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二輪の花 第3話

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【第3話:Feel】

 午後5時。
 鷹宮神社から鷹宮駅までは徒歩で15分ほどだ。鳥居を出、昭和の面影をのこす商店街をゆっくりと下る。
 ちょっとした買い物であれば駅から神社へのくだりで十分に事足りる。
 鷹宮駅から東武伊勢崎線で久喜、区間は一駅。
――電車を降りると熱気がつきつける。
 少しは休めばいいのにと、照りつける西日に目を覆いながらかがみは改札を出た。

 10分ほど歩く。
 忌まわしげなアパートが見えてきた。

「……ごめん、こなた」
 誰もいない住宅地に、かがみは言葉を刻む。
 せめてものの罪滅ぼしに。



「どうして、そんな顔をするんです?」
 小早川ゆたかは、きっとにらみつけるかがみを宥めまわしながら言う。
「そんなに、気持ちよかったんですか?」
 手にもったバイブレーターを見てくすりと笑った。
 さんざんかがみのヴァギナにあてられたそれは湿って、ねっとりとしている。そこから漏れた汁をゆたかは舌でなめる。

「…」
「何か言ってください」
 ゆたかは不満げにかがみを見て、それからキスをする。逃げるかがみの舌を執拗に取らえ、絡め合わせる。
 かがみの口のなかに侵入したゆたかの舌が歯、歯茎からほっぺの辺りまでなでまわす。
「気持ち、いいんでしょ?」
 ディープキスから開放されたかがみは顔を真っ赤にして、とろんとした顔になる。

「―――そんなわけ、ないでしょ」
「だったら、やめましょうか? 別に私は拘束とか、そんなことをしたいわけでないです。現にかがみ先輩は、自分から私の家にきたじゃないですか」
 かがみは何も言わず「ふんっ」とそっぽを向いた。
「こなたお姉ちゃんの言う、『ツンデレ』なんですか?」
 かがみはにらむ。秘書からだらしなく流れている愛液など気にしなかった。

「あんたがこなたの名前なんていわないで」
「――こなたお姉ちゃんこと、好きなんですか?」
「別に、あんたには関係ないでしょ」
「関係あります。私はかがみ先輩のことが好きです。好きで好きでしかたありません。だからこうして私はかがみ先輩が幸せになるように、イカしてあげているんです」
「これが私のため? そうなら精神病院いったほうがいいわよ。もともと小学生のがきだと思ってたけど、本当に頭まで幼稚なのね。高校生? 小学生の間違いじゃない?」

 ふ、とゆたかは余裕の笑みを見せる。
 それからよく成長したかがみの胸を思いっきりもみほぐす。「ああ…くふっ」とかがみは甘い声を出す。
 そのよがる声にゆたかは満足した。

「それに、身長のことを言うなら、こなたお姉ちゃんだって一緒だと思います」
「あんたなんかと! あんたなんかと一緒にしないでよ! こなたはあんたなんかと違う!
 私のことを大事にしてくれる! あんたはただの最低の女よ!」
 思わぬ癇癪を起こしたかがみに、ゆたかはたじろぐ。
――わかっていることだった。
 かがみ先輩はこなたお姉ちゃんのことが好き――そう、私じゃなくて。
 そんなことはゆたかにもとっくに気づいていた。だからこそ、こなたのことが憎らしくて、かがみのことが愛しい。

「すぐに私のことが好きで好きでたまらなくなりますよ」
「別に、あんたが好きなことをすればいいじゃない。私はあんたには逆らわないわ。それであんたのつまらない欲望を満たせば!?」
 ゆたかは無言でかがみを下腹部から割れ目までなめる。
「そう思うなら、私のものになってくださいよ。私だって、できればかがみ先輩の気持ちを振り向かせたいんです。
 あれは最後の手段――そう、かがみ先輩が私に振り向いてくれる限りはなんでもありません」

「悪いけど、ごめんだわ」
 かがみは精一杯強気で自身を鼓舞しようとした。たとえ陵辱されようとも、罵られようとも。こんな奴を嘘でも好きになるくらいなら、私は名誉を選ぶ。
「いつまでいってられるんでしょうね」
 そういってゆたかは指を割れ目のなかに指を這わす。開かれた割れ目を弄ぶよう指先が移動する。クリトリスに触れたとき「ああ!」とたまらずかがみは喘ぐ。

「気持ちいいんでしょう?」
 片手で乳房を揉み解しながら、よがるかがみをさらに攻め立てる。ツインテールが激しく揺れる。
 割れ目に入った手がより早く動く。その動きにあわせてかがみの肢体がぴくんぴくんっと、ゆれる。
 もうすぐイク。かがみの色っぽい艶やかな反応をうっとりと見つめる。
 ゆたかは垂直に勃った乳首を押したり倒す。それから慣れた手つきで乳輪をれろれろと撫でる。
「あ、ああ、ああっ……っ!」
 ひくひくとかがみの体が揺れる。へとへととベッドに倒れこみ目を手で覆う。ビクンビクンとイった直後の反動が収まる。
 (どんなことをされても、私の気持ちまで奪えないんだから……っ!)
 屈辱と、怒りが混ざった涙のなかに、かがみは何度も何度も心の中で繰り返した。


「かがみんがこない」
 オタクの聖地秋葉原。上野から山手線で二駅というご存知全オタク界の理想郷である。
 電気街駅をでると一般人と、ついでに田舎者が圧倒されるようなビルが立ち並ぶ。
 駅構内にアダルトゲームのポスターが節操もなく貼られているというのも珍しい。
 電気街駅を出ると、でかでかと巨大「時を翔ける男女」をオマージュしたらきすた看板を掲げたGAMERSが聳え立つ。
 東京の密集地帯である影響からか店舗の敷地面積が小さく、縦に長い。階段は意外と段差が厳しいので注意が必要だ。
 「8時に私の勤めているメイドカフェにきてね(はあと)」とメールを出したのに反応がない。
 反応がないということは了承だと都合の良い解釈をしてこなたは故郷に制服のまま向かった。

 この町に来ると体がうずく。あの空気! 美少女ゲームのポスター! wktkが止まらないね!
 秋葉原といえばメイドでも有名だ。秋葉原駅からでるとメイド服姿に扮した女性が接客にいそしんでいる。
 こなたはその全てから広告をもらった。
「ぜひともいらしゃってくださいね、ご主人様!」
 (いいねえご主人様!)
 久しぶりに訪れた町にこなたは感慨を感じながら、いろいろな店を見て回る。もう何度も訪れたのに秋葉原には何かがある。
 そんな気がしてこなたはついついいろいろな店に出入りする。
 時刻はまだ6時だ。待ち合わせは勤めているコスプレ喫茶であるから、道順なんて目を粒っても歩ける自信がある。
 そりゃもう楽しまないとね♪とこなたは片っ端からアニメショップやらエロゲーショップに嬉々として足を運んだ。

「いらっしゃいませ~ あ、泉さん」
「はろー」
 JR秋葉原駅から中央通りに出る。そこから右折すると中古ゲームでもおなじみのソフマップ秋葉原店。
 こなたは趣味にお金を費やすことは厭わないというかむしろ時々は「売りあげに貢献したね!」なんて思うタイプなのであまり中古のものは利用しない。
 当たり前だが初回限定品まで付属することを期待できないからだ。
 そふまっぷからさらに直進するとアニメイトに隣接しているとらのあなにでる。
 こなたは知り合いがいるかもと思い(もういくつもの店に訪れた後だが)とらのあなに意気揚々として入っていった。

「ひなたさん、今日もバイト?」
「ええ、家で妹がひもじい思いをしていいますから」
「ひなたさんが、自重すればいいだけなんだけどね」
「何いっているの泉さん。萌えは文化ですよぅ! エネルギーです! 栄養です! 萌えながかったら泉さんも生きていけないでしょう」
「それは、確かに…」
 論理的には破綻しきっているのだが、同じオタク仲間としてこなたは頷かざるを得なかった。
 まあ他人であるし、妹のひかげの安否は気になる所だが、口をだすことではない。
「まあそれはともかくとして…ひなたさんはあのアニメどう思う?」
「あれですか? そうですね~私的には及第点ですね。ああ、DVDもありますので是非!、ですよぅ」
「む、商売根性はさすがだね」
「店員ですから。まあそれはともかくにしても、ゆっくりしていってくださいね」
 はいはい~と、こなたは新作ゲームやら限定品のチェックを始めた。

「むう…8時半になった」
 一通り見て周り、7時半にはバイト先のメイド喫茶に入った。優待券を提示し、奥に案内してもらう。
 バイト先仲間から「いらっしゃいませ、ご主人様」といわれるのは少し恥ずかしい。
 だがそれがいいと定番の文句を頭の中で垂れる。小声で「今日は客?」と話しかけられたのでこなたは「ええ」といった。
 かがみは生真面目だから、8時ちょっと前にはきているかもしれないと思い、早めに待ち合わせ場所に着いた。
 遅刻癖のあるこなたとはいえ、自分で誘っておきながら遅刻するわけないだろう。
 それに定番の「ごめん、待った?」「ううん、私も今北産業♪」なんていうイベントも経験してみたい。
 普段は接客する側なのだが、こうして客として入っても新鮮だ。可愛い子がメイドを着ているだけで癒されるし、なんといっても「ご主人様」の響きが好きだ。

 コーヒーとケーキを頼む。
 そうして、待つこと1時間。待ち合わせの8時はとっくに過ぎていた。
 8時になるころには不安に駆られたが、それでも「まあ、かがみんでも遅刻くらいはするよね」と思い、待ち続けた。
 クーラーが良く効いた店内は快適だが、そわそわと待ち人が訪れるのを待ち続けるのは思った以上に重労働だった。
 メイドさんの「いらっしゃいませ、ご主人様~」と声が聞こえるたびに入り口を振り向く。そしてすぐに落胆して顔を落とす。
「待つってこんな気持ちなのか」
 普段から人を待たす側であるこなたは改めてうなだれる。考えたくはないが、来るとはかぎらないことはわかっていた。
 いつ来るかも、本当に来るかもわからないのに待ち続ける。苦痛であることこのうえない。
 もう少し、私も時間に厳しくなろうかな、いつもこんな思いをさせていたのかと反省するほどだった。

 たまらずこなたはコーヒーを追加注文する。携帯を持ってくればよかったのにいつものように忘れてしまった。
 もしかしたら遅れたとか、風邪引いたとか――今日一緒に帰ったのだからありえないのだが――メールがきていたのかもしれない。
 3杯もコーヒーを飲めばでるものもでる。せっかくだから、いつものバイト用の赤い扉に入り、バイト仲間に顔を出す。

 店長に今日もお願いできないかなと懇願されたが、こなたは丁重に断った。
 それから店員用お手洗いで用を足す。
 こうしている間にかがみが来て、私がいないものだと勘違いしないかとこなたは不安になる。
 誘ったのは私だから多少の遅刻ぐらいは多めに見るのに、かがみのことだから「怒って帰った」と勘違いするだろう、とおろしたパンツを意味もなく眺めながら考えた。
 便座に座っている間がもどかしい。
 かといってひっかけるようなみっともない真似はしたくないので落ち着け私と思いながら、用を足した。

 戻っても、かがみはいなかった。




「まさか…タイミング悪かったのかな」
 嫌な予感が頭をかすめる。それを全力で振り解く。かがみが約束をすっぽかすなんてありえない。
 どんなに嫌な顔をしても、どんなに難儀なことでも私が精一杯頼めば快く引き受けてくれる。それがかがみ。
 そして私はそんなかがみが好きだ。
 ついついかがみに頼ってしまい、だらしないとは思うけど、やめられない。

 宿題写させてとはいえば口で「嫌」という。
 私が「お願いかがみん! 一生のお願い!」と抱きつくと、顔を赤くして「それ何度目の一生だよ!」とごまかすように大声で否定する。
 その後精一杯怒った真似をして、悪態をつきながら、
「――仕方ないわね。今度は自分でやりなさいよ」
 最後には丁寧にまとめられた宿題を見せてくれる。
「かがみん大好き!」
「馬鹿、声がでかいし変なこと言うな!」
 とうとう顔を耳の先っぽまで真っ赤にしてあさっての方向を向くかがみ。

 そのかがみが私にメールも返さずに約束を放棄するなんて、おかしい。おかしすぎる。
――おかしいといえば、今日は最初から可笑しかった。
 つかさの欠席。みゆきさんがゆーちゃんの引越しを知らなかったこと。
 私はもちろん、ゆーちゃんが私の家からでていったんだから知っていたけど、みなみちゃんならみゆきさんに話しているはずなのに。
 聞く限りでは家族ぐるみでお付き合いをしているらしい。
 会話をする機会は十二分にあったはずなのだ。

「いらっしゃいませー、ご主人様」
 もはや条件反射のように私は振り向く。そして条件反射のように落胆する。
 こんなんじゃお目当てのかがみが来ても同じような反応を体が間違えてするかもしれない。
 携帯を持ってきていないし、普段からmp3プレーヤーなど持ち合わせていない。
 そうでなくても店内から聞きなれたアニメソングが流れているが、イヤフォンを通して聞くのとでは遮断率が違い、音楽に集中することもできない。

 れっつごーふぃーばーたいむ☆
 らぶりーえんじぇる!

 大好きだったはずの電波ソングが耳障りに聞こえる。聞こえるのだが、耳を傾けてしまうのがこなたクオリティ。それは直せないし、直す気もない。てゆーか萌えるなこの曲。
 いくらバイト先の店で考慮してもらえるとはいえ、長居はできないし閉店時間の問題もある。
 私は祈るような気持ちで大好きな人を待ち続けていた。
 きっと来る。だってかがみだから。




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