- 22.伝えよう!
「……泉さん?」
「?」
声に気がつき、こなたが振り向く。
私も一緒だ。
病院のロビー、そこに『彼女』は居た。
「……『みゆき』?」
「?」
こなたより先に、私の口が彼女の名前を呼ぶ。
それを聞き、こなたがようやく何かを思い出す。
「……ああえと、高良さん。だっけ?」
「はい、お久しぶりです」
こなたが適当に頭を下げると、丁寧なお辞儀が返ってくる。
高良みゆき……そういやこなたと同じクラスだったっけ。
みゆきのほうが覚えてたのは意外だったけど。
「お見舞いですか?」
「う……ん、いとこの子が入院しててさ」
クラスメイトと世間話……といきたい所だけど、こなたのほうはまた緊張しまくってる。
それでも面識が少しはある分、峰岸たちとかよりはまだましか。
眼はあわさないけど、会話してるだけで結構な進歩よね。
「そうですか……実は私もお見舞いなんです。つかささん……柊さん、って覚えてますか?」
「……うん。まぁ」
その名前を聞いて、こなたと一緒に心臓が跳ねる。
みゆきがこんな所に居る理由はそう多くない。
私のお見舞い、それが一番妥当だろう。
「そのお姉さんも入院してまして……宜しければ泉さんもご一緒にどうでしょうか? つかささんも喜んでくれるはずです」
「……」
みゆきの笑顔の前に、こなたから戸惑いが伝わる。
それは私も同じだ。
つかさが、『居る』。
いくら想定していた事であっても、さすがに緊張する。
「うん……じゃあ後で寄るよ」
「本当ですか!」
みゆきがこなたの手をとって喜ぶ。
こっちを見てくれないのは少し寂しいけど……いつものみゆきの笑顔を見たら、何だか心が落ち着いた。
こなたの手から、みゆきの手の暖かさだって伝わってきたしね。
「では、またあとで」
みゆきと同じ階層まで歩き、別れる。
それまでに色々と会話もしたが、さすがみゆき……ひきこもりやこなたの母親の事には一切触れなかった。
私の病室の場所はみゆきから聞いた。
あとは私が心の整理をするだけ、なんだけどな。
「ここかな」
私が悩んでる間にもゆたかちゃんの病室に辿り着く。
最初にゆたかちゃんと会った集中治療室とはまた違う病室。
そこの扉をこなたが開けると、女性が目に入った。
「おーこなた、よく来たねー」
「こんちわ、ゆいねーさん」
珍しくこなたが緊張する事もなく、手を振る。
彼女の話は歩きながら聞いていた。
えっと、成美さんだっけ? 同じくこなたのいとこで、ゆたかちゃんのお姉さん。
なんでも引き篭もってるときもよく遊びに来てくれていたらしい……追い返してたらしいけど。
「よく一人でこれたねー、お姉さんびっくりだ」
あはは、と笑いながらこなたの頭を撫でる。
でも何処か表情が疲れてるように感じるのは、見間違いじゃないと思う。
「お母さんの事はもう……平気?」
「……」
その女性……成美さんの言葉に、こなたの手が、汗ばむ。
だけど、いつもの様に動悸が速くなることはなかった。
「鋭意努力中、かなっ」
こなたが笑う。
それを見て、成美さんも笑顔をこぼす。
「……そっか、こなたは偉いねっ」
そして二人で笑いあい、お互いを元気づける。
「今日は、きい兄さんとかは?」
「お仕事でね、今日は私がたまたま非番だったからさ」
用意してくれた椅子に腰掛け、ゆたかちゃんの顔をこなたが覗き込む。
包帯は巻かれているけど、私よりは少ないかな?
でも本当に……ただ寝てるだけみたい。
「傷跡は残んないって、後遺症も心配なし……あとは目が覚めるだけかな」
「そっか……良かったね、ゆーちゃん」
「あははっ、ゆたかは綺麗な肌してるもんねー。傷でも残ったら一大事だよ」
二人がゆたかちゃんに話しかけるように会話をする。
それの返事はなくても、信じてるんだ。
いつかその言葉が、返ってくる事を……。
「それで、さ。ゆい姉さん」
「んー?」
お見舞いに持ってきてあった林檎をむきながら、成美さんが返事をする。
少しこなたに緊張感が混じったのは、気の所為じゃない。
「ゆーちゃんって本当に……『事故』、だったの?」
「……どゆこと、かな?」
指が止まり、長く繋がっていた林檎の皮が千切れる。
「調べたんでしょ? ……お仕事だもんね」
お仕事。
じゃあ……彼女がこなたの言ってた、『詳しい人』?
つまり警察関係者、ってことになる。
「あー……こなたの耳にも、入っちゃってるか」
林檎を剥く作業に戻りながらも、少し手が震えている。
「一応はまだ捜査中……転落事故ってことにはなってるけど」
「転落?」
事故にだって、色々ある。
私のように車に轢かれる交通事故。
でもゆたかちゃんはそれとは別。
「公園あるでしょ? ここの近く……来る時バスから見えなかった?」
「え、うん……」
公園。
ここいらにあるのは一つだけのはず。
そう、あの……峰岸たちの居た公園だ。
「あそこってさ、長い階段があるんだよね。上の団地に繋がってるやつ」
転落事故。
階段。
この組み合わせから考えられるのは、一つ。
「その階段から、転げ落ちた……ってのが警察の見解」
「……詳しく、聞かせてくれる?」
「う~ん……少しだけだよ?」
少し成美さんが渋る。
事件か、事故か。
私たちはそれを確かめに来たんだ。
「発生は夜から深夜にかけて。その次の日の朝、犬の散歩をしてたお婆さんが階段下でゆたかが倒れてるのを発見したみたい」
「夜って……遅くにゆーちゃんが一人で?」
「……そう、なるかな」
曖昧に返事をされる。
どうにもそこは歯切れが悪い。
「その日は、ゆたかが家で一人のはずだったんだ……私も夜勤でさ」
「え? でも、ここって……」
「……そうなんだ」
ばつが悪そうに頭を抱える成美さん。
二人は何か分かったみたいだけど、私にはさっぱり。
「そこの公園は病院には近いけど、私らの家からは大分遠いんだよね」
そんな所にゆーちゃんが一人で?
考えてみれば、おかしな話だ。
事故にあった場所に居たゆたかちゃん。
でも彼女にはそんなところに居る理由なんてないはずだ。
深夜に……誰に告げるわけでもなく。
……。
そこでまた、問題だ。
それでも、彼女は『居た』。
その場所に、その時間に。
「じゃあ、理由があったんだ。そこに居た理由」
「……」
彼女が少し押し黙り、それにこなたも気がつく。
「ゆい姉さんもしかして……知ってるの?」
「……こなた。こっからはさ、警察の仕事なんだ」
成美さんが誤魔化すようにこなたを諭す。
だけどこなたの眼は、彼女を見てた。
「お願いゆい姉さん……私、知りたいんだ」
心臓の脈打つ音が五月蝿い。
私だって、そうだ。
覚悟は決めた。
だから、立ち向かうだけ。
そのこなたの目に負けたのか、成美さんが一度ため息をつく。
「……今からするのは私の独り言。推理他私情も混じってるから、警察の意見って訳じゃないからね?」
一度断った後に、林檎を皿に置いた。
唾を飲むこなたの感覚が伝わり、鼓動が速くなる。
「ゆたかの部屋から、手紙が見つかったんだ。所謂そう……呼び出しってやつかな」
「手紙?」
「一応写しはとってあるよ、これ」
鞄から取り出した手帳を見ると、そこには短く二行の文。
大分短いというか……要点だけ書いてある。
「『これ』がワープロで打った文字で用紙に印刷してあった、本物は今は警察所だけど……作るのはそう難しくないかな」
「差出人とかは?」
「なし、多分ゆたかには……この数行だけで伝わったんだね」
……。
心臓が、痛む。
耳を脈打つ音が、邪魔だ。
『事件の証言の件でお話があります 病院横の公園まで来てください』
それが、ゆたかちゃんに届いた手紙の内容の全て。
この手紙を出す人物。いや……『出せる』人物は、限られてくる。
だから余計に、私の心臓が暴れるのかもしれない。
「事件、ってもしかして……私の学校の?」
「ふぇ?」
成美さんの顔が反応する。
確かに、こなたが知ってていい情報ではない。
「何でそれ……」
「あ、んー、話すと長いから聞かないで」
私に訝しげな目で見られているのに気がついたのか、こなたが慌てて弁明する。
成美さんも同じような目で見ていたが、深くは突っ込まないでくれた。
「そ、ゆたかが関わってた『事件』ってのは数日前の交通事故。学校近くの交差点で、こなたの学校の子がトラックに轢かれたやつ」
「ゆーちゃんはその事件の……」
「重要参考人、ってとこかな。ゆたかの証言だと……その交通事故は、『事件』って事になる」
そしてゆたかちゃんの証言を、成美さんがなぞる。
私から教わってこなたもそれを知っていたが、あえて口は挟まなかった。
あんまり知りすぎてるのも変に思われるからね。
そこから少し話が逸れ、私の事件の説明に入った。
「それでゆたかの証言だと、事故にあった子の双子の妹が『容疑者』の最有力ってことになるかな」
「現場に一緒に、居たんだっけ」
「うん、そだね……本人がそう証言してる。『姉と一緒に下校していた』ってね」
そしてつかさの証言を今度はなぞる。
「ゆい姉さんはどう思う? その子が……ゆーちゃんを?」
「……」
その証言の説明が終わったところで、こなたがようやく確信を聞く。
そうだ、そこが問題。ゆたかちゃんの証言が苦しめるのは、つかさだけ。
だから自動的にゆたかちゃんの事件の犯人も……つかさに?
「確かにこの手紙を出したのは、その子……もしくは事件の関係者じゃないと無理だね」
手帳の文面。
これは確かに、一般の人が知るようなことではない。
少なくとも『ゆたかちゃんが交通事故の目撃者』という事実と、この手紙の『病院』を知っていなくてはこの手紙は書けない。
病院……つまりここ、『私』が眠る病院だ。
「でもね……その妹さんには、『出せない』んだ」
「えっ」
私もこなたも動揺した。成美さんの言葉が、あまりにも意外だったから。
「出せないって……どういう事?」
「『存在証明』って分かるかな? アリバイってヤツ。事件の日妹さんには、それがあったんだ」
その日。
つまり、ゆたかちゃんが事件にあった日。
「その日妹さんは友人の家に居た。これはその友人にも裏もとってあるよ」
「え、じゃ、じゃあどういう事?」
「『妹さんはゆたかの事故の時、現場には居なかった』。これは確定事項」
「でも……その手紙は確かにあったんだよね」
「そう、『誰かがゆたかを呼び出した』。これも確定事項」
……。
不思議だ。
どうしても、うまく全てが結びつかない。
まるで違う種類のジグゾーパズルを混ぜて遊んでいる気分。
そしてそれを無理矢理くっつけようとすると、全てのベクトルがつかさに向いてしまう。
「確かに、こう考えれば簡単だよ? その友人が口裏をあわせてるだけ。姉を殺した妹が、目撃者であるゆたかを殺した」
私が事故にあっただけなら、それはただの交通事故で済んだだろう。
だけど、ゆたかちゃんは言う。
『片方が片方を突き飛ばした』
そしてそのゆたかちゃんも……転落事故。
その安直な直線を引ければ、全てが解決する。
だけどやっぱり……歯切れが悪い。
そこに一つの要素が加わるだけで、全てがおかしくなる。
差出人不明の『手紙』。
だけどそれを出せる人間は限られる。
そしてその一人……つかさは、アリバイがあった。
じゃあ『つかさには、ゆたかちゃんは殺せない』。
それを聞いて少し、心が軽くなった。
……すぐに、切り裂かれるのも知らずに。
「今警察は、その手紙の差出人の特定に必死だよ。事件関係者……主に、その妹さんの家族。かな」
「かっ……」
こなたが言葉を失う。
でも、それは当然なのかもしれない。
私の家族だって私と同じに決まってる。
つかさのはずないって思って、その手紙を……。
「でも無駄足だったみたい、その日はそれぞれにアリバイがあったみたい……ってこれは機密か」
あははっ、と笑う成美さん。
「『ゆーちゃんの事故のとき、事件関係者には全員アリバイがあった』。ってこと?」
「そう、少なくともその妹さんの家族全員はね。だからこっからは私の推理」
少し話を整理しよう。
これはあくまで、仮定の話のもと進められている。
ゆたかちゃんの事故が、『事件だったら』という仮定。
その場合容疑者は『私の事件の関係者』が第一に疑われる。
こんな手紙まであれば尚更だ。
だけどその関係者には、犯行は不可能だった。
「可能性としては二つ……『妹さんに疑いがかかるように誰かが手紙を用意した』、もしくは『他に事件関係者がいる』」
……。
前者は、私にも分かる。
こなたと必死に推理して出した、一つの答え。
でも後者は……考えたことすらなかった。
「こ、後者がよく分かんないな。どゆこと?」
「ゆたかの証言を、そのまま鵜呑みには出来ないってこと」
人間は完璧じゃない。
十人十色とは良く言ったもの。
どんなに正しいものを見ても、人はそれぞれの解釈で捻じ曲げてしまうものだ。
「ゆたかが証言したのは大まかに分けて二つ。『二人が歩いていた』ってこと、『その内の片方が、もう片方を突き飛ばした』ってこと」
ゆたかちゃんに嘘をつく理由はない。
なら、これは真実のはず。
いや……真実に近い『何か』のはず。
「でもゆたかが証言したのは、逆に言うとそれだけ」
「それだけって?」
「『二人』が歩いてた……つまり、その二人の関係は分からないってこと」
少し回りくどい言い方をされたため、こなたと一緒に頭を抱える。
だけど私より先に、こなたが何かに気が付く。
「そっか……それが本当に『姉妹』だったのかは、分かんない」
「そ、それはあくまで『姉と一緒に帰っていた』っていう妹さんの証言があるから立証されてるだけ」
それはつかさの証言。
そこまで聞いて私もようやく理解する。
じゃあつまり……。
「じゃあその被害者の子は、違う『誰か』と帰ってた?」
こなたが私の頭に過ぎった言葉を復唱する。
「それも、ないわけじゃないってことかな。でもそれだと、ひっかかるよね?」
分かるでしょ? といった様子で聞き返す。
そうだ。
これはあくまでつかさの『姉と帰っていた』という証言が嘘だった場合だ。
そこには……矛盾しか残らない。
「嘘をつく理由がない、彼女の証言は確実に彼女の首をしめる」
……。
少し、沈黙が続いた。突きつけられた新しい情報に私は戸惑う。
つかさが現場に『居た』場合……これはしきりにこなたと推理をしていた。
だけど警察の成美さんが新しく突きつけた新しい可能性。
つかさが現場に……『居なかった』場合。
「それなら」
そう、ここで初めて彼女は呈したんだ……『第三者』の可能性を。
そしてそれは……最悪の形で、提言された。
「犯人は事故にあった姉の友人。ってなるかな……一緒に下校するぐらいのね。この場合妹さんは、その誰かを……庇ってる」
私を殺した『誰か』。
それはつかさだけじゃない……私の友人にまで、疑いが向けられた。
そしてもしそうなら、つかさは庇ってる?
だから、嘘をついた? 私と一緒に帰ったって?
でも私は確かに聞いた。
最後の最後……意識が途切れる瞬間に、「お姉ちゃん」と叫び続ける声を。
私の事故の瞬間、『つかさは現場に居た』。これは確実なはず。
つまり、増えてしまったわけだ。
合わないピースが……また一つ。
「ゆたかが嘘を言ってないってなるなら、推理できるのはそれぐらいかな」
もちろん彼女は警察だ。
その考えだって頭においてある、というだけなのだろう。
でも、私にはそれは困惑でしかない。
だってそうでしょ?
つかさじゃない。それを信じるなら……その他。
私の友人たちを疑わなければいけなくなったのだから。
「でもこなた……あんまり、首を突っ込まないほうがいいと思うよ」
成美さんが警告する。
これは警察としての警告でもあり、いとこのお姉さんとしての忠告。
深く関わっても、こなたに得なんかない。
「ゆたかの件とは関係あるって言ってもさ、交通事故の件はこなたには関係ないんだし」
だからその言葉は、当然といえば当然の言葉。
でも少し……胸に刺さった。
そっか。
そう、だよね。
こなたには関係……ないんだ。
「そんな事ないよ」
「えっ……?」
私と同じく、成美さんが呆気にとられる。
「私、知りたいんだ……本当の事」
「……もしかして、知ってるの? その子たちのこと」
成美さんが尋ねる。
その質問も当然だ。
こなたの学校の生徒が巻き込まれた事件。
それに固執する理由としては、それが一番妥当だろう。
「うん……姉のほうだけだけどね」
「あ……」
それを聞いて、失言だと思ったらしい。
姉……つまり、私。
その私は今……同じ病院で、虫の息なんだから。
「……友達?」
それは、何気ない質問だったのかもしれない。
その場には一番あっていた質問。
だけど。
なのに。
なぜか……
私の心臓の音が少し、速くなった気がした。
友達。
短い四文字で、漢字にすればたった二文字。
だけど何処か……恥ずかしい単語。
友達、なのかな? 私たちって……。
こんな体にならなかったら、あの天使に会わなかったら。
そしたら私たちはきっと……出会わなかった。
私たちが出会ったのはそれこそ、神の悪戯。
間抜けな天使が零れ落ちた私を救い上げ、こなたの上にふりかけた。
それだけの……関係。
それだけ、の……。
あ、あれ? 変だな私。
何か……変。
「うん」
「え……」
滲みかけた眼が、見開いた。
「大切な、友達」
こなたは、私を見なかった。
だけど、伝わった。
顔の熱も……搾り出した声、も。
「?」
声に気がつき、こなたが振り向く。
私も一緒だ。
病院のロビー、そこに『彼女』は居た。
「……『みゆき』?」
「?」
こなたより先に、私の口が彼女の名前を呼ぶ。
それを聞き、こなたがようやく何かを思い出す。
「……ああえと、高良さん。だっけ?」
「はい、お久しぶりです」
こなたが適当に頭を下げると、丁寧なお辞儀が返ってくる。
高良みゆき……そういやこなたと同じクラスだったっけ。
みゆきのほうが覚えてたのは意外だったけど。
「お見舞いですか?」
「う……ん、いとこの子が入院しててさ」
クラスメイトと世間話……といきたい所だけど、こなたのほうはまた緊張しまくってる。
それでも面識が少しはある分、峰岸たちとかよりはまだましか。
眼はあわさないけど、会話してるだけで結構な進歩よね。
「そうですか……実は私もお見舞いなんです。つかささん……柊さん、って覚えてますか?」
「……うん。まぁ」
その名前を聞いて、こなたと一緒に心臓が跳ねる。
みゆきがこんな所に居る理由はそう多くない。
私のお見舞い、それが一番妥当だろう。
「そのお姉さんも入院してまして……宜しければ泉さんもご一緒にどうでしょうか? つかささんも喜んでくれるはずです」
「……」
みゆきの笑顔の前に、こなたから戸惑いが伝わる。
それは私も同じだ。
つかさが、『居る』。
いくら想定していた事であっても、さすがに緊張する。
「うん……じゃあ後で寄るよ」
「本当ですか!」
みゆきがこなたの手をとって喜ぶ。
こっちを見てくれないのは少し寂しいけど……いつものみゆきの笑顔を見たら、何だか心が落ち着いた。
こなたの手から、みゆきの手の暖かさだって伝わってきたしね。
「では、またあとで」
みゆきと同じ階層まで歩き、別れる。
それまでに色々と会話もしたが、さすがみゆき……ひきこもりやこなたの母親の事には一切触れなかった。
私の病室の場所はみゆきから聞いた。
あとは私が心の整理をするだけ、なんだけどな。
「ここかな」
私が悩んでる間にもゆたかちゃんの病室に辿り着く。
最初にゆたかちゃんと会った集中治療室とはまた違う病室。
そこの扉をこなたが開けると、女性が目に入った。
「おーこなた、よく来たねー」
「こんちわ、ゆいねーさん」
珍しくこなたが緊張する事もなく、手を振る。
彼女の話は歩きながら聞いていた。
えっと、成美さんだっけ? 同じくこなたのいとこで、ゆたかちゃんのお姉さん。
なんでも引き篭もってるときもよく遊びに来てくれていたらしい……追い返してたらしいけど。
「よく一人でこれたねー、お姉さんびっくりだ」
あはは、と笑いながらこなたの頭を撫でる。
でも何処か表情が疲れてるように感じるのは、見間違いじゃないと思う。
「お母さんの事はもう……平気?」
「……」
その女性……成美さんの言葉に、こなたの手が、汗ばむ。
だけど、いつもの様に動悸が速くなることはなかった。
「鋭意努力中、かなっ」
こなたが笑う。
それを見て、成美さんも笑顔をこぼす。
「……そっか、こなたは偉いねっ」
そして二人で笑いあい、お互いを元気づける。
「今日は、きい兄さんとかは?」
「お仕事でね、今日は私がたまたま非番だったからさ」
用意してくれた椅子に腰掛け、ゆたかちゃんの顔をこなたが覗き込む。
包帯は巻かれているけど、私よりは少ないかな?
でも本当に……ただ寝てるだけみたい。
「傷跡は残んないって、後遺症も心配なし……あとは目が覚めるだけかな」
「そっか……良かったね、ゆーちゃん」
「あははっ、ゆたかは綺麗な肌してるもんねー。傷でも残ったら一大事だよ」
二人がゆたかちゃんに話しかけるように会話をする。
それの返事はなくても、信じてるんだ。
いつかその言葉が、返ってくる事を……。
「それで、さ。ゆい姉さん」
「んー?」
お見舞いに持ってきてあった林檎をむきながら、成美さんが返事をする。
少しこなたに緊張感が混じったのは、気の所為じゃない。
「ゆーちゃんって本当に……『事故』、だったの?」
「……どゆこと、かな?」
指が止まり、長く繋がっていた林檎の皮が千切れる。
「調べたんでしょ? ……お仕事だもんね」
お仕事。
じゃあ……彼女がこなたの言ってた、『詳しい人』?
つまり警察関係者、ってことになる。
「あー……こなたの耳にも、入っちゃってるか」
林檎を剥く作業に戻りながらも、少し手が震えている。
「一応はまだ捜査中……転落事故ってことにはなってるけど」
「転落?」
事故にだって、色々ある。
私のように車に轢かれる交通事故。
でもゆたかちゃんはそれとは別。
「公園あるでしょ? ここの近く……来る時バスから見えなかった?」
「え、うん……」
公園。
ここいらにあるのは一つだけのはず。
そう、あの……峰岸たちの居た公園だ。
「あそこってさ、長い階段があるんだよね。上の団地に繋がってるやつ」
転落事故。
階段。
この組み合わせから考えられるのは、一つ。
「その階段から、転げ落ちた……ってのが警察の見解」
「……詳しく、聞かせてくれる?」
「う~ん……少しだけだよ?」
少し成美さんが渋る。
事件か、事故か。
私たちはそれを確かめに来たんだ。
「発生は夜から深夜にかけて。その次の日の朝、犬の散歩をしてたお婆さんが階段下でゆたかが倒れてるのを発見したみたい」
「夜って……遅くにゆーちゃんが一人で?」
「……そう、なるかな」
曖昧に返事をされる。
どうにもそこは歯切れが悪い。
「その日は、ゆたかが家で一人のはずだったんだ……私も夜勤でさ」
「え? でも、ここって……」
「……そうなんだ」
ばつが悪そうに頭を抱える成美さん。
二人は何か分かったみたいだけど、私にはさっぱり。
「そこの公園は病院には近いけど、私らの家からは大分遠いんだよね」
そんな所にゆーちゃんが一人で?
考えてみれば、おかしな話だ。
事故にあった場所に居たゆたかちゃん。
でも彼女にはそんなところに居る理由なんてないはずだ。
深夜に……誰に告げるわけでもなく。
……。
そこでまた、問題だ。
それでも、彼女は『居た』。
その場所に、その時間に。
「じゃあ、理由があったんだ。そこに居た理由」
「……」
彼女が少し押し黙り、それにこなたも気がつく。
「ゆい姉さんもしかして……知ってるの?」
「……こなた。こっからはさ、警察の仕事なんだ」
成美さんが誤魔化すようにこなたを諭す。
だけどこなたの眼は、彼女を見てた。
「お願いゆい姉さん……私、知りたいんだ」
心臓の脈打つ音が五月蝿い。
私だって、そうだ。
覚悟は決めた。
だから、立ち向かうだけ。
そのこなたの目に負けたのか、成美さんが一度ため息をつく。
「……今からするのは私の独り言。推理他私情も混じってるから、警察の意見って訳じゃないからね?」
一度断った後に、林檎を皿に置いた。
唾を飲むこなたの感覚が伝わり、鼓動が速くなる。
「ゆたかの部屋から、手紙が見つかったんだ。所謂そう……呼び出しってやつかな」
「手紙?」
「一応写しはとってあるよ、これ」
鞄から取り出した手帳を見ると、そこには短く二行の文。
大分短いというか……要点だけ書いてある。
「『これ』がワープロで打った文字で用紙に印刷してあった、本物は今は警察所だけど……作るのはそう難しくないかな」
「差出人とかは?」
「なし、多分ゆたかには……この数行だけで伝わったんだね」
……。
心臓が、痛む。
耳を脈打つ音が、邪魔だ。
『事件の証言の件でお話があります 病院横の公園まで来てください』
それが、ゆたかちゃんに届いた手紙の内容の全て。
この手紙を出す人物。いや……『出せる』人物は、限られてくる。
だから余計に、私の心臓が暴れるのかもしれない。
「事件、ってもしかして……私の学校の?」
「ふぇ?」
成美さんの顔が反応する。
確かに、こなたが知ってていい情報ではない。
「何でそれ……」
「あ、んー、話すと長いから聞かないで」
私に訝しげな目で見られているのに気がついたのか、こなたが慌てて弁明する。
成美さんも同じような目で見ていたが、深くは突っ込まないでくれた。
「そ、ゆたかが関わってた『事件』ってのは数日前の交通事故。学校近くの交差点で、こなたの学校の子がトラックに轢かれたやつ」
「ゆーちゃんはその事件の……」
「重要参考人、ってとこかな。ゆたかの証言だと……その交通事故は、『事件』って事になる」
そしてゆたかちゃんの証言を、成美さんがなぞる。
私から教わってこなたもそれを知っていたが、あえて口は挟まなかった。
あんまり知りすぎてるのも変に思われるからね。
そこから少し話が逸れ、私の事件の説明に入った。
「それでゆたかの証言だと、事故にあった子の双子の妹が『容疑者』の最有力ってことになるかな」
「現場に一緒に、居たんだっけ」
「うん、そだね……本人がそう証言してる。『姉と一緒に下校していた』ってね」
そしてつかさの証言を今度はなぞる。
「ゆい姉さんはどう思う? その子が……ゆーちゃんを?」
「……」
その証言の説明が終わったところで、こなたがようやく確信を聞く。
そうだ、そこが問題。ゆたかちゃんの証言が苦しめるのは、つかさだけ。
だから自動的にゆたかちゃんの事件の犯人も……つかさに?
「確かにこの手紙を出したのは、その子……もしくは事件の関係者じゃないと無理だね」
手帳の文面。
これは確かに、一般の人が知るようなことではない。
少なくとも『ゆたかちゃんが交通事故の目撃者』という事実と、この手紙の『病院』を知っていなくてはこの手紙は書けない。
病院……つまりここ、『私』が眠る病院だ。
「でもね……その妹さんには、『出せない』んだ」
「えっ」
私もこなたも動揺した。成美さんの言葉が、あまりにも意外だったから。
「出せないって……どういう事?」
「『存在証明』って分かるかな? アリバイってヤツ。事件の日妹さんには、それがあったんだ」
その日。
つまり、ゆたかちゃんが事件にあった日。
「その日妹さんは友人の家に居た。これはその友人にも裏もとってあるよ」
「え、じゃ、じゃあどういう事?」
「『妹さんはゆたかの事故の時、現場には居なかった』。これは確定事項」
「でも……その手紙は確かにあったんだよね」
「そう、『誰かがゆたかを呼び出した』。これも確定事項」
……。
不思議だ。
どうしても、うまく全てが結びつかない。
まるで違う種類のジグゾーパズルを混ぜて遊んでいる気分。
そしてそれを無理矢理くっつけようとすると、全てのベクトルがつかさに向いてしまう。
「確かに、こう考えれば簡単だよ? その友人が口裏をあわせてるだけ。姉を殺した妹が、目撃者であるゆたかを殺した」
私が事故にあっただけなら、それはただの交通事故で済んだだろう。
だけど、ゆたかちゃんは言う。
『片方が片方を突き飛ばした』
そしてそのゆたかちゃんも……転落事故。
その安直な直線を引ければ、全てが解決する。
だけどやっぱり……歯切れが悪い。
そこに一つの要素が加わるだけで、全てがおかしくなる。
差出人不明の『手紙』。
だけどそれを出せる人間は限られる。
そしてその一人……つかさは、アリバイがあった。
じゃあ『つかさには、ゆたかちゃんは殺せない』。
それを聞いて少し、心が軽くなった。
……すぐに、切り裂かれるのも知らずに。
「今警察は、その手紙の差出人の特定に必死だよ。事件関係者……主に、その妹さんの家族。かな」
「かっ……」
こなたが言葉を失う。
でも、それは当然なのかもしれない。
私の家族だって私と同じに決まってる。
つかさのはずないって思って、その手紙を……。
「でも無駄足だったみたい、その日はそれぞれにアリバイがあったみたい……ってこれは機密か」
あははっ、と笑う成美さん。
「『ゆーちゃんの事故のとき、事件関係者には全員アリバイがあった』。ってこと?」
「そう、少なくともその妹さんの家族全員はね。だからこっからは私の推理」
少し話を整理しよう。
これはあくまで、仮定の話のもと進められている。
ゆたかちゃんの事故が、『事件だったら』という仮定。
その場合容疑者は『私の事件の関係者』が第一に疑われる。
こんな手紙まであれば尚更だ。
だけどその関係者には、犯行は不可能だった。
「可能性としては二つ……『妹さんに疑いがかかるように誰かが手紙を用意した』、もしくは『他に事件関係者がいる』」
……。
前者は、私にも分かる。
こなたと必死に推理して出した、一つの答え。
でも後者は……考えたことすらなかった。
「こ、後者がよく分かんないな。どゆこと?」
「ゆたかの証言を、そのまま鵜呑みには出来ないってこと」
人間は完璧じゃない。
十人十色とは良く言ったもの。
どんなに正しいものを見ても、人はそれぞれの解釈で捻じ曲げてしまうものだ。
「ゆたかが証言したのは大まかに分けて二つ。『二人が歩いていた』ってこと、『その内の片方が、もう片方を突き飛ばした』ってこと」
ゆたかちゃんに嘘をつく理由はない。
なら、これは真実のはず。
いや……真実に近い『何か』のはず。
「でもゆたかが証言したのは、逆に言うとそれだけ」
「それだけって?」
「『二人』が歩いてた……つまり、その二人の関係は分からないってこと」
少し回りくどい言い方をされたため、こなたと一緒に頭を抱える。
だけど私より先に、こなたが何かに気が付く。
「そっか……それが本当に『姉妹』だったのかは、分かんない」
「そ、それはあくまで『姉と一緒に帰っていた』っていう妹さんの証言があるから立証されてるだけ」
それはつかさの証言。
そこまで聞いて私もようやく理解する。
じゃあつまり……。
「じゃあその被害者の子は、違う『誰か』と帰ってた?」
こなたが私の頭に過ぎった言葉を復唱する。
「それも、ないわけじゃないってことかな。でもそれだと、ひっかかるよね?」
分かるでしょ? といった様子で聞き返す。
そうだ。
これはあくまでつかさの『姉と帰っていた』という証言が嘘だった場合だ。
そこには……矛盾しか残らない。
「嘘をつく理由がない、彼女の証言は確実に彼女の首をしめる」
……。
少し、沈黙が続いた。突きつけられた新しい情報に私は戸惑う。
つかさが現場に『居た』場合……これはしきりにこなたと推理をしていた。
だけど警察の成美さんが新しく突きつけた新しい可能性。
つかさが現場に……『居なかった』場合。
「それなら」
そう、ここで初めて彼女は呈したんだ……『第三者』の可能性を。
そしてそれは……最悪の形で、提言された。
「犯人は事故にあった姉の友人。ってなるかな……一緒に下校するぐらいのね。この場合妹さんは、その誰かを……庇ってる」
私を殺した『誰か』。
それはつかさだけじゃない……私の友人にまで、疑いが向けられた。
そしてもしそうなら、つかさは庇ってる?
だから、嘘をついた? 私と一緒に帰ったって?
でも私は確かに聞いた。
最後の最後……意識が途切れる瞬間に、「お姉ちゃん」と叫び続ける声を。
私の事故の瞬間、『つかさは現場に居た』。これは確実なはず。
つまり、増えてしまったわけだ。
合わないピースが……また一つ。
「ゆたかが嘘を言ってないってなるなら、推理できるのはそれぐらいかな」
もちろん彼女は警察だ。
その考えだって頭においてある、というだけなのだろう。
でも、私にはそれは困惑でしかない。
だってそうでしょ?
つかさじゃない。それを信じるなら……その他。
私の友人たちを疑わなければいけなくなったのだから。
「でもこなた……あんまり、首を突っ込まないほうがいいと思うよ」
成美さんが警告する。
これは警察としての警告でもあり、いとこのお姉さんとしての忠告。
深く関わっても、こなたに得なんかない。
「ゆたかの件とは関係あるって言ってもさ、交通事故の件はこなたには関係ないんだし」
だからその言葉は、当然といえば当然の言葉。
でも少し……胸に刺さった。
そっか。
そう、だよね。
こなたには関係……ないんだ。
「そんな事ないよ」
「えっ……?」
私と同じく、成美さんが呆気にとられる。
「私、知りたいんだ……本当の事」
「……もしかして、知ってるの? その子たちのこと」
成美さんが尋ねる。
その質問も当然だ。
こなたの学校の生徒が巻き込まれた事件。
それに固執する理由としては、それが一番妥当だろう。
「うん……姉のほうだけだけどね」
「あ……」
それを聞いて、失言だと思ったらしい。
姉……つまり、私。
その私は今……同じ病院で、虫の息なんだから。
「……友達?」
それは、何気ない質問だったのかもしれない。
その場には一番あっていた質問。
だけど。
なのに。
なぜか……
私の心臓の音が少し、速くなった気がした。
友達。
短い四文字で、漢字にすればたった二文字。
だけど何処か……恥ずかしい単語。
友達、なのかな? 私たちって……。
こんな体にならなかったら、あの天使に会わなかったら。
そしたら私たちはきっと……出会わなかった。
私たちが出会ったのはそれこそ、神の悪戯。
間抜けな天使が零れ落ちた私を救い上げ、こなたの上にふりかけた。
それだけの……関係。
それだけ、の……。
あ、あれ? 変だな私。
何か……変。
「うん」
「え……」
滲みかけた眼が、見開いた。
「大切な、友達」
こなたは、私を見なかった。
だけど、伝わった。
顔の熱も……搾り出した声、も。
「じゃあこなた、気をつけて帰るんだよー」
成美さんが手を振るのにこなたが手を振り替えし、ゆたかちゃんの病室を出る。
次に目指すのは、私の病室。
つかさや、みゆきの居る場所……なん、だけど。
「……」
「ちょ、ちょっとこなたっ」
廊下を早足でこなたが歩く。
それに必死についていくが、なかなか速度を緩めてくれない。
いや、まぁ理由は分かるんだけどね。
何でも共有してるとこういう時やりにくい。
多分……恥ずかしがってるんじゃ、ないかと。
うう、私も何か恥ずかしいじゃない!
「道、違うわよっ。みゆきが言ったのは逆方向じゃない」
「うっ……」
私の声にこなたが足を止める。
ようやく私も追いつくけど、やっぱり私を見ない。
そこまで照れるなら言わなくていいのに……あんな事。
「さ、さっきのは……ね」
必死に私から顔を背けながら、小声で喋る。
さっきの……って、やっぱりあれ、だよね。
……思い返したら私も顔が熱い。
「私が、その……勝手に思ってるだけ、だから」
それだけ言って、踵を返す。
もちろん私の顔は見てすらない。
そしてまたせっせと廊下を進んでいく。
それを見て、少し呆気にとられる。
その後……笑ってしまった。誰にも聞こえないからって、大声で。
「わ、笑わなくてもいいじゃんさっ」
こなたが真っ赤になった顔をようやく振り向かせる。
ああそうだった、あんたには聞こえるんだっけ。
あんたには、見えるんだっけ。
こんな私を。
こんな体の……私を。
「ねぇ、こなた」
「……何さ」
ようやく足並みを私に揃え、廊下を進んでいく。
声をかけると、まだ笑ったのを怒ってるのか少し頬が膨らんでる。
「私も……勝手に同じこと、思ってるからね」
「……」
返事はなかった。
だけどまた顔を背けて、足早に進んでいくこなた。
その姿を見てまた可笑しくなる。
それだけで、十分だった。
……。
大丈夫、だよね?
きっとこなたと一緒なら、大丈夫。
見つけましょう……真実を。
それでさ、一緒にポイント貯めましょう。
紹介してあげるわ、頼りにならない天使とか……って見えないんだっけ。
それで生き返るんだ……そしたらさ、また一緒にゲームしましょ。
あんたってマンガばっかり読んでるから私のラノベ貸してあげるわ、活字もちゃんと読まなきゃね。
それで一杯一杯お話しよう。
こなたの部屋で、私の部屋で、学校で、皆で。
きっと楽しいよ。
つかさは凄いのよ? ちょっと抜けてるけど、料理とか上手くてね。
みゆきなんかもっと凄いわよ、もっと抜けてるけどね。
日下部だって峰岸だって他の皆だって!
その輪にゆーちゃんや、みなみちゃんだって入れて騒ごう。
皆で一緒に騒いで、馬鹿みたいな話をしよう。
ゲームの話とか、マンガの話とか、テストとか、新しく出来たケーキ屋さんとか……好きな人の話、とか。
……。
あ、あははっ。変だね、可笑しいねっ。
でもきっと……このドキドキは、そういう事なんだよね。
……あんまり、考えないようにしよう。
勝手に伝わっちゃったら、もったいないもんね。
成美さんが手を振るのにこなたが手を振り替えし、ゆたかちゃんの病室を出る。
次に目指すのは、私の病室。
つかさや、みゆきの居る場所……なん、だけど。
「……」
「ちょ、ちょっとこなたっ」
廊下を早足でこなたが歩く。
それに必死についていくが、なかなか速度を緩めてくれない。
いや、まぁ理由は分かるんだけどね。
何でも共有してるとこういう時やりにくい。
多分……恥ずかしがってるんじゃ、ないかと。
うう、私も何か恥ずかしいじゃない!
「道、違うわよっ。みゆきが言ったのは逆方向じゃない」
「うっ……」
私の声にこなたが足を止める。
ようやく私も追いつくけど、やっぱり私を見ない。
そこまで照れるなら言わなくていいのに……あんな事。
「さ、さっきのは……ね」
必死に私から顔を背けながら、小声で喋る。
さっきの……って、やっぱりあれ、だよね。
……思い返したら私も顔が熱い。
「私が、その……勝手に思ってるだけ、だから」
それだけ言って、踵を返す。
もちろん私の顔は見てすらない。
そしてまたせっせと廊下を進んでいく。
それを見て、少し呆気にとられる。
その後……笑ってしまった。誰にも聞こえないからって、大声で。
「わ、笑わなくてもいいじゃんさっ」
こなたが真っ赤になった顔をようやく振り向かせる。
ああそうだった、あんたには聞こえるんだっけ。
あんたには、見えるんだっけ。
こんな私を。
こんな体の……私を。
「ねぇ、こなた」
「……何さ」
ようやく足並みを私に揃え、廊下を進んでいく。
声をかけると、まだ笑ったのを怒ってるのか少し頬が膨らんでる。
「私も……勝手に同じこと、思ってるからね」
「……」
返事はなかった。
だけどまた顔を背けて、足早に進んでいくこなた。
その姿を見てまた可笑しくなる。
それだけで、十分だった。
……。
大丈夫、だよね?
きっとこなたと一緒なら、大丈夫。
見つけましょう……真実を。
それでさ、一緒にポイント貯めましょう。
紹介してあげるわ、頼りにならない天使とか……って見えないんだっけ。
それで生き返るんだ……そしたらさ、また一緒にゲームしましょ。
あんたってマンガばっかり読んでるから私のラノベ貸してあげるわ、活字もちゃんと読まなきゃね。
それで一杯一杯お話しよう。
こなたの部屋で、私の部屋で、学校で、皆で。
きっと楽しいよ。
つかさは凄いのよ? ちょっと抜けてるけど、料理とか上手くてね。
みゆきなんかもっと凄いわよ、もっと抜けてるけどね。
日下部だって峰岸だって他の皆だって!
その輪にゆーちゃんや、みなみちゃんだって入れて騒ごう。
皆で一緒に騒いで、馬鹿みたいな話をしよう。
ゲームの話とか、マンガの話とか、テストとか、新しく出来たケーキ屋さんとか……好きな人の話、とか。
……。
あ、あははっ。変だね、可笑しいねっ。
でもきっと……このドキドキは、そういう事なんだよね。
……あんまり、考えないようにしよう。
勝手に伝わっちゃったら、もったいないもんね。
今私は、この夢のような……まるで幻想のような世界に居る。
でも確かに私はそれを、見てる……感じてる。
体のない体。
死の瀬戸際で、綱渡りをしている体。
そんな仮初の世界で出会った、少女。
その存在が私の中で大きくなっていくのを、日に日に感じている。
この時間を私は……失いたくない、続けていきたい。
だから私は、生き返ってみせる。
どんな困難も、乗り越えてみせる。
少女と……こなたと、一緒に。
でも確かに私はそれを、見てる……感じてる。
体のない体。
死の瀬戸際で、綱渡りをしている体。
そんな仮初の世界で出会った、少女。
その存在が私の中で大きくなっていくのを、日に日に感じている。
この時間を私は……失いたくない、続けていきたい。
だから私は、生き返ってみせる。
どんな困難も、乗り越えてみせる。
少女と……こなたと、一緒に。
そして私は、見覚えのある病室に足を踏み入れる事になる。
その扉の向こうにある事実に、全てを打ち砕かれる事も知らずに。
絶望という暗闇に、飲み込まれる事も知らずに。
その扉の向こうにある事実に、全てを打ち砕かれる事も知らずに。
絶望という暗闇に、飲み込まれる事も知らずに。
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- かがみが轢かれそうなつかさを救おうとして突き飛ばした・・・とか? -- 名無しさん (2008-12-25 23:45:55)
- 同じく続きが楽しみでしょうがない -- 名無しさん (2008-01-23 02:54:50)
- 続きが楽しみでしょうがない。
期待してます -- 名無しさん (2008-01-12 05:52:51)