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星に願いを 第1話

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 1. (かがみ視点)


 目が覚めたら、私はこなたの姿になっていた。

 昨夜は自宅のベッドで寝ていたはずなのに、何故か、椅子に座った状態で
目が覚めた。身体を起こして、周りを見渡すといきなり、
こなたの部屋が瞳に映る。
 私は混乱しながら、何度も首をめぐらせた。そして、机に置かれた鏡に
写った姿を見た時、私は仰天した。

「嘘…… 冗談やめてよ」
 真っ青になりながら、机に置かれた鏡を何度も見直す。けれども、小柄な体、
自然に任せたままの流れるような長い髪、そして、狐みたいな悪戯そうな顔。
 何度、鏡を見直しても泉こなたそのものだった。
「じゃあ。私の身体は…… まさかこなたが」
 その時、少し離れた場所から、声が聞こえていた。
「こなたお姉ちゃん。電話だよ」
 確かこなたの従姉妹であるゆたかちゃんだ。こなたの2学年下で、
純粋で素直そうな子。

「今、行くから」
 部屋を飛び出して電話機まで駆け寄ると、受話機を大事そうに抱えながら、
小柄な少女が微笑んでいる。
「柊先輩からだよ。お姉ちゃん」
「『どちら』かな? 」
 既に予想はついていたが、敢えて尋ねてみる。
「あっ、ごめんなさい。かがみ先輩の方」
(こなただ! )
 焦る気持ちを懸命に抑えながら、受話器を耳に当てた。


「もしもし」
「かがみんや。おはよう」
 声色はかがみ自身のもので、口調はこなたのもの。
「こなっ…… 」
 こなたの名前を言おうとして、ゆたかちゃんがすぐ近くにいることに
気がついた。慌てて受話器を手でふさぎながら、彼女に声をかける。

「ありがとう。ゆたかちゃん。いやっ、ゆーちゃん」
 はにかむ様な微笑を見せて頷いて、ゆたかちゃんは傍を離れていったが、
完全に姿が消えるまでは、私は何も言わなかった。
「どったの? かがみ」
「あんた『こなた』だよね」
「その通りだよ」
 この上もない異常事態だというのに、もう一方の当事者は、妙に
落ち着いている。

「あんたねえ。ちょっとは驚かないの? 」
「入れ替わったものはしょうがないじゃん」
「どうすんのよ」
「私に言われてもね」
 確かに、自分が思いつかないことを、こなたに要求しても仕方がない。
 私は冷静さを取り戻し、こなた側の状況を尋ねることにした。


「こなたも、朝ベッドで起きたら、私の姿に変わっていたの? 」
「うーん。正確にはちょっと違うかな」
「どういうこと? 」
「昨日、黒井先生達とネトゲしてたら、寝落ちしちゃってね」
「相変わらず最低だな」
「寝落ちを最低って断言できるって、だいぶこちら側に来たね。かがみん」
「そ、そんなことより先を話しなさいよっ」
 焦った口調になって続きを促す。
「目が覚めたら、かがみの部屋のベッドだったね。そんでもって
鏡を見ると、身体もかがみになっていたから、あー入れ替わったんだなと
分かったけど」
 淡々とした口調で話されると、無性にいらいらしてしまうのはどうしてだろう?

「こなたは、これが『とんでもないこと』だとは思わないの? 」
「入れ替わりネタって、ギャルゲとかでもたまにあるじゃん」
「女子高生がギャルゲ言うな」
「どんな状況でも、律儀に突っ込みを忘れないかがみ萌え」
「馬鹿! 」
 駄目だ…… 全く危機感が無い。むしろハプニングを楽しんでいる様に
しか思えない。


 大きくため息をついたが、ふいに疑問がわき上がり、そのまま口に
出していた。
「それにしても変よ」
「どったの? 」

「だって、普通入れ替わりって、二人が同じ場所にいるときに発生するはずよ」
 私はライトノベルをよく読むが、人格が入れ替わるというストーリーも皆無ではない。

「どうゆうこと? 」
「例えば、二人揃って階段から落ちたとかいう、アクシデントの拍子に人格が
入れ替わったのならわかるけど、今回は、二人とも全然違う場所でしょ」
「まあ、そだね」
「それがおかしいのよ」
「そうかなあ」
 首をかしげていそうなこなたに構わず、矢継ぎ早に言葉を続ける。
「こなた。ネットゲームで寝落ちしたのって何時頃? 」
「うーん。確か、4時は回っていたと思うけどね」
「最低ラインが4時か。目が覚めたのは? 」
「だいたい8時かな」
 私が目覚める10分ほど前だ。

「そうするとこの4時間の間に、人格を入れ替える『何か』が起きたのね」
「かがみん? 」
「だって、私、昨日から今日にかけては特に何もしなかった。あんたは
何か心あたりある? 」
「いつもと変わらないよ」
「だったら、第三者がやった可能性があると思うの」
「考えすぎじゃないかなあ? むしろ夢オチの気がするよ」

 こなたが大きなあくびをしている姿が、電話越しにもありありと分かったので、
私はきつい口調で言った。
「ほっぺたつねってみなさいよ」
「痛い」
「だから、夢なんかじゃないわ」
「そういうこと…… みたいだね」
 不詳、不詳ながら、こなたは納得したようだ。


 入れ替わりが現実ならば、どうやって対応するかに、思考を切り替えなくてはいけない。
 この辺りが、こなたから夢がないとか現実的と言われる理由かもしれない。
「とにかくこなた。今日あんたの家、ああっ、言いにくい!『泉家』に
来てくれない? つかさも誘ってね。」
「つかさも? 」
「あの子、おっとりしているけど、双子だから流石に気づくはずよ。
きちんと状況を説明しないといけない。それにつかさには、『柊家』つまり
私の家族との会話について、サポートしてもらう必要があるわ。
でないと、私が記憶喪失娘になっちゃうから」

「流石に頭の回転が速いね。でも、かがみの家だと駄目なの?」
「うちは家族が多いから、秘密めいた話には向かないでしょ。それに泉家の
情報についても教えて欲しいから」

 暫く無言が続いた後、電話口からのんびりした声が聞こえてきた。
「わかった。10時に行く」
「遅れないでよ」
「イエス・サージェント」
 受話器を置くと、どっと疲れが出てくる。
 私は両肩を落としながら、今日何度目か分からないため息をついた。


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星に願いを 第2話へ続く














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  • とても、面白い作品ですね、
    まだ読み始めですが、一気
    に読めそうです -- チャムチロ (2012-08-22 21:37:46)

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