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バス停ひまわり

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だれでも歓迎! 編集
時刻表に目を通し、どのバスもしばらく来ないことを確かめると、
私は停留所のベンチに腰を下ろした。
バスを待つためじゃなくて、ちょっと休憩をするために。
このバス停には日よけは付いていないけど、代わりに道路脇に植えられた背の高い常緑樹が
ちょうど陰を作ってくれていて――それでも、やっぱりちょっと暑い。
セミの声がしょわしょわと、あたり一面に降りそそいでいる。

「ふぅ……」

こなたお姉ちゃんが持たせてくれた水筒を開け、よく冷えたスポーツドリンクを一口ふくむ。
おいしい。
乾いた身体に優しい水分がじわりと染み込んでいく感覚を味わいながら、
私は軽く目を閉じた。

今、私こと小早川ゆたかは、クラスメイトの岩崎みなみちゃんの家に向かっている。
同じくクラスメイトの田村さんとパティちゃんも来ることになっていて、目的は勉強会。
具体的には、発案者であるパティちゃん曰く、
「ミナサンで力をあわせテ夏休みの宿題をやっつけマショウ!」
ということらしい。

腕時計に目を落とす。
早めに出てきたおかげで、約束の時間までにはまだもうちょっと余裕がある。
けど、また休みたくなっちゃうかも知れないし、そろそろ行こう。
と、顔を上げたところで、



目が合った。



「…………」
「……え」

ゆったりとした迷彩柄のΤシャツ。膝丈のカーゴパンツ。先鋭的なデザインのスニーカー。
しなやかに引き締まり、健康的に日に焼けた手足。
色あせた野球帽に収まる、飾り気なく伸ばされた髪。
そんな、いかにも活発そうな格好の男の子が、ベンチのすぐ脇から、私のことを見つめていた。

思わず後ろを振り返る。
当然のように誰もいないし何もない。
目を戻すと、男の子――私より一つか二つ年上だろうか――は
やっぱり私をジッと凝視し続けていた。

「じー……」

というか、口に出して「じーっ」って言ってる。
同じことを何度かこなたお姉ちゃんにされたことはあるけど、あくまでそれは冗談で。
でもこの人は、なんだかすごく真剣だ。
なんだろう、ちょっと怖い。
怖いけど、それ以上に何がなんだかわからない。

あ、もしかして。
私の格好がどこかおかしいのかな。
そう思って服を見下ろしてみたり顔や髪を触ってみたりするけど、よくわからない。
それに、そう。
おかしいところがあるなら、出かけるときにこなたお姉ちゃんや叔父さんが教えてくれるはず。

「じー……ぃー……い~~……?」

あれ? ちょっと語尾が上がりはじめてる?
続いて首がだんだんと傾いてきて、とうとう腕を組んで目を閉じてウンウンうなり出してしまった。
視線から開放されてほっとする。
と同時に、あらためて疑問に思う。
なんなんだろう。
それに、そもそもこの人は誰なんだろう。
そういえば、なんとなく見覚えがあるような気もする。
同じ学校の先輩とか?

「むぅ~~……いやいや、うんうん。……じゃなくて、えーと、んむむむむむ~~~~」

って、うわあ。
なんだか一人でうなずいたり首を振ったり微妙に落ち込んだり、ちょっと大変なことになってるよ。
絵を描いてるときの田村さんに、少しだけ似てるかも。
じゃなくて。
どうしよう。
どうしたらいいんだろう。
だって私のせい……だよね?
私のことを見ててこうなっちゃったんだから、少なくとも無関係じゃない、と思う。
よし、とりあえず声をかけて……

「あ、あの――」
「わかったっ!!」
「ひゃっ!?」

声をかけようとしたその瞬間、大きな声を上げられて、小さく悲鳴をもらしてしまう。
でも……え? あれ?
この声って……
うなってるときは低音だったから気がつかなかったけど……

「ちびっ子の妹だ! だよな!? あ~、やぁっと思い出せたぜぇ」

やっぱり!
女の子だ!
ちょっとハスキーだし口調も男の子っぽいけど、この声は間違いなく女の子の声だよ!
あうう……私ったらなんて失礼な勘違いを……
しかも相手は――

「お~い、どしたぁ~?」
「えっ、あっ、やっ、そのっ!」
「あんた、アレだよな? 名前……は、わっかんねんだけど。ちびっ子……泉だっけ?
 それの妹さん。違う? 合ってる? 違ったらゴメン」
「ち、違わないです! 合ってます!」

私のたどたどしい答えを聞いてその顔に浮かんだ、いかにも「ニカッ」って感じの笑顔は、
記憶の中にあるのと全く同じものだった。
口の中で八重歯が一本きらりと光る。

「そっか! やっぱな!」
「……あ、あの。それで、その」
「ん?」
「あの、こなたお姉ちゃんの、お友だちの方ですよね?」

そう。
思い出した。女の子だってわかったことで、私のほうも思い出したよ。
学校でこなたお姉ちゃんたちと一緒にいるところを、何度か見たことがある。

「うぇ? ……いやいや。あたしはほら、ひぃらぎの。おんなじクラスの。五年連続の」
「え? えーと……」
「あー……うん。いーよいーよ。それで合ってる。ちびっ子の、でいーや、別に。うん」
「? ? ?」

え……っと……どういうこと、だろう。
ひいらぎ」って、かがみさんのことだよね? あ、でもつかささんも「柊」さんだし。
それに「ちびっ子」っていうのは、やっぱりこなたお姉ちゃんのこと?

「だからぁ、あたしはもともとひぃらぎの友だちで、ってゆーかひぃらぎがもともとあたしの友だちで、
 中学のときからもう五年連続で同じクラスなわけよ。
 なのになんか最近ずーっとちびっ子にべったりで……昼飯も向こうまで行って食うんだぜー?
 そりゃま、たまにはあたしらとも一緒してくれるけど……さびしーんだよー。わかるかー?」
「へ? あ、あの、はい」

唐突に「るー」と泣き出したその人に驚いて、思わずうなずいてしまう。
でも、なんとなくわかった。
要するに、かがみさんかつかささんを通じてこなたお姉ちゃんと友達になった、と。
そういうことだろう。たぶん。きっと。おそらく。

「そっかー。わかってくれるかー。いーヤツだなーおまえ」
「ひゃっ!? ど、どういたしまして……」

いきなり肩に手を置かれたことに驚いたけど、なんとか返事を返せた。
その人は帯状の涙を流しながら、噛みしめるようにウンウンとうなずいている。
……目の前で人が泣いているのに、あんまり心が痛まないのはなぜだろう。

「えっと、それで……あの……」
「ん? なに?」

肩から手が離れる。
と思ったときにはもう泣いてなかった。涙のあとすら残っていないのが凄い。
まあそれは、置いといて。ええと……どう訊けばいいんだろう。

「あ、そか。みさお」
「へ? ……え?」
「あたし。日下部みさおっての。あんたは?」

あ、名前か。
そういえばまだ名乗ってなかった。
……言おうとしたのは、「ひいらぎ」がどっちの柊先輩かってことだったんだけど……
そうだよね。自己紹介はちゃんとしておかなきゃね。

「あ、わ、私は、小早川ゆたかっていいます。こなたお姉ちゃんの従妹です」
「イトコ? あ、そーなんだ。そーいや名字違うな。――小早川ね。わかった。よろしくな!」

そう言って日下部先輩は。
口をニッカリと大きく開けて、ひまわりみたいに元気いっぱいの素敵な笑顔を浮かべてくれた。

「はい! よろしくお願いします!」













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  • 珍しい取り合わせだなww -- 3センチ (2009-12-06 02:30:48)
  • えっ、これだけ!?
    もうちょっと続くかと思ったのに・・・ -- アイマイ (2008-12-28 21:45:49)

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