしれないが、私は親としての責任を果たしたいのだ」
「分かっています、お父さん。ですがもう無茶はしないでください」
ディオの言葉に、ジョージは目を見開いてひどく驚いていた。
何かミスがあったかとディオは内心焦ったが、自らの一言を反芻しすぐに思い出す。
両者にある歳月差を考慮に入れ忘れていたことに。
「お父さん、か……。君の口からその言葉が聞けて、私は幸せだよ」
「……そういえば、正式な養子になるまではジョースター卿と呼んでいましたね」
「未来――君にとっては過去なのだろう、その間堅苦しい思いをさせたかもしれないが……立派に成長してくれたようだね」
理由は別だが緊張が緩和され、お互い笑みがこぼれる。
悲劇の中にあるちょっとした喜劇、ジョージは時代の差がもたらした恩恵に僅かだが感謝することとなった。
しかし、教育者としての本分を忘れたわけではない。
「感慨にふけっている暇はないな。ジョナサンの元へ行かなければ」
「いえ、あなたが望むなら言ってあげますよ」
踵を返し、背を向け、愛するもう一人の息子の元へ向かうジョージにディオが言う。
言葉の意味を分かりかねたジョージが振り返る――
「さよなら、お父さん」
――より早く、『ホワイトスネイク』の手刀がジョージの首元に振るわれる。
うつろな瞳を携えた頭蓋が大地を転がる音は、やけに重たく聞こえた。
★
説明するまでもないかもしれない。
だが、このままで終わらせるのも無粋だ。
当初ディオは、ジョージを見つけることがあれば保護、利用することを考えていた。
利用とは、当然ながら、こちら側にメリットがなければならない。
ではここで、ジョージにそれがあったか振り返ってみよう。
武器、道具は全くなく、スタンドのような超越能力の類もない。
敵対していないジョルノにさえ会えば、ジョージの持っていた情報は手に入る。
そのくせ、息子を案じるだけで説得の策さえ立てられないただのお人好し。
他の参加者に勝る要素がどこにあるか――まるでない。全くの足手まとい。
ディオがそう判断するに足る根拠がそれである。
そしてディオは、更に先を見据えてジョージを殺めたのだ。
ディオは殺し合い以前、ジョースター家の遺産を相続するために暗躍していた。
あくまで合法的に遺産を奪い取る、そのつもりで。
『ホワイトスネイク』を手に入れ、その力を把握した途端、ディオの思考は一変する。
記憶の操作、思考の改ざん、命令――証拠隠滅に使えそうなものが、これでもかと揃っているスタンド。
資産を奪い取るどころか、執事召使い全てに至るまで自分の思うまま。
スタンドは法で裁けないのだから、もはやここで合法だの違法だのを問うのは馬鹿らしい。
ちょうど、人間をやめ、吸血鬼になったころと同じ思考にディオは行き着いた。
利用価値がない。
遺産の相続にも、必要無くなった。
脱出をするという観点でさえも、ただの人間ジョージ・ジョースター1世は不要で無能で役立たず。
ジョージの信頼を欲したのは、背中を見せる隙を作るためで、それ以上の意味はない。
犯人が自分であるという証拠を一切残させないように、一瞬で殺すため。
『ホワイトスネイク』の完全発現からそう経っていないこともあり、大きな隙を作りだすことで保険を掛けた。
それだけ。
ここまで書いたのなら、質問するまでもないかもしれない。
だが、分からず家のためにあえて聞こう。
『ディオ・ブランドーがジョージ・ジョースター1世を殺害しない理由がどこにある?』
解が何であれ、決着はついている。
ジョージ・ジョースター1世は、愛を注いだ息子たちから必要とされず、その生を終えたという決着が。
★
「父さんは?」
「死んだよ」
日がな一日行われる挨拶の一つのように、えげつない一言が交わされた。
誰一人、眉一つ動かさない。
それもそのはず、彼らにとっては、同じ立場ならいともたやすく行ったであろう行動でしかない。
「そうだね。元あるべきところに帰ったんだ。父さんはそうなるべきだったところへ、戻っただけなんだよ。ただ……元に」
ジョナサンの狂言を気に掛けず、ディオは思索を巡らせる。
『参加者を殺して回る、この過程において、我々は絶対に協力し合う』
『他の参加者が全滅したのち、最後に残った同盟者同士で殺し合う』
『各々、最後まで同盟者には手を出さない』
吉良が挙げた同盟の規約、三箇条。実は決定的な穴があった。
同盟者同士を守る必要がない。
他の参加者が全滅するまでこの同盟が勝ち残る――全参加者の6分の1では、自信はあるもののいささか夢想ではないかとディオは考える。
優勝を目指す立場に同席している以上、徒党に襲われる可能性が高いのは吉良が言った通り。
不利だからといって簡単に寝返れるわけでもなし、数の暴力に追い込まれる可能性は否めない。
それに、吉良とジョナサン、二人に参加者を減らしたい事情があるのだから、重要なのは『いかにして殺すか』ではなく『いかにして自分の傷を減らすか』である。
と言っても役立たずを減らしたい気持ちはあり、交戦回避ではなく、攻撃が自分に集中しない手段を必要としていた。
攻撃を逸らすには、矛先を自分以外の誰かに向ければいい。
つまり、ジョージ・ジョースター1世殺害の罪を、ジョナサンか吉良になすりつけるということ。
これで同盟者に手を出すことなく、同盟者を攻撃することが可能。
うまくいけば目の上のたんこぶである吉良を誰かが始末してくれるかもしれない。
「だって、父さんを殺したのは僕だからね」
ジョナサンがこうなのだから、彼の方に罪をなすりつけるのは簡単だろう。
二人の間に何があったかは知らないが、ジョナサンはジョージを殺したと思い込もうとしているようだ。
ならば、その妄想を後押ししてやることに何ら抵抗はない。
「わざわざ別の場所へ移る必要もなかったと思うが」
「証拠の隠滅をしたかっただけだ。帰り血も浴びたくなかった。これも役に立ちそうだしな」
吉良はジョージ殺害を疑わなかった。
ディオが手にする銀色の輪、ジョージに課せられた首輪がその証左なのだから。
それも、ディオが罪を被せるための一手段であることも知らず。
「死体なら今頃、手錠に掛けた重りと一緒に湖の底だろう。気になるなら泳いで確認しろ」
「……何か隠し事をしているわけじゃあないよな?」
「死体が見つかるのは俺としてもまずいんでな。ああ、それに奴の記憶を見てもろくな情報はなかったと思うぞ。
もっとも記憶を奪ったところで、貴様にそのDISCを挿す勇気があるか?」
「……チッ」
我が子に盲目な父親、ただそれだけの存在でしかなかった。
人数減らしに役に立つ情報を得たなら規約に則って明かすだろうし、どうせ数は減らさなければならないのだから吉良としても未練はないだろう。
ディオ・ブランドーは吉良の望み通り、同盟の規約に従っただけだ。
従うまま、吉良の掌で踊らされるままのつもりはないのだろうが。
(誰が素直に従ってやるものか。繋いだ手が消し飛ばない保証がないというのに)
毒殺という回りくどい手段でなく、直接的な殺害に及んだディオ・ブランドー。
罪悪感はわかない、どの道こうするつもりだったのだから。
しかし、心の中のどこかが曇る。
(……だがこうまですれば、未来の俺と、今の俺、さして変わらないだろうな)
本来の未来、夜の支配者になった自分が絶対的な力を持つ存在だとは察しがついていた。
こすずるい変装男、
ラバーソールが畏怖するほどに悪逆非道の限りを尽くし、かの城に君臨していたのだろう。
そして今。質は異なるものの、超常の能力――側に立つ者を従えた彼は、容赦なくジョージの首を刎ねた。
事態が事態だ、表立って殺人を犯すのに、もはや抵抗はない。
もやのかかったような気分の原因は別にあった。
自分は、吸血鬼ではなくとも、その思考、人間ではなくなっていくのではないかという懸念。
リンゴォ・ロードアゲインに、訳も分からぬまま殺されかけたことに端を発し。
スタンドを持たない“人間”として、普通の“人間”よりも徹底的にあがいてやろう、と粋がったはいいものの。
祖父の敵と、見知らぬ男に未来の因縁を押し付けられ。
あげくラバーソールと由花子に、謀略の一ピースとして扱われるという人生最大の屈辱を味わった。
その過程で、どれほど力に焦がれたものだろう。
どれほど己の、人間の能力の限界を思い知らされただろう。
――どれほど『人間を超越したい』と考えただろう。
スタンドを使いこなすたび、精神に馴染むたび、新たに得た能力に魅せられ酔いしれ、人間であることのアイデンティティーが失われていった気がする。
完全に、ではない。ただ、人として本来あるべきものが知らず抜け落ちていったのを今回の件で実感する。
思い起こせばスタンドの剛腕を振るうたび、自らの無力による苦い経験が洗い流されるような気がした。
スタンドは従えるものなのに、段々と自分がスタンドに従っているみたいになっていく。
ひとたびタガを外せば、別の何かになれてしまいそう。
人間の超越――それが何を意味するかは今のディオにはよく分からない。
(人の道を外れて、人を超える……それもいいかもしれないな)
だがディオは、遥か昔から求めてきたような、待ちかねたような感触を噛みしめるのに今は夢中だった。
果たしてディオ・ブランドーは今後、何者になるのか。なろうとするのか。
もしかしたらその思想、完全に『人間をやめて』しまうかもしれない。『やめてしまえる』かもしれない。
ひとたびタガを外せば、その先はいともたやすく――
【ジョージ・ジョースター1世 死亡】
【残り 29名】
【D-4 北部/1日目 夜】
【吉良吉影】
[時間軸]:限界だから押そうとした所
[状態]:左頬が殴られて腫れている、掌に軽度の負傷、爪の伸びが若干早い
[装備]:ティッシュケースに入れた角砂糖(爆弾に変える用・残り4個)、携帯電話、折り畳み傘、クリップ×2 、ディオの左手
[道具]:ハンカチに包んだ角砂糖(食用)×3、ティッシュに包んだ角砂糖(爆弾に変える用)×7、ポケットサイズの手鏡×2
未確認支給品×0~2個、支給品一式×2、緑色のスリッパ、マグカップ、紅茶パック(1/4ダース)、ボールペン二本
[思考・状況]
基本行動方針:植物のような平穏な生活を送るため荒木を含む全員を皆殺し。
0.少しずつ南下。中心地へいきなり飛びこむことはしない。
1.植物のような平穏な生活を送るため荒木を含む全員を皆殺し。ただし無茶はしない。
2.手を組んだ由花子と協力して億泰、早人を暗殺する。ただし無茶はしない。
3.危険からは極力遠ざかる。
4.利用価値がなくなったと思ったら由花子を殺して手を愛でる。
[備考]
※バイツァ・ダストは制限されていますが、制限が解除されたら使えるようになるかもしれません。
※プッチの時代を越えて参加者が集められていると考えを聞きました。
※シアーハートアタックに何らかの制限がかかっているかは不明です。
【ディオ・ブランドー】
[時間軸]:大学卒業を目前にしたラグビーの試合の終了後(1巻)
[状態]:内臓の痛み、右腕負傷、左腕欠損(波紋と、ジョナサンが持っていた包帯で処置済み)、ジョルノ、シーザー、由花子、吉良(と荒木)への憎しみ
[装備]:『ホワイトスネイク』のスタンドDISC
[道具]:ヘリコの鍵、ウェザーの記憶DISC、基本支給品×2(水全て消費)、ジョージの首輪、不明支給品0~1(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:なんとしても生き残る。スタンド使いに馬鹿にされたくない。
0.未来の俺と今の俺、さして変わりないな。
1.ジョージ殺しの罪をジョナサンか吉良になすりつける。
2.吉良が憎い憎い。ジョナサンの様子が気になる。
3.吉良は絶対に殺すが、今は同盟の規約を守る。
4.スタンド使いを『上に立って従わせる』、従わせてみせる。だが信頼などできるか!
5.ジョルノ、由花子に借りを返す
6.ジョナサンには最終的には死んでほしい
7.ジョルノが……俺の息子だと!?
[備考]
※見せしめの際、周囲の人間の顔を見渡し、危険そうな人物と安全(利用でき)そうな人物の顔を覚えています
※ジョルノからスタンドの基本的なこと(「一人能力」「精神エネルギー(のビジョン)であること」など)を教わりました。
ジョルノの仲間や敵のスタンド能力について聞いたかは不明です。(ジョルノの仲間の名前は聞きました)
※ラバーソールと由花子の企みを知りました。
※『イエローテンパランス』の能力を把握しました。
※『ホワイトスネイク』の全能力使用可能。頭部を強打されればDISCが外れるかもしれません。
【ジョナサン・ジョースター】
[時間軸]:エリナとのハネムーンでアメリカに向かう途中の船上で
ワンチェンと遭遇する直前
[状態]:波紋の呼吸、唇と右手から少量の出血、鼻の骨折、右肩と左ももに隕石による負傷、額に切り傷
頬がはれてる、内臓にダメージ(中)、身体ダメージ(大)(いずれも波紋の呼吸で治療中)、ブチャラティの眼光に恐怖
[装備]:“DARBY'S TICKET”、サブマシンガン(残り弾数80%)
[道具]:デイパック*3、不明支給品1~5(全て未確認)、メリケンサック、エリナの首輪、エリナの指輪、ブラフォードの首輪、
ダニーについて書かれていた説明書(未開封)、『プラネット・ウェイブス』のスタンドDISC
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、荒木に全部なかったことにして貰った後、荒木を殺す
0.――――ただ、全て打ち砕くだけだ、勿論ディオ、君も。
1.同盟の規約を守る。
2.父さんはそうなるべきだったところに戻っただけなんだ。
【備考】
※ジョージ・ジョースター一世を殺したと思い込もうとしてます。
※参加者が時間を超えて集められた説を聞きましたが、今は深く考えていません。人間のディオを懐かしがっている程度です
※ジョージ・ジョースター1世の死体は手錠、冷蔵庫と共に【C-3】の湖に沈められました。頭部は湖の近くに埋葬しました。
支給品は両方ともプッチ神父のものでした。
※【C-4 DIOの館 門前】にヨーロッパ・エクスプレスが放置されています。
※三人はラバーソールのデイパック (支給品一式 ×5(内一食分食料と方位磁石消費)、ギャンブルチップ20枚、ランダム支給品×1、
サブマシンガン(消費 小)、 巨大なアイアンボールボーガン(弦は張ってある。鉄球は2個)、二分間睡眠薬×1、剃刀&釘セット(約20個))
を共同で所持しています。
【冷蔵庫】
3部からの出展。呪いのデーボが出てきたアレ。人が一人入れるんだからそれなりの大きさがあるんだと思う。
ちなみに中身はない。出して片付けてないということもない。
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最終更新:2011年02月05日 15:27