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言霊

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匿名ユーザー

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「ゆーちゃんは、好きな人とかいるの?」

いつものように特にすることもなく、のんびりとした時間がただ刻々と過ぎていた日曜のお昼。
珍しくリビングでゲームをしてたこなたお姉ちゃんが、目線はTVに向けたまま、TV画面をなんとなく見ていた私に尋ねてきた。

「ふぇっ?!」

何の前触れも脈絡もない質問に思わず驚きの声をあげてしまう。

「いやぁ、昨日某巨大動画サイトでアップされてたラブソングにちょっと影響されてね」
「…う、うん」
「んで…ゆーちゃんは恋してるのかなー、なんてね♪」
お姉ちゃんはそう言うとセーブボタンを押してゲームを終了させて私の方へ視線を向けた。
どうやら本腰を入れてこの話題をするみたい…。

―好きな人、かぁ。

持っていた湯飲みに視線を下ろして少し考えてみる。
そういえば好きってどんな感情なんだろ?
幼稚園、小学校、中学校って病気がちな私は一日一日学校に行くのが精一杯で…恋愛とか誰が好きとか、考えたこともなかったかも…
「…好き、って」
「ん?」
「好きってどういう感じ、なのかなぁ…」
感情表現の一つなんだろうけど、いまいちよく分からないなぁ。
ゆいお姉ちゃんとかみなみちゃんとかの好きとは違うんだよね、きっと。
「んー、難しい質問だねぇ」
むむむ、と顎に手をあてながら私の質問に考え込んでいるこなたお姉ちゃん。
そーいえば、お姉ちゃんはいないのかな…好きな人。
ふと生じた疑問を口にだそうとした瞬間、
「一緒にいたいーとか、誰にも渡したくないーとかじゃないかな、やっぱり」
顎にあてていた手を離して、ズズッ…とお茶を啜りながらお姉ちゃんが先に口を開いた。
「…一緒に、いたい?」


「うん。少なくても私はそう思ってるかな」
えっ、思ってるって…

《メールト、溶けてしまいそぉ~♪》

喉まで出かかった言葉は今度はゲームの横に置いてあったお姉ちゃんの携帯の着信音で押し込まれる。

《好きだなーんて、絶対に言えな…プツッ》

机からジャンプして携帯を手に取るお姉ちゃん。
着地の際の反動で足がジーンてしてるらしく、目尻に涙を浮かべて着信ボタンを押した。
「もしもしー、あっ、かがみー?」
どうやらかがみ先輩からの電話みたい。
「うんうん、宿題?やだなーやるわけないじゃん。……うわっ、かがみ声でかっ!そんなに怒鳴んなくてもやるよー」
宿題の事で怒られてるらしいけど、どこか嬉しそうなお姉ちゃんを見て、モヤモヤとした始めて感じる感情が私の胸の奥らへんに漂っている。

なんか、面白くない。

………へ?なんで?
自分にハテナマークを浮かべる。
こなたお姉ちゃんがかがみ先輩と電話してるなんてしょっちゅうだし、別に面白くないって感じる理由なんてない、よね。
「えー。じゃあ、今からウチに来なよー」
と猫みないな口でのほほんと言うお姉ちゃん。

かがみ先輩…来るんだ。

って、だからなんで気持ちが沈むんだろう。
風邪でもひいたのかな…

ここにいると胸の奥のモヤモヤが消えないと思って、「部屋に戻るね」と電話しているお姉ちゃんにジェスチャーで伝え、自分の部屋へと戻った。








「……ぁっ、こ……た…っ。」
「か、…み……」

隣りのお姉ちゃんの部屋から聞こえる声で、私の浮遊していた意識が現実世界へと引き戻された。
いつの間にか寝てしまったらしい。
フルフルと覚醒しきっていない頭を振ると、まだ頭に血が上ってないせいかクラッと目眩がした。
「…かがみ」
「んんっ、こなっ…っはぁ」
あ、そっか。
かがみ先輩来てるんだっけ…。
隣りからときどき漏れるお姉ちゃんとかがみ先輩の声。
それにしても…何してんだろ?
じーと見えるわけもないのに隣りの部屋の方の壁を見てしまう。
「行って、みようかな…」

適当に置いてあった宿題を持ってお姉ちゃんの部屋へと向かった。
トントン…とノックすればきっといつもののほほんとした声で「どうぞー」と答えてくれる。
いつも通り、いつもは自然に出来ていることなのに…なんでこんなに緊張するんだろう。
よしっ、ノックしよう。
と、何故か自分にファイトを送って、腕を肩の位置まで上げる。

トントン…

それまでゴソゴソとドア一枚向こう側で聞こえていた物音がピタッと止まった。
……へ?
すぐにでもお姉ちゃんの「どうぞー」の声が聞こえると思っていたのに、代わりに広がったのは静寂だけ。
あれ、えっと…

「こなた、お姉ちゃん…?」
ちょっと声がうわずってしまう。
なんとか振り絞った声だったけど…聞こえなかったのかな?

「お姉ちゃん?」
今度はさっきより強い声が出た。
「あ、う、うん。ゆ、ゆーちゃんか…ちょっと、待ってね」
明らかに動揺してるお姉ちゃんの声。
どうかしたのかな、と心配しながらもお姉ちゃんの言葉通り、ドアの前で待っていると…
「ちょ、こなた…服、とりあえず服着なさいっ!」
「いやぁ、人のこと言えないよ、かがみん」
「なっ、こ、こっちみるなっ!」
「え、それ無理♪」
「朝倉はいいからっ!」

という声とバタバタという物音が聞こえてきた。
服?朝倉?
関連性が分からない私が首をかしげているとガチャとお姉ちゃんがドアを開けてくれた。


「ごめんね、ゆーちゃん。」
「いや、あの、私こそごめんね。」
「大丈夫、大丈夫」
そう言いながらも額に汗を浮かべながら話すお姉ちゃんは、いつもより顔が赤い。
チラッとお姉ちゃんの奥の部屋に目を向けると、かがみ先輩が私に背を向けるように座っていた。
それでも上下に動く肩の動きははっきりと分かって、お姉ちゃんとなんか運動でもしてたのかな?なんて考えていると、お姉ちゃんが潤んだ瞳を閉じて、
「んで、どうしたの?」
と聞いてきた。
そうだ、えっと…宿題を…
「…宿題?」
「う、うん」
そう言った瞬間、私はバツが悪そうにかがみ先輩の方をみるお姉ちゃんの瞳を見逃さなかった。
「…うん、いいよ。入って」


この時、私にもう少しお姉ちゃんの気持ちを考えてあげていれば…
もしくは、部屋に入らなければ…
あんなことになることはなかったのかな。
そんな事、起こってしまった後から考えても意味がないって分かっているのに…。



ともかくその時の私はドアを少し開けてくれたお姉ちゃんの行為に甘えて、部屋に入った。
普段とはなにか違う雰囲気を感じながらも…。





<<続く>>












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