kairakunoza @ ウィキ

妄想と現実の邂逅

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
―――知らない天井だ。
…えっと。まず落ち着こう。ここは何処だろうか。そう思い辺りを見回す。
首を横に向けるとそこには見慣れた桃色のツインテール。
「…小早川さん?」
「あ、気がついたんだね。田村さん」
声を掛けると、予想通りそこにいたのは私の友人、小早川ゆたかであった。

「ってことは…ここ、保健室?」
「うん、そうだよー。田村さん急に倒れるからびっくりしちゃった」
あぁ、そうだ。私は忘れ物を取りに教室に行って…教室に行って…なんで倒れたんだっけ…?
そう考えようとして異変に気がつく。…両手が縛られている!?
「ねぇ、田村さん。田村さんは教室で『何で』倒れたのかなぁ?」
「そ、そんな事より小早川さん!この手のスカーフは何なんスか!?」
鮮明に倒れる前のことが思い出され、同時に岩崎さんがこの場にいない事に気がつく。
「田村さん。私の質問、終わってないよ?」
太陽のような満面の笑み。しかしそこから紡ぎ出される言葉は北風よりも冷たい鋭さを持っていた
「い、岩崎さんは一緒じゃないの?」
「みなみちゃんはね、先に帰ってもらったんだけど…なんでみなみちゃんがいないのが不思議なの?」
「そ、それは…」
教室であんな事してたから…そんなことを口に出せるはずもなく、私は顔を赤くして横を向く。

「…田村さん、単刀直入に聞くよ。『何を見た』の?」
「ね、ねえ小早川さん。天原先生は何処に…」
「先生は今いないよ。ここに居るのは私と田村さんだけだよ…質問に答えて」
二人きり。私の額に嫌な汗が浮かぶ。こ、小早川さん…目が逝っちゃってますヨ?
「こ、小早川さんが…」
「私が?」
喉からしぼりだすようにして私が見たものを正直に答える。
「…小早川さんが、岩崎さんを押し倒しているところを…」
「そっか。やっぱり見ちゃったんだね。田村さん」
「それは…その…あの…」
私は口ごもり、また横を向いた。小早川さんの刺すような目線に耐えられなくなったからだ。

「びっくりした?私達が田村さんの妄想の通りの仲で」
―――!
どうしてそれを―――そう言い掛けて、言葉を飲み込む。しかし小早川さんには伝わってしまったらしい。
「どうしてって…だってほら。このノート」
――私の全身から血の気が引いていくのが実感できた。
小早川さんが手にしていたノート。それは私の忘れ物であり…そして、小早川さんと岩崎さんが絡み合う
濃厚な百合イラスト満載の妄想メモリーである。
「田村さん、すごいね…私とみなみちゃんを見て、いつもこんな事考えてたんだ。」
頬を僅かに上気させながら小早川さんはそのノートをぱらぱらと捲っていく。
やめて。
みないで!
そう思っても言葉は出ない。私は唯、ガクガクと肩を震わせページを捲る小早川さんを見詰める事しか出来なかった。
「『お友達』でこんな妄想してるなんて―田村さん、最低だね。」

―――!!!
―――――最低だね。
言われた。私が最も恐れていた、最も聞きたくなかったその言葉。
既に私の顔は血の気が引いて青白く、肩を震わせて冷や汗をだらだらと流している。
「毎日毎日…私達を見てこんな事考えてたんだ。田村さんてすっごい変態さんだったんだね」
言い返すことなど出来ない。私に出来るのは唯々震えて小早川さんの言葉のナイフに耐えるだけである

「…そんな変態で最低な田村さんには、オシオキが必要だよね――」
そんな小早川さんの台詞とともに私の意識は白くもやが掛かったように遠くなり……

「――さん!田村さん!」
…声が聞こえる。私の良く知ってる、声。
「…小早川さん?」
「あ、気がついたんだね。田村さん」
目の前に居るのは心配そうに私を見下ろしている小早川さんと岩崎さん。
「こ、ここは!?私はいったい…?」
「きゃあっ」
勢い良く体を起こしたので少しめまいがした。うぅ…頭が痛い…。
ここは――教室、かな?…さっきのは…夢?
「…ゆたか、大丈夫…?」
「あはは…田村さん急に起き上がるからびっくりしちゃった」
顔を覗き込んでいた小早川さんが今のでびっくりしたらしく、しりもちをついていた。
「あ…ごめん。つい勢い良く起き上がっちゃって…」
そういって頭の後ろをかく。…手は、縛られてない。
「ううん、大丈夫。それより田村さん、すごい汗だよ」
「…教室に入ってきたと思ったら、急に倒れちゃったから…とりあえず、これ…使って」
岩崎さんがハンカチを差し出してきた。私はそれを受け取り額の汗を拭う。
「ありがとっス。今度洗って返すっスね」
「…気にしなくていい…」
あ、そうだ。それよりも…
「そういえば私、忘れ物取りに来たんだっけ」
「あ、それってもしかして…このノート?」
一冊のノートを差し出し、小早川さんが微笑む。しかし私はそのノートを見て石化した。
それは紛れもなく私、田村ひよりのの忘れ物であり…そして、日常の小早川さんと岩崎さんを
腐女子コンバーターを通して描かれた濃厚な百合イラスト満載の妄想メモリーである。
あれ?
この展開どこかで見たような?
これはもしかして正夢というやつでいまからわたしは小早川さんと岩崎さんに『オシオキ』と称してもみくちゃにされて
リアルにひぎぃでらめぇであっはーんなR-18と言わざるを得ない展開に―!?

「田村さん、どしたの?」
「えっ!い、いやなんでもないっス!」
そういって手早くノートを受け取り鞄にしまう。
「そっか。じゃあ早く帰ろう」
「…うん」
「そだねー」
…この様子なら、ノートの中身は見られて無いっスね。というか小早川さんそんな人じゃないよ。
友達を疑った自分を少し後悔する。それにしてもあんな夢を見るとは、我ながら腐れすぎだ。
(というか私、マゾっ娘だったんスかねぇ…)
夢の内容を思い出す。いつもなら直ぐに忘れてしまうものだが、今回の夢は鮮明に思い出せる。
(夢の中の小早川さんの小悪魔スマイル、良かったっスねぇ…あんな顔で岩崎さんを攻める小早川さんも…って自重しれ私)
夢を思い出し妄想に走る自分を抑制しつつ、歩く。

「あ、そうだ!」
ふと何かを思い出したように、小早川さん
「今度の日曜日、おじさんもお姉ちゃんも出かけちゃうから、うちに遊びに来ない?」
「いいっスよ~」
「…わかった」
そんな他愛も無い会話をしながら、私達はそれぞれ帰途についた。

…そして日曜日、ゆたかの部屋でひよりは二人から全身をくすぐられる事になるのだが、それはまた別のお話。

【続かない】




















コメントフォーム

名前:
コメント:
  • 続いて!!
    -- 九重龍太 (2008-06-13 19:54:14)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー