好きなひと、初めて好きになったひと、初恋。
どうしよう。私、好きなひとができちゃった。
落ち着け、落ち着いて素数を数えるんだ。
いや、落ち着いても変わらない。どうしようもない。もう好きになったから。
後戻りは、できない。
どうしよう。私、好きなひとができちゃった。
落ち着け、落ち着いて素数を数えるんだ。
いや、落ち着いても変わらない。どうしようもない。もう好きになったから。
後戻りは、できない。
甘い経験
山が紅く色めく季節、ツンデレな太陽。
長袖のTシャツ1枚でも暑い日もあれば、タンスからパーカーを引っ張り出さなきゃならない日もある。
もうそんな季節になってしまった。
私たち4人も誰一人欠けることなく、相変わらずの日々を過ごしていた。
前と少し変わったことと言えばつかさと2人で出かけることが増えたくらい。
かがみとよく行ったゲマズに今はつかさの方から誘われるようになった。
「いや、だからね。弾丸を刀で切る、なんてことできないと思うのだよ」
「あんたはまた訳分らんネタを」
「それと同じでね、私が宿題をやってくるってことも無理なのだよ」
「変な言い訳するな」
「でもこなちゃん、日本刀なら切れるんじゃないの?」
私が長いことかけて色んな漫画やアニメを貸してきた成果かな?
最近じゃつかさがつっこみを入れることもある。
自分の世界に誰かが入ってきてくれる。それも親友が、と来ればこんなに嬉しいことはない。
「あれはレヴィが刀に当ててあげているのだよ、つかさ」
「え、そうなの?」
「何がなんだかさっぱり分からん」
そう、相変わらずの時間だ。私の大好きなひと達との、大好きな時間だ。
長袖のTシャツ1枚でも暑い日もあれば、タンスからパーカーを引っ張り出さなきゃならない日もある。
もうそんな季節になってしまった。
私たち4人も誰一人欠けることなく、相変わらずの日々を過ごしていた。
前と少し変わったことと言えばつかさと2人で出かけることが増えたくらい。
かがみとよく行ったゲマズに今はつかさの方から誘われるようになった。
「いや、だからね。弾丸を刀で切る、なんてことできないと思うのだよ」
「あんたはまた訳分らんネタを」
「それと同じでね、私が宿題をやってくるってことも無理なのだよ」
「変な言い訳するな」
「でもこなちゃん、日本刀なら切れるんじゃないの?」
私が長いことかけて色んな漫画やアニメを貸してきた成果かな?
最近じゃつかさがつっこみを入れることもある。
自分の世界に誰かが入ってきてくれる。それも親友が、と来ればこんなに嬉しいことはない。
「あれはレヴィが刀に当ててあげているのだよ、つかさ」
「え、そうなの?」
「何がなんだかさっぱり分からん」
そう、相変わらずの時間だ。私の大好きなひと達との、大好きな時間だ。
「だーかーらー、宿題見せて。私のかがみん」
「アホなこと言うな!!こっちが恥ずかしいだろ」
「うふふ。泉さんとかがみさんは本当に仲が良いですね、羨ましい限りです」
「ちょっとみゆき、やめてよ」
とにかくかがみに宿題を写させてもらえた。
このところ中々厳しくなってきたが、今日は機嫌よく見せてくれた。ツンデレ的な意味で。
「あんたのためにならないでしょ?」
かがみはよくこう言う。テスト前や、3年になってから特に言われるようになった。
そう言われると私はなぜだかちゃんと宿題をしてる。
「まぁまぁ、お礼はちゃんとするからさ」
「あんたがそんなこと言うとなんだか気味悪いわね」
「何を失礼な。いいとこに連れて行ってあげるからさ」
「こなちゃん、どこに行くの?」
「つかさ、それは秘密だよ。ふふふ・・」
「その笑い方が不気味だっての」
「アホなこと言うな!!こっちが恥ずかしいだろ」
「うふふ。泉さんとかがみさんは本当に仲が良いですね、羨ましい限りです」
「ちょっとみゆき、やめてよ」
とにかくかがみに宿題を写させてもらえた。
このところ中々厳しくなってきたが、今日は機嫌よく見せてくれた。ツンデレ的な意味で。
「あんたのためにならないでしょ?」
かがみはよくこう言う。テスト前や、3年になってから特に言われるようになった。
そう言われると私はなぜだかちゃんと宿題をしてる。
「まぁまぁ、お礼はちゃんとするからさ」
「あんたがそんなこと言うとなんだか気味悪いわね」
「何を失礼な。いいとこに連れて行ってあげるからさ」
「こなちゃん、どこに行くの?」
「つかさ、それは秘密だよ。ふふふ・・」
「その笑い方が不気味だっての」
「やほー、かがみん」
「おーっす、こなた。今何してた?」
「漫画読んでた。それよりかがみんや、君は学園祭というものを知っているかい?」
「そりゃ知ってるわよ、ウチの学校でもあったじゃない」
「お前は本物の学園祭を知った方がいい。そうすればもっといい女になれる」
「はぁ?」
「んとね、来週の土曜日に○○大学で学園祭があるんだ」
「大学の学園祭かぁ。ちょっと興味あるわね・・」
「でしょでしょ?じゃあ来週、12時に駅でね」
「ちょ、まだ返事はしてな―」
「えー。どうせ暇なんでしょ?それとも誰かとデートとか?」
「そんなわけないでしょ。でも一応確認くらいさせなさいよね」
「分かった分かった。海の時みたいに誰かにナンパされるかも、とか期待しちゃだめだよ。じゃあねー」
「うるさいっ」
よし、準備完了。こうでもしないと聖地巡礼する機会なんて滅多にない。
私たちの行く大学はアニメの舞台のモデルになった場所で、一度行ってみたかった。
そのアニメは大学生の気ままな生活を描いたもので、こんな風なら大学に行くのもありかな?
と思わせるような素敵な作品だった。
行く前にもう一度見ておこうとDVDを探している最中、かがみからメールが届いた。
「おーっす、こなた。今何してた?」
「漫画読んでた。それよりかがみんや、君は学園祭というものを知っているかい?」
「そりゃ知ってるわよ、ウチの学校でもあったじゃない」
「お前は本物の学園祭を知った方がいい。そうすればもっといい女になれる」
「はぁ?」
「んとね、来週の土曜日に○○大学で学園祭があるんだ」
「大学の学園祭かぁ。ちょっと興味あるわね・・」
「でしょでしょ?じゃあ来週、12時に駅でね」
「ちょ、まだ返事はしてな―」
「えー。どうせ暇なんでしょ?それとも誰かとデートとか?」
「そんなわけないでしょ。でも一応確認くらいさせなさいよね」
「分かった分かった。海の時みたいに誰かにナンパされるかも、とか期待しちゃだめだよ。じゃあねー」
「うるさいっ」
よし、準備完了。こうでもしないと聖地巡礼する機会なんて滅多にない。
私たちの行く大学はアニメの舞台のモデルになった場所で、一度行ってみたかった。
そのアニメは大学生の気ままな生活を描いたもので、こんな風なら大学に行くのもありかな?
と思わせるような素敵な作品だった。
行く前にもう一度見ておこうとDVDを探している最中、かがみからメールが届いた。
来週の土曜、みゆきは行けないみたい。つかさは大丈夫みたいだけど。寝坊すんなよ。
「なんで?」
そんな言葉が出た。その音は壁にはね返って私の所に戻ってきて、そしてどこかへ消えた。
ふたりきりだった。主人公が歩いた並木道、学校の入り口へ続く道。そこをふたりで歩くつもりだった。
そこで笑っている私の姿はもう消えた。
「なんで?」
もう一度、今度は自分の意志で呟いた。
その言葉を何に対しての言ったのか分からないまま3人で学園祭へ行く日が来た。
そんな言葉が出た。その音は壁にはね返って私の所に戻ってきて、そしてどこかへ消えた。
ふたりきりだった。主人公が歩いた並木道、学校の入り口へ続く道。そこをふたりで歩くつもりだった。
そこで笑っている私の姿はもう消えた。
「なんで?」
もう一度、今度は自分の意志で呟いた。
その言葉を何に対しての言ったのか分からないまま3人で学園祭へ行く日が来た。
優しい陽だまりと柔らかい風、こんな日は何て言うんだっけ?私の気持ちとは別にとてもいい天気。
そう、神様は私の機嫌なんて気にしてないんだ。神様の事情なんて気にしても仕方ない。
行くなら全力で楽しまなければ損だ。「切り替えていく」という名監督の言葉を思い出し気合いを入れ、
案の定遅刻しそうになって駅まで全力疾走したせいか、私のドキドキは集合前に高まっていた。
「ふう。何とか間に合ったよ」
「あんたにしてはちゃんと来れたわね」
「この大事なイベントに遅れるわけにはいかないのだよ、オタクとして」
「オタク?今日行くのは学園祭でしょ?」
「あ、いやその。人として遅れてはいけないのだよ。そうでしょ、かがみん?」
「なんでそう必死なのよ。まあとにかく揃ったんだし、早く行きましょ」
そう、神様は私の機嫌なんて気にしてないんだ。神様の事情なんて気にしても仕方ない。
行くなら全力で楽しまなければ損だ。「切り替えていく」という名監督の言葉を思い出し気合いを入れ、
案の定遅刻しそうになって駅まで全力疾走したせいか、私のドキドキは集合前に高まっていた。
「ふう。何とか間に合ったよ」
「あんたにしてはちゃんと来れたわね」
「この大事なイベントに遅れるわけにはいかないのだよ、オタクとして」
「オタク?今日行くのは学園祭でしょ?」
「あ、いやその。人として遅れてはいけないのだよ。そうでしょ、かがみん?」
「なんでそう必死なのよ。まあとにかく揃ったんだし、早く行きましょ」
待ち合わせの駅のホーム。時間ギリギリに着いた私をかがみとつかさは笑顔で出迎えてくれた。
電車に乗り込み少しオシャレしたふたりと並んで座る。
ふたりは誕生日にみゆきさんがあげたイヤリングをつけていた。
「こなちゃん今日髪違うね」
「うん。前ポニーテールにした時、我ながらいいなぁと思ってね。いわゆるひとつの萌え要素ってやつだよ」
「そっか。やっぱり似合ってるよ。ねぇ、お姉ちゃん?」
「似合ってると思うわよ」
「え、かがみがすでにデレモードに?ど、どしたのかがみん」
「なんだそれ。ただ似合ってるって思ったからそう言っただけじゃない。だいたい私はツンデレとかじゃないからな」
そう言って自分の髪をくるくるするかがみはやっぱりツンデレなんだろうな。
電車に乗り込み少しオシャレしたふたりと並んで座る。
ふたりは誕生日にみゆきさんがあげたイヤリングをつけていた。
「こなちゃん今日髪違うね」
「うん。前ポニーテールにした時、我ながらいいなぁと思ってね。いわゆるひとつの萌え要素ってやつだよ」
「そっか。やっぱり似合ってるよ。ねぇ、お姉ちゃん?」
「似合ってると思うわよ」
「え、かがみがすでにデレモードに?ど、どしたのかがみん」
「なんだそれ。ただ似合ってるって思ったからそう言っただけじゃない。だいたい私はツンデレとかじゃないからな」
そう言って自分の髪をくるくるするかがみはやっぱりツンデレなんだろうな。
電車の窓から映る新鮮な景色が流れていく。見たことない建物や川や空がどんどん遠ざかっていく。
知らないものを見るのは何故こんなにも不思議な気持ちがするのだろう、
怖いような気もするし嬉しいような気もする。
隣のつかさが船を漕ぎだしたころ、電車はちょうど目的地についた。特に変わったことは無し。
あ、危うくつかさが乗り過ごすところでしたとさ。
私たちが向かう大学は駅から歩いて10分、一度も来たことはないが
何度もアニメを見返しているせいで道は頭に入っている。
とりあえず改札を写真におさめておく。隣でかがみが何やら言っているが聞こえない。
駅の入口にはけっこうな数のベンチが設置されていて、横には大きな駐輪場。その先に大きなロータリー。
目の前に広がる光景は正にアニメのひとコマを切り取ったもので、目を瞑ると大好きなキャラクターたちが笑っている。
そしてそんな感動は
「大きいだけで何もないところね」
というかがみのかがみによるかがみのためのかがみかがみしたセリフのせいで消えた。
「何してるのこなちゃん、早く行こうよ」
「ちょ、待ってつかさ。今行くから」
知らないものを見るのは何故こんなにも不思議な気持ちがするのだろう、
怖いような気もするし嬉しいような気もする。
隣のつかさが船を漕ぎだしたころ、電車はちょうど目的地についた。特に変わったことは無し。
あ、危うくつかさが乗り過ごすところでしたとさ。
私たちが向かう大学は駅から歩いて10分、一度も来たことはないが
何度もアニメを見返しているせいで道は頭に入っている。
とりあえず改札を写真におさめておく。隣でかがみが何やら言っているが聞こえない。
駅の入口にはけっこうな数のベンチが設置されていて、横には大きな駐輪場。その先に大きなロータリー。
目の前に広がる光景は正にアニメのひとコマを切り取ったもので、目を瞑ると大好きなキャラクターたちが笑っている。
そしてそんな感動は
「大きいだけで何もないところね」
というかがみのかがみによるかがみのためのかがみかがみしたセリフのせいで消えた。
「何してるのこなちゃん、早く行こうよ」
「ちょ、待ってつかさ。今行くから」
大学の正門のへと続く緩やかな上り坂。
両脇には控えめな茶色の樹が並び、初めてここに来た私たちを歓迎するような
そんな優しい街並みと隣で笑う双子のツンデレとドジっ子。
私はとんでもなく幸せな人間じゃあないのかと思えてくる。
今3人でここにいることがどんなに愛しいことなのか。
その大切さが分かるのは大人になって今が「あのころ」になった時分かるんだ。
両脇には控えめな茶色の樹が並び、初めてここに来た私たちを歓迎するような
そんな優しい街並みと隣で笑う双子のツンデレとドジっ子。
私はとんでもなく幸せな人間じゃあないのかと思えてくる。
今3人でここにいることがどんなに愛しいことなのか。
その大切さが分かるのは大人になって今が「あのころ」になった時分かるんだ。
主人公の男の子が仲間と別れる駅の改札、いつもの街並み。
そんなラストシーンをふと思い出したせい。私は泣きそうな顔だったんだと思う。
「こなちゃん大丈夫?顔色悪いよ」
「ん?あ、ダイジョブダイジョブ。さ、あとちょっとだよ。頑張ろ」
大丈夫?と聞かれて無理に明るく振る舞うのは反則かな。私ってけっこうズルいのかも。
「大丈夫そうじゃないわよ。でも確かにあとちょっとだから着いてから休みましょ」
「こなちゃん。無理そうだったら言ってね?」
しきりに私を見つめながら歩いているかがみとつかさ。
「恥ずかしいからやめてよ」が3、「お姫様状態も悪くないな」が5、「かがみ淡い桜色の口紅してるんだ」というのが2。
そんなことが頭の中でぐるぐる巡っているうちに周りが賑やかになってきた。
そんなラストシーンをふと思い出したせい。私は泣きそうな顔だったんだと思う。
「こなちゃん大丈夫?顔色悪いよ」
「ん?あ、ダイジョブダイジョブ。さ、あとちょっとだよ。頑張ろ」
大丈夫?と聞かれて無理に明るく振る舞うのは反則かな。私ってけっこうズルいのかも。
「大丈夫そうじゃないわよ。でも確かにあとちょっとだから着いてから休みましょ」
「こなちゃん。無理そうだったら言ってね?」
しきりに私を見つめながら歩いているかがみとつかさ。
「恥ずかしいからやめてよ」が3、「お姫様状態も悪くないな」が5、「かがみ淡い桜色の口紅してるんだ」というのが2。
そんなことが頭の中でぐるぐる巡っているうちに周りが賑やかになってきた。
正門にかかる手作り感漂うアーチや元気いっぱいにチラシを配るお姉さんたち。
体調が悪かったわけではないので私はすっかり元気になっていたけど、かがみの提案で保健室を探すことにした。
保健室にはアニメみたいな美人な保健医さんはいなかった。ある意味期待を裏切らない。
感じのいい保健医のおばさんと挨拶をしたあと、改めて正門に立って校舎を見渡す。
「うわあ、やっぱ大学って大きいんだね」
「そうだよ。ここは全部で3000人くらい学生がいるからね」
「ウチの高校も大きいけど、規模が違うわね」
「ささ、ぼーっとしてても始まらないよ。まずは食堂行ってみよう」
「急に元気になったな、さっきのはなんだったんだ」
呆れるかがみを尻目にずんずん進んで行く私。聖地巡礼の使命の元、留まることは許されていない。
体調が悪かったわけではないので私はすっかり元気になっていたけど、かがみの提案で保健室を探すことにした。
保健室にはアニメみたいな美人な保健医さんはいなかった。ある意味期待を裏切らない。
感じのいい保健医のおばさんと挨拶をしたあと、改めて正門に立って校舎を見渡す。
「うわあ、やっぱ大学って大きいんだね」
「そうだよ。ここは全部で3000人くらい学生がいるからね」
「ウチの高校も大きいけど、規模が違うわね」
「ささ、ぼーっとしてても始まらないよ。まずは食堂行ってみよう」
「急に元気になったな、さっきのはなんだったんだ」
呆れるかがみを尻目にずんずん進んで行く私。聖地巡礼の使命の元、留まることは許されていない。
食堂のメイド喫茶、その出来は大学生だけあって中々に素晴らしく、確実に上級者の仕業だった。
私の求めていたいつもの大学の風景とは異なる「いかにも」な雰囲気は
抵抗の少ないふたりには少々厳しかったようで、10分しないうちに食堂を出ることになった。
かがみは視線をどこに向けていいか分からず、
つかさに至ってはメイドさんに舌足らずな敬語でおどおどする始末。
「おバルサミコ酢頂いてもよろしいでしょうか?」
という意味不明な飲み物を注文しかけたため私がふたりを連れだした。
「ったく、最近はどこもかしこもコスプレ喫茶ね」
「それだけオタク文化が浸透しているってワケだよ」
「あんたは毎日あんな格好してるからいいけど馴れてない人間にとっては全然くつろげないわよ」
「つかさにはちょっと早かったみたいだね」
「ま、あれだけ緊張するってのも稀でしょうけど」
つかさはまだモジモジしている。
「だってあのお姉さんすっごい丁寧な言葉使いなんだもん、次はもっと普通の所行こうよ、お姉ちゃん」
「そうね・・。じゃあこなた、次はどこ行く?」
「次は図書館だよ」
「もっと色んなお店が出てる所にしましょうよ」
「ダメだよ、先ずは図書館。それから中庭に行って、体育館だよ。それからお店を回るのだよ、それが通ってもんだよ」
「いやに準備がいいわね、まぁちゃんと考えてあるなら行きましょ。時間もあるし」
「何言ってんのかがみん。時間は待ってくれないよ。ぶっちぎりの青春だあ」
「はいはい」
私の求めていたいつもの大学の風景とは異なる「いかにも」な雰囲気は
抵抗の少ないふたりには少々厳しかったようで、10分しないうちに食堂を出ることになった。
かがみは視線をどこに向けていいか分からず、
つかさに至ってはメイドさんに舌足らずな敬語でおどおどする始末。
「おバルサミコ酢頂いてもよろしいでしょうか?」
という意味不明な飲み物を注文しかけたため私がふたりを連れだした。
「ったく、最近はどこもかしこもコスプレ喫茶ね」
「それだけオタク文化が浸透しているってワケだよ」
「あんたは毎日あんな格好してるからいいけど馴れてない人間にとっては全然くつろげないわよ」
「つかさにはちょっと早かったみたいだね」
「ま、あれだけ緊張するってのも稀でしょうけど」
つかさはまだモジモジしている。
「だってあのお姉さんすっごい丁寧な言葉使いなんだもん、次はもっと普通の所行こうよ、お姉ちゃん」
「そうね・・。じゃあこなた、次はどこ行く?」
「次は図書館だよ」
「もっと色んなお店が出てる所にしましょうよ」
「ダメだよ、先ずは図書館。それから中庭に行って、体育館だよ。それからお店を回るのだよ、それが通ってもんだよ」
「いやに準備がいいわね、まぁちゃんと考えてあるなら行きましょ。時間もあるし」
「何言ってんのかがみん。時間は待ってくれないよ。ぶっちぎりの青春だあ」
「はいはい」
だんだんエンジンがかかってきた私とかがみの白いシャツと薄い桃色のネクタイ。
よく響くかき氷の売り子のお姉さんの声と学校主催の野球大会の音。
かがみがシャツの袖を肘まで巻くり、つかさがパーカーを脱いで大分過ぎた頃
回りたい所はほとんど回って自由時間がやってきた。
「さて、そろそろ巡礼も終わりだね。じゃ、つかさどこ行きたい?」
「う~ん、とりあえず休みたいかな。ちょっと疲れちゃった」
「私も疲れちゃったな。そこの教室で休憩にしない?」
よく響くかき氷の売り子のお姉さんの声と学校主催の野球大会の音。
かがみがシャツの袖を肘まで巻くり、つかさがパーカーを脱いで大分過ぎた頃
回りたい所はほとんど回って自由時間がやってきた。
「さて、そろそろ巡礼も終わりだね。じゃ、つかさどこ行きたい?」
「う~ん、とりあえず休みたいかな。ちょっと疲れちゃった」
「私も疲れちゃったな。そこの教室で休憩にしない?」
空き教室には誰もいないようで、たまに入る風が心地よかった。
「はいお姉ちゃん、イチゴ味だよ」
「おお、サンキュウつかさ。気が利くじゃない」
いつの間に買ったのか、つかさの両手にはかき氷が握られていた。
「でも2つしかなかったらこなたが食べれないわよね」
「そーだよつかさ、私の分は?」
「まぁでも散々引きずり回してくれたワケだし、あんたの思惑がやっと分かったわ。珍しくカメラなんか持ってるし」
「お、思惑ってなにかな~、私知らないなぁ」
「アンタ前行ってみたいけどちょっと遠い大学があるって言ってたでしょ。アニメのモデルだって」
「うお・・いつの間に」
「いつの間に。じゃないわよ。大学祭にかこつけて」
「まぁいいじゃん。どーせ暇だったんだし」
「ったく。あんたの趣味で何もない所ばっか引きずり回されたんでしょ?かき氷抜きよ」
「はいお姉ちゃん、イチゴ味だよ」
「おお、サンキュウつかさ。気が利くじゃない」
いつの間に買ったのか、つかさの両手にはかき氷が握られていた。
「でも2つしかなかったらこなたが食べれないわよね」
「そーだよつかさ、私の分は?」
「まぁでも散々引きずり回してくれたワケだし、あんたの思惑がやっと分かったわ。珍しくカメラなんか持ってるし」
「お、思惑ってなにかな~、私知らないなぁ」
「アンタ前行ってみたいけどちょっと遠い大学があるって言ってたでしょ。アニメのモデルだって」
「うお・・いつの間に」
「いつの間に。じゃないわよ。大学祭にかこつけて」
「まぁいいじゃん。どーせ暇だったんだし」
「ったく。あんたの趣味で何もない所ばっか引きずり回されたんでしょ?かき氷抜きよ」
かがみが一気に言い終えると、すっきりした顔で水滴のついたカップをつつき始めた。
本気で怒ってないことは分かってる。だから軽く舌を出して反省したフリをしておいた。
「こ、こなちゃん」
「なーに、つかさ」
一人カップを握っていたつかさが申し訳なさそうに話しかけてきた。
「よかったら一緒に食べない?私食べ終わる前に溶けちゃいそうだし」
「おお、心の友よ」
「もう、つかさ。あんたは人が良すぎるわよ」
「でもこなちゃんも暑そうだし、それに溶けちゃうし」
なんだかんだ言ってかがみの説教が終わるまで手をつけずにいた氷は確かに溶けそうだった。
「でもストロー1本しかないでしょ?」
「ううん大丈夫。2本貰っておいたから」
つかさ、あんたって子はなんて優しくていい子なんだろうね。
健気な瞳でこちらを見つめるつかさに私は思わず
本気で怒ってないことは分かってる。だから軽く舌を出して反省したフリをしておいた。
「こ、こなちゃん」
「なーに、つかさ」
一人カップを握っていたつかさが申し訳なさそうに話しかけてきた。
「よかったら一緒に食べない?私食べ終わる前に溶けちゃいそうだし」
「おお、心の友よ」
「もう、つかさ。あんたは人が良すぎるわよ」
「でもこなちゃんも暑そうだし、それに溶けちゃうし」
なんだかんだ言ってかがみの説教が終わるまで手をつけずにいた氷は確かに溶けそうだった。
「でもストロー1本しかないでしょ?」
「ううん大丈夫。2本貰っておいたから」
つかさ、あんたって子はなんて優しくていい子なんだろうね。
健気な瞳でこちらを見つめるつかさに私は思わず
「グッジョブ」
「ひゃ、ちょっとこなちゃん」
「何してるのよ。危ないでしょ」
「あれえかがみ、やきもちかな?」
「いや、急に飛びかかったら危ないってば」
「えへへ」
「えへへって。まぁいいわ。とにかく気をつけなさいよ、つかさも」
「それよりかき氷溶けちゃうよ、ほらかがみのも」
「うわっ、これは確かにやばいかもね」
ふたりでひとつのかき氷を食べる。
これで相手が女の子じゃなきゃ完璧フラグ立ってんだけどね。
ひとのいない教室で隣同士で交互にかき氷を頬張る。
シャンプーの匂いが分かるほどの距離。汗ばんだあの子の首筋。
ってけっこうありがたいシチュなんだけど、実際は溶けそうな氷に必死でいつもの慌ただしい空気なわけで。
「ほらつかさ、ブルーハワイ垂れてきてるわよ」
「どうしよう、お姉ちゃん」
「ああもうカップ離して、余計に垂れる」
あぁもう、私たちはどこに行っても変わらないなぁ。
髪についた青くて甘い原料不明な液体に手こずっているふたりを見て、妙に嬉しい気分になった。
来る前に感じていた何かは、つかさの髪についたブルーハワイみたいに探しても見つからないくらいどこか遠くへ消えていった。
「ひゃ、ちょっとこなちゃん」
「何してるのよ。危ないでしょ」
「あれえかがみ、やきもちかな?」
「いや、急に飛びかかったら危ないってば」
「えへへ」
「えへへって。まぁいいわ。とにかく気をつけなさいよ、つかさも」
「それよりかき氷溶けちゃうよ、ほらかがみのも」
「うわっ、これは確かにやばいかもね」
ふたりでひとつのかき氷を食べる。
これで相手が女の子じゃなきゃ完璧フラグ立ってんだけどね。
ひとのいない教室で隣同士で交互にかき氷を頬張る。
シャンプーの匂いが分かるほどの距離。汗ばんだあの子の首筋。
ってけっこうありがたいシチュなんだけど、実際は溶けそうな氷に必死でいつもの慌ただしい空気なわけで。
「ほらつかさ、ブルーハワイ垂れてきてるわよ」
「どうしよう、お姉ちゃん」
「ああもうカップ離して、余計に垂れる」
あぁもう、私たちはどこに行っても変わらないなぁ。
髪についた青くて甘い原料不明な液体に手こずっているふたりを見て、妙に嬉しい気分になった。
来る前に感じていた何かは、つかさの髪についたブルーハワイみたいに探しても見つからないくらいどこか遠くへ消えていった。
教室で休憩した私たちはもうひと回りしようと出店の多いサークル棟へと向かった。
意外と涼しくなったのでかがみはシャツの袖を戻し、つかさは腰に巻いていたパーカーを着なおしていた。
あれほど頑張っていた太陽が今はオレンジ色になって、夕焼けが空を包んでいる。
どれほど切ない秋の夕暮れだろうと大学祭の活気が衰えることはなく、むしろどんどん賑やかになっていた。
フラフラと歩きながらかがみを中心にうどん、たこ焼き、たい焼きなどを食べては進み食べては進んでいく。
私がたい焼きを、つかさがわたあめを片手に休憩できそうな階段を見つけ座っていると
遅れて来たかがみは両手にイカ焼きとチュロスを持ち、頭にはなぜか風船を巻いていた。
「あの、さっき持っていたうどんはどこに行ったのですか?かがみ様」
「お姉ちゃんチョコバナナも持ってたよね?あれ、チュロスだったっけ?」
「てかなんで風船あたまに巻きつけてんのさ」
かがみの説明はこうだった。
意外と涼しくなったのでかがみはシャツの袖を戻し、つかさは腰に巻いていたパーカーを着なおしていた。
あれほど頑張っていた太陽が今はオレンジ色になって、夕焼けが空を包んでいる。
どれほど切ない秋の夕暮れだろうと大学祭の活気が衰えることはなく、むしろどんどん賑やかになっていた。
フラフラと歩きながらかがみを中心にうどん、たこ焼き、たい焼きなどを食べては進み食べては進んでいく。
私がたい焼きを、つかさがわたあめを片手に休憩できそうな階段を見つけ座っていると
遅れて来たかがみは両手にイカ焼きとチュロスを持ち、頭にはなぜか風船を巻いていた。
「あの、さっき持っていたうどんはどこに行ったのですか?かがみ様」
「お姉ちゃんチョコバナナも持ってたよね?あれ、チュロスだったっけ?」
「てかなんで風船あたまに巻きつけてんのさ」
かがみの説明はこうだった。
半日大学を歩き回ったあげくかき氷しか食べてないかがみ姫は
うどんや焼きそばやたこ焼きを売っている妖精さんに出会いました。
お腹がすいていたかがみ姫は喜んで妖精さんから食べ物を買いました。
また歩いていると今度はたい焼きやわたあめを売る妖精さんに出会いました。
「買って下さい」と言われたかがみ姫はとても優しいので、さっきと同じように食べ物を買ってあげました。
すると優しい妖精さんはかがみ姫に魔法のティアラをくれました。めでたし、めでたし。
うどんや焼きそばやたこ焼きを売っている妖精さんに出会いました。
お腹がすいていたかがみ姫は喜んで妖精さんから食べ物を買いました。
また歩いていると今度はたい焼きやわたあめを売る妖精さんに出会いました。
「買って下さい」と言われたかがみ姫はとても優しいので、さっきと同じように食べ物を買ってあげました。
すると優しい妖精さんはかがみ姫に魔法のティアラをくれました。めでたし、めでたし。
「ふーん。じゃあベルセルクのパックとクロノクロスのラズリーのコスプレした売り子のお姉さんに連れ回されて
色々食べてたらクジ引きできるくらいにスタンプ押してもらってその変な風船の帽子が当たったってことなんだ」
「ま、まぁ端的に言うとそういうことになるわね」
「妖精のチョイスがなんとも言えないね」
入り口でもらった大学祭のしおりの出店一覧のページにはお店毎にスタンプを押してもらう場所があって
それがビンゴ形式で一列揃うと1回クジが引けるようになっている。
それにしてもかがみさん、あなた2列もビンゴしてるんですが。
「全部食べたわけじゃないのよ。パックの売り子のひとの知り合いのサークルにスタンプ押してもらったりしたし。
すごいいい人だったのよ。ラズリーの人はチョコバナナを落としちゃったら新しいのくれたし」
そんなからくりがあったんだ。用心深いかがみが連れ回された訳はクジ引きの景品目当てだったと。
にしても放課後先生に呼び出された小学生みたいな目で言い訳するのはなぜですか?
色々食べてたらクジ引きできるくらいにスタンプ押してもらってその変な風船の帽子が当たったってことなんだ」
「ま、まぁ端的に言うとそういうことになるわね」
「妖精のチョイスがなんとも言えないね」
入り口でもらった大学祭のしおりの出店一覧のページにはお店毎にスタンプを押してもらう場所があって
それがビンゴ形式で一列揃うと1回クジが引けるようになっている。
それにしてもかがみさん、あなた2列もビンゴしてるんですが。
「全部食べたわけじゃないのよ。パックの売り子のひとの知り合いのサークルにスタンプ押してもらったりしたし。
すごいいい人だったのよ。ラズリーの人はチョコバナナを落としちゃったら新しいのくれたし」
そんなからくりがあったんだ。用心深いかがみが連れ回された訳はクジ引きの景品目当てだったと。
にしても放課後先生に呼び出された小学生みたいな目で言い訳するのはなぜですか?
「かがみん・・」
「お姉ちゃん・・」
「分かってる、分かってるの。皆まで言うな。つかさ、チュロス食べる?」
「じゃ、じゃあもらおうかな」
「かがみってさ、けっこう流されやすいよね。それともクジの景品にダイエット器具でもあったの?」
「うるさいっ。いいから中庭の方行くわよ」
「え~、もうちょっと休憩しようよ」
「6時からダーツバーやるらしいのよ。せっかくクジ引きで券当たったし行ってみましょうよ」
「お姉ちゃん、私ダーツなんてしたことないよ」
「大丈夫よつかさ。ただ矢を投げるだけだから」
「お姉ちゃん・・」
「分かってる、分かってるの。皆まで言うな。つかさ、チュロス食べる?」
「じゃ、じゃあもらおうかな」
「かがみってさ、けっこう流されやすいよね。それともクジの景品にダイエット器具でもあったの?」
「うるさいっ。いいから中庭の方行くわよ」
「え~、もうちょっと休憩しようよ」
「6時からダーツバーやるらしいのよ。せっかくクジ引きで券当たったし行ってみましょうよ」
「お姉ちゃん、私ダーツなんてしたことないよ」
「大丈夫よつかさ。ただ矢を投げるだけだから」
オレンジ色の夕日がほとんど沈んでしまい、手が届かないほど伸びる影。
ダーツバー、と言うか適当にダーツボードが置いてあって好き勝手お酒を飲むためのテーブルが置いてある中庭には
楽しそうに準備する数人とテーブルで座ってピンク色のカクテルを飲むカップル
それと私たち3人以外には誰もいないようだった。
どう見ても準備が遅れているいも関わらず、ビールを飲んで笑いながら作業する彼らの気楽さは
大学祭の雰囲気そのもので、律儀に開始5分前に来た私たちもその光景をただ見守っていた。
「何かいいね、あういうのって」
つかさがそう呟いて、かがみと私は微笑みで返した。今日で一番ゆっくりと流れる時間。
ダーツバー、と言うか適当にダーツボードが置いてあって好き勝手お酒を飲むためのテーブルが置いてある中庭には
楽しそうに準備する数人とテーブルで座ってピンク色のカクテルを飲むカップル
それと私たち3人以外には誰もいないようだった。
どう見ても準備が遅れているいも関わらず、ビールを飲んで笑いながら作業する彼らの気楽さは
大学祭の雰囲気そのもので、律儀に開始5分前に来た私たちもその光景をただ見守っていた。
「何かいいね、あういうのって」
つかさがそう呟いて、かがみと私は微笑みで返した。今日で一番ゆっくりと流れる時間。
少しして準備していた人がテーブルに腰かける私たちに気づいた。
手招きでダーツボードのある教室側のベランダに迎えられた。
「やっとお客さん1号か。よく来てくれたね、誰も来ねーんじゃないかと思ったよ」
陽気なお兄さんがビールか何かの瓶を片手に接客してくれた。かがみと同じ変な風船の帽子を頭に巻いている。
「あの、これクジ引きで当たったんですけど」
「あぁ、ハズレ引いちゃったね。まぁせっかくだしやってってよ。
お姉さんたち可愛いからこの券で好きなだけやっていいよ」
ったく。男ってやつは。誰にでも可愛いって言うタイプだな、この人は。
「でもこの小さい子は大丈夫か?ボードまで届かねーだろ、小学生用の距離でやらしてやれよ」
変な帽子のお兄さんの隣で準備していた人が言った。
影はすっかり伸びていて、私は拳を振りおろしてその人の影を叩いた。
別にイジワルじゃないんだろうけどぶしつけにチビと言われてムっとした。
「私酔っ払いになんか負けませんから」
「ごめん、ごめん。こいつも悪気があるわけじゃないんだって。
ただ妹ちゃんが小さいから気を使っただけ、ごめんね」
「私妹でもないですから」
「え、この子の妹じゃなかったんだ」
そう言ってかがみの肩に手を置くバカ風船男。
「勝負だっ」
気づいた時には叫んでいた。
手招きでダーツボードのある教室側のベランダに迎えられた。
「やっとお客さん1号か。よく来てくれたね、誰も来ねーんじゃないかと思ったよ」
陽気なお兄さんがビールか何かの瓶を片手に接客してくれた。かがみと同じ変な風船の帽子を頭に巻いている。
「あの、これクジ引きで当たったんですけど」
「あぁ、ハズレ引いちゃったね。まぁせっかくだしやってってよ。
お姉さんたち可愛いからこの券で好きなだけやっていいよ」
ったく。男ってやつは。誰にでも可愛いって言うタイプだな、この人は。
「でもこの小さい子は大丈夫か?ボードまで届かねーだろ、小学生用の距離でやらしてやれよ」
変な帽子のお兄さんの隣で準備していた人が言った。
影はすっかり伸びていて、私は拳を振りおろしてその人の影を叩いた。
別にイジワルじゃないんだろうけどぶしつけにチビと言われてムっとした。
「私酔っ払いになんか負けませんから」
「ごめん、ごめん。こいつも悪気があるわけじゃないんだって。
ただ妹ちゃんが小さいから気を使っただけ、ごめんね」
「私妹でもないですから」
「え、この子の妹じゃなかったんだ」
そう言ってかがみの肩に手を置くバカ風船男。
「勝負だっ」
気づいた時には叫んでいた。
「ちょっとアンタやめときなさいよ、このひと達ちょっと酔ってるけどいい人じゃないの」
分かってる。単純にダーツバーを楽しんでるってことも。
エッチな気持ちでかがみの肩に手を置いたわけでもないことも。
頭ではなく心が納得してないんだよ、かがみの兄貴。
「いいから勝負だっ。エロ風船」
「エロ風船って。これバルーンアートだって」
「ごめんなさい、この子背が小さいって言われたの気にして。勝負なんて真に受けないでください」
とっさに止めにかかるかがみ。
「いいって、いいって。でも参ったな、この子完全に勝負する気だよ」
「そうだ、勝負だ」
かがみが近づいてくる。
「ほら、悪気はないんだし引きなさいよ」
「イヤだもん」
「まぁまぁ、元々オレらとダーツで勝負して勝ったらお酒をあげるって段取りだからさ」
「ハッハ、頑張れよ姉ちゃん」
こいつは自分が焚きつけたことが分かっているのか。
分かってる。単純にダーツバーを楽しんでるってことも。
エッチな気持ちでかがみの肩に手を置いたわけでもないことも。
頭ではなく心が納得してないんだよ、かがみの兄貴。
「いいから勝負だっ。エロ風船」
「エロ風船って。これバルーンアートだって」
「ごめんなさい、この子背が小さいって言われたの気にして。勝負なんて真に受けないでください」
とっさに止めにかかるかがみ。
「いいって、いいって。でも参ったな、この子完全に勝負する気だよ」
「そうだ、勝負だ」
かがみが近づいてくる。
「ほら、悪気はないんだし引きなさいよ」
「イヤだもん」
「まぁまぁ、元々オレらとダーツで勝負して勝ったらお酒をあげるって段取りだからさ」
「ハッハ、頑張れよ姉ちゃん」
こいつは自分が焚きつけたことが分かっているのか。
「こなちゃーん、がーんばってねー。こーなー、がん、こーなー、がん」
隣でつかさが意味不明な応援歌を歌ってる、今は無視。とにかくここまで来たら勝たなきゃ。
「つかさ、あんたどうしたの?」
「えー、なんでもないよー。ほらーお姉ちゃんも、こーなー、がん。こーなー、がん」
「ありゃ、この子オレの酒飲んでんじゃん」
「ええ、つかさ。しっかりなさい」
「こーなー、がん。こーなーがん」
「ダメだわ。完全に酔っぱらってるわ」
「そりゃ40度のラムだからね。オレらでも割って飲んでんのに」
これで益々勝たなきゃいけなくなった。酒代は払いたくない。
「ご、ごめんなさい」
「まぁ仕方ないか。この子が勝ったらチャラってことにしよう。」
「ダーツなんてしたことないんです。勝負になりませんって」
「分かってるって、ちゃんとハンデもあるからさ」
ごめんねかがみん。でもそいつには全力で勝たなきゃいけないのだよ。
なぜか分からないけど、そういう時があるのだよ。
隣でつかさが意味不明な応援歌を歌ってる、今は無視。とにかくここまで来たら勝たなきゃ。
「つかさ、あんたどうしたの?」
「えー、なんでもないよー。ほらーお姉ちゃんも、こーなー、がん。こーなー、がん」
「ありゃ、この子オレの酒飲んでんじゃん」
「ええ、つかさ。しっかりなさい」
「こーなー、がん。こーなーがん」
「ダメだわ。完全に酔っぱらってるわ」
「そりゃ40度のラムだからね。オレらでも割って飲んでんのに」
これで益々勝たなきゃいけなくなった。酒代は払いたくない。
「ご、ごめんなさい」
「まぁ仕方ないか。この子が勝ったらチャラってことにしよう。」
「ダーツなんてしたことないんです。勝負になりませんって」
「分かってるって、ちゃんとハンデもあるからさ」
ごめんねかがみん。でもそいつには全力で勝たなきゃいけないのだよ。
なぜか分からないけど、そういう時があるのだよ。
「ハンデはいらない」
「え?」
「ハンデはいりません。その代わり本気で相手してください」
「何言ってるのよこなた、あんたダーツしたことないんでしょ」
「じゃあ本気でいくかな。この風船彼女につけてもらったんだ。エロ風船じゃないってこと、証明しなきゃな」
「お兄さんも変な所でスイッチ入れないでくださいよ」
「じゃあね、クリケットでどう?オレこのゲームが一番得意なんだよね」
「分かりました」
「え?」
「ハンデはいりません。その代わり本気で相手してください」
「何言ってるのよこなた、あんたダーツしたことないんでしょ」
「じゃあ本気でいくかな。この風船彼女につけてもらったんだ。エロ風船じゃないってこと、証明しなきゃな」
「お兄さんも変な所でスイッチ入れないでくださいよ」
「じゃあね、クリケットでどう?オレこのゲームが一番得意なんだよね」
「分かりました」
もうツッコミが追い付かないのだろう、かがみは諦めた様子でつかさと笑っていた。
私にチビだといった男から「人生楽しまなきゃ損だぜ」と言われてふっきれたみたいだ。
この男はドラクエの酒場に出てくる漁師みたいなことばっかり言うので
私の中で「荒くれ者」というあだ名がついていることは知らずに一生を過ごすのだろう。
エロ風船にもらったルールブックでクリケットのルールを確認した。
たくさん点を取れば勝ち、それだけ分かれば充分だ。
今の私に必要なのは技術じゃなくて勇気だ。
隣でルールブックを読むかがみの横顔を見つめ、気持ちを落ち着かせる。
私にチビだといった男から「人生楽しまなきゃ損だぜ」と言われてふっきれたみたいだ。
この男はドラクエの酒場に出てくる漁師みたいなことばっかり言うので
私の中で「荒くれ者」というあだ名がついていることは知らずに一生を過ごすのだろう。
エロ風船にもらったルールブックでクリケットのルールを確認した。
たくさん点を取れば勝ち、それだけ分かれば充分だ。
今の私に必要なのは技術じゃなくて勇気だ。
隣でルールブックを読むかがみの横顔を見つめ、気持ちを落ち着かせる。
「かがみ、その風船私にちょうだい」
「え、別にいいけど邪魔にならない?」
「いいから」
「分かったわよ、はい」
「待って」
「ん?」
「その風船に、キスして」
「おお姉ちゃん、おまじないかあ?」
うるさいよ荒くれ者。おまじないじゃない。かがみとふたりで戦うため、それだけ。
「今日は何言っても無駄ね」
困ったような顔で風船に軽く口づけするかがみ。これでつかさの変な歌が加われば負けるはずがない。
つかさが中々放さないラムを一口だけもらって、エロ風船との勝負が始まった。
「7ラウンドで終わらす」と自信満々だったエロ風船の宣言通り、そう時間はかからずに決着はついた。
初心者の私はボードに当てるのがやっとで、エロ風船は調子良かったらしい。荒くれ者が
「いきなりハットリックかよ」
とか訳のわからないこと言ってたし。2、3回投げる順番が回ってきて、負けるかもって思い始めた矢先だった。
「え、別にいいけど邪魔にならない?」
「いいから」
「分かったわよ、はい」
「待って」
「ん?」
「その風船に、キスして」
「おお姉ちゃん、おまじないかあ?」
うるさいよ荒くれ者。おまじないじゃない。かがみとふたりで戦うため、それだけ。
「今日は何言っても無駄ね」
困ったような顔で風船に軽く口づけするかがみ。これでつかさの変な歌が加われば負けるはずがない。
つかさが中々放さないラムを一口だけもらって、エロ風船との勝負が始まった。
「7ラウンドで終わらす」と自信満々だったエロ風船の宣言通り、そう時間はかからずに決着はついた。
初心者の私はボードに当てるのがやっとで、エロ風船は調子良かったらしい。荒くれ者が
「いきなりハットリックかよ」
とか訳のわからないこと言ってたし。2、3回投げる順番が回ってきて、負けるかもって思い始めた矢先だった。
「え、え?」
急にうろたえ始めるエロ風船。なんか汗が尋常じゃない。
「どうしたんですか?」
その様子を見かねてかがみが尋ねると
「嘘だろ、ひとみちゃん。嘘だろ・・」
どうやら会話が成立してないようで。
「ちょっとお兄さん、次お兄さんの番でしょ。早く投げてよ」
「いや、だってあれ。ひとみ。オレの彼女・・なぁ?」
エロ風船がうろたえて2階の渡り廊下でいちゃつくカップルを指さす。
「さあな。オレが言えるは女ってな分からん生き物だってことだけさ」
荒くれ者が切なそうにタバコの煙を吐き出す。
「いいから投げてっ」
「はい」
急にうろたえ始めるエロ風船。なんか汗が尋常じゃない。
「どうしたんですか?」
その様子を見かねてかがみが尋ねると
「嘘だろ、ひとみちゃん。嘘だろ・・」
どうやら会話が成立してないようで。
「ちょっとお兄さん、次お兄さんの番でしょ。早く投げてよ」
「いや、だってあれ。ひとみ。オレの彼女・・なぁ?」
エロ風船がうろたえて2階の渡り廊下でいちゃつくカップルを指さす。
「さあな。オレが言えるは女ってな分からん生き物だってことだけさ」
荒くれ者が切なそうにタバコの煙を吐き出す。
「いいから投げてっ」
「はい」
それからエロ風船もとい綺麗な女の人にふられた可哀そうなお兄さんのダーツは明後日の方向にしか飛ばず
「姉ちゃん、あんたの勝ちだ」
そう言って荒くれ者がゲームを終わらせるまでの間、つかさの奇妙な応援歌だけが中庭に響いていた。
一応ルールブック片手に得点をカウントしていたかがみによればお兄さんが勝っていたらしい。
後で聞いた話だけどふたりは同じサークルで知り合って
今日もダーツバーの手伝いをしてくれる予定だったという。
そんなふたりの思い出がつまったダーツを投げることは流石に無理だったのだろう。
私との勝負なんて忘れたのだろうか。
隅っこでひとりダーツを組み立てては分解し、また組み立てて下を向いていた。
新しい酒瓶を持ったつかさがトコトコとお兄さんに近づいて、ふたりでお酒を飲み交わしていた。
私はかがみの肩に手を置いたことやチビ呼ばわりされたことはどうでも良くなって
「つかさってお酒強いな」とか考えていた。
「姉ちゃん、あんたの勝ちだ」
そう言って荒くれ者がゲームを終わらせるまでの間、つかさの奇妙な応援歌だけが中庭に響いていた。
一応ルールブック片手に得点をカウントしていたかがみによればお兄さんが勝っていたらしい。
後で聞いた話だけどふたりは同じサークルで知り合って
今日もダーツバーの手伝いをしてくれる予定だったという。
そんなふたりの思い出がつまったダーツを投げることは流石に無理だったのだろう。
私との勝負なんて忘れたのだろうか。
隅っこでひとりダーツを組み立てては分解し、また組み立てて下を向いていた。
新しい酒瓶を持ったつかさがトコトコとお兄さんに近づいて、ふたりでお酒を飲み交わしていた。
私はかがみの肩に手を置いたことやチビ呼ばわりされたことはどうでも良くなって
「つかさってお酒強いな」とか考えていた。
「一体なんだったのよ」
かがみが夕陽の沈んだ空に向かってつぶやく。私が知りたいよ、もう。
「まぁうだうだ言ったって仕方ねーや、姉ちゃんたちも飲みな」
荒くれ者はシェーカーと可愛らしい字で「MENU」と描かれた小さな看板を取り出した。
「あの、私たちまだみせいね―」
「かがみん、ここまで飲んどいて未成年だってバラすのはマズいんじゃないかな?」
かがみの口をふさいで耳打ちする。そう、ここは適当にあしらっておいた方が何かと問題が起きないだろう。
かがみに目で合図を送りとりあえずメニューを見たが、どれを頼んでいいかなんて見当つかない。
かがみも困っていた。
「あの、あんまり詳しくないんですけど飲みやすいのください」
「そうだな、じゃあ適当に作っとくよ。それよりあんたの連れが飲んでるやつは強いから止めた方がいいぜ」
あははと笑いながら酒瓶に口をつけるつかさを見つめるかがみの口は虫が入ってきても閉じなさそうだった。
とにかくつかさからお酒を遠ざけないと。
かがみが夕陽の沈んだ空に向かってつぶやく。私が知りたいよ、もう。
「まぁうだうだ言ったって仕方ねーや、姉ちゃんたちも飲みな」
荒くれ者はシェーカーと可愛らしい字で「MENU」と描かれた小さな看板を取り出した。
「あの、私たちまだみせいね―」
「かがみん、ここまで飲んどいて未成年だってバラすのはマズいんじゃないかな?」
かがみの口をふさいで耳打ちする。そう、ここは適当にあしらっておいた方が何かと問題が起きないだろう。
かがみに目で合図を送りとりあえずメニューを見たが、どれを頼んでいいかなんて見当つかない。
かがみも困っていた。
「あの、あんまり詳しくないんですけど飲みやすいのください」
「そうだな、じゃあ適当に作っとくよ。それよりあんたの連れが飲んでるやつは強いから止めた方がいいぜ」
あははと笑いながら酒瓶に口をつけるつかさを見つめるかがみの口は虫が入ってきても閉じなさそうだった。
とにかくつかさからお酒を遠ざけないと。
「後でまた来ます」
バーテンと化した元荒くれ者にそう告げて、つかさを保健室まで運んだ。
ふられたお兄さんが手伝ってくれたけど、おんぶするお兄さんから離れようと必死でもがくし
酔ってるとは言え自分で歩けて意識もしっかりしてるので説得するのに時間がかかった。
結局眠気が遊びたい気持に勝ったのか、保健室のベッドでおばさんに見てもらっている。
「この子は元々お酒に強いみたいだけど飲むスピードが速すぎるから置いてきなさい」
と言われ、私たちはつかさを保健室に任せておくことにした。
時計を見ると7時を過ぎていた。
隣のかがみが家に電話をかけ、今夜は私の家で泊まることを伝えている。
電車でつかさを連れて帰るのは不可能だと思われ
お父さんに迎えにきてもらってそのまま家に泊まる方がいいだろう。
バーテンと化した元荒くれ者にそう告げて、つかさを保健室まで運んだ。
ふられたお兄さんが手伝ってくれたけど、おんぶするお兄さんから離れようと必死でもがくし
酔ってるとは言え自分で歩けて意識もしっかりしてるので説得するのに時間がかかった。
結局眠気が遊びたい気持に勝ったのか、保健室のベッドでおばさんに見てもらっている。
「この子は元々お酒に強いみたいだけど飲むスピードが速すぎるから置いてきなさい」
と言われ、私たちはつかさを保健室に任せておくことにした。
時計を見ると7時を過ぎていた。
隣のかがみが家に電話をかけ、今夜は私の家で泊まることを伝えている。
電車でつかさを連れて帰るのは不可能だと思われ
お父さんに迎えにきてもらってそのまま家に泊まる方がいいだろう。
お父さんが来るのは8時半。つまりそれまでの1時間ちょっと、かがみと自由時間だ。
外でキャンプファイヤーがあるみたいだけど
「ナンパされっから気をつけなよ」って言われたし色々あってさすがに疲れた。
中庭なら人も少ないしカクテルを作ってくれてるみたいだから戻ることにした。
しかし大学祭って野球大会やったりキャンプファイヤーやったりなんでもありなんだ。
キャンプでもなんでもないのに。
というか妖精のコスプレでラズリーってどうなんだろう、この大学アニメ見て思い描いてたのと全然違う。
違うのは当たり前なんだけど、こういう違い方は予想外だっていうか。建物は同じなのにな。
外でキャンプファイヤーがあるみたいだけど
「ナンパされっから気をつけなよ」って言われたし色々あってさすがに疲れた。
中庭なら人も少ないしカクテルを作ってくれてるみたいだから戻ることにした。
しかし大学祭って野球大会やったりキャンプファイヤーやったりなんでもありなんだ。
キャンプでもなんでもないのに。
というか妖精のコスプレでラズリーってどうなんだろう、この大学アニメ見て思い描いてたのと全然違う。
違うのは当たり前なんだけど、こういう違い方は予想外だっていうか。建物は同じなのにな。
ぽつぽつと人が集まりだしていた中庭でバーテンのお兄さんは自分で作ったお酒を自分で飲みながら
楽しそうにシェーカを振っている。
「あの、一応戻ってきたんですけど」
「おう、ダーツの姉ちゃんたち。今作ってるからちょっと待ってな」
「ねぇこなた。あの人大丈夫かしら?」
「誰のこと?」
「あんたとダーツやった人よ。つかさ運んでくれたし」
「あいつなら心配いらねーって。さっきナンパしてくるってキャンプファイヤーんとこ行っちまったからな」
「はは、そりゃあけっこうな事で」
「立ち直るの早いねぇ。あたる君みたいだ」
「あいつにゃあラムちゃんがあるからな、酒のほうだけどよ」
「何上手いこと言ってんの、おっさん」
「ちょっとこなた。おっさんは失礼でしょ」
「いいって、いいって。おっさんからお二人にプレゼントだ」
バーテンもといおっさんがグラスに入ったカクテルを目の前に置いてくれた。この人とは仲良くなれそうだ。
楽しそうにシェーカを振っている。
「あの、一応戻ってきたんですけど」
「おう、ダーツの姉ちゃんたち。今作ってるからちょっと待ってな」
「ねぇこなた。あの人大丈夫かしら?」
「誰のこと?」
「あんたとダーツやった人よ。つかさ運んでくれたし」
「あいつなら心配いらねーって。さっきナンパしてくるってキャンプファイヤーんとこ行っちまったからな」
「はは、そりゃあけっこうな事で」
「立ち直るの早いねぇ。あたる君みたいだ」
「あいつにゃあラムちゃんがあるからな、酒のほうだけどよ」
「何上手いこと言ってんの、おっさん」
「ちょっとこなた。おっさんは失礼でしょ」
「いいって、いいって。おっさんからお二人にプレゼントだ」
バーテンもといおっさんがグラスに入ったカクテルを目の前に置いてくれた。この人とは仲良くなれそうだ。
「あの、これなんてカクテルなんですか?」
「おっさんスペシャルでしょ?」
「ハッハ。残念ながら違うよ。これはバラライカってカクテル。飲みやすいと思うぜ」
かがみがグラスを持ったり置いたりしている。迷ってるようだ。
「おっさんスペシャルでしょ?」
「ハッハ。残念ながら違うよ。これはバラライカってカクテル。飲みやすいと思うぜ」
かがみがグラスを持ったり置いたりしている。迷ってるようだ。
「ねぇ、ふたり同時に飲もうよ」
「そうね、そっちのがいい気がするわ」
「じゃあ」
「うん」
「大人の世界に迷い込んだツンデレな妖精に乾杯」
何それ?というツッコミを入れる前にグラスに口をつけるかがみ。淡い桜色の口紅がガラスに触れる。
「おいしい」
「確かに。おっさんグッジョブ」
「なんか思ってたより飲みやすいのね、カクテルって」
「そうだろ。今のは大分ウォッカを薄めにしてあるからね」
得意げなおっさんは本当にカクテルを作るのが好きなんだろう。
このひとがやるお店だったら行ってもいいかも。
「そうね、そっちのがいい気がするわ」
「じゃあ」
「うん」
「大人の世界に迷い込んだツンデレな妖精に乾杯」
何それ?というツッコミを入れる前にグラスに口をつけるかがみ。淡い桜色の口紅がガラスに触れる。
「おいしい」
「確かに。おっさんグッジョブ」
「なんか思ってたより飲みやすいのね、カクテルって」
「そうだろ。今のは大分ウォッカを薄めにしてあるからね」
得意げなおっさんは本当にカクテルを作るのが好きなんだろう。
このひとがやるお店だったら行ってもいいかも。
「おっさん、あれ作ってあれ。シティーハンターで出てきたやつ」
「XYZ?」
「そうそれだよ、かがみんも知ってたんだ」
「有名だからね。私もちょっと飲んでみたいかも」
「分かった、作ってやろう。でもな、XYZのZはゼットじゃなくズィーって読むんだぜ」
「そうなんだ。じゃあその、XYZ(ズィー)お願い」
「はいよ」
「XYZ?」
「そうそれだよ、かがみんも知ってたんだ」
「有名だからね。私もちょっと飲んでみたいかも」
「分かった、作ってやろう。でもな、XYZのZはゼットじゃなくズィーって読むんだぜ」
「そうなんだ。じゃあその、XYZ(ズィー)お願い」
「はいよ」
おっさんに作ってもらったXYZを持って、中庭からすぐの2階のベランダのイスに腰かけた。
「あんたよくこんな場所知ってるわね」
「ここはアニメの主人公がよくザボってる場所なのだよ。本当にあるとはね」
「その記憶力をもっと大事なことに使いなさいよ」
「見てかがみん、月が出てる」
「ごまかすな。大体毎回々々宿題見せてやってんのは誰だと思ってるのよ」
「いやあ本当にかがみがいなきゃ生きていけないよ」
「そんなことじゃないの。いい、こなた?」
「う、うん」
どうしよう。これってカラミ酒ってやつ?かがみんや、薄めのバラライカを1杯ですよー。ちょっと早くない?
つかさは強くてもかがみはお酒が全然ダメみたい、もう目が虚ろになってるし。
「だーからね。あんたが宿題やんなきゃためになんないでしょ。そこは分かる?」
あ、でも口調はちょっとつかさに似てるな。さすが双子。
「あんたよくこんな場所知ってるわね」
「ここはアニメの主人公がよくザボってる場所なのだよ。本当にあるとはね」
「その記憶力をもっと大事なことに使いなさいよ」
「見てかがみん、月が出てる」
「ごまかすな。大体毎回々々宿題見せてやってんのは誰だと思ってるのよ」
「いやあ本当にかがみがいなきゃ生きていけないよ」
「そんなことじゃないの。いい、こなた?」
「う、うん」
どうしよう。これってカラミ酒ってやつ?かがみんや、薄めのバラライカを1杯ですよー。ちょっと早くない?
つかさは強くてもかがみはお酒が全然ダメみたい、もう目が虚ろになってるし。
「だーからね。あんたが宿題やんなきゃためになんないでしょ。そこは分かる?」
あ、でも口調はちょっとつかさに似てるな。さすが双子。
「ねー、きーてんのー?」
とりあえず頷いてればいい、そう習った気がする。
「うん、聞いてるよかがみん」
「だーからねー、私はあんたのためにねー、宿題やれって言ってるのよ」
「そうだね」
「そうだねってねー、あんたほんとーに分かってんの?」
「あーはいはい、分かりますよ。かがみさん」
「あんた本当に分かってるの?」
急に真剣な表情。まっすぐに私の瞳を、その奥の方を見つめる。
「いや、分かってるって」
「分かってないわよ」
だから、その目をやめて。その目で見られたらだめ。怖いよ、分からないけど凄く怖いよ。
「だめ。ちゃんと見て、言って。分かってるって」
あなたエスパーですか。でも、向き合わなきゃいけない。じゃないとこの場が収まりそうもない。
とりあえず頷いてればいい、そう習った気がする。
「うん、聞いてるよかがみん」
「だーからねー、私はあんたのためにねー、宿題やれって言ってるのよ」
「そうだね」
「そうだねってねー、あんたほんとーに分かってんの?」
「あーはいはい、分かりますよ。かがみさん」
「あんた本当に分かってるの?」
急に真剣な表情。まっすぐに私の瞳を、その奥の方を見つめる。
「いや、分かってるって」
「分かってないわよ」
だから、その目をやめて。その目で見られたらだめ。怖いよ、分からないけど凄く怖いよ。
「だめ。ちゃんと見て、言って。分かってるって」
あなたエスパーですか。でも、向き合わなきゃいけない。じゃないとこの場が収まりそうもない。
「分かってる」
「なにが?」
「かがみが私のために言ってくれてること。私のこと考えてくれてること」
「なーによ。分かってるんじゃーないの」
多分そう言ったのだろう、多分てのは私の耳がかがみの胸にくっついてよく聞こえなかったからだ。
「もーちゃんと分かってるならさー、はやくいーなさいよー」
あの、さっきからずっと言ってたんですが。てのもかがみには聞こえないな。
私の口もかがみのお腹にくっついてる。
「ほらー何か言いなさいよ」
うん、言ってるんだけどね。そんなにきつく抱きしめられたら声が届かない。
「まーいいわ、分かってるっーって言葉はー、信じよーじゃない」
体を少しだけ離して私の顔を見つめる。さっきより優しい目。
「なーによー、またツンデレー、もえーとか言うつもりー?」
「いや、なに、その。そんなにギュってされるとグラスからこぼれちゃうよ、かがみ。カクテルが」
「じゃあ今から飲みなさいよー」
グラスの残りを一気に飲みほした。大分残ってたせいで少し口からこぼれた。
「なにが?」
「かがみが私のために言ってくれてること。私のこと考えてくれてること」
「なーによ。分かってるんじゃーないの」
多分そう言ったのだろう、多分てのは私の耳がかがみの胸にくっついてよく聞こえなかったからだ。
「もーちゃんと分かってるならさー、はやくいーなさいよー」
あの、さっきからずっと言ってたんですが。てのもかがみには聞こえないな。
私の口もかがみのお腹にくっついてる。
「ほらー何か言いなさいよ」
うん、言ってるんだけどね。そんなにきつく抱きしめられたら声が届かない。
「まーいいわ、分かってるっーって言葉はー、信じよーじゃない」
体を少しだけ離して私の顔を見つめる。さっきより優しい目。
「なーによー、またツンデレー、もえーとか言うつもりー?」
「いや、なに、その。そんなにギュってされるとグラスからこぼれちゃうよ、かがみ。カクテルが」
「じゃあ今から飲みなさいよー」
グラスの残りを一気に飲みほした。大分残ってたせいで少し口からこぼれた。
「もっーたいないでしょー。こーなた」
「うぷっ」
「ふふっ」
う。ちょ、ちょっと待って。口ふさがないで。
「うん」
「ハッ、ハッ。かが、み。カクテ、ルもうのこってないってば・・。あ、あ・・ぷはっ」
「まーだあるでしょ。隠しちゃーだーめ」
「ほん、とにないってば。は・・舌だめだよう。か、かがみい」
「あるじゃないのーもう」
「それ・・唾だ、って。もうやめ・・あ・・」
かがみの舌が私の舌や口や歯を舐める。そんなとこに隠せるわけないって。
唾を飲み込んで、それを私にまた垂らして。
またそれを舐めて、そして私の唇を噛んだ。
「ひゃあ。ん、やめて。かが、もう・・出ないよう」
「うぷっ」
「ふふっ」
う。ちょ、ちょっと待って。口ふさがないで。
「うん」
「ハッ、ハッ。かが、み。カクテ、ルもうのこってないってば・・。あ、あ・・ぷはっ」
「まーだあるでしょ。隠しちゃーだーめ」
「ほん、とにないってば。は・・舌だめだよう。か、かがみい」
「あるじゃないのーもう」
「それ・・唾だ、って。もうやめ・・あ・・」
かがみの舌が私の舌や口や歯を舐める。そんなとこに隠せるわけないって。
唾を飲み込んで、それを私にまた垂らして。
またそれを舐めて、そして私の唇を噛んだ。
「ひゃあ。ん、やめて。かが、もう・・出ないよう」
桜色の口紅と唾とカクテルと色んなものが混ざったのを最後に私の口に流し込んで
かがみは私の膝に突っ伏してしまった。
とりあえず周りに誰もいないか確認する。人気のないベランダだ、やっぱり誰もいない。
どうしていいのか分からない。酔っぱらったかがみに抱きつかれて、キスされて。舌まで吸われてしまった。
今の私はどうしようもないくらい女の子の顔をしてるんだと思う。
息が上がって、どっちを向いて座っていればいいのかすら分からない。
かがみは私の膝に突っ伏してしまった。
とりあえず周りに誰もいないか確認する。人気のないベランダだ、やっぱり誰もいない。
どうしていいのか分からない。酔っぱらったかがみに抱きつかれて、キスされて。舌まで吸われてしまった。
今の私はどうしようもないくらい女の子の顔をしてるんだと思う。
息が上がって、どっちを向いて座っていればいいのかすら分からない。
濡れてる。触らなくても分かる。
本当にエッチな子なんだ。もっとして欲しい。何回「だめ」って言ったの?だめなんかじゃないのに。
こんなの嫌。かがみとキスして、エッチな気持ちになるなんて。やっぱりそんなのダメだよ。
そう言い聞かせる、そうしなきゃ今のままでいられない。失うものが多すぎる、誰も許してくれない。
でも、して欲しい。もっとキスをして欲しい。かがみのキスが欲しい。かがみの唇が、欲しい。
新しいものは怖い。遠くへ行ってしまうから。今が消えてしまうから。私の大好きな今が。
大好き、かがみもつかさもみゆきさんも。そのひとたちが、自分の居場所。
それが手が届かなくなるくらい遠くへ行ってしまう。
かがみに「本当に分かってるの?」
って聞かれた時感じた怖さは、自分の中にある気持ちだったのかもしれない。
無意識にブレーキをかけて、大好きな「今」を失くさないように閉じ込めていた。
かがみを見ると嬉しくなる。かがみが家に来るとドキドキする。
今日来る前に感じていた嫌な気持ちの正体、いまやっと分かったよ。
私はかがみが好き。好きだから好き。私の膝で眠るこのひとが好き。
ポニーテールもメイド服もほめてくれるこのひとが好き。
本当にエッチな子なんだ。もっとして欲しい。何回「だめ」って言ったの?だめなんかじゃないのに。
こんなの嫌。かがみとキスして、エッチな気持ちになるなんて。やっぱりそんなのダメだよ。
そう言い聞かせる、そうしなきゃ今のままでいられない。失うものが多すぎる、誰も許してくれない。
でも、して欲しい。もっとキスをして欲しい。かがみのキスが欲しい。かがみの唇が、欲しい。
新しいものは怖い。遠くへ行ってしまうから。今が消えてしまうから。私の大好きな今が。
大好き、かがみもつかさもみゆきさんも。そのひとたちが、自分の居場所。
それが手が届かなくなるくらい遠くへ行ってしまう。
かがみに「本当に分かってるの?」
って聞かれた時感じた怖さは、自分の中にある気持ちだったのかもしれない。
無意識にブレーキをかけて、大好きな「今」を失くさないように閉じ込めていた。
かがみを見ると嬉しくなる。かがみが家に来るとドキドキする。
今日来る前に感じていた嫌な気持ちの正体、いまやっと分かったよ。
私はかがみが好き。好きだから好き。私の膝で眠るこのひとが好き。
ポニーテールもメイド服もほめてくれるこのひとが好き。
淡い桜色の唇を指でなぞって舐めてみた。
カクテルなのか唾なのか口紅なのかすこし甘かった。
多分恋の味なんだと思う。
未だ突っ伏しているかがみの耳にはきれいなイヤリングが輝く。
それを照らす月だけが私たちのことを見ていた。
カクテルなのか唾なのか口紅なのかすこし甘かった。
多分恋の味なんだと思う。
未だ突っ伏しているかがみの耳にはきれいなイヤリングが輝く。
それを照らす月だけが私たちのことを見ていた。
コメントフォーム
- この話は続きがすごい読みたいなぁ。どうなっていくんだろう? -- 名無しさん (2009-05-23 01:04:24)
- 何かこの作品大好きで定期的に見に来てしまう -- 名無しさん (2008-09-01 09:45:00)
- 酔っぱらいかがみwwwwww -- 名無しさん (2008-08-25 23:35:42)
- ↓レイープされます -- 名無しさん (2008-08-11 22:38:08)
- 出て来るキャラが楽しそう
でもつかさはどうなっちゃうんだろう -- 名無しさん (2008-07-04 20:16:40) - 修正しておきました -- 26-468 (2008-07-02 01:40:57)
- 字を詰めすぎて読みずらい。
一段空けてほしい。 -- 名無しさん (2008-06-30 22:16:32)