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「おおっ~す」
「おお、かがみんいらっしゃ~い」
昼休み。私は普段通り、こなたのクラスに昼食を食べにやってきた。
そう。いつも通り。ただ今日は少し変わった点がある。それは……
「あれ?かがみん、その袋は何?」
私の左手に提げてある袋を見てこなたが言った。
「これ?カップ麺よ。今日は私が弁当当番だったんだけど、寝坊しちゃって作れなかったからその代りに」
「ああ、ですから、今日はつかささんもお弁当ではなくパンなのですね」
「うん。そうだよ~ゆきちゃん」
つかさの席の上には、みゆきの言った通りパンが並んでいた。
「それにしても、かがみもなんだかんだで寝坊するんだ」
「うるさいわね!私だってたまには寝坊するわよ」
「まあそれは良いとして、カップ麺って……また太るよ?」
お馴染みのネコ口でこなたがニマニマと笑う。
「昨日、本を買ったばかりでお金がないのよ。だからカップ麺で我慢なの」
「本?どんなの?」
「なんでもいいでしょ。あんまりしつこいと、これ貸してあげないわよ?」
私は鞄の中から一冊のノートを取り出した。
「おおっ!世界史の宿題?さっすがかがみ様!いつもいつも恩にきます」
「嘘っぽい感謝だな」
「むう、そんなことないのに~」
子供っぽくふて腐れるこなたをなだめて席に座ろうとした。すると、


「お姉ちゃん。その、袋……」
「ん?」
つかさに言われて袋を見ると、いつのまにかカップ麺が傾いて、注いだスープが袋の中でこぼれてしまっていた。
「あちゃー……」
「やっちゃったね、かがみん」
鞄からノートを取り出した時にでも傾いちゃったのかしら?
とりあえず、袋の中のスープに浮かぶ容器をとりだした。
うわっ、ほとんどスープが残ってない上に、器までびちゃびちゃなんだけど。
「お姉ちゃん、どうするの?」
「うーん、どうしたものか……」
少し考え、その結果私は一つの策を思いついた。
「ねえ、誰か必要ない紙とか持ってない?」
「わたくし持ってますよ」
「お、サンキュー」
みゆきから受け取った紙を机の上に並べ、その上にカップ麺の容器を置いた。
「なるほど、紙を敷いて容器に付いたスープで机を汚さないようにしたんだね。……でも袋の中のスープはどうするつもりなの、かがみん?」
「まぁ見てなさいって」
私は鞄を机の下において、椅子に座った。
そして、スープの溜まった袋をゆっくりゆっくり慎重に傾けて容器に注ごうとする。
「お姉ちゃん、そこにまた注ぐつもり?」
「そうよ。溜まったスープをここにうまく注げば何もかも元通りでしょ?」
「うん。……だけどそううまくいくのかなぁ……?」
「まあ大丈夫でしょ」
が、そのつかさの心配は見事に当たった。
「あっ」
水筒、水差し、お茶瓶のような形のしっかりした物とは違い、スーパーの袋のような形が不安定な物で注ごうとすると、袋の底がひしゃげてしまい、勢い余って辺りの床や机にスープをぶちまけてしまった。
……もちろん机の下に置いた私の鞄にも。
「あーあ……やっちゃった……」
「派手にやったねぇ……かがみん」
そんな落ち込む私に、追い討ちをかけるような事がもう一つ。
それは、運の悪いことに鞄が空いてしまっていて、鞄の中にまでスープがこぼれてしまっていたということだ。
「大丈夫?お姉ちゃん……?」
「うーん、大丈夫じゃないかも……」
鞄の中の教科書が、ノートが、電子辞書が、スープでびしょびしょになっていた。
もうマジ最悪なんですけど。


「あっ、でもさ、これはまだマシなんじゃない?」
私の鞄の惨状を覗き込むこなたは、鞄の奥にあった本を指して言った。
「あ、ホントだ」
鞄の奥には昨日買ったばかりの小説を入れていた。しかし、不幸中の幸いか、その小説はブックカバーだけが濡れただけで、本自体は濡れていなかった。
買ったばかりの本まで被害に遭わずに済んでよかった。
とりあえず、さっさとブックカバーだけはずしちゃおう。ほっといたらそのうちカバーから本自体に濡れが移っちゃうからね。
鞄から本を取り出してカバーを取る。
……が、カバーを取った瞬間みんなの空気が一瞬にして固まった。
あれ、なんで。どうしたのみんな。
私が目が点になって立ち尽くしていると、こなたが固まった空気を戻すかのように言った。
「かがみ、その本って……」
「え?」
こなたに言われ、ようやく気づいた。
『堕天使のこころ』と描かれたタイトルに、裸の美少年が見詰め合って抱き合うイラストが表紙の特濃18禁BL本。
私は、そんな人には絶対言えない趣味の本を持って、みんなの前で堂々とカミングアウトしてしまった。
「かがみ、前からそういった気配があったと思っていたら、既にそこまで……」
「か、かがみさん……そのような趣味がおありでしたか……」
「最近お姉ちゃんが部屋でこそこそ何か読んでるな、と思ってたら……まさか……」
「ち、違うのよ。こ、これは……」
『みゆきさん、かがみはあんな動かぬ証拠を手にしておきながらまだあんなこと言ってるよ』
『ホント、往生際が悪いですね』
『だよね~。もうバレバレなのに』
「こ、コラ!!ヒソヒソ話をするなーー!!」
『ん、なんだなんだ?』
し、しまった!つい大声を出してしまった……
が、気づいた頃には時既に遅し。クラスの目線はほとんど私に注がれていた。
『あいつ、隣りのクラスの柊の姉だっけ?』
『うわ、何あの本~』
『BLってやつ?あの人やっぱりオタクだったんだー』
「ち、違うってば。これは、これはっ……!!」




……その後。私の噂は3年中を飛び交い、一週間が経った頃には私のことを影で「柊(腐女子の方)」と呼ぶようになっていた……



おしまい。













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  • 不幸スパイラル、南無。 -- 名無しさん (2011-05-01 22:40:31)
  • お〜い、ふじょしのひぃらぎぃ〜。 -- 名無しさん (2008-12-04 00:46:29)
  • 柊(腐女子のほう)、
    頑張って! -- 名無しさん (2008-12-03 19:53:02)

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