やれやれ、タチの悪い夢を見ていたのかと思っていたが。
本当にこれは…現実らしいな。この感覚、夢にしては生々しすぎる。
このような何も無い草原に放り込まれたが、此処が殺し合いの会場なのだろう。
にしても、面倒なことに巻き込まれてしまったな…。
私は他人と顔を入れ変えてまで
空条承太郎共から逃げて、別人として暮らすことを余儀なくされた。
自分を偽り続け、毎日ストレスが貯まるばかりの生活だったが、ようやくあんな争いから解放されたのかと思っていたのに…
しかも名簿を確認したら、私の平穏を脅かしたあの忌々しいクソカス共の名が載っていたのだ。
東方仗助、
虹村億泰、
広瀬康一、岸辺露伴、そして空条承太郎…
最悪だ。最悪にも程がある。
目の前に広がる深夜の草原を眺めながら、サラリーマン風の装いをした男――『
吉良吉影』は内心苛立った感情を抱く。
社会において「心の平穏」を求めていた彼にとっての『最悪のゲーム』に巻き込まれてしまった。
争いや面倒事を嫌い、自身の正体―――殺人鬼としての本性―――を隠し通してきた彼にとって、こんな催しなど呼ばれたくもなかった。
戦えば自分の『能力』がバレてしまうし、殺し合いという状況下で衝動を抑えられなくなってしまうかもしれない
故に彼は、殺人鬼でありながら『殺し合いに乗ろう』と考えようとはしなかった。
誰彼構わず殺したいというワケではない。彼は女性の美しい手を求めて殺人を犯すのだ。
尤も、此処最近『それ』が出来なくて非常に欲求不満な状態なのだが…
…ともかく、彼は『ひっそりと隠れられる』場所を探していたのだ。
殺し合いなんてやりたい奴らが勝手にやってればいい。自分は人数が減るまで適当に隠れてよう。
そんな思考の下、彼は隠れ家に丁度いい施設を求めてアテもなくだだっ広い草原を歩き続けていた。
深夜の暗闇には多少は慣れてきたものの、夜空に浮かぶ星と満月程度の灯りしかないこの状況だ。
どこに『参加者』が潜んでいるのかがよく解らない以上、少しばかり慎重な足取りになってしまう、
程よく手入れされた皮靴を履いた両足で一歩一歩雑草を踏み頻りながら、彼は進んでいた。
(…湖、か?それに…彼処に見えるのは)
何分か歩き続けた吉良は立ち止まり、目を細めて前方に見える光景を確認する。
そう、視界の先に湖らしきものが見えるのだ。そして傍に見えるのは…一軒の施設。
アレは何だ?輪郭が多少見えているが、それなりに立派な建造物に見える。
目を凝らして、吉良は遠方に見える建物の姿を確認しようとした。
…見た所、アレは…………神社、なのか?
吉良はそう認識し、その場から再び歩き出してそちらへと向かおうとしていた時だった。
「―――参加者、だな?」
吉良の後方から、誰かが話しかけてきたのだ。
突然の呼び声に少しばかり驚きつつも、吉良はすぐさま振り返る。
無論、多少なりとも警戒を抱いて身構えつつ。
この会場にはどんな連中がいるのかも解らない以上、暢気にしてはいられない―――
そう思っていたのだ。
そして、振り返った先にいた人物を見て。
吉良は、多少なりとも驚いた様子を見せたのだ。
「……あ、あぁ…そうだが……。」
「安心してくれ。私は、こんな殺し合いを許容するつもりなんてない」
吉良が振り向いた先にいたのは、一人の少女だった。
月光に照らされる美しい銀色の長い髪を持っており、小奇麗な身なりに感じる。
赤みがかった瞳は真っ直ぐに吉良を見据えており、そこから敵意は見られない。
…いや、吉良が驚いていたのはもっと違う所だった。
警戒が解けないような固い態度を見せる吉良を見て、少女は何となく予想してたかのような様子を見せて再び言った。
「…尤も、今の私はこのような『妖怪』の姿。警戒されるのも仕方無いとは思う。だけど、信じてほしい」
自らの姿を眺めるように呟いた後、再び吉良を真っ直ぐに見つめながら彼女は言った。
そう。
吉良が驚いていたのは、その少女の外見。
―――彼女の頭部から生えている角や衣服から覗いている尻尾のことだった。
そして、彼が驚いていたことは…もう一つ。
「………美しい……」
「…え?」
吉良の口からぼそりと言葉が漏れた。
少女が一瞬ぽかんとした様子を見せるが、彼女に吉良の心情は伺い知れず。
いや、恐らく理解することも出来ない感情だろう。
吉良がまじまじと視線を向けていたのは、少女の『手』。
◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆
少女の名は『
上白沢慧音』。
人間から妖怪へと転じた後天的な獣人―――ワーハクタク。
人里で寺子屋を営みつつ、幻想郷の歴史を刻み続ける編算者。
あの場での凄惨な光景は彼女の脳に強く焼き付いていた。
見覚えのない場所で目を覚まし、唐突に言い渡された『殺し合い』の幕開け…。
会場にどよめきが訪れたのはすぐ直後のこと。
周囲を見渡してみれば、見覚えのある顔が幾つも見受けられた。妹紅さえも見かけた。
そして妖怪の山に住まう秋の神・秋穣子があの荒木と太田という男に食って掛かる。
そう、食って掛かった。―――そこから先のことは、はっきりと記憶している。
彼女の頭が吹き飛んだ。
会場が静まり返った。私でさえ言葉を失い、唖然としていた。
そう、目の前で―――彼女が死んだ。
山の神様である彼女が、「見せしめ」として一瞬で殺された。
信じられなかった。あの八百万の神が、主催者の手によってこうも容易く死んでしまったことが。
そして―――こんな凄惨な悲劇が、『本当』だと言うことが。
それから気がつけば私は会場に送り込まれていた。
何も無い原っぱにて、ぽつんと取り残されたかのように私は殺し合いの地に存在していた。
…暫し、呆然と空を眺めていた。満月が空に浮かんでいる。
私の中の『妖怪』としての血が目覚める、満月の夜だ。
…獣のように昂る主催者への強い憤りを抑え込みながら、私はその場ですぐさま決意をしていた。
この殺し合いを、止めなくてはならない。
哀しみと苦しみを生み出すだけの、血に塗れた凄惨な争いなんて…あってはいけない。
あの山の神様も犠牲となってしまっている。――これ以上、誰かを犠牲にしてしまうものか。
悲しい歴史を、紡がせるわけにはいかない。
◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆
「―――それで…慧音さんの知り合いは、この場に何人も?」
「ああ。親しき者もいれば、少し面識のある程度の者もいるし…とにかく、知り合いが何人もこの場にいるんだ」
「成る程な…」
そうして彼女―――慧音が最初に会場で見つけたのが一人の男性、名は『吉良吉影』。
彼女は対話を試みた。角や尻尾の生えた自身の容姿を少し驚かれることはあったが…吉良はすんなりと同行を許可してくれた。
二人は互いに自己紹介をしつつ、一先ず現在地から近い守矢神社に向かうことにした。
神社の中に誰か人がいるかもしれないし、探索を行ってみたいと慧音が提案したのだ。
吉良はすんなりとそれを受け入れた。元からあの神社へと向かうつもりだったし、丁度いいと思ったのだ。
軽い情報交換程度の会話を交わしつつ、二人は歩いていた。
この場にいる知り合いのことや、此処に来る前の経緯など…
無論、二人共警戒は解いていない。他の参加者がどこかに潜んでいる可能性もあるし、殺し合いに乗っている人物もいるかもしれないからだ。
(しかし…幻想郷、妖怪ねぇ……)
吉良吉影は、慧音と会話を交わしながら内心思考する。
彼女の口から出てきた『幻想郷』という言葉が気になり、そのことについて聞いたのだ。
そこから明らかになったのは、自分の知らぬ未知の世界の話。
人間、妖怪、果ては神々が共存し住まう幻想の地。結界によって隔離された最後の楽園。
聞いた時は「イカレているのか?」とでも思ったが…嘘にしては話が出来すぎている。
最初の会場で見せしめにされた少女が『八百万の神々』と呼ばれていたことも脳裏によぎる。
そして、同行している彼女…慧音さんはワーハクタクの妖怪であるという。
…何もかも無茶苦茶な話だ。神々が殺し合いの犠牲になり、妖怪がこうして目の前にいる?
それどころか、彼女の知り合いには「不老不死の人間」がいるらしい。
普段なら「馬鹿馬鹿しい」と一蹴しているだろうが…こんな異常な状況下に置かれている今。
そんな無茶な話が「現実」でも不思議ではないような気がしたのだ。
―――断っておくと、吉良は自分のことをあまり話していない。
せいぜい「争いとは無縁な会社勤めの平凡なサラリーマンである」ということだけだ。
無論、空条承太郎や東方仗助たちのことは一言も話していない。
名簿に載っている名前を適当に使って偽名を名乗ることも考えたが…途中でボロが出たら面倒だ。
渋々「吉良吉影」という本名を名乗ることにした。…本当に空条承太郎らにはそこらで勝手に死んでいてほしい。
本当に会いたくない…気苦労が多くて疲れる。そう思っていた。
そしてこの情報交換において、吉良は「キラークイーン」のことについては一切話さなかったのだ。
キラークイーンは彼にとっての切り札。そして殺人の証拠隠滅の為の重要な能力である為、下手に晒すわけにはいかない。
それ故に片手には『建前の護身用武器』として、『スタンガン』を握り締めているのだ。
これは吉良に支給されたランダムアイテム。無害な一般人ということになっている私の唯一の武器。
とはいえ、実際には妖怪やスタンド使いがいるこの状況では精々時間稼ぎにしか使えないだろう。
基本的に戦闘は慧音に任せることにする。スタンドを使うのは、本当に身の危険が迫った時だ。
今は『無害な一般人』として、彼女の加護を受けることにしよう。
「…さて、そろそろだな」
会話を一旦止め、慧音は前を向きながらそう呟く。
吉良もそれに釣られるように、彼女の向いた方向を見た。
「ここが守矢神社だ」
◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆
これから、どうしよう。
守矢神社の境内、居住空間の内部。
こじんまりとした部屋に隠れて潜んでいるかのように、一人の少女がそこにいた。
デイパックを抱え、恐怖と緊張の入り交じったような強ばった表情を浮かべながら部屋の外を覗き込むようにきょろきょろと見ていた。
支給品、そして名簿は既に確認している。その片手には一本の刃物―――メスが握り締められていた。
「私が、一体何したっていうのよ…」
少女は泣き言のように小声で言葉を吐き出す。
黒い髪や服に、大きな触手のような翼が目を引く出で立ちだ。
彼女の名は『
封獣ぬえ』。悪戯好きで天の邪鬼な鵺の妖怪。
記憶を遡ってみれば、確か自分は外の世界から旧友を幻想郷に呼び寄せた所までは覚えている。
聖が封印していた聖人『豊聴耳神子』が復活を果たしたと言うのだ。
人間に味方である彼女が人里の民の心を掌握し、勢力を伸ばせば…きっと聖や妖怪が危ない。
だからこそ、私は聖人にも対抗し得る『強大な妖怪』である旧友―――マミゾウを呼び出したのだ。
そうして私は、聖人を含めたあの神霊廟の連中をどうにかしようとしていた…はずだったんだ。
それなのに。
何で私が、私達がこんな狂った催しに巻き込まれなくちゃならないのか。
人間たちに封印された時なんかよりもよっぽど理不尽で、恐ろしい。
―――本当に、私が何したって言うんだ。
名簿には命蓮寺のみんなやマミゾウの名前が載っていた。勿論、聖も。
そしてあの神霊廟の連中の名が幾つか記載されいるのも見受けられた。
…私は、この場でどうすればいいのだろう。
私を暖かく迎え入れてくれた聖を喪う。…それは、本当に悲しいことだ。
聖は本当にいい人だった。妖怪を受け入れ、私を受け入れてくれた…
聖者のように清らかなあの人が、殺し合いを許容するとも思えない。
だけど、それじゃ彼女が危ない。
あの主催者は本当に『ヤバい存在』だってことが私にも感じ取れた。
逆らえるわけがないんだって本能が直感していたんだ。
きっとアイツらには、『勝てない』―――
「―――誰かいるのか?」
縁側から、こちらに呼びかけてくるような声が聞こえてきた。
少女の声だった。私は、部屋から顔を覗かせつつ恐る恐る目を凝らす。
――私が目を向けた視線の先。先の縁側に立っていたのは…二人の参加者らしき者達。
「君は、確か…命蓮寺の?」
「…あんた、寺子屋の」
そう。その内の片方は人里で見かけたことのある、寺子屋を営む妖怪。
そしてもう一人は、見覚えのない人間の男だった。
◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆
守矢神社の境内に辿り着き、すぐに慧音は何者かの気配を感じ取った。
それは妖怪としての第六感なのかもしれない。
彼女は吉良と共に慎重に移動し、神社内の居住空間の方へと移動してみたのだ。
…そうしてみると、居住空間の演題にて一人の参加者を発見したのだ。
それは、命蓮寺の門下にいるという鵺の妖怪――『封獣ぬえ』。
慧音は警戒しつつも、ぬえとの対話を試みたのだ。
「それで、慧音さん。これから…どうするんだ?」
対面から少しだけ経ち。
全員が一つ一つ支給品を確認し合った後、先程までぬえが隠れていた居住空間の一室にて吉良が畳に座って問いかける。
ぬえは吉良から少し距離をとって尻餅をつくように座っている。
外から指す月明かりを眺めるように、慧音は少し考え込み…そして自分の方針を言った。
「…会場を移動して、一緒に此処から脱出する為の仲間を集めたい。可能なら、主催者を倒す為の手段も」
「…殺し合いには私も反対だが、移動して仲間を集めると言うのは少々危険ではないかな?
このゲームに乗っている参加者が把握出来ない以上、今は動かず慎重に様子を…」
吉良が少しばかり慎重な意見を言おうとするが、慧音は首を横に振る。
「時間が過ぎるのを待っていれば、それだけ犠牲者が増えてしまう。
…私の我侭のような形になってしまうが…出来れば、戦えない者も保護したい。
吉良さんのような『力を持たない』人達が怯えている隠れている可能性だってある」
「………そうか」
「…吉良さんや、ぬえには迷惑をかけてしまうかもしれない。でも…何かあった時は、私が絶対に守る。
だから…主催に抗う仲間を集める為にも、一緒に来てほしい。必ず、主催者への勝算を…打開策を見つけてみせる」
真剣な眼差しで、慧音は吉良に向かって言う。
主催に立ち向かう為の仲間を集めなくてはならない。他の参加者を見捨てるわけにはいかない。
だからこそ、彼女は『行動すること』を優勢したのだ。
吉良やぬえを守ることも決意し、自分が率先して戦うことを決めた。
勝算すらあるかも解らないが、少なくとも行動を起こさねば何も始まらない。
故に彼女は、僅かな希望を手に立ち向かうことを決意したのだ。
(…フン、大した正義感だな)
そんな慧音の態度を、吉良は内心冷ややかに見つめる。
やはりこの上白沢慧音とやらはあの東方仗助共のような奇麗事を語る善人らしい。
―――馬鹿馬鹿しい。
私としては、出来ればこの神社で暫く籠っていたかった。どうせ移動した所で面倒なことに巻き込まれるだけだ。
…まぁ、ここで更に反論した所で彼女が意見を曲げるとも思えない。
仕方無いが、従ってやろう。
「…解った。慧音さん、私も貴方に着いていこう。
乗りかかった船と言うこともあるが、私もこんな催しを許すつもりはないからな。
この私は、君たちのような『力』は持ち合わせていないが…出来る限りの協力はしたい」
建前で作った偽りの『決意の表情』を見せながら、吉良は慧音に同調するように言う。
とはいえ、こんな催しを許すつもりはないというのは事実ではある。
私の平穏な生活を脅かしたのだ。その時点で許すつもりはないし、抹殺も考えている。
そうゆう点においては、ある意味私は嘘はついてはいないのだ。…能力のことを一切明かしていないのは事実だがな。
「え、…あー…じゃあ、私も…ついでに、着いていこうかな…?」
殆ど会話に参加していなかったぬえも、曖昧ながら二人に同行を宣言する。
吉良や慧音と違い、その態度は「なし崩し的に乗った」とでも言わんばかりの様子だ。
何とも言えぬ表情を浮かべながら、吉良がぬえに視線を向けていた。
吉良の視線に気付いたのか、ぬえが少しだけやりづらそうに目を逸らしつつ慧音の方を見る。
…慧音は、二人を微笑みながら見ていた。
「…吉良さん、ぬえ、二人ともありがとう。本当に助かるよ…。」
慧音の口から発せられたのは感謝の言葉。
その表情からも解る、心からの御礼だった。
吉良はそれに対し、謙遜したように言葉を発する。
「気にすることはないさ。皆で手を取り合って状況を打破するのは大切なことだからね…」
「それだけでも私からすれば礼を言いたいくらいだよ。主催に反抗する者が少しでもいれば、心強いものさ」
そう言いながら慧音は立ち上がり、再び外を見る。
仄かな月光に照らされている『幻想郷』が、彼女の視界に広がっていた。
―――こんな場で、既に殺し合いは始まっているのだと。
「…さて、一通りの纏めはもう終わったことだ。
そろそろ行動を始めたいが…吉良さん、ぬえ。大丈夫かな?」
「…ああ、構わないさ。」
「……私も…うん」
慧音の一声に対し、吉良とぬえは承諾し立ち上がる。
どうやら、もう移動する時が来たらしい。吉良からすれば存外速いなとも思わなくもない。
まぁ、あの正義感の持ち主となれば当たり前なのかもしれないが。
―――それよりも、私が未だに気になっていることがあった。
「ならよかった。…それでは、行こうか?」
月明かりに照らされつつ、慧音が先頭を歩き部屋を後にして行くのを後ろから見ていた。
ぬえ君と共に着いていきつつ、私は彼女のある一点を凝視する。
美しい。
美しい。
美しい。
彼女の『手』が、どうしようもなく美しい。
私の内からどうしようもない衝動が沸き上がる。
あれを手に入れたい。
私は、手に入れたい。
『彼女』を、自分だけのものにしたい―――――
殺人鬼『吉良吉影』は女性の美しい手を狙い、殺人を繰り返していた。
数多くの『手』を愛でてきた彼が久方ぶりに目をつけたのは、上白沢慧音の『手』。
◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆
(『私が絶対に守る』って…こっちだって一応力には自信あるんだけどね…)
隣の…吉良、って人と共に私は慧音に着いていく。
吉良って人は何となく苦手だ。柔和なんだけど…こう、なんか…怖い。
それに、この場では流されるがまま慧音たちに着いていってしまったが…はっきり言って期待していない。
主催に立ち向かう?勝算はないけど打開策を見つけてみせる?
…あのさぁ…無謀ってのはそうゆうことを言うんだよ!
馬鹿じゃないの!?そんなんで勝てるんだったら苦労はしない!
軽い苛立ちを抱きつつ、私は内心思考を続けていた。
…ともかく、聖を喪うのは絶対に駄目だ。妖怪にとっての希望なんだから。
でも、聖はきっと殺し合いには乗らない。希望を信じて主催者に立ち向かうのだろう。
慧音と同じように、主催に反抗するのだと思う。
だけど―――こんな大人数の、それも神々や妖怪を容易く呼び寄せられるような主催者に勝てるのか?
―――無理だ。そんなこと無理、無理だ!
下手すれば聖が主催に始末されるかもしれないし、聖が不殺を訴えた末に『乗っている』参加者に殺されることだって有り得る。
聖は優しすぎる。それが彼女の弱点なんだ。こんな血に塗れた場所だと、きっと…生きることは出来ない。
だから。聖を守る為には、他のみんなを殺さなくちゃならない。
汚れ役は…私のようなヤツが請け負わなくちゃいけないんだ。
主合えば彼女は妖怪の味方だということも知らずに、私は聖の復活の時に迷惑をかけてしまった。
そう、今…私が彼女を守れば。恩返しにだってなる。
でも、最後はどうする?
聖を守る為にみんなを殺す。殺し合いに生き残れるのは一人だけ。
要するに、最後は私でさえも死ななくちゃならない。…聖が生きてくれるならそれでいい?
…嫌だ。死ぬのは嫌だ。私だって怖い。死ぬのは、怖い。聖は守りたい。でも、私も死にたくない。
だったら、むしろ自分だけが生き残る為に行動する?
命蓮寺の皆を、マミゾウを、聖を。みんなのことを裏切って、私だけが生き残る?
それもいいのかもしれない。死にたくなんかないもの。
でも、その後の私はどんな罪の意識を背負って生き続けることになるんだ?
…どちらにするか、未だに私は決められていない。
でも。殺すこと自体は、私が手に入れた『あの円盤の能力』でどうにでもなる。
私の支給品は、さっきから握り締めてるメスなんかじゃない。
『スタンドDISC』とかいう光る円盤のような代物。慧音や吉良と会う前に、既に私は円盤を『挿入』していた。
円盤とセットになって入っていた『頭に挿入して使え』とだけ書かれた紙に従い、それを自分の頭に挿入したんだ。
その円盤には未知の能力が封じ込められていた。そう、私が手に入れたのは『メタリカ』という力だ。
私は二人にはこのことを話していない。メタリカの能力で造り出したメスを支給品だと偽った。
この能力を利用すれば、きっと暗殺だって余裕で出来る。神霊廟の連中を始末することだって出来るかもしれない。
覚悟を決めるのは私だ。
主催者に抗うことなんてどう考えても出来っこない。
なら殺し合いに乗るしかないんだ。
でも、聖を選ぶか。私を選ぶか。問題はその選択だ。
―――私は、どうすればいい?
◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆
智慧の妖怪、上白沢慧音。
殺人鬼、吉良吉影。
正体不明の妖怪、封獣ぬえ。
3人の参加者が手を結び、守矢神社を後にする。
だが…その各々の目的、そして思惑は全く違うものだった。
一人は主催を倒す為、弱者を守る為。
一人は己の保身の為、歪んだ欲望の為。
一人は恩義か保身か、どちらを取るか決める為。
―――彼らは誰一人として、互いを理解していないのだ。
この同盟が脆く崩れ去るか、纏まりを見せて結束するのか。
その行く末は、彼らの行動によって変わるだろう。
【D-1 守矢神社/深夜】
【吉良吉影@第4部 ダイヤモンドは砕けない】
[状態]:健康、興奮
[装備]:スタンガン@現実
[道具]:不明支給品(ジョジョor東方 確認済み、少なくとも武器ではない)、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:平穏に生き延びてみせる。
1:面倒だが、一先ず彼女らと同行する。
2:他の参加者同士で精々潰し合ってほしい。今はまだは様子見だ。
3:無害な人間を装う。正体を知られた場合、口封じの為に速やかに抹殺する。
4:空条承太郎らとの接触は避ける。どこかで勝手に死んでくれれば嬉しいんだが…
5:慧音さんの手が美しい。いつか必ず手に入れたい。抑え切れなくなるかもしれない。
[備考]
※参戦時期は「猫は吉良吉影が好き」終了後、川尻浩作の姿です。
※自身のスタンド能力、及び東方仗助たちのことについては一切話していません。
※慧音が掲げる対主催の方針に建前では同調していますが、主催者に歯向かえるかどうかも解らないので内心全く期待していません。
ですが、主催を倒せる見込みがあれば本格的に対主催に回ってもいいかもしれないとは一応思っています。
※幻想郷についてある程度知りましたが、さほど興味はないようです。
※能力の制限に関しては今のところ不明です。
【封獣ぬえ@東方星蓮船】
[状態]:精神不安定
[装備]:スタンドDISC「メタリカ」@ジョジョ第5部、メス(スタンド能力で精製)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:聖を守りたいけど、自分も死にたくない。
1:今は慧音と吉良に同行する。正直言って、主催者に歯向かうのは自殺行為にしか思えない。
2:聖を守る為に他の参加者を殺す?皆を裏切って自分だけ生き残る?
3:この機会に神霊廟の奴らを直接始末する…?
4:あの円盤で発現した能力(スタンド)については話さないでおく。
[備考]
※参戦時期は神霊廟で外の世界から
二ッ岩マミゾウを呼び寄せてきた直後です。
※吉良を普通の人間だと思っています。
※メスは支給品ではなくスタンドで生み出したものですが、慧音と吉良にはこれが支給品だと嘘をついています。
※能力の制限に関しては今のところ不明です。
【上白沢慧音@東方永夜抄】
[状態]:健康、ワーハクタク
[装備]:なし
[道具]:不明支給品(確認済み)、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:悲しき歴史を紡がせぬ為、殺し合いを止める。
1:吉良、ぬえと共に行動する。
2:仲間を集め、脱出及び主催者を倒す為の手段を探す。弱者は保護する。
3:殺し合いに乗っている人物は止める。
4:出来れば早く妹紅と合流したい。
[備考]
※参戦時期は未定ですが、少なくとも命蓮寺のことは知っているようです。
※吉良を普通の人間だと思っています。
※満月が出ている為ワーハクタク化しています。
※能力の制限に関しては今のところ不明です。
※3人がどこへ向かうかは後の書き手さんにお任せします。
<スタンガン>
吉良吉影に支給。
対象に電気ショックを与えて短時間だけ行動不能にするハンディタイプの護身用器具。
<スタンドDISC『メタリカ』@ジョジョ第5部>
破壊力―C スピード―C 射程距離―C(5~10m) 持続力―A 精密動作性―C 成長性―C
封獣ぬえに支給。
極小の群体型スタンド『メタリカ』のスタンドDISC。
射程距離内に存在する鉄分を自在に操作する能力を持つ。
操作した鉄分を鉄製品に組み替えることが可能で、相手の体内で刃物を精製し内側から切り裂くと言うことも可能。
鉄分を失うことで呼吸をする生物は酸素を体内に供給出来なくなり、呼吸困難に陥り最終的に死に至る。
直接的な殺傷能力の高さ、及び酸欠による死を狙えるという点で暗殺においては非常に適した能力だろう。
ただし制限により鉄分を纏って姿を隠すことは不可能になっている。
また、多くの鉄分を操作をしたり能力を長時間維持すればそれだけ本体の消耗も大きくなる。
最終更新:2014年03月18日 23:41