君色に染まる
「今日うちに来ない?むしろ泊りで」
こうからそんなかんじのメールが届いたのは夏休み突入から一週間ほど過ぎ
た今日の早朝のことだった。
唐突過ぎない?とか泊まり?とかいやに簡潔ね、とかいろいろと疑問は浮か
んだが断る気にはなれなかった。ほかならぬこうの誘いだし、こうの家に行く
のならいつものように三十分待つ必要もない。それに泊り込みということは…
いや。考えるな私。別にこうとは親友であってそれ以上の関係じゃいやだから
それ以上の関係になるためにうるさいうるさいうるさーい!
「はぁ、はぁ、はぁ…」
落ち着け、クールになれ私。こうの後輩の眼鏡の子の書いてる漫画じゃある
まいし現実にそんなことがあるはずがない。ともあれ、とりあえず行く事自体
に異存がない私は承諾のメールを送ろうとして
「あ、そうだ。」
一応外泊するならお母さんに言っておかなきゃ。だけどそう簡単に許可を出
してくれるだろうか。一応私は年頃の娘だ。急に外泊するなど言い出したら心
配するのではなかろうか。
結果は一言で了承だった。こうがいつぞや持ってきたパソコンゲームのたま
にとんでもない味のジャムを作り出すお母さん並みのスピードで了承だった。
にしても甘すぎないだろうか。もしかして女子高なら男子との出会いなんてな
いと思われているのか。まぁ実際にないが。
ともあれ、私は承諾のメールを出すと荷造りをしてこうの家に向かった。
こうからそんなかんじのメールが届いたのは夏休み突入から一週間ほど過ぎ
た今日の早朝のことだった。
唐突過ぎない?とか泊まり?とかいやに簡潔ね、とかいろいろと疑問は浮か
んだが断る気にはなれなかった。ほかならぬこうの誘いだし、こうの家に行く
のならいつものように三十分待つ必要もない。それに泊り込みということは…
いや。考えるな私。別にこうとは親友であってそれ以上の関係じゃいやだから
それ以上の関係になるためにうるさいうるさいうるさーい!
「はぁ、はぁ、はぁ…」
落ち着け、クールになれ私。こうの後輩の眼鏡の子の書いてる漫画じゃある
まいし現実にそんなことがあるはずがない。ともあれ、とりあえず行く事自体
に異存がない私は承諾のメールを送ろうとして
「あ、そうだ。」
一応外泊するならお母さんに言っておかなきゃ。だけどそう簡単に許可を出
してくれるだろうか。一応私は年頃の娘だ。急に外泊するなど言い出したら心
配するのではなかろうか。
結果は一言で了承だった。こうがいつぞや持ってきたパソコンゲームのたま
にとんでもない味のジャムを作り出すお母さん並みのスピードで了承だった。
にしても甘すぎないだろうか。もしかして女子高なら男子との出会いなんてな
いと思われているのか。まぁ実際にないが。
ともあれ、私は承諾のメールを出すと荷造りをしてこうの家に向かった。
「…帰る。」
「わー!ちょストップ!早い、早すぎるよやまと!」
こうの部屋に入ったとたん、私は来たことを後悔した。
机の上は紙で半ば占領され、乗り切らなかった紙が床に散らばっている。
時期を考えればあの紙に何が書かれているか見なくてもわかる。何で私が呼ば
れたかも。
「お願い!もう祭典も近いのにひよりん熱出して倒れちゃったんだ!手伝って!」
「…私にどうしろと?」
あの文化祭から半年以上が経って、私はその間こうにいろんなところに連れ
回された。だから何を描いてるかくらいは判るし引きもしない。けれどそれを
手伝えるほどアレでもない。
「ベタ塗りとかトーン貼りとか、やまとにもできるようなのだけでいいからさ。
一生のお願い!」
土下座せんばかりの勢いで食い下がるこう。こうなるともう断る気にはなれ
ない。いや、実を言うとそんな気など最初からなかった。こうが私を頼ってい
るのだ。私が手伝わない理由などどこにもない。
「で、どれ?」
「…え?」
「手伝ってほしいんでしょ。やってあげるからかして。」
「…!
ありがとうやまと!」
私がそういうと顔をまるで太陽のように輝かせて抱きついてくるこう。まぁ
、その、こうのやたら大きい胸が当たってたりして私的にはすごくいいのだが
残念なことに私はここでずっと抱き合っているようなキャラじゃないので、
名残を惜しみながらもそれを表に出さず突き放す。
「わかったから、さっさと終わらせよう。」
「え、あぁ、うん。まずこれのここなんだけど…」
こうがなんだか寂しそうな顔をする。そんな顔をされると抱きしめたくなる
のだがそこは自重。
「わかったわ。」
内心はともかく不機嫌そうに受け取る。本当はもうあきらめてるんだけど
ここで甘い顔をすれば次何を要求されるかわかったもんじゃない。そうなったときどうせ自分は断らないのだ。
「…にしても」
これはまたずいぶんとハードな。百合、というのだっただろうか。女の子と
女の子がくんずほぐれつしている。まぁ男同士じゃないだけ見苦しくはない。けど、多分一年前の私ならきっと赤面して破り捨て、その勢いでこうと絶交していただろう。私もずいぶんと、こうに染められたものだと実感する。
こう色に染まっていく。身も、心も。
昨日の私と今日の私はきっと違っている。日に日に、こうの色が強くなって
いく。
けれど、それが。
「ふふ…」
「ん、どうしたのやまと?」
「なんでもないわ。」
あんまり、嫌じゃなかったりする。
「わー!ちょストップ!早い、早すぎるよやまと!」
こうの部屋に入ったとたん、私は来たことを後悔した。
机の上は紙で半ば占領され、乗り切らなかった紙が床に散らばっている。
時期を考えればあの紙に何が書かれているか見なくてもわかる。何で私が呼ば
れたかも。
「お願い!もう祭典も近いのにひよりん熱出して倒れちゃったんだ!手伝って!」
「…私にどうしろと?」
あの文化祭から半年以上が経って、私はその間こうにいろんなところに連れ
回された。だから何を描いてるかくらいは判るし引きもしない。けれどそれを
手伝えるほどアレでもない。
「ベタ塗りとかトーン貼りとか、やまとにもできるようなのだけでいいからさ。
一生のお願い!」
土下座せんばかりの勢いで食い下がるこう。こうなるともう断る気にはなれ
ない。いや、実を言うとそんな気など最初からなかった。こうが私を頼ってい
るのだ。私が手伝わない理由などどこにもない。
「で、どれ?」
「…え?」
「手伝ってほしいんでしょ。やってあげるからかして。」
「…!
ありがとうやまと!」
私がそういうと顔をまるで太陽のように輝かせて抱きついてくるこう。まぁ
、その、こうのやたら大きい胸が当たってたりして私的にはすごくいいのだが
残念なことに私はここでずっと抱き合っているようなキャラじゃないので、
名残を惜しみながらもそれを表に出さず突き放す。
「わかったから、さっさと終わらせよう。」
「え、あぁ、うん。まずこれのここなんだけど…」
こうがなんだか寂しそうな顔をする。そんな顔をされると抱きしめたくなる
のだがそこは自重。
「わかったわ。」
内心はともかく不機嫌そうに受け取る。本当はもうあきらめてるんだけど
ここで甘い顔をすれば次何を要求されるかわかったもんじゃない。そうなったときどうせ自分は断らないのだ。
「…にしても」
これはまたずいぶんとハードな。百合、というのだっただろうか。女の子と
女の子がくんずほぐれつしている。まぁ男同士じゃないだけ見苦しくはない。けど、多分一年前の私ならきっと赤面して破り捨て、その勢いでこうと絶交していただろう。私もずいぶんと、こうに染められたものだと実感する。
こう色に染まっていく。身も、心も。
昨日の私と今日の私はきっと違っている。日に日に、こうの色が強くなって
いく。
けれど、それが。
「ふふ…」
「ん、どうしたのやまと?」
「なんでもないわ。」
あんまり、嫌じゃなかったりする。