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ふれんち、キス

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「なんだかんだ言って、かがみ、私のこと好きなんでしょ」
「…そ、それは」
 こなたが、ニヤニヤと、私を見つめてくる。私は自分の気持ちを知られないように、目を逸らす。
 その行為自体が答えになっていることは、わかる、けど。
「ん~好きっていえば? 私は一応ノンケだけど、最後まではともかく、途中までならいいよ。
 ……かがみだから。誰でもっていうわけでは、もちろんないけど」
「――あのね、こなた。本当に、私、そんなんじゃ」
 しどろもどろに否定する。でも、違う、とは言えなかった。
 言えるはずなんてない。

 確かにこなたのことが好きだ。
 いつもこなたのいるクラスに行くのは、つかさと一緒に弁当を食べるためだけど、何よりもこなたを見ていたい。
 出会ったのは、高校一年生のとき。つかさを通して私はこなたと知り合った。
 二年の進級、私は神様にまでお祈りした(つかさのせいで、こなたにからかわれた)けど、私とこなたは別のクラスだった。
 少しだけ、ほんの少しだけ、つかさが羨ましかった。
 わずかに芽生えたどす黒い感情に、軽蔑した。私、最低の人間だ、と。
 双子は離すということは、この学校でなくてもよくあることらしい。
 苗字の問題とか、友達関係を考慮して。でも、私が中学のときは、クラスに同じ苗字の子って、いた。
 それにこなたと別のクラスになることは、違うと思う。
 三年生のクラス替えの日。再びその願いは叶わなかった。その日の夜、手でぬぐった涙は、今でも忘れられない。

――たしかにこなたって、オタクだし、傍若無人だし、どうしようもないいじわるだ。ついでに胸もないし、ちっちゃいし。
 看病に来てくれたと思ったら、私を笑いものにしたり、宿題を写させてという。
 私の容態なんて、まるで放ったらかし。
 でも、私は、そんなこなたと一緒にいるととても楽しい。
 お姉ちゃんでいること、とても大変だった。つかさはもちろん大好きだけど、やっぱり無理していたことってあると思う。
 こなたはだらしないところがあるとはいえ、マイペースだから、いい意味で私に世話を焼かせる気にさせる。

 だから、私は、こなたのことが好き。
 好き? と言われて、嫌いなんていえない。それと同じくらい、好きなんていえない。

「……ばか、こなた」
「その反応は、正直返すのにとまどうんだけど」
 こなたが私を顔色を覗きなら呟く。イタズラな笑みに、困ったような色をのぞかしている。
 その一挙手一投足がたまらなく愛しい。
「その、あの、さ……」
 好き、こなた。ごめん、私、こなたのこと、好き。
――かすれて、言葉にできない。
「ん~お姉さんに言ってみ?」
「……うん、えっとね、その」
「ツンデレもいいけどさ、もう少しはっきりいってくれないと、私もわからないよ」
「うん、ごめん、こなた。でもさ、こうでしか、私、やっぱりできない」

――もう、後には引けない。
 私はそのままこなたに――こなたの可愛い、小さな頭に触れるように体を屈して――強引にこなたの唇に触れた。
 初めての味はレモンの味という。
 この味は、何の味なんだろう。
「ん、んー!!」
 こなたが何かいいたげに手をじたばたさせる。私は、そんな抗議にこなたの唇に舌を入れて返した。
 くちゅ、くちゅ。
 卑猥な擬音が、教室中に響いて木霊した。

 そうだ、ここ、教室だったんだ。
 でももう、どうでもいいや、と私は思った。
 放課後の教室、燃えるような紅の日差しに覆われた教室。誰もいない、背徳の世界だから。
 こなたも観念したのか、手を振るのはやめていた。私とこなたの舌が絡み合い、糸を引いていた。
 こなたの息遣いが、直接肌に伝わる。唇がふさがっているせいもあり、こなたの鼻息が、私の鼻にかかる。

 ん…、あ…、くふ…小さい、小さい、けれども淫猥な喘ぎ声をこなたがもらす。
 私はたまらず、体が火照てしまう。

 数十秒? 数分?
 時間の感覚なんて、とっくにない。
 それでも、名残惜しいように――私にとっては、特に――私とこなたは、繋がっているただひとつの器官を離した。

 紡いだ糸や、唾液が、教室の床にたれた。
 こなたの唾液――甘い汁を、私は咽ながら口で受け取った。


「あのさ、かがみん……」
「……はい」
 火照った体も、冷えてきた頃。
 ……こなたの、視線が痛い。
「あ、あのね、こなた。
 えっと、うんと、そんなんじゃなくてさっ!」
 私はしどろもどろに言い訳をする。
 何か言わないと。ごまかさないと。

 だって、こなたに、嫌われたら、って。
 私、こなたの意見も聞かず、最低だ。
 どうしよう。もう取り返しがつかない、けど。でも、こなたの唇が、息遣いが、色っぽい表情が、忘れられない。
 こんな時でも思い出すだけで、全身が真っ赤になるような甘い経験だった。

「―――かがみんって、ちょっと清潔すぎるんだよ」
「ど、どういう意味よ、それ」
「言葉通りだよ。
 それにしてもかがみがねー、いきなりフレンチキスというか、ディープキスというか。
 ゆい姉さんじゃないけど、お姉さんびっくりだ」
「う……反省、してる」
 ちなみにフレンチキスとは、ほとんどディープキスと同義って、私が読んでいた小説に書いてあった。
 こなたに貸してもらった、ライトノベル。
 こんなところで、こなたと一緒ということが、不思議に嬉しい。こういう状況なのに。
「あのさ、かがみ」
「……うん」

 気まずい沈黙。ふとこなたの言葉を思い出す。
 こなたの途中まで、ってどこまでなんだろう。
 手をつなぐこと? プラトニックなラブ? でも私はもう、それだけじゃ我慢できない。
 どうしても我慢できない時、私はいつもこなたを思い浮かべる。
 最初はなんであんなやつっ! と思ったけれど、抵抗も、違和感もない。もう、こなたじゃないと駄目。
 あの小さい唇、指が私の陰核に触れる。全身を弄ぶようにくりくりと私の大切なところに触れる。優しく――激しく。
 「かがみいやらしいね~、そんな顔をして」とこなたが意地悪そうに言う。
「う、煩いっ、仕方ないじゃないの…っ」
 悪態をつきながら、こなたに身を任せる。
 そんな想像で、絶頂に達するのが、いつものひとりえっち。

「……かがみ。 ――かがみーん?」
 おでこに手をあてられて気づいた。こなたはもう、次に発する言葉を準備していた。
「あ、ごめん。ちょっと、考え事をしていて……」
 あの時のことを、こなたの裸体を、想像していたなんて、とてもいえない。
「それで、何。
 ううん、先にいっておく。ごめんこなた。あんなことして――」
 嫌いになるなら、嫌いになって。
 その言葉を発する前に私の唇は遮られた。
 こなたの唇だった。

 フレンチキスではない、恋人通しがする、ごく普通のキス。
 温かい。ふわりと触れた一面に、全身が反応した。
 こなたの味は、やっぱりレモンの味だと思った。甘酸っぱくって、甘美な愛の交わりだった。

「あのさかがみ。
 もう一度聞くけどさ。私のこと、好き?」
「そ、それは……」
 そんなこと、わかっているでしょ?
 と思ってしまうのは、B型の血なのか、あるいは私が単に素直ではないだけなのか。
「かがみん」
「な、何よ」
「言葉で言わないとわからないことって多いんだよ?――不公平か、それじゃ。
 私は、かがみのこと好きだよ。かがみがどう思っているかわからないけど、おそらくかがみが思っていない意味で」
「でも、ノンケ……というか、こなたは、女の子、好きになれるの?」
「そだねー。
 今はわからないよ。かがみのこと好きというの本当。それが友達して、という意味ではないことも本当。
 かがみが恋人だったら、って思ったこと、私あるし」

 どういうこと?
 こなたは、私のこと、好き、なの?

「私は」
 そこでしどろもどろとしてしまう。気恥ずかしい思いが、その先を告げることを躊躇わせる。
 この一線を越えてしまうと、何もかも壊れてしまって、後には引き返せなくなる。そんな恐怖に囚われる。
 今なら。今なら、ぜんぶ冗談でしたって、ドッキリだったんだよって、笑って済ませられる、かもしれない。
 でもここまで来て、逃げるわけにはいかない。戻れなくたって、もういい。
「私は、うん、その。
―――こなたのこと、好き。大好き、だよ」
「……」
「そこで沈黙しないでよ……っ。
 私、どうしたらいいか、わかんないよ……っ!」
「うん、そのね」
 こなたは少し面食らったのか、ぽりぽりと頬をかく。
 それから言った。

「かがみん。やっと言ったね。もっと、言いたいこと、素直になればいいのに」
「それができたら苦労しないわよ。
―――それに、それがツンデレっていうものじゃないの?
 わ、私は、知らないけどさ」
「その返しはなかなかポイント高いよ~
 うん、確かにツンデレはそうかも。ツンデレ最高!」
「ばか、こなた! 声でかいわよ!」
「――あれだけのことをしていて、何をいまさら。私たち、キスどころかディープキス、したんだよ?」
「そ、それは……悪いとは、思ってる」
「謝らなくていいよ。かがみのことだから、普通のキスが関の山だと思ったけど――私も、嬉しかったから」

 それが、答え?
 こなたの気持ち?

「――はっきり言ってほしいよ。言葉で伝えないとわからないこと、あるから」
「う……かがみん、そうきたか」
「仕返し、よ」
「てゆーか私の気持ち、さっき伝えなかった?」
「もう一度言って。そうじゃないと私、安心できない」
「ツンデレだね~
 わかった、よ」
 こなたは、言葉を切る。
 すうっと、息を吸い込む音がした。

「かがみん、私も大好きだよ。かがみのこと、大好き」

―――ボン。
 たぶん、私の頭の中が爆発した。
「これで満足、かがみ?」
「う、うん、その、かっこよかった」
「女の子に言う台詞かな、それ」
「あ、ごめん」
「ううん、ほめ言葉っていうことはわかっている。百合ゲーなら私が攻めだろうから、それであっているだろうし。
 まあ、先ほどは、私が受けに回ったわけだけど?」
「もう、こなた、しつこい」
「そうそう、その表情だよかがみん。私は、そういったかがみんが大好きなんだから」
「――もう、いじわる。そんなこといったら、怒れないじゃないの」

 私はこなたの長い髪を指ですきながら、愛でた。
 同じように私の髪に、こなたの指先が揺れる。

「かがみ、付き合って」
「……うん」
 私から言うつもりだったのに。言って玉砕して、すっぱりとあきらめようと思っていたのに。
 もう戻れない関係。深く嵌ってしまった陥穽。
 少しの憂鬱と、ノスタルジーに後ろ髪を引かれながら、三度こなたと唇を重ね合わせた。

 甘い、甘い。レモンの味。




















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  • かがみ好きの私としては、
    良作を有り難うとしか言葉
    が無いです! -- チャムチロ (2012-10-14 02:14:39)
  • キモチを抑えきれずに、ちょっと強引な手に出てしまうかがみんが素敵です。 -- 名無しさん (2008-07-23 23:42:57)
  • くあ、このSS最高w照れるかがみん可愛すぎるwww -- 名無しさん (2008-06-09 02:08:50)

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