こなたが切り出した話題に対し、かがみは経験者だと答える。
「じゃあ、あんたもやっちゃったわけ?」
かがみが聞く。
「うん」
こなたは肯く。こちらはつい昨日、初めて経験したという。
「いやー、すごく痛かったよ」
「痛いよねー」
かがみは自分の時を思い出しながら肯く。
「そんなに痛いの?」
未経験のつかさが恐れおののく。
「しばらく顔を近付けられなくてさ」
「あー、そうなるそうなる。思わず背けちゃうんだよね」
「次が怖いなー」
「二回やるとトラウマになるわよ、あれ」
「……かがみは二回やったの?」
「え、ええ……」
「ぷぷ……」
「わ、笑うな! あんただって昨日やったんでしょ」
「だって、一度ならず二度でしょ。意外とドジッ娘だね~」
「ドジとかそういうんじゃなくて、運が悪いだけよ。運がいい人は一生やらないし」
「そうだね~。でも、つかさは天然だし」
「そういうのは関係ないと思うが……」
「運が悪そうだし」
「そうね……」
「幸薄そうだし」
「そうそう……って、こら! 例えそう思ってても、そういう事は言うもんじゃないだろ」
「ノリツッコミで説得力0のかがみ萌え」
「萌えるな! それに、出来てないでしょ」
そこへみゆきがやってきた。
「おはようございま―」
「うわ~ん、ゆきちゃ~ん。こなちゃんが、お姉ちゃんが……」
つかさは泣きながら、みゆきの方へ飛んでいく。
「あらあら」
抱きつかれたみゆきは、子犬でもあやすように頭をなでなで、顎の下をなでなで、耳の後ろをなでなで。ちょっと可愛がりすぎではなかろうかというくらい可愛がった。落ち着いたつかさがくぅ~んと鼻を鳴らす辺りも、実によく躾けられているというかなんというか……。
「で、何を話されていたのですか?」
なかなか離れないつかさをしっかと抱き締め……否、しっかと抱き締めているからこそ離れられないつかさが、息が出来ずにジタバタしだしたけど、それでもなお抱き締めながらみゆきは聞く。つかさの運命やいかに?
「みゆきには一生理解できない痛み、ってとこかしらね」
電撃を発するみゆきの視線を真っ向から受け止め、かがみが答える。
「聞き捨てなりませんね。やってみなければ分からないじゃないですか」
眼鏡レンズの反射光の奥で、みゆきの瞳が知性と若干の狂気を孕む。
「そんなことより、つかさを助けてあげた方がいいよ……その、色んな意味で」
挑発的にこなたが忠告するが、最後はみゆきの胸で溺れかけているつかさを見て緊張の糸が解れてしまった。
「ぷはーっ」
ようやく男の夢の園……ではない、みゆきの胸から脱したつかさ。なお吐息が絡みそうな至近距離にあってつかさを離さないみゆきの顔に、目を潤ませながら助けを請う。
「ゆきちゃん、助けてほしいの」
「もちろん、お助けします」
凛々しいな……。
傍観するこなたとかがみがそう思うほど、みゆきは決然と言った。
「じゃあ後で眼鏡貸して」
「…………はい?」
「足の爪が伸びてきちゃったの」
「……??」
それは、みゆきの知性を以ってしてもにわかには理解しかねる、奇妙な頼みだった。
「じゃあ、あんたもやっちゃったわけ?」
かがみが聞く。
「うん」
こなたは肯く。こちらはつい昨日、初めて経験したという。
「いやー、すごく痛かったよ」
「痛いよねー」
かがみは自分の時を思い出しながら肯く。
「そんなに痛いの?」
未経験のつかさが恐れおののく。
「しばらく顔を近付けられなくてさ」
「あー、そうなるそうなる。思わず背けちゃうんだよね」
「次が怖いなー」
「二回やるとトラウマになるわよ、あれ」
「……かがみは二回やったの?」
「え、ええ……」
「ぷぷ……」
「わ、笑うな! あんただって昨日やったんでしょ」
「だって、一度ならず二度でしょ。意外とドジッ娘だね~」
「ドジとかそういうんじゃなくて、運が悪いだけよ。運がいい人は一生やらないし」
「そうだね~。でも、つかさは天然だし」
「そういうのは関係ないと思うが……」
「運が悪そうだし」
「そうね……」
「幸薄そうだし」
「そうそう……って、こら! 例えそう思ってても、そういう事は言うもんじゃないだろ」
「ノリツッコミで説得力0のかがみ萌え」
「萌えるな! それに、出来てないでしょ」
そこへみゆきがやってきた。
「おはようございま―」
「うわ~ん、ゆきちゃ~ん。こなちゃんが、お姉ちゃんが……」
つかさは泣きながら、みゆきの方へ飛んでいく。
「あらあら」
抱きつかれたみゆきは、子犬でもあやすように頭をなでなで、顎の下をなでなで、耳の後ろをなでなで。ちょっと可愛がりすぎではなかろうかというくらい可愛がった。落ち着いたつかさがくぅ~んと鼻を鳴らす辺りも、実によく躾けられているというかなんというか……。
「で、何を話されていたのですか?」
なかなか離れないつかさをしっかと抱き締め……否、しっかと抱き締めているからこそ離れられないつかさが、息が出来ずにジタバタしだしたけど、それでもなお抱き締めながらみゆきは聞く。つかさの運命やいかに?
「みゆきには一生理解できない痛み、ってとこかしらね」
電撃を発するみゆきの視線を真っ向から受け止め、かがみが答える。
「聞き捨てなりませんね。やってみなければ分からないじゃないですか」
眼鏡レンズの反射光の奥で、みゆきの瞳が知性と若干の狂気を孕む。
「そんなことより、つかさを助けてあげた方がいいよ……その、色んな意味で」
挑発的にこなたが忠告するが、最後はみゆきの胸で溺れかけているつかさを見て緊張の糸が解れてしまった。
「ぷはーっ」
ようやく男の夢の園……ではない、みゆきの胸から脱したつかさ。なお吐息が絡みそうな至近距離にあってつかさを離さないみゆきの顔に、目を潤ませながら助けを請う。
「ゆきちゃん、助けてほしいの」
「もちろん、お助けします」
凛々しいな……。
傍観するこなたとかがみがそう思うほど、みゆきは決然と言った。
「じゃあ後で眼鏡貸して」
「…………はい?」
「足の爪が伸びてきちゃったの」
「……??」
それは、みゆきの知性を以ってしてもにわかには理解しかねる、奇妙な頼みだった。
「うわ~、クラクラするよ~」
みゆきから借りた眼鏡を装備したつかさが、爪切りを手にした左手を必死に、まさに必死としか言いようのない形相で靴下を脱いだ足に持っていこうとしている。
「つかささん、ファイトです!」
傍らではみゆきが固唾を呑んで見守るが、なにぶん眼鏡を取られてしまったため、応援する方向と位置が微妙にずれている。感覚的には、色彩の洪水の中で溺れているといったところである。
ここは屋上、時は昼休み。
弁当を早めに食べて切り上げた四人は、まず保健室に爪切りを借りに行った。天原先生は快く貸してくれただけでなく、消毒までしてくれた。居合わせた桜庭先生はそのわずかの間に、三回もプロポーズをした(無論天原先生に)。そして人気のない屋上へと移動し、つかさが足の爪切りに挑んだというわけなのだが……。
「それで、どんなお話をなさってたのですか?」
「うん、昨日私が足の爪を切ってたら、切った爪が目を直撃してすごく痛かったって話」
海苔目・猫口、面白いものを見る時の顔でつかさから目を離さないこなたが答える。
「それと、ツンデレだけじゃ物足りないかがみが、ドジッ娘属性を獲得するため、過去にそれを二回やってたって話、かな」
「余計なことは言わんでいい」
同じくつかさに釘付けになりながら、かがみが小突く。
「確かに、眼鏡をしている私には無縁ですね」
これにはみゆきも納得するよりない。そして生まれてほぼ初めて、眼鏡でよかったと思った。
「そして、それを聞いたつかさが怯えて、眼鏡なしじゃ足の爪を切れなくなっちゃったってとこね」
「いやー、それだけじゃないと見るね」
こなたが自信満々に言う。
「どういうことよ?」
かがみとみゆきは、こなたの方を見る。
「かがみのことだから、爪が当たった瞬間、仰け反った拍子に後頭部をどっかにぶつけちゃったんじゃないかな? ドジッ娘属性獲得のために」
「………………そんなことするわけないでしょ」
長い沈黙の後、かがみが答えた。心なしか、機械的かつ棒読みで。
……したんだ。
……なさいましたね。
「そ、そんなことよりみゆき、どうするつもり」
みゆきからは見えないが、かがみは意地の悪い表情になって切り出す。
「何をですか?」
「つかさよ。あの子、もう眼鏡なしじゃもう足の爪を切れないわよ」
「はあ……」
「ウチには眼鏡をしてる人いないの。似合わない伊達眼鏡を勧める?」
「意外と萌えるかもよ」
こなたが言う。
「うっさい。それとも運動音痴のあの子に、スキーや水泳のゴーグルを勧める?」
「それは気が引けますね」
「じゃあ、つかさが足の爪を切るたびに眼鏡を貸してあげるのね」
「喜んで!」
「即答かよ」
みゆきは義姉(!)の親切な申し出ににこにこしながら、悪戦苦闘中のつかさの頭をなでようとする。
「わあ!」
急に撫でられて驚いたつかさは、手元が狂って深爪をしてしまった。
みゆきから借りた眼鏡を装備したつかさが、爪切りを手にした左手を必死に、まさに必死としか言いようのない形相で靴下を脱いだ足に持っていこうとしている。
「つかささん、ファイトです!」
傍らではみゆきが固唾を呑んで見守るが、なにぶん眼鏡を取られてしまったため、応援する方向と位置が微妙にずれている。感覚的には、色彩の洪水の中で溺れているといったところである。
ここは屋上、時は昼休み。
弁当を早めに食べて切り上げた四人は、まず保健室に爪切りを借りに行った。天原先生は快く貸してくれただけでなく、消毒までしてくれた。居合わせた桜庭先生はそのわずかの間に、三回もプロポーズをした(無論天原先生に)。そして人気のない屋上へと移動し、つかさが足の爪切りに挑んだというわけなのだが……。
「それで、どんなお話をなさってたのですか?」
「うん、昨日私が足の爪を切ってたら、切った爪が目を直撃してすごく痛かったって話」
海苔目・猫口、面白いものを見る時の顔でつかさから目を離さないこなたが答える。
「それと、ツンデレだけじゃ物足りないかがみが、ドジッ娘属性を獲得するため、過去にそれを二回やってたって話、かな」
「余計なことは言わんでいい」
同じくつかさに釘付けになりながら、かがみが小突く。
「確かに、眼鏡をしている私には無縁ですね」
これにはみゆきも納得するよりない。そして生まれてほぼ初めて、眼鏡でよかったと思った。
「そして、それを聞いたつかさが怯えて、眼鏡なしじゃ足の爪を切れなくなっちゃったってとこね」
「いやー、それだけじゃないと見るね」
こなたが自信満々に言う。
「どういうことよ?」
かがみとみゆきは、こなたの方を見る。
「かがみのことだから、爪が当たった瞬間、仰け反った拍子に後頭部をどっかにぶつけちゃったんじゃないかな? ドジッ娘属性獲得のために」
「………………そんなことするわけないでしょ」
長い沈黙の後、かがみが答えた。心なしか、機械的かつ棒読みで。
……したんだ。
……なさいましたね。
「そ、そんなことよりみゆき、どうするつもり」
みゆきからは見えないが、かがみは意地の悪い表情になって切り出す。
「何をですか?」
「つかさよ。あの子、もう眼鏡なしじゃもう足の爪を切れないわよ」
「はあ……」
「ウチには眼鏡をしてる人いないの。似合わない伊達眼鏡を勧める?」
「意外と萌えるかもよ」
こなたが言う。
「うっさい。それとも運動音痴のあの子に、スキーや水泳のゴーグルを勧める?」
「それは気が引けますね」
「じゃあ、つかさが足の爪を切るたびに眼鏡を貸してあげるのね」
「喜んで!」
「即答かよ」
みゆきは義姉(!)の親切な申し出ににこにこしながら、悪戦苦闘中のつかさの頭をなでようとする。
「わあ!」
急に撫でられて驚いたつかさは、手元が狂って深爪をしてしまった。
おわり
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- みゆきの即答吹いた -- 名無しさん (2008-06-30 07:19:34)