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ハッピーエンド・ストーリー 前編

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だれでも歓迎! 編集
 むかしむかしあるところに、こなたという美しい女の子がいました。
 家はそこそこ裕福で両親にも愛され、何一つ不自由なく暮らし、健やかに育ちました。
身体はちんちくりんの幼児体型で成長しているとは言い難いのですが、とにかく健やかに
育ちました。性格も健康的とは言い難いのですが、とにかく健やかに育ちました。健やか
といったら健やかなんです。
 そんな幸せだった日々は、突如として終わりを告げました。こなたのお母さんが病気で
亡くなってしまったのです。
 それでも父一人子一人で幸せに暮らしていたのですが、男やもめが寂しくなったのか、
お父さんは別の女性と再婚しました。この女性は二人の連れ子がいました。
 継母の名はゆき、ゆきの二人の娘は、上からゆいとゆたかといいました。
 ……これだとそうじろうは妹と結婚することになるって? あんまり気にしないで下さ
い。どうせ脇役なんですから。とにかくこの三人、とんでもない性悪女で、こなたの父に
近づいたのは初めから財産が目当てだったのです。
 再婚からしばらくして、こなたの父も亡くなってしまいました。すると三人は本性を露
にし、美しいこなたを妬んでボロを着ることしか許さず、寝床は粗末なわら布団、つらい
仕事を全てこなたに押し付け、奴隷のようにこき使いました。父子家庭で育ったため家事
をこなす能力には優れたところのあるこなたでしたが、大した文明のなかった時代の家事
はとても大変なことなのです。火を熾すのも一苦労ですし、生活必需品が一通り揃ってい
るような便利な店もありません。それはともかく、いじわるな継母たちはこなたに風呂に
入ることも許さず――まあ、昔の西洋にはあまり風呂に入る習慣がなかったのですが――
かまどの掃除のせいでいつも灰にまみれていたため、いつの頃からかこなたは灰かぶりを
意味するシンデレラと呼ばれるようになりました。
 そんなある日のこと、お城の王子様の主催で舞踏会を催すことになり、国中の女性に招
待状が送られました。もちろんシンデレラにもそれが送られ、とても楽しみにしていたの
ですが、いじわるな継母と姉たちはシンデレラに留守番を命じました。
「というわけであなたは留守番よ、シンデレラ。今日は夕食はいらないわよ」
「まあどうせシンデレラなんか相手にされないだろうけどねー」
「そんな、可哀想だよ。こなたお姉ちゃんも連れていってあげようよー」
 こらこら、そこ。勝手なこと言わない。あなたは『いじわるな』『姉』ですよ。
「あ、うん、えーっと……シンデレラ、あなたは家で大人しくしてなさい」
「わかりました。えーと……お姉様」
 シンデレラも納得したわけではないのですが、大人しく従いました。どうせ行きたいと
言っても連れて行ってもらえるわけではないのですから。何とも思ってないような素振り
で継母と姉たちがドレスを仕立てるのをただ見ていました。
「いってらっしゃいませ」
 シンデレラはそれだけ言って姉たちを見送りました。家は静かになってしまい、所在な
く自分の部屋に引っ込みました。そうなると空しさだけがシンデレラの胸にありました。
「どうしてこんなことになっちゃったんだろう……」
 幸せだった日々を思えば、今の境遇はあまりにも辛いものです。この先、自分がどんな
人生を歩むのか、それを知らない以上は。
 狭くて暗い屋根裏部屋、寝床は藁、服は襤褸、自身は何の力も持っていない。今の状態
から抜け出したいというなら、他人の力を借りるしかなくて――
「もう泣くのはおやめなさい、シンデレラ」
「誰!?」
 声のした方を見ると、なんだか胡散臭いローブ姿で杖を持ったシンデレラと同じくらい
の年の頃の女の子がそこにいました。
「わたしは魔法使いだよ」

「あんた誰?」
「だから魔法使いだって」
「そんなこと言われても知らないし。っていうか不法侵入だし。やばい、今日は舞踏会だ
から憲兵はいないかも……!」
 シンデレラはとっさに身構えました。
「ちょ、ちょっと待ってよ! わたしは怪しいもんじゃないって!」
「名前も名乗らないのに怪しくないって言われても」
「名前がないんだからしょうがないでしょ! てゆうかわたしも魔法使いっていうだけで
この配役になったんだし!」
「配役?」
「背約だよ。魔法を使うっていうことはこの世界が決めた約束に背くっていうことだから」
 魔法使いはとっさに誤魔化しました。
「それより、舞踏会に行きたいんだよね」
「行きたいけど、どうしようもないよ」
 ここからお城まで歩いて行っていたら舞踏会は終わってしまうような距離だったし、仮
に行けたとしても、こんなみすぼらしい恰好でお城に入れてもらえるとは思えません。
「心配しないで。そこはわたしが魔法でなんとかするから」
「魔法?」
「魔法使いなんだから当たり前でしょ。わたしがこれから言うものを持ってきて――まず
はカボチャ」
「今はうちにないよ。舞踏会だからお店も開いてないだろうし」
 魔法使いの顔が引きつりました。
「……ネズミ」
「昨日駆除したばっかりからいないかも」
 シンデレラは想像以上に家事のできる子だったようです。
「……トカゲ」
「そんなものどこで捕まえるの?」
 シンデレラは、トカゲが普段どこに生息しているのかということを把握していないよう
です。
「くっ、読んだことある人なら一度は突っ込んだことのあることを……」
 そこの魔法使い、余計なことを言ってはいけません。
「まあいいや。別にハガ○ンみたいに等価交換の原則があるわけじゃないし」
 世界観を壊すようなことも言ってはいけません。
「とにかく、わたしの魔法を見てもらうよ!」
 魔法使いの持つ杖が光を放ち、その杖を振ると、家の前に、大きなカボチャの馬車と、
それを引く馬、そして御者が現れました。
「信じてくれた? わたしが魔法使いだってこと」
 シンデレラは肯くしかありませんでした。
「その服もなんとかしないとね」
 魔法使いの杖が再び光りだし、振るわれました。シンデレラが眩い光に包まれ、それが
収まって視界がきくようになると、シンデレラは……。
「……え?」
 煌びやかなドレスに包まれていました。さっきまでの襤褸は存在を消し、シンデレラを
汚していた灰も無くなり、代わりにシンデレラの美しさが引き立つようなメイクが施され
ていました。
「綺麗だよ、泉ちゃん……」
「泉ちゃん?」
「いや、なんでもないよ。シンデレラは元々可愛いんだから、そのドレスなら王子様に気
に入ってもらえること間違いなし」
 シンデレラは改めて自分の服装を見下ろしました。淡い青を基調にした布地、ウエスト
分から裾まで広がった愛らしいデザインは、子供体型のシンデレラに良く似合っていまし
た。ぼさぼさだった髪はいつのまにか艶を帯びていて、ボロボロだった靴も、見るからに
高級そうな毛皮の靴になっていました。
「毛皮の靴? なんで?」
「細かいことは気にしないでよ。ほら、舞踏会に行くんでしょ」
「うん……」
 魔法使いに促されて、シンデレラは馬車に乗り込みました。
「あ、大事なこと言い忘れてた。この魔法は夜の十二時、つまり日付が変わったら解ける
から注意してね」
 こんな大事なことを忘れそうになる魔法使いに、シンデレラは少し不安になりました。

「ええよなー、舞踏会なんて。まあ、シンデレラもがんばれや」
「は、はい……」
 ななこと名乗ったエセ関西弁の御者は、気さくに声をかけてきました。あまり御者らし
くない態度に、シンデレラもちょっと戸惑い気味です。
 ななこの御者としての腕前と、カボチャが素材である馬車の強度にも不安を覚えている
ようですが、そういうことは気にしないで気楽に乗ってもらいたいものです。
「でも御者さんはいいんですか? 若い女性にはみんな招待状が届いたらしいですけど」
「ウチは売れ残りやない……売れ残りやない……」
「ぎょ、御者さん!?」
 ななこが突然暗いオーラに包まれて、シンデレラは狼狽しました。
「所詮ウチは御者……出番もこれだけなんや……」
 あんまり落ち込まれても困るのですが。
「そ、そうやな。スピード上げるからしっかり座っとき!」
 ななこの手綱さばきに応えて、馬は気合を入れました。流石に人間を馬に配役したりは
しませんのであしからず。
 それはともかく馬車は速度を上げ、揺れは大きくなります。もちろんななこはちゃんと
した御者なのでそれで事故を起こすようなことは――
「いかん、迷った」
「ええー!?」
 事故は起こしません。ただし事件は起こすようです。
「城ってどっちやったっけ?」
「知らないです」
「地図持ってへん?」
「ないです……」
「テキトーに行くしかないみたいやな」
「そ、それでいいんですか?」
 シンデレラがお城に到着しないと話が進まないので、適当に馬を走らせていたら偶然着
いちゃったことにしましょう。
「さて、着いたで」
「そんな何事も無く着いたかのように言われても」
「やかましい。招待状は忘れてへんな?」
「はい。それでは行ってきます」
 ななこに見送られて、シンデレラはおずおずとお城に会場に向かって歩き出しました。
「ウチの出番はこれっきり……」
 ななこの視線に居心地の悪さを感じながら。

 舞踏会の会場は優雅なクラシックが流れ、豪華な料理が並べられ、室内の調度品も贅を
尽くしに尽くした、まさに絢爛豪華と呼ぶに相応しいものでした。
 そこに招待された女性たちも淑女と呼ぶに相応しい振る舞いをしていましたが、徐々に
興奮が高まり、会場もざわついてきました。
 もうすぐ、この場に王子様が現れるからです。
「今日の舞踏会は王子様の結婚相手を探すためのものって噂だぜ」
「とても素敵な王子様らしいわね。賢くて真面目な性格で名君になること間違いなしって」
「そんな王子様に見初めてもらえたら、私らも背景から格上げだよな」
「みさちゃん、それはちょっと違うんじゃ……」
 この舞踏会は、女たちの戦いの場でもあるのです。ですから、彼女たちの気持ちが盛り
上がってしまうのも無理はないでしょう。
 そのざわめきが、一瞬にして静まりました。王子様が現れたのです。
 ツリ目でややきつそうな印象を受ける顔立ち、髪を左右にリボンで結んだツインテール、
その視線、背格好、佇まいは真面目で誠実そうな王子様然としていました。
「みなさんお待たせしました。私が王子のかがみです」
 わぁぁぁぁ……
 招待客の女性たちから、感嘆の声、あるいは嘆息が漏れました。はっきり言えば彼女た
ちの目当ては王子様であり、その王子様が予想以上に好印象だったので会場は俄然盛り上
がります。
 シンデレラは、そんな場所にいる自分がひどく場違いに感じられました。
「私は舞踏会に来たいと思ってたのかな」
 シンデレラは自分の両親が生きていた頃のことを思い出しました。
「何も不自由はなかったんだけど、贅沢な暮らしだったってわけじゃないんだよね」
 そんな独り言を誰も聞いていません。いや、聞いていてはいけないのです。
「そりゃ贅沢にも王子様にも興味がないわけじゃないけど、身の丈にあった生活が……」
 そんなシンデレラの思考を阻むかのように、目の前に王子様が現れました。
「お嬢様、私と踊っていただけませんか」
「わ、私と?」
 突然のことにシンデレラはどぎまぎしてしまいました。実際に王子様を目の前にしてみ
ると、一目で気に入ってしまったのです。有り体に言えばとても好みだったのです。
「私でいいの?」
「べ、別にあんたのこと好きになったわけじゃないんだけど……」
 言ってることが滅茶苦茶です。王子様が舞踏会の目的を忘れてはいけませんよ。
「いいから私と踊りなさいよ」
「うん、いいよ」
 かがみの態度が面白くて、悪戯っぽい笑みを浮かべながら、シンデレラはかがみに手を
引かれ、会場の中央に連れられました。他の女性たちの視線に晒されることになりますが、
シンデレラは全く気になりませんでした。
 演奏者たちは一旦音楽を止め、会場の注目は二人に集まります。そして、曲目を変えて
再び響く音楽。

 ダンスホールに響くは軽やかなワルツ。高名な作曲家が舞踏のために作った音楽。
 会場を照らすは華やかなシャンデリア。二人を彩るための光。
 シンデレラが身に纏うは青く清らかなドレス。魔法使いが彼女のためにあつらえた衣装。
 シンデレラの手をとるは王子様。シンデレラを幸せにするために現れた人。
 二人が踊るは美麗なワルツ。その動きは水が流れるように。
 会場中の女性が二人に見とれていました。
「ねえねえ、あれってこなたお姉……シンデレラじゃないかな?」
「だよねえ、あんなに小っちゃいのはうちのゆたかとシンデレラくらいなもんだからね」
 こらこら、あなたたちはここであれがシンデレラだと気付いてはいけないんですよ。
「まさか、あの灰かぶりがここにいるわけないよね」
「だよね」
 そう、それでいいんです。
「あなた、名前は?」
「こな……いや、シンデレラだよ」
 二人は見つめあい、囁きあいました。三拍子に一度強く踏むステップは淀みなく、手を
とり身体を寄せ合いながら二人は踊り続けました。
 それはとても幸せな時間でした。かがみに一目惚れした自分の感性は間違っていなかっ
たのだと、シンデレラは確信しました。
 しかし、それも永久に続くわけではありませんでした。時計の鐘が夜の十一時四十五分
を告げたのです。当時の時計はそんなふうになっていたんですよ。
「やばっ」
 シンデレラは十二時になると魔法が解けてしまうことを思い出しました。今すぐここを
離れなければ、元のみすぼらしい姿をかがみに見られてしまうでしょう。
「いい雰囲気なんだしあと五分くらいなら」
 だめです。今すぐ出てってください。
「かがみ、ごめん。もう行かなくっちゃ!」
「ちょ、ちょっと、何言ってんのよ!」
 シンデレラは踊りをやめ、走り出しました。とにかく魔法が解ける前にお城の敷地から
は脱出しておきたいものです。
「なんで逃げるのよ! せっかくあんたのこと……」
 かがみは追いかけました。ちょっと意地っ張りなようで、シンデレラのことをどう思っ
ているのか、それを言えないようですが。
「ごめん! もうここにはいられないから!」
「待ちなさいよ!」
 シンデレラの逃げ足が速かったことはかがみには予想外だったようで、二人の距離はみ
るみるうちに広がっていきます。
 しかし、シンデレラにとっても予想外のことがありました。階段を降りるとき、転んで
毛皮の靴が脱げてしまったのです。
「うそっ!? 私はドジっ子属性なんかないのに!」
 一瞬躊躇いましたが、かがみに追いつかれるかもしれないと思い、そのまま逃走を再開
しました。
「どうせ魔法が解ければあの靴も元通りだし」
 本当は後ろ髪を引かれながらも、振り返らずに走りました。このドレスが元通りの襤褸
になってしまえば、二度とここに来ることはないだろうと思いながら……。

 シンデレラのことを諦め切れなかった王子様は、国中におふれを出しました。手がかり
は彼女が残した靴だけ。それでも王子様は諦めませんでした。
 もちろんそのおふれは国中の噂となり、シンデレラの耳にも届きましたが、名乗り出る
ことはありませんでした。相変わらず継母と姉たちにこき使われ、みすぼらしい服しか着
せてもらえない、こんな姿を見てもらっても信じてもらえないでしょうから。
 そんなシンデレラの家に、お城からの使者が来ました。
「ども、お城に仕えてるひよりっス。王子様が舞踏会で会った女性を探してるのはご存知
だと思いますが、手がかりがこの靴しかないのでみなさんで試してみてください」
「つまりその靴にぴったりだったら王子様の婚約者ってわけね」
「そういうことっス」
 そう言ってひよりは立派なガラスの靴を差し出しました。
「ガラスの靴? なにそれ?」
 シンデレラは混乱しました。
「じゃあ私がためしてみるわね」
 そんなシンデレラをよそに、ゆきが靴を履こうとしました。しかし、彼女の足は靴には
大きすぎて入りませんでした。
「お母様じゃダメだって。次は私がやるよ」
 ゆいも試してみましたが、やはり足は靴に入りませんでした。
「じゃあ次は私がやってみるね」
 ゆたかが試してみると、足はしっかり靴に入りました。
「うん、結構いい感じかも。ぴったりだよ」
 ちょっと待ってください。それは非常に困ります。
「で、でも私にはちょっと大きいかも……」
 危ない危ない。危うく一番大事なところで話が破綻してしまうところでした。
「そこのお嬢さんも試してみて欲しいっス」
「ちょっと待ってよ、私ガラスの靴なんて履いてないって」
 狼狽するシンデレラにひよりは無理矢理靴を履かせました。そして、そのシンデレラの
足はぴったりとガラスの靴に納まったのです。
「おお、この方こそ間違いなくあの舞踏会の女性っス!」
「話を聞いてよ!」
 シンデレラが喚くのも聞かず、ひよりはシンデレラを自分が乗ってきた馬車に乗せて強
制的にお城まで連れて行きました。意地悪な継母と姉たちの悔しがる声からどんどん遠ざ
かってゆきます。
「どうなってるの? ガラスの靴なんかどっから持ってきたのさ!?」
「シンデレラは自分の立場に疑問を持たないほうがいいらしいっスよ」
「何それ?」
 シンデレラが聞いても、ひよりは何も答えません。
「……そもそもなんで靴が毛皮製なのが変だって思ったんだろ?」
 シンデレラの呟きに答える人は、誰もいませんでした。

 お城に着くと否応なく衣装部屋に通され、パティと名乗る侍女に衣装をコーディネイト
された挙句、メイクまでさせられました。今度は魔法で設えたものとは違って本物のドレ
スで、靴はひよりが持ってきていたあのガラスの靴でした。
「Beautiful!」
 パティはシンデレラを見て感嘆の声をあげました。自分でメイクしたのですから、ある
意味自画自賛です。
「我ながら良いコス……コーディネイトでシタ。行ってくだサイ、王子様が待ってマス」
「でも……」
 シンデレラは渋っていましたが、自分があの夜王子様と踊ったシンデレラであることは
間違いないわけですし、自分も王子様に会いたいと思っていたので、結局自分の意思で王
子様と対面することになりました。
 そして王子様は……。
「シンデレラちゃん、ずっと探してたんだよ。私はシンデレラちゃんを妃として迎えたい
んだ。これからもよろしくね」
「誰?」
「誰って、もちろん私はこの国の王子だよ」
 王子様は、ゆったりとした声でシンデレラを迎えました。
 たれ目で優しそうな印象を受ける顔立ち、短い髪を黄色いリボンでカチューシャ風にま
とめた髪型、見ているだけで穏やかな気持ちになれるような可愛らしい佇まいは、とても
魅力的な人物ではありますが、どう見ても舞踏会で踊ったあの人とは別人でした。
「どうなってるの……?」

 こなたの疑問に答えられる者はいませんでした。
 いるはずの人間がいなくて、いないはずの人間がいる。それなのに、他の誰もそのこと
に疑いを持っていない――
「何かおかしいよ」
 こなたの心を、未知のものへの恐怖が捉え始めました。自分の知らないところで得体の
知れない何かに巻き込まれているような、そんな不気味さを感じました。
 しかし、これからこなたがどうなるのか、誰も知りませんし、私にもわかりません。
 なぜなら、誰一人としてこの話の続きを知る者はいないのですから――




















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