男は物陰から少年を見張っていた。
ターゲットはいかにもアホ面をさげた学生。
男の名はペッシといった。バッショーネを裏切った元暗殺チームの一員である。

(ちくしょう…、どうなってんだよ!アイツらのスタンド能力か?
 アイツらの仲間にこんな能力を使う奴がいるなんて聞いてねぇぞ!
 兄貴ィ! どこ行ったんですかい!? …いねーのかよォオッ!)

ペッシは焦っていた。
彼はネアポリス駅のプラットホーム、プロシュートの兄貴と共にブチャラティ達をはさみ撃ちにする予定だったのだ。
そして列車の中から1号車に向かい……、気づくと薄暗いホールにいた。
後は知っての通りだ。
わけのわからない男がいきなり女を殺し、『殺し合い』を始めろと言う。
そして今、自分は『ここ』に飛ばされていた。

与えられた名簿の中には、プロシュートの名があった。
他にもリーダーのリゾットやギアッチョ、そしてホルマジオ……。
ペッシにとっては心強い面々だ。(ただホルマジオはヤられたと聞いていたが。)
だが問題はそれだけではないのだ。名簿にはブチャラティたちの名前も入っていた。
ペッシはブチャラティたちの顔を写真が穴のあくほどながめたが、彼らはペッシの顔を知らない。
このゲームでブチャラティたちが自分を刺客だと認識するのは不可能だ。
しかし!万が一!自分の正体がバレたとしたら…!!


(あ~くそッ。どうしよう~どうしよう~。オ…オレ…ど…どうすれば…?

 それによぉ、コイツはどうするんだ?
 ブッ殺しちまうのか? 俺が? 一人で?
 ああ~どうすりゃいいんだよぉう。兄貴、教えてくれよ、兄貴ィ。)

「おまえ!そこで、なにしてるど!?
 いいか!おまえッ!動くんじゃねーどッ!」

思案するペッシを現実に引き戻したのは、アホ面の少年の声だった。
少年は真っ直ぐ自分に向かってくる。間違いない。奴は自分に気づいているッ!!

(…どういう事だっ!?何でオレの居場所がバレてんだッ!)

ペッシは混乱した。
なぜバレた!? ちゃんと隠れてたはずだ!
いくらオレでも、あんなアホそうなガキに見つかるわけがねえ!

         ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

だが…、『それ』はペッシの足元にいた。
数体の『ハーヴェスト』がペッシを取り囲んでいたのだッ!

「!! ぜ…ぜんぜん気がつかなかった! 何だぁ、このアリンコみてえなのはッ!? 
 それも1匹じゃねぇッ! こ、コイツもスタンド使いだッッ!!
 ち、チクショウッ! やるしかねぇッ! ブッ殺してやる! ビーチ・ボーーイッッ!!」

   シューz____________ッ!

『ビーチ・ボーイ』の『針』は一直線にガキに向かうッ!
いきなりスタンドで攻撃されると思わなかったのか、
奴はただ自分に向かってくる『針』を呆然と見ていることしかできない。

(よしッ! くらいついたぜッ!)

「ば、馬鹿にするんじゃないどッ! こんなのでオラがやられるわけねーどッ!」

アホ面のガキがそんなことを騒ぎ出す。
だが関係ねぇ。このまま釣り上げてやるぜッ!!

ビュンッ!!

ペッシはそのまま釣竿を引っ張る。
その刹那、100kgはありそうな少年の体が宙を舞った。
そして少年はそのまま地面に打ちつけられ……、ることはなかった。

「こ、コイツ……!」

少年と地面の間に、さっきの『アリンコ』がいた。
地面に激突する瞬間、『ハーヴェスト』たちが重ちーの体を支えたのだ。

ドドドドドドドド……………

「…舐めるんじゃねーど。 オラの『ハーヴェスト』は無敵だど。
 お前なんかに負けるはずないどッ!!」

『ハーヴェスト』は、ますます増殖を続けていく。
その数は、10体…20体…30…40…50……、…もう数え切れねえッ!

「ち、ちくしょーッ!
 何だッ、そそそ…その数はッ!?  だがもう遅せぇ!
 今『針』はおまえの心臓にまで到達するところだーッ! このままブッ殺してやるッ!!」

ペッシは腕を振り下ろし、『針』を重ちーの心臓へと潜り込ませる。
これでもう終わりだ! コイツはこのまま死……、


…その瞬間、ペッシは『ある事』を思い出した。
(あれ…?そういや俺…)ドクン
(初めて…人を殺っちまうのか?)ドクンドクン
(プ、プロシュート兄ィ、オ、オレどうすれば…!)ドクンドクンドクン!!


『針』の動きが一瞬止まる。それは本当に『一瞬』の事だ。
もう『針』は心臓に到達した。あとは『トドメ』を刺すだけなのだ。

ドスゥ!!


…そして頭に響く鈍い音がした。

「あひィィィえええやややああああ!! お、オレの目玉があああぁぁぁッッ!!!」

あまりの痛みにペッシは止めを刺すのも忘れ絶叫した。
そう『ハーヴェスト』がペッシの目玉を殴りつけたのだ。

「うわあああああッッ。なんて事をしやがるんだああああ!
 く、クソッ…! 早くトドメを……、『ビーチ』……。」

だが、もうすでに遅かった。

「なっ、ど、どうなってんだ…このッ…!! は、離れやがれ…!」

無数の『ハーヴェスト』たちが、ペッシの動きを封じる。
そして、腕をとり…足を払い…体を倒し…全身を覆い………、

「(ヤバイ)ハァハァ、オ、オレたちはもう、あとには…
 オレたちのチームは(ヤバイヤバイ!)…娘を手に入れ…
 オレは…オレたちは『栄光』をッ(ヤバイヤバイヤバイ!!)…!
 ・
 ・
 ・
 うわあああアアアアああああああぁぁぁぁ!! 兄貴ィッ!
 やっぱりオレじゃ駄目だああぁぁぁ! プロシュート兄貴ィッ!助けてくれよおおおぉぉッッ!!!!!!」


大声でプロシュートの名を叫びながら…、ペッシの意識は途絶えた。



矢安宮重清は後悔していた。
そして今、彼は自分を襲った男の最後の言葉を思い出していた。

「こ、コイツは、最期に『兄貴』と言ってたど…。
 つ、つまり…。コイツにも、パパがいて…、ママがいて…、兄ちゃんがいるんだど…。
 コイツを倒すと…、コイツのパパやママや兄ちゃんを悲しませてしまうんだど。

 オ、オラは…とんでもない事をしてしまう所だったど!」



目を覚ますと、空はまだ暗かった。
どうやら自分が気を失ったのは一瞬のことだったらしい。
周囲を見渡すと、まだそこには『アリンコ』たちが取り囲んでいた。

「ひ、ひィィッ! て、テメーッ! 何のつもりだッ! オ、オレは何も知らねーぞ!」

思わず少年を威嚇する。
だが少年の様子はさっきまでとは異なっていた。

「一つ質問するどッ!
 お前、このゲームで『殺し合い』をするつもりかどッ?」

予想外の質問にペッシは考える。
そういえば、これから『どうする』のか、自分は全く考えていなかった。

あの男は、『殺し合え』と言った。そして『勝者』だけが『自由』を手にできると。
「オ…」
ならば自分は、男の言うとおり『殺し合い』を始めるべきなのだろうか?
「オ、オレは…」
プロシュートや他の暗殺チームの仲間を殺し…、自分だけが『勝者』になると……。
「オレは…兄貴と…」
いや、そんなことは! オレには、あ・り・え・な・い!! そうだッ!『オレたちのチーム』は栄光をつかむんだッ!!

ペッシは心の底から叫んだ。
「オレは! 兄貴と! チームの仲間と! 荒木をブッ殺すッッ!!!」

(はあ~~。
 兄貴…、勝手に仲間なんて作っちまってやっぱ怒るだろうなぁ…。
 でもよう、許してくれよぉ。兄貴ィ。 
 オレは兄貴と違って、覚悟が足りねぇからよお。一人じゃ不安なんだよお~。)

オレは、コイツとチームを組むことにした。
初めはコイツからの提案でだったが、オレもそれを受け入れた。
コイツの名前は、『矢安宮重清』というらしい。
言いにくいので、コイツが言うようにオレも『重ちー』とあだ名で呼ぶことにした。


「あん…これはなんて読むんだ? 『じょうじょ』…?」

そして今は情報交換をしている。
コイツは漢字が読めねぇらしいので、オレが参加者の名簿を読み上げてるってわけだ。
(ん、ところでオレって漢字読めたっけ?…まあいいか。)

今まで挙げた名前で重ちーの知ってる奴は、『ジョセフ・ジョースター』のみ。
しかも会ったこともないうえに、ヨボヨボのじじいって話だ。

(はああ~。よりにもよって、『仲間』がこんな『マンモーニ』なんてよぉ…。
 知り合いもほとんどいねえみたいだし、字すら読めねえなんてよぉ。)

だが嘆いてもしょうがねえ。チームになったものは仕方ねぇんだ。
気を取り直してオレは名簿の読み上げを続けた。

「いや…、これは『助(たす)ける』って読むのか? ってことは、東方仗助(トウホウ・ジョータス)?」
 …残念ながら、重ちーの反応はない。続けて名前を読み上げる。

「空条承太郎、虹村億泰…」 
「億泰だど!」

重ちーがひときわ大きな反応を見せる。
どうやら『仲間』らしい。馬鹿だが強力なスタンドを使うって話だ。
(…まあコイツに『馬鹿』って言われるくらいだ、期待はできねーけどな。)
あと空条承太郎も知ってるそうだ。ただこっちも面識はないみたいだが。


ひとしきり情報交換を終えた後、オレたちはこの場を離れることに決めた。
おっと、だがその前に重要なことを忘れていたぜ。

「チームを組む以上大切な事を決めなきゃならねえ。
 どうやらテメエの方が年下みてえだからな。
 いいか! 今からテメエは弟分! オレが兄貴だッ!」

オレは重ちーに向かい宣言した。

「うしし…。わかったど。」

(…コイツ本当にわかってんのか?)

「あ、そうだ。
 これあげるど、ペッシ。友達の証だど。」

「だ~ッもうッ! 呼び捨てにするんじゃねえ!
 …って、お前その小銭どこから出したんだ? 拾ったのか?」

「バッグの中の紙から出てきたど。
 まだ2枚入ってるけど、残りは後のお楽しみだど。」

「!! 紙が入ってるなんて、ぜ…ぜんぜん気がつかなかった!」

オレたちのロワイアルが始まった。


【G-3・1日目 深夜】

【2人のマンモーニ】

【ペッシ】
[時間軸]:ブチャラティたちと遭遇前
[状態]:左目に痛み(幸い眼球には異常なし)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品(数不明)
    重ちーが爆殺された100円玉(爆弾化しているかは不明。とりあえずは爆発しないようです。)
[思考・状況]
1.チームの仲間(特に兄貴)と合流したい
2.荒木をブッ殺す
3.ブチャラティたちをブッ殺す(でもできれば会いたくない)
4.娘(トリッシュ)を手に入れる


【矢安宮重清(重ちー)】
[時間軸]:「重ちー」の収穫終了後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]
1.大事な人達を守る。打倒荒木。
2.億泰に会いたい
3.ゲームに乗った奴は倒す。
4.ブチャラティたちは悪い奴
[備考]
※ 重ちーは漢字が読めません。
※ 重ちーは仗助がロワに参加していないと思っています。

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03:小さな誓い 矢安宮重清 58:釣る者、釣られる者
ペッシ 58:釣る者、釣られる者

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最終更新:2008年09月02日 21:13