「…承太郎。調子は?」
「良好とは言い難いな。だが、さっきよりはマシになってきている」
「そう。私も…まぁ同じね。身体はヒリヒリするけど」
博麗霊夢。幻想郷の結界の管理者である博麗の巫女。
空条承太郎。時を止める能力を持つ最強のスタンド使い。
廃洋館を後にし、二人はD-3の川沿いの草原にて会話を交わしていた。
互いに身体に傷を負っているが、最低限の処置は既に行っている。
とはいえ、先程の戦闘で消耗してしまったのも事実だ。そんな状況の中、二人は今後の一先ずの目標について話し合う。
二人の目標の一つは主催者に立ち向かう為の戦力を募ること。弱者も見つけ次第保護はするつもりだ。
しかし参加者は総勢90名。うち半分は霊夢も見知っている幻想郷の住民達だったが、かといって全員が信頼出来る相手かと聞かれれば首を傾げざるを得ない。
生き残る為に殺し合いに乗りかねない妖怪なんてザラにいるのだ。
承太郎の紹介した『仲間』は間違いなく信用に値出来るのだろうが、あとは半分近くの参加者が全く見知らぬ者達。
言わばベールに包まれた存在だ。その中で殺し合いに乗る参加者は少なからずいるだろう。
参加者だけでなくアヌビス神のように戦闘を促進させる支給品まで紛れ込んでいる以上、警戒は必須だ。
ましてや今の自分達は手負いの状態なのだから。
今後の行動を決め倦ねるように少しだけ考え込んだ後、霊夢は承太郎に声をかける。
「とりあえず、承太郎。あんたのアザ…さっき聞いたけど、それで自分の血縁者の気配を探れるんでしょ?」
「かなり大雑把だがな…せいぜい『あっちに居るような気がする』程度のもんだ。今感じ取れるのは…恐らく3つか、4つ」
少し前に承太郎から聞いたことだ。
『ジョースター』という一族の血を引く者の首筋には星型のアザがあり、それが互いに共鳴し合うと。
不思議なことに、同じアザを持つ者同士で(かなり大雑把らしいが)互いの位置を認識出来るらしい。
エジプトでの闘いの時はまだ不確かで曖昧なものだったが、この会場に来てから共鳴が明らかに『強くなっている』。承太郎はそう言っていた。
とはいえ、それでも相当大雑把な探知ではあるという。現に感じ取れるアザの気配が「恐らく3つか4つ」という曖昧な返答が返ってきたのだから事実なのだろう。
「本当に曖昧ね…もう一度確認するけど、あんたの血縁者は」
「そうだな…名簿で確認出来る中で、この星型のアザが間違いなく共鳴するのは少なくとも3人。
俺の祖父の
ジョセフ・ジョースター、とうの昔に死んでるはずの高祖父の
ジョナサン・ジョースター…本物だったら、の話だがな」
自らの首筋に触れながら、承太郎は追憶するように語る。
そして僅かに険しい表情を浮かべながら、彼は3人目の名を口にする。
「そして、DIO。奴はジョナサン・ジョースターの肉体を乗っ取っている」
「それ故に、そいつに流れてる血の半分は『ジョースター』のものってことね」
DIO。この星型のアザは奴の肉体とも引かれ合う。
アザが共鳴する以上、彼の位置も曖昧ながら特定することが出来るということになる。
恐らくそれはDIOも同じことだろう。奴がジョースターの血統を根絶やしにすべく、アザの共鳴を頼りに動くかもしれない。
星型のアザは血縁者を捜す為のレーダーにもなるが、同時に宿敵との邂逅を余儀なくされる運命の鎖でもあるのだ。
「もしそのDIOって奴と会ったとして、私達に勝機はある?あんた、一度は倒したって聞いたけど」
「奴の強さは理解してるが、俺とあんた…二人掛かりなら勝ち目はあるだろう」
あんたの強さは理解している、と付け加えつつ。
承太郎は先程の闘いで霊夢本人の実力も把握していた。
あそこまでアヌビス神を『使いこなしていた』のだ。それにマスタースパークを突破したあの能力。
アヌビス神の能力だけでは説明がつかないアレは、恐らく彼女自身の力なのだろう。
承太郎はそう結論付けつつも、一言付け加えるように呟く。
「…万全を期せば、の話だけどな」
「…で、今は万全かと言うと」
「今あんたが思ってる通りだ」
「でしょうね…」
霊夢は軽く溜め息をつくように呟く。
処置は施したとはいえ、肉体の疲労や負傷、霊力の消費、片腕を除いたスタンドの封印など二人の状態は万全とは言い難い。
このような状態でDIOと遭遇した所で勝ち目があるか、と聞かれてYESとは答えられないだろう。
DIO以前に、アヌビス神の『本体』が撤退せずに戦闘に持ち込まれていれば敗北していたかもしれない。
「ま、今は別の仲間を集める方が優先ね。可能ならばあんたの言ってた仲間と、信用出来そうな私の知り合い。
アザの気配を持つ参加者との接触は…保留かしらね」
「どちらかといえば『DIOらしき気配との接触は保留』だな。
ジジイならまだいいが、他の気配となると俺も知らない血縁者…うち一人はあのDIO。
もし今の状態の俺達でDIOと戦闘したとしても、勝利の見込みは薄い」
現状、DIOとアヌビス神という厄介な敵が二人居る。
奴らに確実に対抗する為には数が必要だ。一対一での勝負も万全の状態なら出来なくもないが、敗北も十分に有り得る。
仲間を捜す為に星型のアザを頼りにすることも考えたが、実際の所承太郎はジョセフ以外のジョースターの血統については殆ど知らないのだ。
ジョナサンのことも精々『ジョセフの祖父で、DIOに肉体を乗っ取られている』と聞いている程度。
それ以外にも「
ジョニィ・ジョースター」という名が名簿に記載されていたように、未知のジョースターの血統が少なからずこの会場には存在するのは確信していた。
星型のアザで互いに引かれ合うのは間違いないが、彼らが全員『仲間』と成り得る参加者かの確証が取れないのだ。
もしも彼らの中に『乗っている者』がいたら、同じアザを持つ者達は絶好の獲物も同然になる。
低精度とはいえ、発信器を埋め込んでいるかの如く互いの位置を認識し合うことが出来るのだから。
故に積極的な接触は避けることにした。それに、ジョースターの血統が一か所に密集すればDIOにも感付かれてしまうかもしれない。
(あと…『空条』の名を持つ人間も此処にはいる)
もう一つ気になっていたことは、
空条徐倫という名の参加者の存在。
何故かは解らないが、偶然名字が被っただけの無関係の人物とは思えない。
出来れば、この徐倫という人物ともいずれは会ってみたいが…今はまだ保留だ。
ともかく、現時点で必要なのは他の仲間と成り得る参加者だ。
「霊夢。この会場の様子は幻想郷と殆ど変わらないそうだが…人の集まりそうな場所を知っているか?」
「篭城に使えそう、って意味なら…近場だと紅魔館とか」
すぐ隣のエリア、C-3の霧の湖に浮かぶ小島に存在する『紅魔館』。
死に別れた
十六夜咲夜の帰る場所。そして、吸血鬼
レミリア・スカーレットの住まう館。
幻想郷の中でも特に大きな建造物であり、篭城の拠点としてはもってこいだと言う。
そして――――――
「…レミリアには、会っておきたいわ。あいつには…咲夜のこともあるし」
「…………。」
紅魔館の主であるレミリアが訪れる可能性もある。
霊夢によれば「あいつなら『主催者が気に入らない』とか言いそうだし、きっと殺し合いには乗らないと思う」とのことだ。
今の霊夢には咲夜のことで少しでも負い目があった。
結果的にレミリアの従者である咲夜を死なせることになってしまったのだから。
だからこそレミリアには一度会いたかった。彼女のことを伝えたかった。
「…ま、会えればの話よ。会えなければ、仕方が無いと考えるから」
柄にも無い、と言われるかもしれない。それでも構わなかった。
承太郎は無言で頷き、彼女の意思を承諾する。霊夢が僅かに見せた繊細な表情は、すぐに先程までの気丈なものへと変わる。
「それに、殺し合いに乗りたくない消極的な連中が立て篭ってる可能性はありそうよ。
…そうでなくとも、私達みたいに他の参加者との接触を試みようとする連中が訪れてくる可能性だってある」
「…そうであると信じたい所だな」
「乗ってる連中が先に来ていなければいいんだけどね…『序盤』はまず数を減らしに行くでしょうし、立て篭るなんて真似はしないと思うけど」
それもそうだな、と呟きつつ承太郎はデイパックから地図を取り出して地形を確認する。
廃洋館からそう遠くない川沿いである為に現在地の把握は容易だ。
紅魔館が存在するのは、此処から見て西の方角。
「他に目星を付けられる施設は…ジョースター邸か」
「…そういえば、ジョースター邸も気になる?あんたの一族と同じ姓のようだし」
「一応はな。あんたがいいって言うなら、紅魔館に赴く前に一度寄ってみたい」
幻想郷を模しているであろう会場に、ジョースターの名を冠する施設の存在。
承太郎は当然の如く疑問を抱いた。ジョースター邸とは一体何なのか?
引っ掛かるものを感じた承太郎は、一度そこへ足を運ぶことを考えたのだ。
それに紅魔館と同じように名簿に記載されている以上、こちらにも多少なりとも人が集まる可能性はある。
「…構わないわよ。ジョースター邸を経由して、紅魔館に移動で」
「よし、決まりだな」
霊夢の承諾の言葉を聞いた直後に、承太郎は川沿いを移動し始める。
無論、向かう先は西側。川の流れの先―――霧の湖の存在する方角だ。
霊夢も彼に追従するように歩き始める…が。
「………。」
「どうした?」
「…いえ、何でもないわ」
一瞬、霊夢が背後を振り向いた。それに気づいた承太郎は足を止め、彼女に問いかける。
しかしすぐに霊夢はそう答え、再び承太郎と共に歩き出す。
気のせいだったのか…?承太郎はそう判断し、彼もまた再び歩を進めた。
(………。)
承太郎と共に川沿いを進む霊夢。
彼女はほんの僅かながら、何かを訝しむような表情を浮かべていた。
そう、不気味な感覚のする…何かを。
(…今…誰かに、見られていた?)
◆◆◆◆◆◆
(『空条承太郎』…)
一定の距離を取り、川底に潜みながら『彼』は二つの影を睨むように監視する。
フー・ファイターズ。彼は人間の肉体を手に入れるべく、人里付近の墓場を一先ずの目標にしつつ道中で隙を見せている他の参加者を襲撃する手筈で川を移動していた。
しかしその途中、彼は川辺で二つの影を発見した。巫女装束の少女に、帽子を被った学ラン姿の男。
彼らにこちらの存在を気付かれなかったのはある程度距離が離れていたこと、気配を殺して川底に潜んでいたこと、そして視界の悪い黎明の薄暗さ故だろう。
もしも空条承太郎のスタープラチナが万全の状態だったならば、その五感を以て彼の気配を探ることが出来たかもしれない。だが、あくまで『もしも』の話だ。
―――少女は男のことを『承太郎』と呼んでいた。名簿に記載されていた『承太郎』という参加者は、あの『空条承太郎』のみ…
(名簿でヤツの名は確認していたが…何故だ…?)
空条徐倫の父親、空条承太郎。私が守っていたDISCの中にはヤツの『スタープラチナ』のスタンドDISCも含まれていた。
記憶DISCはホワイトスネイクが保管している。本来ならばヤツは仮死状態のまま眠りについているはずだ。
だが、たった今目撃した承太郎は平然と意識を保ったまま行動している。
明らかにDISCを『奪還』されている状態だ。
(スタンドDISCを取り戻されただけで覚醒するはずがない…まさか、ホワイトスネイクの持つ記憶DISCすらも奪還されたというのか…?)
あの様子だと、最低でも記憶DISCは奪還されているだろう。
もしスタンドDISCまでヤツの手に渡っているとなれば相当厄介な事態になっていると言えるだろう。
無敵のスタープラチナ。ホワイトスネイクの本体さえもその強さを認めていたらしい。
それが空条承太郎自身の手に取り戻されているとなれば…鬼に金棒、とはまさにこの事だ。
(DISCを護ること、それがこの私の役目だ)
相手は最強のスタンド使いと称される程の戦闘者と聞く。
圧倒的な能力を持つ無敵のスタンド「スタープラチナ」、そして本体の天才的な判断力。
現状負傷しているとはいえ、直接戦闘となれば決して油断は出来ないだろう。
ましてや今の自分は水辺を離れることが出来ない。制限を課せられ、先程の敗北もある以上、下手に攻めるのは危険だろう。
しかし自分の役目はDISCを守護すること。奪還されたとなれば尚更だ。
必ず承太郎からDISCを取り戻さなければならない。
移動を開始した二人を遠目から見据えつつ、彼は川底をゆっくりと泳ぐように移動し始める。
向かうは再び霧の湖の方角。川沿いを移動する奴らの隙を突き、襲撃を行う。
フー・ファイターズは己の使命を果たすべく、空条承太郎の追跡を開始した。
今の彼にとって、DISCの守護こそが唯一の存在意義なのだから。
【D-3 川沿いの平原(西方)/黎明】
【博麗霊夢@東方 その他】
[状態]:右肩脱臼(処置済み。右腕は動かせますが、痛みは残っています)
左手首に小さな切り傷(処置済み)、全身筋肉痛(症状は少しだけ落ち着いてきています)、あちこちに小さな切り傷(処置済み)
肉体疲労(小)、霊力消費(大)
[装備]:いつもの巫女装束、アヌビス神の鞘、
[道具]:基本支給品、自作のお札(現地調達)×たくさん
DIOのナイフ×5、缶ビール×9、不明支給品(現実に存在する物品、確認済み)
その他、廃洋館で役立ちそうなものを回収している可能性があります。
[思考・状況]
基本行動方針:この異変を、殺し合いゲームの破壊によって解決する。
1:ジョースター邸を訪れた後、紅魔館へ移動。
2:戦力を集めて『アヌビス神』を破壊する。殺し合いに乗った者も容赦しない。
3:いずれ承太郎と、正々堂々戦って決着をつける。
4:出来ればレミリアに会いたい。
※参戦時期は東方神霊廟以降です。
※太田順也が幻想郷の創造者であることに気付いています。
※空条承太郎@ジョジョ第3部の仲間についての情報を得ました。
また、第2部以前の人物の情報も得ましたが、どの程度の情報を得たかは不明です。
※白いネグリジェとまな板は、廃洋館の一室に放置しました。
※フー・ファイターズの気配をほんの僅かに感じ取っています。
【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険 第3部 スターダストクルセイダース】
[状態]:右手軽い負傷(処置済み)、全身何箇所かに切り傷(処置済み)、肉体疲労(小)
左腕以外のスタンド封印(時間とともに回復しますが、その速度は不明です)
[装備]:長ラン(所々斬れています)、学帽、ミニ八卦炉
[道具]:基本支給品、DIOのナイフ×5、缶ビール×2、不明支給品(現実に存在する物品、確認済み)
その他、廃洋館で役立ちそうなものを回収している可能性があります。
[思考・状況]
基本行動方針:主催者の二人をブチのめす。
1:ジョースター邸を訪れた後、紅魔館へ移動。
2:花京院・ポルナレフ・ジョセフ他、仲間を集めて『アヌビス神』を破壊する。DIOをもう一度殺す。
その他、殺し合いに乗った者も容赦しない。
3:霊夢他、うっとおしい女と同行はしたくないが……この際仕方ない。
4:あのジジイとは、今後絶対、金輪際、一緒に飛行機には乗らねー。
5:霊夢との決着は、別にどーでもいい。
※参戦時期はジョジョ第3部終了後、日本への帰路について飛行機に乗った直後です。
※霊夢から、幻想郷の住人についての情報を得ました。女性が殆どなことにうんざりしています。
※星型のアザの共鳴によって同じアザの持つ者のいる方向を大雑把に認識出来ます。
正確な位置を把握することは出来ません。
【D-3 川底/黎明】
【フー・ファイターズ@第6部 ストーンオーシャン】
[状態]:プランクトン集合体(むき出し)、川に潜水中
[装備]:なし(本体のスタンドDISCと記憶DISC)
[道具]:ジャンクスタンドDISCセット2、不明支給品@現実
[思考・状況]
基本行動方針:スタンドDISCを全部集める。基本手段は選ばない。
1:川の中に身を隠しつつ、『空条承太郎』を追跡。隙を突いて襲撃し、DISCを取り戻す。
2:DISC回収と寄生先の遺体の確保の為、隙のある参加者を中心に襲撃する。
3:墓場への移動は一先ず保留。
4:空条徐倫とエルメェスと遭遇すれば決着を付ける。
[備考]
※参戦時期は徐倫に水を掛けられる直前です。
※能力制限は現状、分身は本体から5~10メートル以上離れられないのと
プランクトンの大量増殖は水とは別にスタンドパワーを消費します。
※空条承太郎のDISCが奪還されていると思っています。
最終更新:2014年06月19日 00:38