お宇佐さまの素い足

 E-4エリア、人里内のコンビニ『OWSON』にて、ブローノ・ブチャラティ因幡てゐの2名が休息していた。

 先頃、人里の近くにて出会った二人だったが、コロッセオに危険人物がいるとのブチャラティの言により
念のためそこから遠ざかるべく、人里内部にまで歩を進めていた。
 そして、道中にお互いの情報を交換しながら、雑多な人里の中でひときわ目立ったこの建物に入り込んだのだった。

 ブチャラティは、レジ隣りのカウンターに軽く腰を掛けながらうつむき、てゐからの情報を咀嚼していた。
 永遠亭とその住人を主とした幻想郷についての話は、ブチャラティにとって俄かには信じがたいものだ。
 しかし、道すがら触らされたてゐの兎耳が本物だったことや、スタンドによらない弾幕の存在、さらには話に聞く幻想郷と
この会場の奇妙な一致などを鑑みるに、最終的には事実として受け入れざるを得なかった。
 付け加えるならば、コロッセオで遭遇した危険なスタンド使いを、直感的に吸血鬼と感じたこともその受容に拍車をかけていた。

 一方てゐは、幻想郷の常識として、あらかじめ外界の存在については知悉していた。
 そして、スタンドについても実際にブチャラティのスタンド『スティッキー・フィンガーズ』の像を見た以上、特に疑うことなく受け入れている。
 その分の空いた余裕を、コンビニの商品を物色して、エニグマの紙の中に詰める作業に費やしているのだった。

「……おい、いくらなんでもやりすぎじゃあないか?」
 考えをまとめ終わったらしいブチャラティが顔を上げると目につく商品棚の大半がガラガラになっていた。
 いつの間にかてゐの所業は、火事場泥棒と見紛うばかりになっていたらしい。
「いやいや、ブチャラティ。 この紙の中に入れちゃえば、重さもなくなるみたいだし、取れるだけ取らなきゃ損だよ」
「確かにこの紙は便利だが、あまり詰め込みすぎると、必要な時に必要なものが取り出せなくなるぞ」
 反論するも、更にそう返されたてゐは、唸りながらエニグマの紙に手を突っ込んだ。
 そして、パニクッたネコドラくんのように、次々にペットボトルやらカップラーメンやらを取り出し、放り投げ、やがて諦めたようにため息をつく。
「ちぇー、紙がもう1枚あればなあ。……んで、考え事は終わったの?」
 先ほどまでとは逆に、紙の中から要らないと判断した物品をそこらに散らかし始めながら、てゐがブチャラティに問いかける。

「ああ、オレの方針は変わらない。
 あの主催者2人を倒し、殺し合いを破壊する」
 カウンターから降りたブチャラティはそう宣言し、てゐはうなずきながら聞いている。
「そして、その過程で出会った『殺し合いに乗っている者』は無力化する。
 いや、予め言っておくと、必要ならば殺害する」
 移動中にちらりと聞いたのと同じブチャラティの方針を聞きながら、てゐは、この部分がダメなんだよなー、と内心つぶやく。
 とは言っても、別にてゐは人殺しを許容できない博愛主義だとかそういう話ではない。
 保身が最優先のてゐとしては、単に危ない橋を渡りたくないだけである。
 主催2人を倒すだけの集まりなら、状況を見て雲隠れすれば最低限の安全は確保できるが、途中の危険人物も自発的に排除するとなると危険度は段違いだ。
 そんな内心を隠しながら、てゐは神妙な顔をして相槌を打った。

「できるだけ早く方を付ける。それまで安全なところに隠れていてくれ」
 最後にブチャラティはそう結んで口を閉じる。
 おや、とてゐは思う。要するに言外にてゐには付いて来るなとの事だった。
 信頼か、外見か、戦力か、覚悟か、理由は何かは分からないが、どうやらてゐはお眼鏡に適わなかったらしい。

「わかったよ。正直、私が付いて行っても足手まといになるだけだろうしね。
 隅っこの方で、この馬鹿騒ぎが終わるのを待ってることにするよ」
 少し考えたような間を開けて、いかにも残念そうにてゐがそう返す。


 実際、ブチャラティでも巫女でもいいので、さっさと事態を解決してほしいというのはてゐの偽らざる本音だ。
 てゐからすれば、どう楽観的に考えても最後の一人になるなどというは、そもそも物理的に不可能に近いように思える。
 特にお師匠様こと八意永琳には、どんな支給品で重武装しようが全く勝てる気がしないのでなおさらである。
 ならば、今ブチャラティに促されたように、自分以外の誰かが事件を解決してくれるのを待つというのも
ある意味で現実的な選択に思えてくるのだった。

「そうだ、なにか身を守るような物は持っているのか?」
「ああ、このスタンドDISCとか言うのが支給されたよ」
 少し重くなり始めた払拭しようとしたのか、ブチャラティが話題を変えててゐに問いかけた。
 そして、返事と共に取り出されたDISCを興味深そうに見据えた。

「コイツは説明書に書いてある通り、こんなふうに頭に入れられるんだ。ほら」
 視線を受けたてゐは、自分の頭にDISCを半分挿入して見せ、抜き出した後にブチャラティに手渡した。
 そして、同じように頭に入れて見るよう促す。

「これは…まさか、こんなものでスタンドが使えるように……?」
 半信半疑の表情ありありで、ブチャラティが受け取ったスタンドDISCを頭に挿入する。

「……ならない!」
『このDISCを頭に差しても、スタンド能力は使えません。外れです』
 そして、ピッタリと頭の中にDISCの音声が流れるタイミングに合わせててゐが言った。
 そうして、してやったりといった感じで意地悪そうに笑うのだった。

「まあ、外れがあるんだから、当たりもあるんだろうけど、私のところには来なかったみたいだね」
 若干残念そうに、てゐがそうオチをつけた。

 ブチャラティは呆れたようにため息を付き、頭から自動排出されたDISCを手に取る。
 そして、DISCと腰に括りていたスプレー缶のような何かをセットにしててゐに突き返した。

「閃光手榴弾だ。ここのピンを抜いてから数秒で激しい光と音が出る。
 ヤバイと思ったら躊躇なく使うんだ」
 わけも分からず受け取ったてゐに、ブチャラティはそう続けた。

「ちょっと、ちょっと! こんなの渡しちゃって、ブチャラティはどうするのさ?」
「なに、もう一つあるからオレのことは心配ない。
 それにこんな所に子供一人放り出すんだ。せめてもの餞別だと思ってくれ」
 何故か怒ったようにも取れる雰囲気でてゐが詰めるも、ブチャラティは気楽な感じで取り合わない。
 暫く言いあうも状況は変わらず、業を煮やしたのかてゐの素足がブチャラティのスーツの太ももの辺りに足跡をつけた。

「おいおい、何が気にいら……」
「西のほうだと、兎の後ろ足が幸運のシンボルなんでしょ。そっちの風習に合わせてあげたのよ」
 抗議の声を挙げかけたブチャラティを遮り、てゐが言った。
 そして、疑問の表情を浮かべるブチャラティを見てこう続ける。
「鈍いわね。私の『人間を幸運にする程度の能力』を使ってやったってことよ。
 ……これで貸し借りなしだからね!」
 てゐはそう言い残すと、OWSONを飛び出して行ってしまった。

 ブチャラティからは見えなかったが、その表情には照れというよりは、軽い罪悪感のようなものが浮かんでいた。


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 『OWSON』を飛び出したてゐが最初に行ったのは拠点の物色だった。
 辺りは全体的には幻想郷の人里であるが、いくつかの建物が外界のものなのか未来的な様相をみせている。
 ならばと、てゐは面白半分に外界風の建物を拠点にしようと決めて辺りをうろつき始めた。
 まず、先ほどのコンビニエンスストアは、物資の調達には役立ったが、拠点として使うにはオープンすぎるので却下との判断を下す。
 同じ理由で、次に見つかったカフェにも×をつける。

 そうこう探すうちに、てゐは二軒並ぶように建っている外界の家屋を見つけた。
 片方は取り立てて特徴のない一般住宅といった感じだったが、もう一方の廃屋のような家に目を引かれた。
 敷地全体が石造りの塀で覆われていて、前庭への唯一の入り口も分厚い鉄の扉で阻まれている。
 家自体も飾り気がなくどことなく堅牢な感じがし、立て籠もるにはぴったりかとてゐは考えた。

 入口の鉄扉の前に立てば、そこには『立入禁止』……否、『立 禁止』と書かれた看板がぶら下がっている。
 看板に若干不気味なものを感じつつも、てゐはここに決めたとばかりに扉を乗り越え、玄関から家に侵入する。
 すると、さっそくというか、玄関には血痕が残っていて、てゐをゲンナリとさせた。
 てゐが求めているのは籠城しやすい要塞であって、不気味なお化け屋敷ではないのだ。

 気を取り直して家内を捜索してみると、やはり廃屋なのだろうか、わりかし賑やかな永遠亭に住んでいるてゐから見ると、全体的に生活感が薄い印象が感じられる。
 そして、何箇所かに、玄関と同じく血の流れたような跡や、焦げ目、破壊された形跡などが見つかった。
 特に、2階の外壁の一部が外から見たときは気が付かなかったが、人一人以上がくぐり抜けられる規模まで大きく破損していた。

「うーん、基本みんな飛べなくなってるから大丈夫だとは思うけど……」

 根城にする家を間違えたかな、そう思ったてゐだが、逆にこの手の穴は逃走経路にもなるだろうと思い直す。
 耐久性を考えても、幻想郷の木造建築よりはやはりマシだろうとの判断もある。
 何より飛び出してから走りっぱなしだったし、ブチャラティに能力を使った際に思ったより疲れていて、さっさと休みたかったのだ。

 最後に辿り着いた屋根裏部屋からは、天窓を通じて屋上に出られるようだった。
 いざという時の逃げ道をそこに決めて、大概に図太く、部屋の隅に腰を下ろしてくつろぎ始めた。


 そのまま暫くして人心地ついた後、てゐはエニグマの紙の中から、先ほどブチャラティに見せた外れのスタンドDISCとその説明書を取りだした。
 そして次々にそれと類似したDISCと説明書を同じように取り出して、まとめて床に広げる。

 てゐの支給品が外れのスタンドDISCというのは、少しばかり正確な表現ではない。
 外れのDISCと説明書、都合6組がセットになっていた「ジャンクスタンドDISCセット1」が正式な支給品名だ。

 とはいえ、ブチャラティに見せなかった残り5枚も、結局はスタンド能力の使えない外れDISCに過ぎないため
嘘は全く吐いていない、というのが別に誰も聞いていないがてゐの主張である。
 まあ、その一方でこの無言の嘘に対して閃光手榴弾を譲られるという予想外に、なけなしの廉恥心が刺激されたわけだが
割と気合を入れて幸運にする程度の能力を使ってやったので、てゐの中では貸し借り無しなのである。

 閑話休題、別の参加者にも支給されているそれと同じように、いくつかの説明書とDISCには主催者からの「参加者に有益な情報」が含まれていた。
 てゐに支給されたセット1には、コロッセオについての情報が記されている。
 説明書によれば、コロッセオの真実の口の中に仕掛けがあるとのことだ。
 そして、今回見せたのとは別のDISCには、紙に書かれても理解しにくいだろう仕掛けの操作方法が、実際に動かしたかのような感覚と共に記録されていた。

 有益とは言いつつも、実際に何があるのかも明記されていない胡散臭い情報だが、はっきり言って戦闘には不向きで
支給品も他にないてゐとしては向かわざるを得ない。
 会場に送られた直後はそう考えてコロッセオに向かい、そこで反対側から逃げてきたブチャラティに出会い、今に至るのがてゐの足跡である。

 そしてこれからだが、ブチャラティからの情報を信じるならば、現状でコロッセオに向かうのはあまりに危険だ。
 生まれも育ちも日本のてゐには、真実の口とやらとコロッセオの詳細な位置関係が分からず、現地での探索が必要になるだろうだけに
このまま調べに行けば、件のスタンド使いとの遭遇を避けられそうもない。
 しかし、ソイツをブチャラティの見立て通りの吸血鬼と仮定するならば、朝日が昇れば屋内に引っ込むはずだとてゐは考える。

 まずは、早朝を待ってこの宝探しをさっさと終わらせるのが先決だとてゐは考えた。
 そして、その結果を持って、本格的に身の振り方を考える必要があるのだとも。

【E-4 人里・虹村億泰の家/黎明】

【因幡てゐ@東方永夜抄】
[状態]:疲労(小)
[装備]:閃光手榴弾×1@現実
[道具]:ジャンクスタンドDISCセット1、基本支給品、他(コンビニで手に入る物品少量)
[思考・状況]
基本行動方針:死にたくない。どんな手を使ってでも生き残る。
1:保身を最優先。凶暴な参加者同士で潰し合っててほしい。
2:今回の異変を解決してくれそうな人物は支援する。(自分の不利益にならない範囲で)
3:早朝になったらコロッセオの真実の口の仕掛けを調べに行く。
4:鈴仙やお師匠様に姫様は…まぁ、これからどうするか考えよう。
[備考]
※参戦時期は少なくとも永夜抄終了後、制限の度合いは後の書き手さんにお任せします。
※虹村億泰の家は、形兆戦直後の状態です。

<ジャンクスタンドDISCセット1>
因幡てゐに支給。
フー・ファイターズがエートロの遺体に寄生する前から守っていたスタンドDISC6枚。
プッチ神父がスタンド使いを殺害しながら生成したきたもの(数えてみたら全部で二十三枚あった)。
参加者の誰が使用してもスタンド能力は利用できない仕様。
説明書付き。
それぞれの説明書かスタンドDISC内に、主催者から参加者にとって
(ゲーム進行に置いて)有益な情報が一つ入っている。
このDISCセットにはコロッセオの真実の口についての情報が記載されている。
全部集めた人には何か良いことが(荒木談)

※真実の口の仕掛けを作動させた結果、何があるかは後の書き手さんにお任せします。


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 そして、一方てゐと別れたブチャラティは、コンビニ『OWSON』に続き人里を離れて、水路沿いに西進を続けていた。

 てゐと話しているときはおくびにも出さなかったが、コロッセオでの負傷はやはり無視出来るものではない。
 そのため、ブチャラティは無理をせず、ゆっくりと歩を進めている。

「しかし、外れのスタンドDISCか……。性格の悪いものを支給しやがる」
 ブチャラティは先ほどのOWSONでの出来事を思い返しながら、閃光手榴弾とは別に支給されていた、自身のもう一つの支給品を連想した。
 その『聖人の遺体』とのみ説明が書かれた心臓と目玉は、用途の不明さと見た目のグロテスクさが相まって
てゐとの情報交換では表に出していなかった。
 あるいは、この支給品も、てゐのスタンドDISCと同じく外れなのかもしれない。
 先の会話を思い出しながら、ブチャラティはそう考えた。

 因幡てゐと言えば、彼女に何か隠し事があるらしい感じは、ブチャラティにも分かっていた。
 そして、スティッキー・フィンガーズと、ちょうど今思い返した聖人の遺体とやらの片割れを使えば
目玉をそれと知らず握りこませる脅し(初対面のジョルノに使った手)で、因幡てゐの動揺を引き出せただろう。
 そうすれば、彼の『汗の味で嘘が分かる』特技によって、情報を隅から隅まで吐かせることも出来たかもしれない。
 しかし、平時ならいざ知らず、この殺し合いの場で相手をパニックにさせるような行動がどんな不利益を呼ぶかを考え、そうすることはしなかった。
 それに永遠亭の事を語っている最中の因幡てゐは、いかにも見た目相応の少女が家族の話をしていると言った感じだった。
 それゆえ、一先ず殺し合いに明確に乗っていないのならばよしとしてしまったのだ。

 どうもサン・ジョルジョ・マジョーレ島で組織を裏切ってからは、弱気というか、甘ったるくなってしまっているらしい。
 ブチャラティはそう考え、自分を戒めるように首を振った。

 そうして、いくらか歩き、水路の合流地点が見えてきたところで、ブチャラティの耳に、ふと人の声のような音が聞こえた。
 夜の闇の中、目を凝らしてその方向を見てみると、対岸を学生服を着た少年が進んでいるのを発見した。
 どうやら声の主はその少年らしかった。
 そして、その少年は大きく後ろを振り返ると、最寄りの建物へ駆け込み姿を消した。
「香霖堂……いや、レストラン・トラサルディーか」
 ブチャラティは地図に目を落とし、いましがた少年が姿を消した建物を確認する。

「背負っていたのは……人間か?」
 最後に少年が振り返った際に、その背に見えた何かをブチャラティはそう推測する。
 この会場で人を背負って移動しているということは推定シロだろうか。
 あるいは背負っているのが死体ならば逆かもしれない。
 どちらの可能性も頭に入れ、ブチャラティは少年の追跡を開始した。


【D-4 平原(南部)/黎明】

【ブローノ・ブチャラティ@第5部 黄金の風】
[状態]:内臓損傷(中)、腹部に打撲(中) 、幸運(?)
[装備]:閃光手榴弾×1@現実
[道具]:聖人の遺体(両目、心臓)@スティールボールラン、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを破壊し、主催者を倒す。
1:レストランに入っていった少年を追う。
2:ジョルノ達護衛チームと合流。その他殺し合いに乗っていない参加者と協力し、会場からの脱出方法を捜す。
3:殺し合いに乗っている参加者は無力化。場合によっては殺害も辞さない。
4:DIOを危険視。いつか必ず倒す。
[備考]
※参戦時期はローマ到着直前です。
※制限の度合いは後の書き手さんにお任せします。
※幻想郷についての情報を得ました。
※てゐの『人間を幸運にする程度の能力』の効果や時間がどの程度かは、後の書き手さんにお任せします。

○聖人の遺体(両目、心臓)@ジョジョの奇妙な冒険 第7部 スティールボールラン
ブローノ・ブチャラティに支給される。
スティールボールラン世界の北米大陸に散らばっている、腐ることのない聖人の遺体。
心臓、左手、両目、脊椎、両耳、右手、両脚、胴体、頭部の9つの部位に分かれて存在しているとされる。
手にした者の体内に入り込み、スタンド能力を発現させる、半身不随のジョニィの足を動かすなど、
数々の奇跡的な力を秘めているが、このバトルロワイアルではスタンド能力を新たに発現させることはできない。
但し、原作中で既に聖人の遺体によりスタンド能力を発現させていた参加者(大統領、ジョニィ)が
遺体を手放すことでスタンド能力を失うことはない。
(一時的に遺体の力でスタンド能力『スキャン』を獲得していたことのあるジャイロと、
 大統領が遺体を全て集めて発動する『D4C・ラブトレイン』の扱いについては、
 後の書き手さんにお任せします。)


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 ブチャラティが彼を見つけるより少し前、虹村億泰は道に迷っていた。
 正確に言えば、地図を見る暇すら与えられていない億泰は、どこを目指すでもなくさまよい続けていたのだ。

 古明地さとりを救出した後、迷いの竹林に入ることでドッピオの追跡を撒こうとしていた億泰だが、その目論見はとりあえず成功したといえるだろう。
 ドッピオは億泰を見失い竹林の奥深くに迷いこんでいき、逆に億泰は多少時間はかかったものの竹林から脱出する事に成功したのだ。

 しかし、当の本人は逃げ切ったことを確信できず、未だ背後を気にしながら小走りに移動を続けていた。
 軽い少女の体とはいえ、人一人を背負いながらの長時間走行は、彼の身体に多大な負担を強いている。
 その疲労困憊の身体に、長きに及んで続く、追われているかもしれないというストレスが加わり
億泰の精神はかなり危ういところまで追い詰められていた。

「くそっ、仗助の野郎はどこに居るんだ……
 それどころか家一軒見えやしねえし、どんなド田舎なんだよ、ここはよお」
 竹が見えなくなったと思ったら、今度は原生林に沼地が現れるような会場に悪態をつく億泰。
 親友は見つからず、背負った少女は心なしか容態が悪化しているようにも感じられ、焦燥は留まるところを知らず加速していく。

 そんな折だった。森と水路に挟まれた立地に、見覚えのある建物が見えたのは。
「コ、コイツはトニオさんの店じゃあねえか!?」
 その建物の正体に気づいた億泰は、声を抑えることも忘れて叫んだ。
 先頃まで散々に迷った竹林に、左手に見える原生林など、明らかにここは杜王町ではないが、なぜトラサルディーが存在するのか。
 当然そんな疑問も頭に浮かんだが、休むにも、隠れるにも、少女の容態を診るにも好都合だという現実の前にあっさりとかき消される。

「地獄に仏ってのはこの事か!
 トニオさんにはわりいけど勝手に使わせてもらうぜ!」
 知り合いの店だけに、若干の気がとがめるところがあったようだが、レストラン・トラサルディーに押し入ることにする億泰だった。
 そしてその最中に、天啓のようにある発想が浮かんだ。

 --この女の子だけどよお、トニオさんの料理を食わせればこれぐらいのケガは治るんじゃねーか?

 自身が一度トラサルディーで料理を食べて『健康』になった時を思い返し、億泰の表情が次第に希望に満ちたものに変わっていく。
 そうして、一度だけ大きく後ろを振り返り、一目散にトラサルディーに駆け込んでいった。


 確かに、億泰の考えたようにトニオ・トラサルディーの料理ならば、さとりの負傷を治療することができるのかもしれない。
 しかし、冷静に考えられる精神状態ならば気が付くことだが、厳密に言えば負傷を治すのはトニオの料理の中に混入している、彼のスタンド『パール・ジャム』だ。
 果たして、この会場で手に入れられる料理にその効果は期待できるのだろうか?


【D-4 レストラン トラサルディー/黎明】
【虹村億泰@ジョジョの奇妙な冒険 第4部 ダイヤモンドは砕けない】
[状態]:疲労(大)、精神疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品1~2
[思考・状況]
基本行動方針:未定。ただし、殺し合いに乗る気はない。
1:ツイてるぜ!トニオさんの料理を食わせりゃこれぐらいのケガなら治せる!
2:知り合い(東方仗助、広瀬康一、空条承太郎、岸辺露伴)と合流したい。
[備考]
※支給品をまだ確認していません。
参加者名簿を一部確認しました。
 (東方仗助、広瀬康一、空条承太郎、岸辺露伴の名は確認しています。吉良吉影の名は確認していません。)
※参戦時期は未定ですが、東方仗助、広瀬康一、空条承太郎、岸辺露伴の4名とは面識があります。
※能力制限の程度については、後の書き手さんにお任せします。

【古明地さとり@東方地霊殿】
[状態]:脊椎損傷による下半身不随、内臓破裂、
肉体疲労(極大)、妖力消費(極大)、精神疲労(極大)、
[装備]:草刈り鎌
[道具]:なし(基本支給品などの入ったエニグマの紙は、ディアボロに回収されました)
[思考・状況]
基本行動方針:未定。
1:気絶中。
[備考]
※参加者名簿をまだ確認していません。
※会場の大広間で、火炎猫燐、霊烏路空古明地こいしと、その他何人かのside東方projectの参加者の姿を確認しています。
※参戦時期は未定です。
※読心能力に制限を受けています。東方地霊殿原作などでは画面目測で10m以上離れた相手の心を読むことができる描写がありますが、
このバトル・ロワイアルでは完全に心を読むことのできる距離が1m以内に制限されています。
それより離れた相手の心は近眼に罹ったようにピントがボケ、断片的にしか読むことができません。
精神を統一するなどの方法で読心の射程を伸ばすことはできるかも知れません。
※主催者から、イエローカード一枚の宣告を受けました。
もう一枚もらったら『頭バーン』とのことですが、主催者が彼らな訳ですし、意外と何ともないかもしれません。
そもそもイエローカードの発言自体、ノリで口に出しただけかも知れません。

047:名前のない怪物達 投下順 049:”HAIL”2U!
047:名前のない怪物達 時系列順 050:穢き檻の眠らない夜
030:Look into my evil eyes 因幡てゐ 072:Trickster ーゲームの達人ー
030:Look into my evil eyes ブローノ・ブチャラティ 065:Roundabout -Into The Night
011:地獄の番人 虹村億泰 065:Roundabout -Into The Night
011:地獄の番人 古明地さとり 065:Roundabout -Into The Night

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最終更新:2014年08月09日 15:10