9月24日
ここのところの僕の家では、近所で起こった殺人事件の話で持ちきりです。
それは僕の家から五分くらいのところにある川島さんのところの奥さんが、死体で発見されたというものです。
川島さんには二人の息子がいて、一人は不良で、一人は引きこもりだそうです。テレビによると、彼らが主な容疑者だとされているみたいです。
僕はお母さんがいつも見てるドラマみたいな話だと思いました。
お母さんは「こんなこと私がいうのはアレかもしれないけれど、川島さんって教育者としての才能ないわね」と言っています。
お母さんは引きこもりの方の息子が犯人だと思っているようです。
「あの子、オタクらしいのよ。私、川島さんの奥さんから聞いたの。毎週、アニメの雑誌を買って来いって言われてるってね。最近そういう事件多いし、今回のもきっと同じよ。やっぱり、人間って想像の世界に閉じこもってると、頭がおかしくなっちゃうのかしら。家の子にはそうなってほしくないわ」だそうです。
お父さんはお母さんに同意します。お父さんがお母さんの意見に反対することはありません。というか、お父さんが誰かの意見に反対するところを僕は見たことがありません。
お兄ちゃんはどちらが犯人かわからないみたいです。でも、どちらであるにしろ、その人を責める気にはなれないと言っています。「人が犯罪を犯すのはその人の境遇の所為であって、その人自身の責任じゃない。運命がその人を捻じ曲げていったのであって、その人に罪はないのだ」だそうです。
お姉ちゃんも引きこもりの方が犯人だと思っているみたいです。お姉ちゃんはお母さんの話を聞いて、「やっぱり、オタクって頭がおかしいんだね。本当、この世からいなくなればいいと思う」と言っていました。
僕はお父さんに「オタクって何?」と訊きました。お父さんは「漫画やアニメが好きな人のことだよ」といいました。僕も漫画とアニメが好きなので、僕はそのことをお姉ちゃんだけには知られないようにしようと思いました。
9月26日
テレビで「不良の方が犯人である可能性が高い」という話がされました。
お母さんの意見が変わりました。不良の方が犯人だと思うようになったみたいです。
「