もう一人ぼっちじゃない
貴方がいるから















☆ ☆ ☆




「――ブ、ブチャラティ!?」
「……ルーシー・スティール?なぜここに!?」


薄暗い洞窟の中で出会ったのは、自分の見知った少女――トリッシュ・ウナだった。
可能性として考えなかったわけではない。
ジョルノが死に、自分もこの場に存在する。
先ほどの襲撃者は、(直接面識があるわけではないがジョルノらからの情報から察するに)組織・暗殺チームの氷使い『ギアッチョ』である。
わかっているだけでも、これだけの数の関係者が巻き込まれている。
ミスタとナランチャの2人や、もしかしたらフーゴも、この場に招かれているかもしれない。
だが、トリッシュまで巻き込まれていたとは。
何も知らない、ただの町娘だった彼女が、こんな血生臭い催しへと。

ある意味で彼女の顔は、この6時間の間でもっとも見たくないと思っていた顔だ。



「……彼は?」
「大丈夫よ、ウェカピポさん。知った顔だから…… 私に任せて」

向こうは2人……いや、トリッシュは誰か小柄な人間を背負っているようだ。とすると3人か?
ともかく、傍らの男が懐に手を伸ばしながら此方に警戒心を見せる。
そしてそんな彼を、トリッシュが制した。
2人の様子を見るに、トリッシュはここで信頼のおける仲間を得ていたようだ。
本当に良かった……。それも運のいいことに、ルーシーの知り合いでもあるようだ。

だが、トリッシュの様子がいささか妙だ。
ウエイトレスの衣装に男物のコートを羽織った珍妙な格好のことではない(多少気になりはしたが)。
おかしいのは、彼女の俺に対する態度。
初めに俺の姿を確認した時は、唖然とした様子だった。それからという物ずっと怪訝な視線を向けてきている。
出会ってまだ一週間も経っていない彼女だが、この数日である程度の信頼関係を築けてきたつもりだったのだが。

「………トリッシュ。よく無事で―――――」
「待ってブチャラティ!」


ともかく、トリッシュに話しかけ近づこうとする俺を、彼女の大声が制止した。
あまりの迫力に押し黙る俺に対し、トリッシュは落ち着いた口調で話し始めた。


「ごめんなさい、ブチャラティ。あなたに言いたいことや聞きたいことはたくさんあるのだけれど……突然、あなたと再会して、少し混乱しているの。
それに、『あの男』が言っていたことが本当ならば、もうじき―――」

そう言ってトリッシュはちらりと、支給された懐中時計に目をやる。
ああ、そうか。追っ手から逃げることに必死で気が付かなかった。
もうじき午前6時になる。
『放送が六時間ごと』という主催の男の言に従えば、最初の放送とやらがもうじき始まる。

「―――わかった。詳しい話を始めるのは、そのあとだ」


一定の距離を保ったまま、俺たちは言葉を交わすこともなく放送の開始を待った。

黙って睨み合いを初めて3分と経たぬ頃、どこからともなく五羽の鳩が現れた。
かと思うと、それぞれの手元に紙切れを落としていき、そのままどこかへ飛び去って行った。
なるほど、これがあの男の言っていた『名簿』か。
そして、そこに並ぶ膨大な数の名前に目を通す間もなく、6時間ぶりに聞く、バラエティテレビのMCを彷彿とさせる『あの男』の声が聞こえてきた。







『―――――この放送は私、スティーブン・スティール、”スティーブン・スティール”がお送りした。
諸君、また6時間後に会おう!君たちの今まで以上の健闘を、私は陰ながら応援しているッ
それではよい朝を!』


そのように締めくくられ、放送自体は滞りなく終わった。
俺はトリッシュの様子を伺いながら、車のボンネットの上に名簿と紙を広げ、メモを取りながら聞いていた。
ルーシーは俺の後ろに隠れながらじっとしており、ウェカピポと呼ばれていた彼も離れたところでこちらを警戒しつつメモを取り放送を聞いていた。
そしてトリッシュはその一切をウェカピポに任せ、放送が終わるまでの間、じっと俺の姿を見ていた。
睨みつけるでも見つめるでもなく、ただ、じっと。

放送で告げられた犠牲者の数は、76人―――――。
このわずかな時間の間に、76人もの人間が犠牲になったのだ。
当然、中には俺が初めに始末した暴漢の名や、2番目に始末した不気味なスタンド使いの名も含まれていたのだろう。
だが、ルーシーやトリッシュのようなどこにでもいる善良な市民も犠牲者の中にはいただろう。
名簿を見るに、参加者は全部で150人。
たった6時間もの間にその半数が死んでしまったという事実。

想像以上に過酷なサバイバルゲームが展開されている。
期間は3日間とあの男は言っていたが、このままのペースでいけば24時間もしないうちに、ゲーム参加者は一人を残し全滅してしまうのではないか?

いや、させない――――
何としてでも、俺がこの手で食い止めてみせる――――――



それにしても、この『放送』と『名簿』には不可解な点が多すぎる。
ミスタ、ナランチャ、そしてフーゴの名前が呼ばれなかったことには心底安心したが、名簿には、すでに死んだはずのジョルノとアバッキオの名も記されている。
さらに、俺が始末したはずの涙目のルカや、プロシュートペッシの名も。
死者が蘇ったとでも?
ルカとペッシの名が呼ばれてプロシュートが呼ばれないということは、死んだはずの人間が、今現在も生きてこの会場のどこかにいるという事か?
同姓同名の他人という可能性もあるが、あのギアッチョの例もある。
そして、既に死者でありながら生き続けている自分の例も……。

気になったことは他にもある。
放送の最後に強調された、あの男の名前……。
『スティーブン・スティール』という名前はルーシーに聞いて知っていたが、名前を繰り返されてピンときた。
そしてウェカピポという男が、さきほどルーシーの名を呼んだ。
名簿を広げ、彼女の名前を探す――― あった。


ルーシー・"スティール"


彼女が隠していたのはこの事だったのか。
彼女の様子を伺うと、ばつが悪そうに顔をそむけ、俯いている。
そして、俺にだけ聞こえるくらいの小声で、「ごめんなさい」と謝ってきた。
この様子だと「姓が偶然同じ名だけの他人」ということはないだろう。
彼女の年齢から察するに、父娘か何かだろうか?
なるほど。安心させようとして俺が言った「主催者を倒す」という言葉が、逆に彼女を苦しませ、言い出せなかったのだろう。

隠し事をしていたのはお互い様だ。
できれば放送前に、彼女自身の口から話させてあげたかった。
そうすれば彼女とともに、スティール氏がこんなことを行っている理由を考えてやることもできたのに。



「……ブチャラティ」


トリッシュが声をかけてきた。
そうだ、後悔しても始まらない。
こうしてトリッシュと無事再会できたのだ。
これからのことを考えなければならない。

「ブチャラティ、この人はウェカピポさん。そっちで寝てるのは……そういえば名前知らなかったわ。ただの変態だから、"変態"でいいわ。
"変態"はただのクソヤローのゴミクズだから無視していいけど、こっちのウェカピポさんは信頼できる仲間よ」

これほどまでに辛辣な言葉を使うトリッシュは初めて見た。
よほど"変態"のことが嫌いなのだろう。よく見れば顔もゲスい顔をしている。彼女に何をしたんだ、この男は?
ウェカピポの方は俺に軽く頭を下げ、俺の後ろのルーシーに目を配る。
彼とルーシーは知り合いなのだろう。ルーシーに直接聞くのも忍びないし、まずは彼からスティール氏のことを聞いてみよう。

「俺はブローノ・ブチャラティ。そちらにいるトリッシュの―――そうだな、"友人"だ。殺し合いに乗るつもりはない。このゲームを止めるために行動するつもりだ」

あえて主催者を叩くとは言わない。
これ以上ルーシーを不安にさせてくはない。
だがギャングであることは、早いうちに話しておかなければな。

「トリッシュ……この男、もしかして………」
「ええ、それについても、聞いてみるつもりでいるわ」

何の話だ?と質問する間もなく、トリッシュからよく意味の分からない質問が投げかけられた。

「ねえブチャラティ、私のことを知っているあなたで心底ホッとしたのだけれど……」
「……どうした?」

そこでトリッシュが言葉を詰まらせる。
何か言いにくいことがあるのか、彼女は押し黙ってしまった。
『私のことを知っているあなた』とは、どういう意味だ?
普通の表現ではない。トリッシュは何を言っている?
自分の中で考えを巡らせる。

そういえば、今自分が話しているトリッシュは、自分の知っている彼女と少し雰囲気が異なっている。
何と言ったらいいのか、とにかく『迫力』があった。
飛行機内での戦いで彼女が『守られているばかりの少女』ではないことは分かったが、今目の前にいる彼女はさらになにか巨大なものを乗り越えてきたかのような風格があっ

た。
外見的特徴も、服装の他に、髪が少し長くなったような気がした。

「……なんだかわからんが、話してみろ。トリッシュ」

俺が再度質問を繰り返すと、トリッシュは慎重に言葉を選びながら、おずおずと話し始めた。

「―――ブチャラティ。こんな聞き方しかできないのだけれど…… あなた、"いつ"のブチャラティなの――――――?」

この質問を皮切りに、俺は様々な事実を知らされることとなる。





☆ ☆ ☆





「オイ、落ち着いたか?」

「………ああッ!」

「なら話を再開する。お前の仲間のホルマジオ、イルーゾォ、ペッシ、プロシュートの4人は間違いなく死んでいた。そうだな?」

「オレが直接確認したわけじゃあねェ。だが、オレの信頼している仲間から得た情報だ。だから間違いねェよ」

「なるほど。で、プロシュートを除く残り3人と、俺たちが看取ったリゾットの名前が呼ばれた。メローネって奴だけ名前がないな? 何故だろうか」

「オレが知るかよ! そんなことより、オレが頭にきてるのは、チームの連中の名前ばかりが呼ばれて、ブチャラティの奴らがまだ誰一人として死んでねえってことなんだよッ!!
どういうことだよこのクソが!!」

「おいギアッチョ。落ち着けと言ったろう? もう二度と言わんぞ? 二度言うことは無駄だから嫌いなんだ。貴様がその調子だと次の放送までに話が終わらねえ」

「チッ………」

(やれやれだぜ……)


ブチャラティたちを追ってエア・サプレーナを後にした俺(ディエゴ・ブランドー)とギアッチョの2人は、サン・マルコ広場のオープンカフェに居を据えて放送を聞いてい

た。
この場所ならば視界が開けており、襲撃者が近づけばすぐにわかる。
ギアッチョの能力があれば狙撃を気にする必要もない。

そうして情報を整理していた俺たちだったが、放送の内容が気に入らないらしいギアッチョがキレて中断、の流れを繰り返していた。

「とにかく、だ。このホルマジオ、イルーゾォ、ペッシ、プロシュートの4人は、"どういうわけか生き返って、そしてこのゲームに参加していた"ってわけだ。
プロシュート以外の3人は、まあ、また死んでしまったのかもしれないが、『少なくとも6時間前にはおそらく生きていた』。そういうわけだ」

「………ああ、そうだろーよッ!?」

「俺の方も、何人か知人がいる。死んだはずの人間もな。このサンドマンやウェカピポなんかがそうだ。直接の関わりはなかったが、マウンテン・ティムもくたばったと聞いている。
俺の考えていること、わかるか?」

「オレだって馬鹿じゃねーよ。お前の話はちゃんと聞いていた。『並行世界』の人間、そう言いてえんだろ?」

「これで間違いないな。スティーブン・スティールはやはり駒だ。このゲームを仕組んだ黒幕はファニー・ヴァレンタイン大統領。そして、それだけじゃあない。
ブチャラティたちやお前の仲間を、わざわざ別世界からまで呼び寄せたということは、だ。お前たちの『ボス』とやらも、この件に一枚噛んでいるんじゃあないか?」

「何ッ!? ボスが!?」



もっとも、この考えについても推測の域を出ない。
名簿に記されている150人のうち、ギアッチョの組織に関係する人物はこいつの知る限り10人弱。
そして俺の知る限りSBRレースの関係者も10人を少し越える程度だ。
2人が認識していない人物がいたとしても、全然数が合わない。
第一、イタリアのギャングとアメリカの騎馬レースというのも共通項が見当たらないし、クウジョウだとかカキョウインだとかの日本人名は俺たちのどちらにもなじみはない


(ヒガシカタだけは聞き覚えがあるが、名簿に記載があるのはノリスケではなくジョウスケだ。やはり知らない)

だが、組織の『ボス』でなくても、大統領以外にこのゲームに関わる人間がいる可能性は少なくはない。
でなければ、ギアッチョとの110年もの時代の差異が説明できない。
大統領の能力が、俺の知らぬところで『成長』していなければの話だがな。




「クソがッ! ボスめ…… ソルベとジェラートにむごい仕打ちをしただけでなく、こんな殺し合いにまでオレたちを巻き込んで―――」

「オイオイ、焦るな。その可能性もあるってだけだ。主催のことを考えるのはまだ早い。まずは、当面の行動指針を立てることだ。貴様はこれからどうしたい?」


放送を終えてギアッチョからいろいろと聞き出せたものの、根本的に身になる情報はほとんど得られなかった。
やはり、ルーシー・スティールだ。彼女を確保し、こちらのカードに加えることがまず第一だ。
ゲームに参加させられている以上、大統領にとってはもう不要なのかもしれないが、スティールに近づく鍵になるかもしれない。
彼女に近づくことこそ、この大統領を倒すための第一歩と言えるだろう。


「オレは………やはり、ブチャラティを殺りたい。プロシュートが別の世界の奴かもしれない以上、やはりオレの世界のオレの仲間は全滅したってことだ。奴らを皆殺しにしなければ、オレは前に進めない」


フン、やはりこいつはこういう性格か。
だがブチャラティに近づくことは、ルーシーに近づくということ。俺との利害も一致する。
それに話に聞く限り、俺とそのブチャラティという男とは、永遠に相容れることはないだろう。
放っておいてもいずれ敵対するであろう相手。ならば、早めに叩いておくに越したことはない。


「いいだろう。もう熱くなって自分を見失うことはないと約束できるのならば、俺が指揮を執ってやる。俺はルーシーを捕えるため、お前はブチャラティを殺すためだ」

「ケッ! エラソーに言いやがって。奴らを見失ったくせによく言うぜ。まるで2人の現在地を知ってるみたいな口ぶりだな?」

「ああ、それならば―――――」


俺の背後から、能力で生み出した1匹の中型恐竜が姿を見せる。


「たった今、こいつが見つけてくれたぜ」




☆ ☆ ☆



「ファニー・ヴァレンタイン大統領………」
「ええ。信じてもらえるかはわからないけど、夫は―――スティーブンは、ただ利用されているだけ。
あなたとトリッシュさんや私とウェカピポさんの微妙な認識の違いが、何よりの証拠だと思います……」
「でも、当の大統領が死ぬところを、あなた見ていたのでしょう? それも、『並行世界を行き来するスタンド』と共に崩れ去ったって…… それなのにどうして?」
「それより、俺は大統領のことをまだ詳しくは知らんが、その並行世界ってのは"100年以上の時間までも乗り越えられる"ものなのか?」


放送から早30分。
俺(ブチャラティ)、トリッシュ、ウェカピポ、ルーシーの4人は、(ウェカピポの持っていた地下地図でいうところの)コロッセオ地下遺跡にて情報の交換と作戦会議を行

っていた。
"変態"は気絶したまままだ目が覚めないらしく、縛り上げたまま近くの石柱に寝かせて放置している。
車は遺跡内の地面にジッパーで穴を開け隠し、俺たちは遺跡内に発掘現場に身を潜めている。

ここは薄暗く、大理石でできた柱や石造りの段差も多く、身を隠しやすい。
コロッセオの地下にこのような大空間があったことにも驚いたが、まさかナチスドイツの鍵十字が掲げられているとはな。
そしてその意味を理解できたのは俺とトリッシュの2人のみ。
それをきっかけに知らされた、俺やトリッシュと、ルーシーたちの住んでいた時代の違い。
ルーシーが自動車を見たときにえらく驚いていたのを、今さらになって思い出す。

トリッシュとウェカピポは、出会ってすぐにこの事実に気が付いたという事らしい。
いかに、自分とルーシーが意思の疎通ができていなかったのかと思い知らされた。
ルーシーを怖がらせないこと、自分の秘密を隠すことに囚われ、そんな簡単なことすら把握しきれていなかったのだ。

そしてそのルーシーも、スティール氏と敵対する意思がないことを説明すると、ポツポツと知っていることを話してくれ始めた。
彼らの時代のアメリカ大統領、ファニー・ヴァレンタイン。
並行世界を自由に行き来する能力を持ち、死んだ者でも隣の世界から連れてくることのできるのだという。
名簿に名前のあるアバッキオや俺の出会ったギアッチョをはじめとする暗殺チームの面々、ルーシーやウェカピポの知る死んだはずの知人たちは、よく似た違う世界から呼び

寄せられたからではないかというのだ。

ゲームの主催者はアメリカ合衆国大統領。
この仮説が、俺にとって最大の驚きであった。
俺は心のどこかでトリッシュの父、『組織のボス』がこのゲームの黒幕ではないかと勝手に想像していた。
ボスの素顔のデスマスクを見つけた直後にこのローマに呼び寄せられ、ジョルノの死を目の当たりにしたからだ。

だが、俺がその仮説を唱えた時、トリッシュから聞かされた俺の『本来の未来』。
俺、トリッシュ、ジョルノ、ミスタ、ナランチャの5人はアバッキオの遺してくれたメッセージを手掛かりに、以前よりボスの手掛かりを追っていたフランス人、ジャン・ピエール・ポルナレフ氏と合流した(その彼は放送で名を呼ばれてしまったようだ)。
そして、俺達5人はそれ以上"一人の仲間も失うことなく"、打倒ボスを果たすというのだ。

それも、ボスの名は『ディアボロ』。放送で2番目に名を呼ばれた『ディアボロ』なのだというのだ。
放送中、トリッシュが表情をゆがめた理由はそこにあったのか。
トリッシュはゲーム開始直後、死んだはずの自分の父の気配を感じ、すぐにその気配が消滅するのを感じたのだという。
このゲームの主催者は(恐らく別世界の)ボスまでもをゲームの駒として招き入れていた。
そして、俺たちが命を懸けて打倒しようとしていたディアボロがわずか6時間の間に戦って敗れるほどの相手がいるということなのだ。
ゲームの主催者は、俺が想像していた以上に途方もなく巨大な存在のようだ。

そしてもう一人。放送前に遭遇したギアッチョと行動を共にしていた人物。
ディエゴ・ブランドー 通称「Dio」。
ルーシーたちや大統領と同じ世界に存在した男であり、大統領と同等の危険人物。
窮地に陥った大統領が自分の後継者として選ぶほどの男だという。
野心家で、目的のためならば残虐非道の限りを尽くす極悪人。
ルーシー自身が機転を利かせて倒した相手だというが、生きていた大統領がさらに別の世界から彼を呼び寄せたのだろうか?
要注意人物の一人だ。



「それで、これからどう動くか、だが……?」

まず俺が切り出す。
わからないことをいつまでも考えていても仕方がない。
続いてトリッシュが口を開き、提案した。


「私は……もっと地図の中心付近の―――人が集まる所へ向かうべきだと思う。ジョニィさんやジャイロさんという人なら、大統領について何か知っているかもしれないし……。
それに、もしジョルノたちが本当に生きているのならば……」

彼女の言う通りだ。
ジョルノ・ジョバァーナは確かに俺たちの目の前で爆死した。しかしジョルノの名は名簿に記されているにもかかわらず放送で名を呼ばれることはなかった。
ゲーム開始前に死んだから、という理由も考えられるが、あれが俺たちを殺し合いへ誘うためのハッタリだったとすれば、『死んだジョルノとは別世界のジョルノ』がこの場に呼び寄せられている可能性はある。
もしくは爆破された方が、『別の世界から来たジョルノ』だという可能性もある。
アバッキオだって、『まだ生きていた世界』から呼び寄せられたのかもしれない。
ジョルノやアバッキオならば、たとえ別の世界の彼らだったとしても、絶対に信用できる。

「………そうだな。これほどまでに巨大な力を見せつけられては、個人の力で立ち向かうのは至難だ。仲間を組み、チームを作ることは有効だ。
特に、一度大統領に勝利しているというジョニィ・ジョースターとの合流は最優先すべきだろう」

ウェカピポもそれに続く。ルーシーも、彼の言葉に応じて頷く。
彼らもまた、俺たちと共に戦うことを約束してくれた。
トリッシュたちとの出会いを経て、頼りになる仲間を手に入れた。ゲームの黒幕の正体も、おぼろげながら掴み始めてきた。
絶望しか見えなかった未来に、わずかな希望が見え始めていた。






「おい、そろそろ起きろ、"変態"。ここからは自分の足で歩かんと捨てていくぞ」



ウェカピポが、少し離れた石柱に寝かされている"変態"を起こしに向かった。
そういえば、彼からはまだ何も話を聞いていない。
トリッシュを強姦しようとした変態らしいが、こんな異常な状況に陥ったら、男ならそれも仕方ないことかもしれない。
外見から察するに日本人だ。名簿に記されている日本人らしき名前は30人近く―――全体の5分の1を占めている。
そして、ジョルノの隣で爆殺された白コートの男性も、おそらく日系の血が入っているような感じだった。
トリッシュは気が進まないだろうが、この"変態"の知り合いにも力になってくれる人間がいるかもしれない。
彼から情報を聞き出すことも、この先重要になるだろう。



「ねえ、ブチャラティ……」


メモと名簿をデイパックに詰め、出発準備を終えた俺に、トリッシュが神妙な声で話しかけてきた。



「……あなた、身体の方は………なんともないの?」

その質問に、俺は内心でギクリと震えた。
どうして、彼女がそんなことを、そんな口調で聞いてくるのか。

思えば、トリッシュの様子は初めから少しおかしかった。
いや、大統領に立ち向かうと覚悟を決めたトリッシュを見て、彼女が俺の知らないところで強い少女に成長したことを悟ったのは確かだ。
だが、それとは別に、彼女の俺に対する態度だけが、どこかよそよそしい。

もしかして――――。
心当たりは一つある。トリッシュが、「打倒ボスを果たした」と俺に告げた時から。


「……心配するな、トリッシュ。お前は元の世界に帰って、歌手として、歌姫として世界に羽ばたかねばらないだろう?」

だが、俺はその不安を、決して言葉にはしない。

「大統領を倒すまでは、皆で笑ってゲームを脱出するまでは――――――」

―――俺は死なない。
そう続けるつもりだった俺の言葉は、ウェカピポによって遮られてしまった。



「なっ! 何だとッ!? なんだこいつは!? "変態"ッ? いや―――!?」

ウェカピポに声をかけられても目を覚まさなかった"変態"。
彼の頭を揺さぶろうと手をかざしたその時、"変態"が彼に牙を剥いた。
ウェカピポに飛び掛かった"変態"の身長は180センチほどにまで巨大化し、口元には鋭い牙が生え、爪は鋭く光り、皮膚は鱗で覆われ、長い尻尾が生えていた。
昔見たスピルバーグの映画を思い出す。



"変態"が恐竜に『変態』した。





☆ ☆ ☆




「なッ! なんだそいつ!? スタンド!? いやまさか――― 恐竜か?」

「ほう、よく知っているな。さすがは21世紀の人間だ。未来では古生物学という分野も、もっと進化しているのだろうな。これが俺のスタンド能力、『スケアリー・モンスターズ』だ。
能力は生き物を恐竜に変え支配すること。生き物ならば"生きていよう"が"死体であろう"が問題はない。そして"俺自身"も恐竜に変化し、身体能力と動体視力、反射神経などをを向上させることができる!」

「………」

「この恐竜はこの殺し合いで死んだある男の死体を恐竜化させたものだ。こいつは特に耳が利いてな。こいつに地下洞窟の探索をさせ、ブチャラティ一行の動向を捕えること

に成功した。
俺の知っている男がひとりと、『トリッシュ・ウナ』という女も一緒にいるッ!!」

「何ィッ!? トリッシュだと!?」

「その女はブチャラティとも顔見知りの様子だった。特徴も一致する。十中八九、お前らの目的の娘だろうな?」

「………チクショウ、ブチャラティにトリッシュ・ウナだと!? 上等だぜッ! ヤロウをブチのめすついでに生け捕りにしてやるッ!」

「よし、決まりだな。俺の指示通りに動くと約束できるのなら、2人で奴らを攻撃するぞ」

「………何故、隠していた能力を、いまさらオレにすべて話した?」

「言っただろう? 利害が一致したためだ。俺はルーシーを手に入れるため、お前はブチャラティを殺すため……」

「………オレは、どうすればいい?」



☆ ☆ ☆



「ウバシャァァァ―――!!」


玉美恐竜は前足の爪でウェカピポを切り付け、彼が怯んだ隙にトリッシュめがけて飛び掛かっていった。
『スケアリー・モンスターズ』で生み出された恐竜は元となった生物の影響を受けることが多いが、『変態』を『恐竜化』した場合は真っ先に女性に襲い掛かるということだろうか?
牙を剥いた玉美恐竜は、高さ2メートルはあるであろう跳躍を見せ、トリッシュを頭上から襲う。

「『スティッキィ―――・フィンガ―――ズ』ッ!! アリアリアリアリィィ―――!!」

そこに叩き込まれるブチャラティのスタンドの拳。

「WANABEEEEE!!!」

そしてそれに重ねられる、トリッシュのスタンドによる壮絶なラッシュ。


「ギャピィィィィ!!」


吹き飛ばされる玉美恐竜。石壁に叩きつけられ悶える。
恐竜になって身体能力は向上していたようだが、さすがに2人の格闘型スタンドの連撃を受ければ、動けなくなる程度にまで痛めつけられたようだ。
やがて恐竜となった身体は元に戻り、服が破かれ再び半裸になった小林玉美の姿が地に伏せた。

「ウェカピポッ! 今のはまさかッ!?」
「Dioの恐竜だッ! 奴が攻撃を仕掛けてきているッ!!」
「くそッ! 何てことだッ! こんなに早く見つけられてしまうとはッ―――ッ!」
「ブチャラティさんッ!! 後ろッ!!」

「ギャオオオオオ―――ン!!」


ルーシーの声にブチャラティが反応する。
彼の背後から新手の恐竜が姿を見せた。

(チッ! 今度のヤツは"変態"のより二回りはでかいッ!! 生物を恐竜化する能力ッ!! あの小柄な"変態"であのサイズだ。こいつは『元』も長身だったのだろうッ!)

強力な牙は厄介だが、このタイプの手合いには力押しでの格闘が最も有効である。
先ほどと同様、恐竜に『スティッキィ・フィンガーズ』の拳を叩き込む―――




『ホワイト・アルバム』―――――ッ!!!



「何ッ!!」

恐竜を迎え撃とうとスタンドを繰り出したブチャラティの足元を冷気が襲う。
とっさに飛びのかなければ、ブチャラティの両足は凍らされ地面に固定させられていただろう。


(『氷のスタンド』ッ ギアッチョ!! やはりヤツも現れたかッ!! まずいっ 体勢を崩してしまっては攻撃が不十分となる―――――ッ)

恐竜とスタンド使いによる挟み撃ち。
とっさの対応で体勢を崩してしまったブチャラティへ、獰猛な恐竜が牙を剥ける。


「伏せろブチャラティ――!! 壊れゆく鉄球(レッキング・ボール)―――ッ!!」


ウェカピポが鉄球をぶん投げた。
恐竜の死角より投擲された鉄球だったが、間一髪のところでその鉄球を回避する。
かわされた? いや、まだだ。ウェカピポの攻撃はまだ終わっていないッ



ドギャァァァアア


「グゲェェェェエエエッッ!!」

鉄球は恐竜の頭部間近で炸裂し、無数の衛星を飛ばす。
ジャイロ・ツェペリの鉄球に、ベアリングの弾を埋め込んだだけの急造品ではあるが、効果は絶大である。

「グ……グガァ………」

苦しむ恐竜、だが致命傷は与えられていない。


「ブチャラティ! こいつはあたしに任せてッ!!」
「トリッシュッ!?」

ブチャラティよりも先に、トリッシュが恐竜を迎え撃つ。
スタンド『スパイス・ガール』。経験は足りないが、パワーだけならば『スティッキィ・フィンガーズ』に匹敵するほど強力。
トリッシュは強くなった。もう、守られているだけの少女ではなかった。


(それに――――――)


ブチャラティは恐竜の相手だけをしているわけにもいかなくなっていたのだ。
恐竜よりも、もっと手ごわい相手が目の前にいる。


「お前の相手はオレだぜ――― ブチャラティッ!!」

氷のスタンド使い――― 暗殺チームのギアッチョが、ブチャラティの前に姿を現した。



☆ ☆ ☆



「まずはこいつを使う。『カエル』を『恐竜化』した小型タイプの恐竜だ。こいつを先行させて、"変態"と呼ばれていた男に『恐竜化』を感染させる」

「役に立つのか、そんな変態野郎が?」

「当てにはしていない。なにしろ『恐竜化』の戦闘力は元になった生物の能力にも左右されるからな。
だが、本陣に突然恐竜が放り込まれたら隙の一つも出来よう。そこで第二陣をすかさず仕掛ける」

「それが"コイツ"と"オレ"か。こいつの『元』は、いったい何者なんだ?」

「なあに、このゲームに参加させられていた『誰か』さ。『恐竜化』に適した都合のいい肉体だったんで利用させてもらっているだけだ。
奴らのいるのはコロッセオの地下だ。地図がないからおおよそにしかわからんが、大体こんなふうに繋がっている。
恐竜は北のトンネルから、お前は真実の口から侵入して仕掛ける。挟み撃ちの形になるな」

「『まずはブチャラティを集中狙い』、『オレの標的はブチャラティに絞る』ってのは、オレとしちゃあわかりやすくてありがたい」

「ソイツ(恐竜)はトリッシュかウェカピポのどちらかにぶつける。トリッシュがどうかはわからないが、ウェカピポは『スタンド』を持っていない。
『恐竜』のような純粋に『力』の相手を苦手とするはずだ。"ソイツ"が相手だとなおさらな」

「なるほど、悪くない作戦だが…… それで、ディエゴ・ブランドー。お前は何をする?」




☆ ☆ ☆





「トリッシュ!! ヤツの左側に回り込んで攻めろッ!! 奴は今、体の左半分が見えていない!!」
「―――了解ッ!!」

投擲した鉄球は柱に当たって跳ね返り、ウェカピポの元に戻ってくる。
普段ならば5~6個の鉄球を持ち歩いているが、現在の持ち合わせはこの一球のみだ。大切に扱わねばならない。
直撃を食らわせれば恐竜も仕留められただろうが、完全な死角からの投球を回避するとは恐るべき洞察力。
だが、ウェカピポの鉄球はたとえ直撃しなくとも威力を発揮する。

左半身失調。
それがウェカピポの持つ鉄球の戦闘技術・壊れゆく鉄球(レッキング・ボール)の『技』だ。

鉄球に取り付けられた14の『衛星』を飛ばし、攻撃する。
今回使った鉄球は急造品ゆえにオリジナルよりも威力は落ちるが、それでも脳を騙し身体の左半分の感覚を失わせるには十分な威力を持っていた。
トリッシュもあらかじめウェカピポの『技術』を教わっていたため、即座に対応。
恐竜の左側に回り込み、攻撃を仕掛ける。


「『スパイス・ガァァァ――――ル』ッ!!!」


だが―――――

恐竜は左半身の失調などものともせず、身体を大きく捻ってトリッシュの攻撃を回避。
そしてその勢いをそのまま攻撃に転化させ、強烈な尻尾での一撃をトリッシュに叩き込む。

「何ッ!!」
「何ですってッ!!!」

恐竜が隙だらけだと思い油断してかかったトリッシュに手痛いカウンターパンチが炸裂した。
咄嗟にスタンドでガードしたため致命傷は避けたが、大理石でできた柱に叩きつけられ、痛手を負ってしまった。

「グフ……ッ」
(ウェカピポめぇ…… どこが見えていないのよ!! 思い切り超反応かましてくれるじゃないのッ!!)

ウェカピポにもわからない、その理由。
何故、この恐竜は失明した左側からの攻撃に即座に対応することができたのか。

実はこの恐竜、初めからもともと目が見えていなかったのだ。
左だけでなく、右目も。

小林玉美の変態要素が恐竜に反映されたように、恐竜化された生物は元々の姿の時の影響を色濃く受ける。
この恐竜は、ディエゴ・ブランドーが最初に死を看取った参加者、盲目の戦士『ンドゥール』の遺体を恐竜化させたものだった。

つい先ほどまでその存在をギアッチョにも隠し続け、逃げたブチャラティの追跡もこの恐竜にさせていた。
地下洞窟へと逃げ込まれては直接の追跡は不可能だったが、地中を走る自動車の音はンドゥールならば追えるのだ。
流石のブチャラティも、地下でギアッチョを撒いたところで、地上から恐竜に追跡されているとは思いもよらなかった。
トリッシュたちと遭遇し放送を聞いていた最中も、まさか自分たちの頭上、コロッセオ内にて1匹の恐竜が聞き耳を立てていたとは想像だにできなかった。
そしてブチャラティたちが移動をやめた頃合いを見計らいDioの元へ戻り、万全のプランを立てて襲撃するに至ったのだ。

そして、襲撃の場面では2番手の恐竜として送り込まれた。
左半身を失調したところで、元々が視力に頼らないンドゥール。
音の反響し合う地下遺跡の中では、右耳さえ生きていれば通常状態となんら変わらなかった。 



(くそッ! 俺のミスでトリッシュが……!)

ベアリングの弾を込め直し、再び鉄球を構えるウェカピポ。
直撃だ。直撃さえさせれば、あんな恐竜などひとたまりもない。
今度こそ、と狙いをつけ投球のフォームに入ったウェカピポに―――――



「ウェカピポさんっ―――!!」


「ウバッシャァァァァァアア!!」」



―――闇の中より、別の恐竜が襲い掛かってきた。


「ヌウゥ!!」

3体目の恐竜の出現。
恐竜はその発達したその全身のばねを用いて、ウェカピポに強烈な突進を見舞う。
まるでオートバイに跳ねられたような強力な体当たりがウェカピポを襲う。

(なんという威力……これが恐竜の打撃ッ!?)

とっさに投げようとしていた鉄球の回転を自分の体に押し付け、硬質化して防御した。
にも関わらず、この威力、このダメージ。
新たに現れた3体目の恐竜はウェカピポの顔をじっと見据える。

傷つきながらも、ウェカピポは再び鉄球を構え、恐竜を迎え撃つ姿勢を取る。
トリッシュやブチャラティのカバーにも回りたいが、先に自分の目の前にいる恐竜を片付けなくてはいけなくなってしまった。

しかし恐竜は、何故かウェカピポから興味なさげに視線をそらす。
心なしか、笑っているように思えた。
恐竜の目線の先にいるのは――――― ルーシー・スティール。


(しまった――――――ッ!!)

ウェカピポが気づいた時にはもう遅い。
恐竜は一足飛びにルーシーへの距離を詰め、悲鳴も出させぬスピードで手刀を叩き込み、気絶させる。
そして恐竜はルーシーを担ぎ上げ、こちらを振り返りながら静かに笑った。

(これが奴らの真の狙いか―――)

奴らの真の狙い。
それは、ルーシー・スティールの確保だった。
突然、"変態"を恐竜化させられ、間髪をいれずに別の恐竜とスタンド使いによる総攻撃。
こちらの混乱に乗じてガードが薄くなったルーシーを攫う、絶好のチャンス。

玉美の恐竜の攻撃は、ウェカピポに大したダメージを与えることはなかった。
恐竜化された他の2体の恐竜は、動きは比較的シンプルで直線的だった。
この3体目の恐竜は、他2体とは攻撃力も知力も段違いだった。
こいつが恐竜どもの親玉である。

この男の正体は――――――





「貴様! Dioかッ!!」

「あばよ、ギアッチョ」




短く捨てゼリフを漏らし、ルーシーを背中に担いだディエゴ・ブランドーが北へ走り去る。
コロッセオの北、ウインドナイツのトンネルには難解な迷宮がある。
もしそこに逃げ込まれたら、追跡は不可能だ。


「追ってッ ウェカピポ!!」
「俺たちにかまうなッ!! 行けッ!!」

「な――― し、しかし――――――」



恐竜である奴を人間の足で追いかけるなんて不可能かもしれない。

それに、トリッシュもブチャラティも優勢とは言えない。
とくにブチャラティが相対しているギアッチョという男の能力は底が知れない。
だが、彼らはウェカピポにディエゴ・ブランドーの追跡を命じるのだった。

「あたしの"護衛"は必要ないって言ったでしょ!? 早く行ってッ!!」
「行ってくれウェカピポッ!! 彼女を助けてやってくれ!!」

「………わかった」

ウェカピポは2人の真意を理解する。
彼らは、ルーシーが『スティーブン・スティール』の妻だから、大統領に近づくための切り札になるから、そういった理由で彼女を助けたがっているわけではない。
ただ、普通の少女だから。
事件に巻き込まれただけの、どこにでもいるごく普通の少女だからこそ、助けてくれというのだ。

ギャングが人を助け、大統領が人を殺す。
全く狂った世の中だ。

ブローノ・ブチャラティ。
彼とは出会って一時間と経っていないが、いい仲間と巡り合うことができた。



鉄球を携え、ウェカピポは遺跡を後にして走り去った。
そんなウェカピオを見送り、ブチャラティは気持ちを切り替える。
こちらの人数は減らされてしまった。


「『俺たちにかまうな』……だとォ? ズイブンヨユーかましてくれんじゃあねえかッ!! このクソダボがッ!!」


余裕などありはしない。
ブチャラティの相手は、恐らく暗殺チーム最強の使い手。
絶対零度のスタンド使い、ギアッチョなのだから。







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最終更新:2013年01月09日 21:19