sub: ――花果子念報第4誌――
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添付ファイル:追撃者から逃走する自動車_遠景.jpg
自動車内拡大写真_内部で横たわる
博麗霊夢と
空条承太郎.jpg
追跡者の進路を阻もうとする
洩矢諏訪子他2名.jpg
本文:
――花果子念報第4誌――
●●●【速報】博麗霊夢・空条承太郎再起不能か!?●●●
第一XX季 ◯◯の◆ 午前9時55分 配信
現在、博麗霊夢・空条承太郎の両名が、重傷を負い意識不明の状態で、
自動車と見られる乗り物の荷台に乗せられてB-3エリア東南端、霧の泉の湖岸沿いを北西に向けて逃走中である。
博麗霊夢および空条承太郎両名は、紅魔館での戦闘で敗北して重傷を負い、
絶命寸前であった所を自動車に乗った仲間に救出されたと見られる。
現在も両名を乗せた自動車は紅魔館内より出現した追手と見られる複数名から逃走を続けている。
自動車に乗った一行のうち、洩矢諏訪子・
多々良小傘・
十六夜咲夜と思しき3名が自動車を下り、
殿(しんがり)として追手の進路を妨げようとしている模様。まもなく追跡者たちと接触すると思われる。
なお、
第一回放送で死亡が通知された十六夜咲夜と、本記事で述べた十六夜咲夜と思しき人物の関連は不明である。
博麗霊夢および空条承太郎は、自動車の荷台に同乗する外来人と思しき2名から手当てを受けている様であるが、
現在も意識不明。回復の見通しは立っていない。
特に博麗霊夢は幻想郷の住民にとって重要な『博麗の巫女』という肩書を持つ人物であり、
もし死亡することがあれば最悪の場合、幻想郷そのものが存亡の危機に立たされるため、
この場に数多く呼び出されている幻想郷の住民の間に絶望が広がることが予想される。
博麗霊夢、ひいては幻想郷の住民全ての今後が、この追跡劇に左右されるといって過言ではないのだ。
だが、追撃者一行は幻想郷屈指の実力者でもある博麗霊夢を倒した人物を含む可能性が高く、
洩矢諏訪子ら3名で彼らを食い止めることができるかどうかは不透明である。
追撃の阻止に失敗すれば、博麗霊夢たち一行が追いつかれることになる可能性が高い。
そうなれば今度は博麗霊夢および空条承太郎と自動車で同乗している外来人3名が追跡者に応戦する必要があり、
博麗霊夢及び空条承太郎の治療の手が止まることは避けられず、彼女らの生存はますます絶望的となる。
博麗霊夢、空条承太郎は、今まさに風前の灯の状態にある。
幻想郷そのものの命運が、一つの大きな試練に晒されているのだ。
本日正午に続報を配信予定。(
姫海棠はたて)
【博麗霊夢】 ―――再起不能
【空条承太郎】 ―――再起不能
『両二名:生死不明』
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「……はーっ、はーっ」
姫海棠はたての携帯電話の液晶には、紅潮した少女の表情と、血走った視線が写り込んでいる。
興奮で息が荒くなり、液晶の円い曇りは繰り返し伸び縮みしている。
両手が震えて自然と力がこもり、一歩間違えば携帯電話を握り潰してしまうほどだ。
「そ、『送信』……」
姫海棠はたてはメール機能において『送信』として扱われる、斜めに傾いた受話器のボタンを右手の親指で押し込んだ。
そして数秒の間、携帯電話にかじりつくように見つめる件のポーズで固まったかと思うと――
「『メールが相手に届きました』……はーーーーっ。 はああーーーーっ……! やっちゃった、やっちゃったわ……!」
木の幹に背中を預け、脱力して天を仰いだのだった。
「ヤバいヤバいヤバいヤバいわよこれ絶対ヤバいわよコレどうなるのよコレ絶対あの巫女ヤバいわよ。
コレあの巫女どうなるのよコレヤバいわよヤバいコレマジヤバい、端的に言ってヤバいわよ」
姫海棠はたては今自分がしでかした行為について、興奮と緊張で一時的に著しく減少したボキャブラリーで独白する。
このメールをウェス・ブルーマリン含む何人かの参加者が持つ通信端末に送信する意味を、
彼女自身理解していない訳ではなかった。
「こんなことやったら、あのウェスって男みたいに殺し合いに乗った連中がわんさと霊夢たちを
殺しに集まって来るに違いないわ……。
瀕死の重傷者を抱えて逃げてるグループなんて、あいつらにとっちゃ格好のエサだもの、絶対あの巫女死ぬわよね!
その瞬間は、必ずこの私がファインダーに収めてみせる……!」
むしろ、今のメールマガジンは博麗霊夢の死を後押しする目的があった。
メール本文中にも、そんな彼女の意図が込められている。
霊夢に味方しているであろうグループの名前は、はたての知る限り明示した一方で、
霊夢に敵対していると思われる追跡者のグループについての情報は、その人数を含めて可能な限り伏せている。
追跡者一味のうち、邪仙の
霍青娥は、はたても知る人物ではあったがその存在は文中で明かしていない。
また、追跡者の中にトカゲのような、人外の生物が存在することもはたては見ていたが、本文からは読み取れなくしている。
添付した写真も同様で、逃走組は霊夢達を治療する2名と、自動車を操る外来人の女性、
さらに殿に立った3名も含めて全て顔がはっきり判別できるものを添付しているが、
追跡者の姿の映った写真は添付していない。
(きっと、その方が追いかける方には有利に働くわよね)
はたてはウェスとの一戦で悟っていた。『スタンド』という能力は、初見殺しもいいところだ、と。
もしウェスの能力が、天候を操るものだと最初から知っていれば、彼に負けなかった。
雨で翼を濡らされても、風で吹き飛ばされる前に地面を駆けて直接殴り掛れば、
腐ってもこちらは烏天狗、ただの人間には負けない。
が、現実にはウェスに敗北して協力を強いられている訳で、
――今更言い訳してもどうしようもないが、とにかくそういうことなのだ。
初見殺しの能力である『スタンド』使いたちが跋扈するこの戦い、情報を制する者が制す。
『スタンド』使いであるウェス自身が情報を欲していたのが何よりの証拠、と言っていい。
兎に角、こうして霊夢たち重傷を抱えた逃走者の情報を拡散すれば、霊夢の死亡する決定的瞬間という、
さらなる特ダネにありつけることは間違いない、とはたては踏んだのだった。
(……まるで記事を書くためにヒトの命を差し出してるみたいだけど、ね)
彼女とて、このような行為に罪悪感を全く抱かないという訳ではない。
「……けど、私が文に勝つには、これくらいの手は使わないと。それに、あの露伴って奴にも負けるのも癪だし」
だがそんな僅かに芽生えた罪悪感にも増して、
自分の記事で文と露伴がぎゃふんとする様子が見たいという欲望の方が強まっていたのだった。
露伴についてはまだよく知らないが、文の記者としての腕は、はたては良く知っていた。
速さに優れる烏天狗の中でも最速と称されるほどのフットワークの軽さ。
自ら人間に紛れて人里に下りたり、時には妖精たちさえ取材対象にする彼女は
気位ばかり高い天狗社会の中では例外的存在だった。
そして、高位の神や妖怪から、人間や妖精に至るまでうまく話を合わせてネタを引き出す文の取材能力こそ、
引きこもり気質のはたてには眩しく映っていた。
(文と同じやり方じゃ、私は千年掛けてもあいつに追いつけない)
いちいち手段を選んでいてはいつまで経っても文の背中には追いつけない。
はたてはそう考えたのだった。先ほど、猫の隠れ里での戦闘を紫のせいにしたように。
「それに今回は嘘は一切書いてないし、大丈夫、大丈夫!
だいたいあの巫女、あれでまだ生きてるのが不思議ってくらいの大怪我だったし、放っといても死ぬわよ、アレ」
今回送ったメールマガジンの添付ファイルの写真にもバッチリ写っている霊夢の様子は、それは酷いものだった。
刀か何かで身体をバッサリと一太刀やられている上、出血が酷いのだろう、皮膚の色は蒼白だった。
もう一人の空条承太郎という男の方も、全身丸コゲにされた上、手足は何本かおかしな方向にバキ折られていた。
人間なら、いや、妖怪だって既に死んでいてもおかしくない。手当てはもう無駄なのではないか。そんなケガだった。
――だから、今更はたてが彼女に更なる襲撃者をけしかけるような情報をバラまいても、大勢には影響しない。
どちらにせよ、彼女たちはまもなく死ぬのだ。
記事には、博麗霊夢が幻想郷の住民たちにとって重要な人物であること、
彼女が死ねばこの場に数多い幻想郷の住民の間に絶望が広がることも付け加えておいた。
ウェスのような、殺し合いに乗った外来人にはプラスとなる情報であろう。
ここにも嘘は書かれていない。――だが。
(まぁ、幻想郷そのものの危機って言ったってねぇー。博麗の巫女は死んでも代わりを立てれば良い訳だし)
在野の妖怪や人間たちにどこまで知れ渡っているかは知らないが、少なくとも、天狗社会の間では常識である。
博麗の巫女は襲名制で、霊夢が死んでも代わりを立てれば良いだけの話なのだ。
霊夢の代わりがいつまでたっても見つからないとなれば本当に幻想郷は存亡の危機に瀕するが、
そうならない限り霊夢一人死んだところで幻想郷が滅びる訳ではない。
そう考えると、記事の文面は少し大袈裟だったかも知れない。
(でも、文あたりは、本当に絶望するかも知れないけどね。……あいつ、当代の巫女の事、随分気に入ってたみたいだし)
だとすると、この記事を見た瞬間に、文はその最速を誇る翼で霊夢を助けるために駆けつけてくるのかも知れない。
文だけでなく、人妖問わず人気と聞く霊夢の為に続々と救援が殺到し、
結局、霊夢たちは一命を取り留めてしまうのかもしれない。
(まぁ、それはそれで面白いネタになるから良いか)
それでも構わないと思う、はたて。
こうして記事をバラ撒く行為が、危機に瀕した霊夢たちにとって吉と出るか凶と出るかは、
終わってみないと分からないのだろう。
射命丸文のような、霊夢の、あるいは承太郎の本当の仲間が数多くいるなら、
この記事を配信したことが逆に霊夢たちを助ける結果を生むことになる可能性が高い。
「大袈裟なこと書いちゃったけど、試練に晒されているのは幻想郷じゃなくて、
結局のところ、霊夢たち自身でしかないのかもねー」
すっかり興奮の醒めた頭で、はたては独りつぶやいた。
樹上から湖畔を見下ろすと、ちょうど諏訪子たち一行と青娥たち一行が接敵直前の状態にあった。
(自動車の方に目立った動きはないみたいだし、まずは殿と追撃組の戦いかしらね)
踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら――。
命を掛けた戦いという熱狂を余すこと無くファインダーに収めるべく、はたては静かに樹上を飛び立った。
【午前】C-4 霧の湖のほとりの森林部・樹上
【姫海棠はたて@東方 その他(ダブルスポイラー)】
[状態]:霊力消費(小)、腹部打撲(中)
[装備]:姫海棠はたてのカメラ@ダブルスポイラー、スタンドDISC「ムーディー・ブルース」@ジョジョ第5部
[道具]:花果子念報@ダブルスポイラー、ダブルデリンジャーの予備弾薬(7発)、基本支給品×2
[思考・状況]
基本行動方針:『ゲーム』を徹底取材し、文々。新聞を出し抜く程の新聞記事を執筆する。
1:眼下の大スクープを引き続き取材。まずは諏訪子一行VS青娥一行を取材する。記事の作成ももちろん続ける。
12:00(
第二回放送)頃に続報を配信予定。
2:岸辺露伴のスポイラー(対抗コンテンツ)として勝負し、目にもの見せてやる。
3:ウェスを利用し、事件をどんどん取材する。
4:死なないように上手く立ち回る。生き残れなきゃ記事は書けない。
5:ウェス、まだ来ないかな?
[備考]
※参戦時期はダブルスポイラー以降です。
※制限により、念写の射程は1エリア分(はたての現在位置から1km前後)となっています。
念写を行うことで霊力を消費し、被写体との距離が遠ければ遠い程消費量が大きくなります。
また、自身の念写に課せられた制限に気付きました。
※ムーディー・ブルースの制限は今のところ不明です。
※リストには第一回放送までの死亡者、近くにいた参加者、場所と時間が一通り書かれています。
次回のリスト受信は第二回放送直前です。
※花果子念報マガジン第4誌『【速報】博麗霊夢・空条承太郎再起不能か!?』を発刊しました。
最終更新:2017年03月16日 20:30