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彼女は遷移状態で恋をする-こなたside-(1)

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  • 彼女は遷移状態で恋をする こなたSide(1)


 突然だけど、私には三人の親友が居る。
 優しくていつも美味しいお菓子をくれるつかさ。
 頭が良くて眼鏡っ子のみゆき君。
 あと歩くツンデレ偏屈屋の、かがみ。
 名前だけじゃ分かんないけど……これが三人とも、男子なんだな。
 その三人が、私の親友。
 そう……親友。
 それで良かったはず、なんだけどね。
「私、気になったんだけどさ」
 人の行き交う食堂の一箇所に席を囲み、香ばしいB定職に舌鼓を打つ。
 そんな中だった。
 友人A(仮称)が突飛なことを言い出したのは。
「泉さんって、誰か付き合ってる人居ないの?」
「ふぇ?」
 私を名指し、割り箸を勢いよく自分の口に運ぶ。
 そんな彼女の言葉に呆気にとられ、エビフライをとる箸を止める。
「どしたのさ、急に」
「だってさー、いつも決まった男子と居るじゃん」
「そうだよねー。私も気になってた」
 その隣りの友人Bも賛同する。
 お父さんがお弁当を忘れたからって久々に学食にしようとすると、これだよ。
 女の子って好きだよねー、そういう話……とと、私も一応同じそれだったっけ。
「別にいないよ、つかさやみゆき君とかと。って事でしょ?」
「そうそう、そこよ!」
 ビシッと効果音がつきそうな勢いで箸で私を指す。……お行儀がなかなかどうして。
「高良君は成績も凄いし、あのルックス……憧れるわぁ」
「柊君はのちょっと天然入ってるところが可愛いよねー、料理も上手いし優しいしー」
 と、二人して呆ける。
 そういやつかさもみゆき君も、女子には結構な人気があるらしい。
 まぁ、分からないでもないかな。
 歩く萌え要素みたいなもんだしね、二人とも。
 ……ん? 二人。
「あれ、かがみは?」
「へっ?」
「えっ?」
 二人が向かいの席で顔を見合わせる。
 んで、自然を声を被せる。
「「誰だっけ、それ」」
 哀れかがみ……まさか認知すらされてないとは。
 あれで成績が悪ければ完璧キ○ンだよね。
「かがみだよ、柊かがみっ。つかさのお兄ちゃん」
「あー」と、ようやく視界の隅に入っていた異物を思い出したらしい。
 まぁ確かに、ツンデレなんて一般人にはまだまだ分かりにくいか。
「居たわよねー、そんな人。違うクラスよね確か」
「なんかあのツリ目の怖い人だっけ? 無愛想よね」
「ぶ、無愛想?」
 むぅ……そこまで言う事ないんじゃないかな。
 そりゃちょっと、暴力的ではあるけどいいやつなんだけどなぁ。
 なによりあのツンデレっぷり、なかなかレアだよ? 最近では。
 からかうと面白いしね、すぐ突っ込んでくれるし。
「へぇ、泉さん的にはそのお兄さんのがオススメなんだ」
「へ? な、なんで?」
 くわえたエビフライが、私の心臓と一緒に軽快に跳ねる。
 ほのかに顔が熱くなった気がした。
「だって、妙にこだわってない?」
「なっ、ないないっ。あれで寂しがりやだからさ、忘れてたら可哀想だしっ」
「ほほーぅ」
 と妙に慌てていたのを悟ったのか、二人の妙な目が私を見る。
 だ、だから何でそんな慌ててるんだろ……私。
「良かったわー、じゃあ高良君はフリーなんだ」
「柊君もかぁ、狙ってみよっかなー。案外押しに弱いと思うんだけど」
 顔に熱を持つ私をヨソに、二人で乙女な話題を振りまいていく。
 うう、このピンクな雰囲気は苦手だ。
「あれっ、泉さん?」
「わ、私もうご馳走様かなっ。先に教室に戻るねっ」
 まだ大きく乗ったエビフライも名残惜しいけど、顔の熱で味もよく分かんないや。
 はぁ……何か変なこと考えちゃったなぁ、イカンイカン。
 いけないな、自重しよう。
 そんなに気にすることじゃないよね。
 みゆき君やつかさだって、友達。
 それは、かがみだって一緒。
 それでいい、と思う……。
 うう、あの二人が変な事言うから……。
「俺が」
「?」
 教室の前まで来た時だった。
 少し開いた扉から漏れた声が耳に届くと、少し心が和らぐ。
 ……理由は、それの本人の所為?
 妙にこだわってる、か。
 それって……どういう事なんだろ。
 深く考えるのは、やめよっかな。
 いつものように笑っていられれば、それでいいよね?
 そう思って勢いよく、扉を開けた。
 それと、一緒だったかな。
 その心和らぐ言葉が……私を切り裂いたのは。
「こなたのことなんか、好きなわけないだろ」
 一瞬、それの意味を租借することすら出来なかった。
 つかさや、みゆき君と視線があった。
 そして……見覚えのある背中も。
「何の……話?」
 私の言葉に、ゆっくりとその背中が振り向く。
 その時私は願ってしまった。
 理由は分からない。
 でも……それが、『彼』であって欲しくないって。
「いえいえ、男同士。しみったれた世間話ですよ」
「うん、そうそうっ」
 そこに一緒に居た二人……みゆき君と、つかさだ。
 その二人の言葉が、右から左に流れていく。
 だけど、目の前の彼は……何も言わない。
 だから聞いてしまった。
 返ってくる言葉が怖い癖に。
 聞こえなかったと、そんな素振りを見せればいいのに。
「本当? ……かがみっ」
 その人の名前を呼んだだけなのに、もう一度心が跳ねた。
 混ざり合う視線が、私の心を軋ませる。
 私は何を、期待しているんだろう。
 私は何を、言って欲しいんだろう。
「ああ、また皆でカラオケでもどうかってさ」
 だけどそんな、求める言葉が返ってくるはずもなくて。
 ただ私の胸のきしむ音だけが、心を刻んでいくだけで。
 駄目だ、もう……顔を合わせられない。
 理由はやっぱり、分からない。
 だから、逃げた。
 かがみから……彼の、視線の先から。
「そっか、じゃあ今日行こうよ! 私新しいの覚えたんだー、平野の新曲ー」
 彼の前から逃げて、他の二人の間に入る。
 ……笑おう。
 出来る限りの笑顔で、笑おう。
 それなら、きっと……忘れられる。
 心に刺さった釘の傷みだって、さっきの言葉だって。
 そうだよ、何もなかった。何も聞かなかった。
 だってそうだよね?
 私たちは……親友、だもん

















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