アットウィキロゴ
kairakunoza @ ウィキ
掲示板 掲示板 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー

kairakunoza @ ウィキ

秘密は甘く……

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集
※ CAUTION! この話はTS物です。苦手な方はお戻り下さい m(_ _)m ※


「お姉ちゃん、明日はゆきちゃんのおうちに行くんだっけ?」
「ん~? そうだけど、それがどうかしたの?」
「うん。大丈夫かなぁって」
「はぁ? いきなり何よ? 別にただ勉強しに行くだけでしょ。問題なんて何もないわよ」
「そうじゃなくて。『アレ』そろそろじゃないの?」
「ぅ……いや、でも夕方には帰ってくるし」
「ならいいんだけど……ねぇ、そろそろみんなに言った方がいいんじゃない?」
「それは……でも今までだって何とかなったんだし大丈夫よ」
「お姉ちゃんがいいって言うならいいけど……でも辛くない?」
「だから平気だってば。心配性なんだから、つかさは」

 私には人に言えない秘密がある。正確には『私の家系』に、だが。
 何故こんな事になったのか、と聞かれても答えようがない。遺伝とかとも違うだろうし。
 強いて言えば……『神様の気紛れや悪戯』か?
 だとしたら何とも迷惑な神様もいたものだ。
 会えたら文句の1つも言ってやりたいものだ、全く……

 夏休みも真っ盛りな今日は前から約束していたみゆきとの勉強会だ。
 今回は割と集中してやるつもりなので、申し訳ないけどつかさとこなたにはお休みしてもらう事にしてある。
 まぁこなたはバイトが忙しいとか言ってたけど、いいのか受験生として?
 見送りに来てくれたつかさから割と大き目の紙袋――中身はつかさお手製のお菓子だ――を受け取り、
「じゃあ行ってくるわね」
「いってらっしゃーい。ゆきちゃんによろしく~。あと気をつけてね~」
「はいはい。それと、私の心配はついでか?」
「え? そ、そんな事ないよぅ!」
「冗談だってば。それじゃお母さん、行ってきまーす!」
 つかさをからかってから奥にいるお母さんに声を掛けると、両親揃ってわざわざ顔を出してくれた。
「行ってらっしゃい、気をつけてね。帰りは夕方って言ってたけど、傘は持った? 予報では結構降るそうよ」
「あぁ、大丈夫。ちゃんと持ってるわよ」
「もしひどいようなら連絡しなさい。車で迎えに行くからね」
「ありがとう、お父さん。じゃあ今度こそ行ってきます」
「うん、頑張るんだよ」
 3人の穏やかな顔に見送られて家を出ると、
「うわっ! あつ……」
 まだ朝だと言うのに強い日差しと熱気に、一瞬家に戻ろうかとか思ってしまった。

 電車を乗り継いでようやくみゆきの家に到着した私を出迎えてくれたのは、おめかしをしたゆかりおばさんだった。
「あら? いらっしゃい、かがみちゃん」
「おはようございます、おばさん。今日はお世話になりますね」
「いえいえ、こちらこそ。って言っても私はお出掛けしちゃうんだけど」
「あ。だからその格好なんですね。すごく似合ってますよ」
「ふふっ、ありがとうね。みゆき~、かがみちゃん来たわよ~!」
 玄関前でそんな話をしていると、みゆきも出迎えてくれる。
「おはようございます、かがみさん。暑い中を来ていただいてすみません」
「気にしなくていいわよ。うちじゃ騒がしいのが多いからね」
「そんな事はないですよ。賑やかでいいと思います」
「そんなもんかしらね?」
「ええ。それではお母さん、いってらっしゃい。お気をつけて」
「じゃあ行ってくるわね~。お留守番よろしく」
「いってらっしゃい、おばさん」
 2人しておばさんを送り出すと、みゆきに居間へ通される。
「あ。これ、つかさから。よろしく言っといてだってさ」
「あら、わざわざすみません。後でお礼を言っておきませんと」
 アイスティーを持って来てくれたみゆきにつかさからの預かり物を渡してから、差し出されたグラスに口をつける。
 よく冷えた紅茶が火照った体に染み渡る感じが何とも心地良い。
「そう言えばみゆき。今日はおばさんお出掛けなんだ」
「はい、高校時代の友人と会うそうです。夜まで帰らないと言ってましたね」
「そうなんだ……あれ、じゃあ夜は1人? 大丈夫なの?」
「ええ。それほど遅くならないとも言ってましたし、心配していただいて嬉しいですが大丈夫ですよ」
「そう? うちに連絡して迎えに来てもらえば、ちょっとくらい遅くまでならいられるけど」
「あ。でしたら予定分の勉強が終わったらお茶に付き合っていただけますか? つかささんからの頂き物なんですが、私と母だけで食べるには少々多いと思いますので。残したりするのも申し訳ないですから」
 気を遣ったつもりが逆に気を遣われてしまった。この辺りは流石だと思う。
「じゃあそうさせてもらうわ。今のうちに家に連絡しておくわね」
「はい。では連絡が済みましたら勉強の方を始めましょうか」

 家への連絡を済ませると、みゆきの部屋へ移動して勉強を始める。
 受験に向けての集中的な勉強の為に難解な問題も多くあるが、みゆきと一緒に考えると割とすんなり解ける事もあり、改めてこの友人の凄さに感心する。
 途中で休憩や昼食を挟みながら勉強を進め、ノルマとする部分を終えたのは午後4時を回った頃だった。
「では、これでお終いですね」
「お疲れ様。いやー、みゆきのおかげで助かったわ。1人じゃわからない事が多くってさ」
「いえ、そんな事は……ちょっとしたコツや見方の違いですよ」
「そのちょっとした事が難しいんだって。ホント、感謝してるわ」
「こちらこそ、1人でやるより楽しく出来ましたからお互い様です」
 そう言って柔らかく微笑む親友の顔を見ると、一瞬胸の奥が高鳴る……と、口から思わず言葉が零れてしまった。
「そんな顔で笑いかけられたら、男だったらイチコロよね……」
「え? か、かがみさん? 一体何を……」
「へ? あ……いやいや! 何でもない、何でもないから!」
「そ、そうですか……あ、それではお茶の準備をして参りますね。かがみさんは居間で待っていて下さい」
 みゆきはそう言い残すと、慌てて部屋を出て行ってしまった。
 1人残された部屋の中、さっきより強くなった高鳴りを抑えつけながらテーブルに突っ伏して呟く。
「あっちゃ~~……何言ってんのよ、全く。そもそも『男だったら』であって、今の私は女じゃない。この分だと明日なるのは確定っぽいなぁ」
 高鳴りと共に、体の芯に生まれた熱っぽさを感じ取りながら溜め息をつき、待たせるのも悪いので今朝通された居間へ向かう。
 みゆきもちょうどお茶の用意が終わったようで、両手の塞がっている彼女の変わりにドアを開け、先に入るように促す。
「おっ、今回はマドレーヌだったんだ」
「他にも色々入っていましたよ。本当に何とお礼を言っていいのか……」
「そんなに畏まらなくたっていいわよ。あの子も好きでやってるんだし、美味しかったって言ってあげればそれで十分だと思うけど?
 もっとも美味しくなかったら、ちゃんとそう言ってやるのも大事だけどね」
「そんな……つかささんのお料理で美味しくないなんて事があるんですか?」
「たま~にね、色々試したりしてる時にあるのよ。勿体無いからって、食べれる分は食べるんだけどね」
「そうなんですか? なかなか想像出来ませんが……」
「こんなの知ってるのは私とお母さん、あとはまつり姉さんくらいよ。それよりも早く食べましょ」
「あっ、そうですね。どうぞ、かがみさんの分です」
 そう言って差し出された紅茶とお菓子を口にしながら他愛もないお喋りに花を咲かせる。
 こなた達が一緒だと遊びの事ばかりになってしまうが、みゆきと2人だと割と現実的な事や時事ネタ、女の子らしい話題など普段出来ないような話をして、あっという間に時間は6時を回ろうとしていた。
 ふと窓から外を見ると、あれほど快晴だった空はどんよりとした雲に覆われていて、あっという間に激しい雨が降り始める。
「あら、雨が降ってきちゃいましたね……ちょっと早いですが、戸締りを確認してきますね」
「私も手伝おうか?」
「いえ、すぐ済みますから。少々お待ち下さいね」
 部屋を出るみゆきを見送ってからぼんやりと外へ目を向けると、雨は一層激しさを増しており、雨音がうるさいくらいに部屋に響く。
 5分ほどして戻って来たみゆきを見ると、服と髪が濡れているようで、
「相当ひどい雨ですよ。ちょっとテレビで確認してみましょう」
 テレビでは各地の豪雨を知らせる速報が流れており、既に遅れの出てる電車もあるようだった。
「うわ! 本当にひどいわね、これ……糖武線はまだ動いてるみたいだけど、平気かしら?」
「それよりも迎えに来てもらった方がいいと思いますけど……」
「確かにそうかも。ちょっと家に連絡してみるわね」
 携帯を取り出すと同時にみゆきの家の電話が鳴り出した。
 家の番号を呼び出しながら部屋を出て、数回のコール音の後につかさの声が出迎えてくれた。
「あ、つかさ。私、かがみだけど、お父さんいる?」
『ううん。今買い物にで掛けちゃってるの。もうすぐ帰ってくる頃だと思うんだけど、そっちは平気なの?』
「こっちもかなりひどくてさ。出来れば迎えに来てもらえると助かるんだけど、いないんじゃしょうがないか」
『あ、待って。帰ってきたみたい。一旦切って、折り返しこっちから連絡するね』
「悪い、お願いしていい?」
『うん、それじゃ後でね』
 そんなやり取りの後、部屋に戻ると困った表情のみゆきが座っていた。
「どうしたの? そんな顔して、何かあった?」
「それが、この雨のせいで今夜は帰れないと母から連絡がありまして……」
「嘘っ! ちょっと、大丈夫なの?」
「はい。幸い交通手段が使えないだけで、泊まる場所は確保出来たそうですから」
「いやいや、そうじゃなくて。あ、おばさんが無事なのは良かったけど。あんたはどうするのよ? こんな中で1人で平気なの?」
「ええ……全く不安がないと言えば嘘になりますが、雨漏りなどもないですし、一晩くらいなら……」
 滅多に見せない弱々しげな表情で言葉を続ける途中で私の携帯が鳴り出した。
「多分うちからだわ……はい、かがみです。あ、お父さん」
『やぁ、そっちもひどい雨みたいだね?』
「全くよ。今ニュースじゃ都内周辺の電車がほとんど止まるみたい。それでどう? こっちに来れそうかしら?」
『それが……すまない、悪いけど行けそうにないんだ。こっちもかなりひどくてね、車を出せそうにないんだよ』
 お父さんのすまなさそうな顔がすぐに思い浮かぶ。
「そう……まぁ仕方ないわよ、この雨じゃ。って、ちょっと待ってて、お父さん……何、みゆき?」
 不意に肩をみゆきに叩かれ、話の途中だがみゆきに向き直る。
「よろしければ、うちに泊まっていきますか? かがみさんも帰れないようですから。むしろそうして頂けると、私も寂しくなくて助かるんですけど……」
 願ってもない申し出なんだけど、『今日の』私には非常に困った状況でもある。
 とは言っても、この雨の中を外に出るのははっきり言って自殺行為でしかない以上、この申し出を受けるしかない訳で。
「じゃあお言葉に甘えさせてもらうわね……もしもし。今夜はみゆきが泊めてくれるって」
『そうか。それなら安心だが……』
 お父さんの安堵と共に、口篭もる気配が伝わってきたので、
「まぁこうなった以上仕方ないわよ。明日にならないとわからないしね。じゃあまた明日ね」
 そう告げて電話を切り、みゆきに向かって頭を下げつつ
「という訳で、悪いけど今夜はよろしくね」
「はい、こちらこそ……あ、少々お待ちくださいね」
 なんだろう?
 部屋の隅の方で何かしてるみたい……紙袋? あれってつかさから受け取ったやつよね。
 紙袋から包みを取り出すと私に差し出して、
「こちらを。つかささんからですよ」
「は? 一体何なのよ……手紙付き、か」
 挟んであるメモに目を通すとこんな事が書かれていて、
『お泊りになったらお姉ちゃん準備してないでしょ? これ使ってね。 つかさ』
 中には着替えとお泊りセットが入っていた。
「なんでこんな用意がいいのよ、あの子は……」
「どうかしましたか?」
「お泊りセット。あの子ってば勘がいいと言うか、用意がいいと言うか……まぁありがたい事には違いないけどね」
「そのようですね。こんなメモも入っていましたから。案外今日の雨も知っていらっしゃったのではないでしょうか?」
 みゆきの手にあるメモには
『ゆきちゃんへ
 もし雨がひどくてお泊りになるようなら、一緒に入れてある包みをお姉ちゃんに渡して下さい。
 あと、明日の朝に何があっても驚いたりしないでね。 つかさより』
「……一体どういう勘をしてるのかしら。むしろお告げでもあったのか?」
「さぁ……それよりこの最後の文は一体どう言うことでしょう?」
「あー、それね……説明するよりは実際に見た方が早いか。ま、何もなければそれに越した事はないんだけど」
「はぁ……そうなんですか?」
「とりあえず今は気にしないで……出来れば考えたくない事だから」
「わかりました。ではそろそろ夕食にしましょう。確か貝が苦手でしたよね?」
「そうだけど、よく覚えてたわね。私も何か手伝うわ。何もしないってのは悪いし……料理は手伝えないけどね」
「それでしたら器の準備や下拵えの手伝いをお願い出来ますか? 簡単ですし、やってみましょう」
「そ、そう言うなら……少しだけやってみようか、な」
「はい。ではこちらです」

 みゆきと一緒の料理、本当に少し手伝うだけだったけど、は新鮮で楽しい時間だった。
 みゆきの指示はわかりやすく、料理なんて全く出来ない私でもどうにか出来るようにしてくれたのが嬉しかったな。
 豪華とは言わないけど、手の込んだみゆきの手料理はつかさのとは違った美味しさで一杯だった。

 食後の一時を私の淹れたお茶(お茶くらいは淹れられるのよ)とつかさのお菓子でお喋りを交えながら過ごすと、お風呂に順番に入った。
 湯上りの私を見て、みゆきが首を傾げる。
 まぁ無理もない。私の着ているパジャマが一回り大きいものだったからだ。
「かがみさん、随分と大き目のパジャマなんですね?」
「ま、色々あってね。みゆきのは可愛らしいわね。似合ってるわよ」
 みゆきのパジャマはピンクのワンピースで、彼女の雰囲気にぴったりのものだった。
「ありがとうございます。これ、割と気に入っているんですよ」
 そう言って微笑むみゆきは本当に魅力的で、夕方辺りから私の中に生まれた熱が再びざわつき始める。
 それを誤魔化すようにみゆきに声を掛ける。
「さて、もう10時になるけど寝ちゃう? みゆきは確かこのくらいの時間には寝てるはずよね?」
「あら。もうそんな時間でしたか? 気づきませんでした。きっとかがみさんとのお喋りが楽しかったからですね」
「そう言われると何だか照れるわね……」
「ふふ。かがみさん、お顔が赤いですよ? 私のパジャマを可愛いと言って下さいましたが、かがみさんも可愛らしいですよ」
「な?! ちょ、変な事言わないでよ!」
「変な事じゃないと思いますけど。何だか泉さんの気持ちが少しわかる気がします」
 そんな事を言いながら笑うみゆきは本当に楽しそうで、これ以上その顔を見てると色々まずい気になってきたので、何とか切り上げようとする。
「みゆき、あんた寝惚けてるんじゃないでしょうね? だったら無理しないで寝ちゃいなさい」
「多少眠いですけど、そんな事はないですよ。それより明日はどうします? 予報だと雨は今夜一杯で上がるようでしたが」
「え? あ、そうね。つかさに着替え持って来てもらわないといけないけど……つかさも一緒に息抜きに買い物にでも行く?」
「いいですね。そろそろ秋物の服も売り出してると思いますし」
「じゃあ決まりね。つかさにメールしておくわ」
「はい、お願いします……ふぁ~、さっきのかがみさんの言葉で急に眠くなってしまいました……」
「何よそれ。結局無理してたんじゃない」
「そう、かも知れませんね。こんな機会は滅多にありませんから……」
「確かにね。でも、こんな突然の豪雨はごめんだけど」
「そうですね……では、申し訳ありませんが、そろそろ寝させてもらいますね」
「いいわよ、気にしないで。じゃあおやすみ。また明日ね」
「はい、おやすみなさい」
 灯りを落とすと外の激しい雨音が嫌に耳についてなかなか寝付けない。
 その合い間に聞こえる穏やかなみゆきの寝息が私の中の『何か』を刺激して余計に落ち着かなくなり、体を起こすと薄暗がりの中みゆきの寝顔が目に入る。
 整った顔立ちに柔らかな髪、みゆきの顔をこんな間近で見たのは初めてだ。
「ほんと、『男だったら』放っておかないわよ……朝、何があっても嫌いにならないでね」
 そう呟いて、どうにか気持ちを落ち着けながらゆっくりと睡魔に身を委ねる事にした。

 翌朝、小鳥のさえずりに目が覚めるとみゆきと目が合った。
 その表情に浮かぶ驚きと、昨日までの自分とは違う感覚に何があったか理解する。
「あー……とりあえず説明するから、落ち着いて聞いてね」
 いつもよりも低い声でそう言うと、こくこくと頷くみゆきに事情を説明する。

「そのような事もあるんですね……」
 事情説明を終えて、私達は簡単な朝食を取っている最中だ。
「普通はありえないけどね、こんな事」
「ですが、実際に目の当たりにすると信じるしかないですよね……性別が変わるなんて」
 そう、今の私は生物学上の『男性』になっているのだ。
 女の子だった時より一回り大きな体と低めの声、髪は若干短くなるものの肩甲骨の辺りまでの長さはあるが。
「初めてなった時は確か中3だったかな? 夢でも見てるかと思ったわよ。現実だと理解した瞬間叫んじゃったけど」
 何故か週末になる事が多く、なっても月1、2回くらい。幸い数日前から予兆はあるから皆に知られずに済んだけど、今回は突然の事態に対処しようがなかったのだ。
「それで、つかささんも同じなのですか?」
「いや、つかさは高校入ってすぐなくなったわ。全くもって羨ましい限りだわ」
 この現象は柊家の女子に現れるそうで、お母さんを始め2人の姉さんも経験したらしい。
 始まるのは中学生のうちでほぼ一緒だが、なくなる時期はまちまちで、私はけっこう長い方らしい。
「ま、何にしてもこなたに知られたんじゃなくてよかったわよ。あいつの事だから好き放題弄りそうだし」
「そんな事はないと思いますけど……」
「出来れば誰にも知られずにいられればよかったんだけどね。そのうち機会を見て話す事にするわ」
「それがいいと思います。でも、かがみさんの秘密を一番乗りで知る事が出来たなんて光栄です」
「やめてよ、変な事言うのは……こっちにとっては大問題なんだし」
「そうですね。でも何だか嬉しくて」
 くすくす笑うみゆきを正面から見れない……基本的に中身と言うか心は『柊かがみ』のままだが、迷惑な事に『男性』の部分も肉体的にも精神的にもきっちり生まれるものだから、みゆきの女性的な魅力に当てられてしまうのだ。
 早くつかさが来てくれないかと考えていると、来客を告げるチャイムが鳴り響いた。
「あ、つかささんでしょうか。ちょっと見てきますね」
 そう言って席を立つみゆきを見送って、ようやく緊張を解くと、自分に言い聞かせるように呟く。
「落ち着け、柊かがみ。私はこんな体質だけど花の女子高生なんだぞ? 女の子の友人にときめいてどうするよ……」
 しばらくして、みゆきがバッグを持って戻ってきた……なんだか顔が赤いのは気のせいか?
 それが見慣れたものだからつかさが来たのだろうとわかったが、肝心のつかさの姿も足音も聞こえない。
「つかさだったんだ。で、本人は?」
「それが、お姉さんの用事に付き合う事になったそうで、これから一緒に出掛けるそうです。お手紙を預かってますよ」
「は? 何それ。姉さんって……」
「まつりお姉さん、でしたよね? 活発そうな方でしたよ」
「そうだけど……んー、大学の友達と料理研究? で、つかさを講師にする……まぁそういう事なら仕方ないか。追伸……って! 何考えてるのよ、あの馬鹿姉?!」
「か、かがみさん? どうしました?」
「どうしたもこうしたもないわよ! って、ごめん。怒鳴ったりして。みゆきに当たってもしょうがないわよね」
「いえ……それより、何が書いてあったんですか?」
 心配そうに私の顔を覗き込むみゆきを見て、自分でも顔が赤くなるのがわかった。
「な、何でもないって。それより着替えてくるからさ、洗面所借りるわよ?」
 そう言って席を立って洗面所へ向かう。
 バッグから着替えを取り出して身につける……無論この状況だから男物だが。
 そして、姉さんからの手紙に改めて目を通す。
『追伸
 知られちゃったものはしょうがないんだし、この際状況を楽しんじゃいなさいな。
 みゆきちゃんみたいな可愛い子とデートなんてそうそう出来る事じゃないよ~。
 軍資金はバッグに入れてあるからね♪
 あ、そうそう。デートの時は言葉遣いに気をつけなさいよ?
 一応、今は『男の子』なんだから。  優しいおねーさん達より』
「だから、私は女だっての……」
 バッグには着替えの他に封筒が1つ入っていて、中には諭吉さんが2人も鎮座していた。

 呆れ顔で戻ると、みゆきが明らかに顔を赤らめてスプーンをカップの中でくるくる回していた。
「お待たせ。って、大丈夫? 顔赤いわよ?」
「え? あ、大丈夫ですよ。それより……お似合いですね、その格好」
「いや、嬉しくないんだけど……」
「す、すみません。でも、その……格好いいと言うか、凛々しいですよ。本当に……」
 そう小さく言って俯いてしまうみゆきを見て、ふと嫌な予感が走った。高確率で正解だと思われる事が思いつく。
「ねぇみゆき。姉さんに何吹き込まれた?」
「そ、その……かがみさんと、で、デートをしたらどうか、と……」
 やっぱりか……馬鹿姉のニヤけた顔が簡単に思い描かれる。
「あー、悪い。馬鹿姉が変な事言って。気にしなくていいわよ。そもそも私は女なんだし」
「いえ……かがみさんさえよければ、いいかな、と……」
「……はい?」
「わ、私と、っ! デートを、していただけませんかっ!?」
「はいぃぃぃっ!?」

 数分後。
 私とみゆきは昨夜の約束通り買い物をしに街を歩いていた。
 友達と2人で買い物なんて珍しい事じゃない。
 幾つかの点に目を瞑れば……

 にこにこ顔のみゆきが私の腕を取って……腕に抱きついてこんな事を言ってくる。
「こういう風に買い物をするのに少し憧れていたんですよ」
「そう……そりゃよかった」
「かがみさんはお嫌でしたか?」
 私のそっけない言葉にどこか残念そうに顔を曇らせるのを見てチクンと胸が痛む。
「嫌じゃない……ただちょっと複雑なだけ、だ、よ」
 うっかりすると女言葉になりそうなのを気にしながら返事をする。
 この格好で女言葉を使ってるのを聞かれたら、それこそ奇異の目で見られるに違いない。
 ただでさえ行き交う男達の視線が痛いのに、これ以上衆目に晒されるのはご免被りたい。
「そうですか。何だか無愛想でしたから嫌だったのかと……」
 ほっとした表情のみゆきが向ける笑顔と仕草は、普通の男だったら間違いなく一撃で理性が壊されるだろう。
 実際、私でさえかなりヤバイのだから……
「あ、かがみさん! アイス屋があります。買っていきせんか?」
「そう、だね。歩きっ放しだし、少し休憩にしよう」
 そう言ってアイスを(折角なので姉さんから貰った軍資金で)買い、ベンチに腰掛けて食べる。
 私はミント、みゆきはバニラ味だ。
 こうして見ると本当にみゆきは可愛いと思う。
 普段は大人びた振る舞いの多いみゆきだが、今のはしゃいだみゆきは何もかもが新鮮で、その仕草1つ1つに目が奪われてしまう。
「かがみさんのも美味しそうですね。一口いただけますか?」
 と言って、私の返事も聞かずにミントアイスを一かじりする……って、それは!
「ミント味も美味しいですね。どうしました?……ぁ」
 気づいたらしい、自分が何をしたか。
 みゆきが口をつけた所は、ちょうど私がなめていた所。
 つまりは、間接キス……
「す、すみません! 私ったら、何を……」
 頬を真っ赤に染めて俯くみゆきがとても可愛くて、
 気づけば、その頬に両手を添えて上を向かせて、
 その小さな唇に自分の唇を重ねていた。

 ファーストキスは、甘く、爽やかな味だった。



コメントフォーム

名前:
コメント:
  • 2828タイム突入しますた -- taihoo (2008-11-09 12:42:17)
  • かがみ×みゆきもいいなぁ -- 名無しさん (2008-09-08 04:50:52)
  • これはいい…GJ! -- 名無しさん (2008-08-31 21:40:26)
  • 新鮮過ぎてにやけた -- 名無しさん (2008-08-31 20:54:48)
  • この発想はなかった・・・・ -- 名無しさん (2008-08-31 19:39:05)
  • なんというかがみ×みゆき。面白すぎる。 -- 名無しさん (2008-08-31 16:04:00)
+ タグ編集
  • タグ:
  • かがみ&みゆき
  • TS
記事メニュー
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー