―――事は、今日の放課後に遡る。
「あ、そういえば、あの本の発売日って今日だったっけ。あの本……か。
やっぱりわたし一人だと……なぁ」
最後の授業が終わり、下校の準備をしていたわたしは、そんなことを呟きながら
こなた達の教室に向かった。そのシリーズには少し思い入れがあり、わたしにだけは
特別な本になっている。そして、その新刊が発売された時は、ほぼ必ずと言っていい
ほど学校帰りにこなたと買いに行く事にしていた。
「おーす、こなたー。ちょっと付き合ってくんない? あのシリーズの新刊出てるんだけどさー」
「あー、ごめん。今日は、ちょっと遠慮しとくよ」
「え? そう? 今日はバイトの日だっけ?」
ちょっと……意外だな。いつもなら喜んでついてくるのに。
「いや、別にそう言うわけじゃないんだけどさ……今日は、ごめん」
「……まあ、しょうがないわね。また今度にするわ。じゃあ、一緒に帰る?」
「うん、ごめんね? かがみ」
「そんなの気にしなくていいわよ」
そうして、わたし達はそのまま寄り道をせずに真っ直ぐに家へ帰った。
少しあの本が欲しかったけれど、たった数日買わなかっただけで売り切れるような
人気作品ではないので、今日のところは我慢としておこう。
ただ、さっきのこなたの反応がわたしの中に少しの違和感を残していて、
それは家に着いたところで消えるようなものではなかった。
「あ、そういえば、あの本の発売日って今日だったっけ。あの本……か。
やっぱりわたし一人だと……なぁ」
最後の授業が終わり、下校の準備をしていたわたしは、そんなことを呟きながら
こなた達の教室に向かった。そのシリーズには少し思い入れがあり、わたしにだけは
特別な本になっている。そして、その新刊が発売された時は、ほぼ必ずと言っていい
ほど学校帰りにこなたと買いに行く事にしていた。
「おーす、こなたー。ちょっと付き合ってくんない? あのシリーズの新刊出てるんだけどさー」
「あー、ごめん。今日は、ちょっと遠慮しとくよ」
「え? そう? 今日はバイトの日だっけ?」
ちょっと……意外だな。いつもなら喜んでついてくるのに。
「いや、別にそう言うわけじゃないんだけどさ……今日は、ごめん」
「……まあ、しょうがないわね。また今度にするわ。じゃあ、一緒に帰る?」
「うん、ごめんね? かがみ」
「そんなの気にしなくていいわよ」
そうして、わたし達はそのまま寄り道をせずに真っ直ぐに家へ帰った。
少しあの本が欲しかったけれど、たった数日買わなかっただけで売り切れるような
人気作品ではないので、今日のところは我慢としておこう。
ただ、さっきのこなたの反応がわたしの中に少しの違和感を残していて、
それは家に着いたところで消えるようなものではなかった。
―――そして今。わたしは浴槽に肩までつかりながら、その時の事を思い返していた。
(そう言えば、バイト以外でこなたに断られるのって初めてだったっけ? 何かあったのかなぁ)
こなたが今のコスプレ喫茶のバイトを始めたての頃は、こなたのシフトの日が
よく分からくて何度か断られたこともあった。と言うか、今でもキャンペーンなどで
欲しい物がたくさん有るときはかなりのシフトになる時が多々あるけど。
それでも、今日のように特に理由も無く断られるのは初めてのことだった。
(断ったって言うよりも、何か避けられてるような? て言っても、そんな事される
ような覚えもないんだけど)
せいぜい思いつくのは、昨日宿題のノートを貸さなかった事くらいか。
でも、あれはこなたが悪い。いつもわたしのノートを写すだけで、自分の力だけでは
全くしようとしないのだ。だから、わたしは『たまには自分でやりなさい』とノートを
貸さなかった。といっても、そんな事はすでに日常茶飯事であり、今に始まったやりとりではない。
(そう言えば、バイト以外でこなたに断られるのって初めてだったっけ? 何かあったのかなぁ)
こなたが今のコスプレ喫茶のバイトを始めたての頃は、こなたのシフトの日が
よく分からくて何度か断られたこともあった。と言うか、今でもキャンペーンなどで
欲しい物がたくさん有るときはかなりのシフトになる時が多々あるけど。
それでも、今日のように特に理由も無く断られるのは初めてのことだった。
(断ったって言うよりも、何か避けられてるような? て言っても、そんな事される
ような覚えもないんだけど)
せいぜい思いつくのは、昨日宿題のノートを貸さなかった事くらいか。
でも、あれはこなたが悪い。いつもわたしのノートを写すだけで、自分の力だけでは
全くしようとしないのだ。だから、わたしは『たまには自分でやりなさい』とノートを
貸さなかった。といっても、そんな事はすでに日常茶飯事であり、今に始まったやりとりではない。
そう、今更そんな事ぐらいでややこしくなったりする間柄ではないのだ。
それに、その時はこなたの『むー、けちー』の一言で終わったはずだし。
(それか、家で何かあったのか? もう一回、明日聞いてみよっかな)
本当に特に思い当たるところもなかったので、今日はこのことを考えるのをやめようとした。
ただ、もし明日こなたに特に事情も無く断られた場合。あの本はどうしよう。
今度はその事が頭の片隅を掠めていた。
まあ別に如何わしい本でもないし、勝手に買いに行けばいいだけの話なんだけど……
それでも、そうしてまでその本が欲しいとは思えない。こなたと一緒に買いに行く
という事の方が大事に思えるのだった。
(明日なら……一緒に来てくれるのかな)
ほんの些細な出来事だったはずなのに……いつもなら全然気にも留めない事の筈なのに……
どうしてか、今日はそのことをもう頭の中から離すことが出来なかった。
それに、その時はこなたの『むー、けちー』の一言で終わったはずだし。
(それか、家で何かあったのか? もう一回、明日聞いてみよっかな)
本当に特に思い当たるところもなかったので、今日はこのことを考えるのをやめようとした。
ただ、もし明日こなたに特に事情も無く断られた場合。あの本はどうしよう。
今度はその事が頭の片隅を掠めていた。
まあ別に如何わしい本でもないし、勝手に買いに行けばいいだけの話なんだけど……
それでも、そうしてまでその本が欲しいとは思えない。こなたと一緒に買いに行く
という事の方が大事に思えるのだった。
(明日なら……一緒に来てくれるのかな)
ほんの些細な出来事だったはずなのに……いつもなら全然気にも留めない事の筈なのに……
どうしてか、今日はそのことをもう頭の中から離すことが出来なかった。
翌日。つかさは日直当番らしく、朝早くに登校していったのでわたしは一人で学校に向かっていた。
バスから降り、徒歩での登校に変わったところで、正面に見慣れた長髪の少女を見つけた。
一房だけぴょんと飛び出たアホ毛が目印。前に映画を見に行った時は彼女が帽子を
かぶっていた為、その毛が隠れた状態で隣に並んでいたのにわたしとつかさは全然
気付かない、と言う事があったくらいだ。
その少女の後ろに歩み寄り、わたしは声を掛けた。
「おはよー、こなたー」
「あ、かがみん……おはよー」
いつもよりもテンションの低いこなたがそこに居た。
「どうしたのよ、朝から元気ないわねー。風邪でもひいたか?」
「いや、別にそんな大したことじゃないんだけどね……ふわぁー」
こなたはだるそうに大きな欠伸を一つした。朝一番から眠そうなこなただが、
それもやっぱり全然珍しくない。
それでも、どうしてこの姿を見ているとこんなに不安になるのだろう。
やっぱりまだ、昨日の事を引きずっているのかな。
「っんとにもう。どうせネトゲーのやりすぎか何かで寝てないんでしょ」
「まあ、そんなとこかな。あれ? かがみん、心配してくれてんの?」
バスから降り、徒歩での登校に変わったところで、正面に見慣れた長髪の少女を見つけた。
一房だけぴょんと飛び出たアホ毛が目印。前に映画を見に行った時は彼女が帽子を
かぶっていた為、その毛が隠れた状態で隣に並んでいたのにわたしとつかさは全然
気付かない、と言う事があったくらいだ。
その少女の後ろに歩み寄り、わたしは声を掛けた。
「おはよー、こなたー」
「あ、かがみん……おはよー」
いつもよりもテンションの低いこなたがそこに居た。
「どうしたのよ、朝から元気ないわねー。風邪でもひいたか?」
「いや、別にそんな大したことじゃないんだけどね……ふわぁー」
こなたはだるそうに大きな欠伸を一つした。朝一番から眠そうなこなただが、
それもやっぱり全然珍しくない。
それでも、どうしてこの姿を見ているとこんなに不安になるのだろう。
やっぱりまだ、昨日の事を引きずっているのかな。
「っんとにもう。どうせネトゲーのやりすぎか何かで寝てないんでしょ」
「まあ、そんなとこかな。あれ? かがみん、心配してくれてんの?」
「な!?」
急に顔が熱くなった。きっと今、わたしの顔は真っ赤に染まっているに違いない。
「べ、別にそんなことないわよ! ちょっと気になっただけなんだから」
こなたとは反対の方を向いてそう言うわたし。まずい、余計に顔が熱くなってきた。
このあと、どんな追い討ちがやってくるのか。少し身構えてしまう。
「……ん。ありがと」
「え? あ、うん……べつに、これくらいで礼なんかいらないけどさ」
やっぱり何かおかしい。いつもなら、鬱陶しい位につっこんでくるのに。
いや、別にそれを待っているわけじゃないんだけど……なかったらなかったで、
何だか寂しいと思うのは贅沢だろうか?
「それじゃあね、かがみ。またお昼に」
そんなことを考えている間にいつの間にか教室に着いていたらしい。
「あ、うん。授業中に寝るんじゃないわよ」
「頑張るよー」
そう言って、わたしはこなたを見送った。何だか、いつもよりもふらついている
ようなこなたの背中を見ながら。
急に顔が熱くなった。きっと今、わたしの顔は真っ赤に染まっているに違いない。
「べ、別にそんなことないわよ! ちょっと気になっただけなんだから」
こなたとは反対の方を向いてそう言うわたし。まずい、余計に顔が熱くなってきた。
このあと、どんな追い討ちがやってくるのか。少し身構えてしまう。
「……ん。ありがと」
「え? あ、うん……べつに、これくらいで礼なんかいらないけどさ」
やっぱり何かおかしい。いつもなら、鬱陶しい位につっこんでくるのに。
いや、別にそれを待っているわけじゃないんだけど……なかったらなかったで、
何だか寂しいと思うのは贅沢だろうか?
「それじゃあね、かがみ。またお昼に」
そんなことを考えている間にいつの間にか教室に着いていたらしい。
「あ、うん。授業中に寝るんじゃないわよ」
「頑張るよー」
そう言って、わたしはこなたを見送った。何だか、いつもよりもふらついている
ようなこなたの背中を見ながら。
昼食。わたしはいつもよりも少し早くこなた達のいる教室にお弁当を持って出かけた。
少し早くに向かったのは、今日の午前の授業は移動授業ばかりで、休憩中にこなたの
様子を確認することが出来なかったので、どうしているかが気になっていたからだった。
教室を覗き込んでみると、丁度こなた、つかさ、みゆきの三人が席を寄せ合うところだった。
「お、ちょうどいいタイミングじゃない」
「あ、お姉ちゃん」
「こんにちは、かがみさん。今日はいつもより少し早いですね」
「たまたま、こっちの授業が早く終わってね。どうせすることもないし、ちょっと早めに来ちゃった」
というのは建前。確かに授業はいつもより早く終わっていたが、
こなたが心配で……なんて死んでも言えない。
「も~、そんな嘘つかなくったっていいよ、かがみん」
と、こなたはやけにニヤニヤした顔でそう言った。
「な、なにがよ!?」
もしかして、感づかれてる!? と、少しどぎまぎして声が上ずってしまう。
少し早くに向かったのは、今日の午前の授業は移動授業ばかりで、休憩中にこなたの
様子を確認することが出来なかったので、どうしているかが気になっていたからだった。
教室を覗き込んでみると、丁度こなた、つかさ、みゆきの三人が席を寄せ合うところだった。
「お、ちょうどいいタイミングじゃない」
「あ、お姉ちゃん」
「こんにちは、かがみさん。今日はいつもより少し早いですね」
「たまたま、こっちの授業が早く終わってね。どうせすることもないし、ちょっと早めに来ちゃった」
というのは建前。確かに授業はいつもより早く終わっていたが、
こなたが心配で……なんて死んでも言えない。
「も~、そんな嘘つかなくったっていいよ、かがみん」
と、こなたはやけにニヤニヤした顔でそう言った。
「な、なにがよ!?」
もしかして、感づかれてる!? と、少しどぎまぎして声が上ずってしまう。
「ちょっとでもはやくお昼ご飯が食べたかったんでしょ? ほら、かがみんは食欲旺盛だから」
「おい、ちょっとまて!」
「あはは、冗談だよー」
こなたはそう言って、鞄から取り出したチョココロネを一口頬張った。
「まったく……もう」
わたしは、深い溜息と共に大きな安堵を感じていた。
良かった。今のこなたは、もういつもの調子に戻っているようだ。
「そういえばこなた。あんた、朝よりちょっと元気になってるわね。
どうせ、また授業中に眠ってたんでしょ?」
「ぎくっ……いやぁ、この時期のあの時間帯に寝るなって言う方が無理な話ですよ。かがみさん」
こなたは、チョココロネの大きな方(こなたに言わせれば頭の方)のチョコを舐めながら答えた。
「あんたねぇ、だからいつもの宿題でさえ分からなくなってくるのよ」
わたしは呆れながらも、お弁当を頬張る。今日のお弁当の当番はつかさだったので、
味のほうに問題はない。
「いやぁ、それは違う問題かと……ねぇ、つかさからも何か言ってよ~」
「あはは、実はわたしもうとうとしちゃって……」
「あんたもか!」
「うぅ~、暖かい日差しと英語の羅列を見てたらつい、うとうと~って」
「そうですよね。気が緩むとほわほわ~ってしちゃいますよね」
「……いや、なんかみゆきさんのはちょこ~っと違うような気がするんだけど」
「え? そうでしょうか?」
「わかるよ、ゆきちゃん! ほわほわ~ってしてうとうと~ってするんだよね」
「ごめん、つかさ……わたしには何だか判んないわ」
そうして、いつもと同じ昼休憩が過ぎていった。ただ、このときのこなたがやっぱり
いつもと少し違う様子だったと言う事に気付けないまま……
「おい、ちょっとまて!」
「あはは、冗談だよー」
こなたはそう言って、鞄から取り出したチョココロネを一口頬張った。
「まったく……もう」
わたしは、深い溜息と共に大きな安堵を感じていた。
良かった。今のこなたは、もういつもの調子に戻っているようだ。
「そういえばこなた。あんた、朝よりちょっと元気になってるわね。
どうせ、また授業中に眠ってたんでしょ?」
「ぎくっ……いやぁ、この時期のあの時間帯に寝るなって言う方が無理な話ですよ。かがみさん」
こなたは、チョココロネの大きな方(こなたに言わせれば頭の方)のチョコを舐めながら答えた。
「あんたねぇ、だからいつもの宿題でさえ分からなくなってくるのよ」
わたしは呆れながらも、お弁当を頬張る。今日のお弁当の当番はつかさだったので、
味のほうに問題はない。
「いやぁ、それは違う問題かと……ねぇ、つかさからも何か言ってよ~」
「あはは、実はわたしもうとうとしちゃって……」
「あんたもか!」
「うぅ~、暖かい日差しと英語の羅列を見てたらつい、うとうと~って」
「そうですよね。気が緩むとほわほわ~ってしちゃいますよね」
「……いや、なんかみゆきさんのはちょこ~っと違うような気がするんだけど」
「え? そうでしょうか?」
「わかるよ、ゆきちゃん! ほわほわ~ってしてうとうと~ってするんだよね」
「ごめん、つかさ……わたしには何だか判んないわ」
そうして、いつもと同じ昼休憩が過ぎていった。ただ、このときのこなたがやっぱり
いつもと少し違う様子だったと言う事に気付けないまま……
その日の放課後。わたしは、再度こなたを誘う事にした。
こなたは、自分の席に座ったまま帰る準備をしているところだった。
「こなたー。今日は帰りどうすんの?」
「ん……今日もちょっと遠慮するよ。せっかくなのに、ごめんね? かがみ」
「や、別にいいんだけどね」
ただ、その時のこなたはさっきの昼休みとは全くの別人の様に見える。もともと身体が
小さいこなただが、今日はさらに一段と小さく見え、まるでハムスターみたいな小動物
のようにさえ感じる。
こなたは、自分の席に座ったまま帰る準備をしているところだった。
「こなたー。今日は帰りどうすんの?」
「ん……今日もちょっと遠慮するよ。せっかくなのに、ごめんね? かがみ」
「や、別にいいんだけどね」
ただ、その時のこなたはさっきの昼休みとは全くの別人の様に見える。もともと身体が
小さいこなただが、今日はさらに一段と小さく見え、まるでハムスターみたいな小動物
のようにさえ感じる。
「それよりこなた。何か、あんた最近おかしくない? あたしたちに相談できる事とか
なら何だっていいなよ?」
「あー、うん。そんな大した事じゃないんだ。気遣ってくれてごめんね」
そう言って、こなたは立ち上がった。いや、立ち上がろうとした。けれど、こなたは
上手く立ち上がる事が出来ずに、わたしに寄りかかる形になった。
「ちょっ!! こ、こなた!?」
「あ、あれ? ごめん、かがみ……ちょっと、手……貸して」
その時にわたしにしがみ付いて来たこなたは、何だか羽根のように軽く感じた。
「……こなた。保健室行くわよ」
「え? ちょ、かがみ!」
わたしは、そのまま有無を言わさずこなたを保健室に連れて行った。
最初の方はこなたも抵抗していたが、今のこなたでは踏みとどまることはおろか
わたしの手を振り切ることも出来そうにない。
それをこなたも解ったのだろう、途中で諦めて無言で引っ張られ続けていた。
そのままお互いに何も話すことも無く、ただこなたの手を引っ張り続けること、数分。
保健室にたどり着いたわたしはノックもせずにドアを開けた。
「すみませーん……って誰も居ないみたいね」
つんとした、アルコールの匂いが充満している室内には、今入ってきたわたし達
以外は誰もいなかった。
……薬とか、使い方次第では如何わしいような事にでも使えそうな物を置いている
この部屋を、無人のまま鍵を掛けずに出かけるのは保険医として、それ以前に
教師と言う立場としてはどうかと思うが、今のわたしたちにとってはその方が
都合がよかった。何の説明も無くベッドを1台借りることが出来るのだし。まあ、途中で
先生が帰ってきても調子が悪くなったので休みに来た、と正直に言えば全く何の問題もないんだけど。
そのベッドにも誰も居ないのを確認したわたしは、一番近くにあるベッドの掛け布団を捲った。
「さ、こなた。ちょっとここで眠っていきなさい。ほんのちょっとでも仮眠を
取るだけで全然違うんだから」
こなたは、戸惑いながらも答えた。
「や、別にそこまでしてくれなくても全然大丈夫だけどさ……」
そう言いながらも目をこしこしと子供のように擦り始める。
「ほら、やっぱり眠いんじゃない。ちゃんとわたしが起こしてあげるから、心配しない」
半ば無理矢理にわたしはこなたの腕を引き、ベッドに腰掛けさせた。
なら何だっていいなよ?」
「あー、うん。そんな大した事じゃないんだ。気遣ってくれてごめんね」
そう言って、こなたは立ち上がった。いや、立ち上がろうとした。けれど、こなたは
上手く立ち上がる事が出来ずに、わたしに寄りかかる形になった。
「ちょっ!! こ、こなた!?」
「あ、あれ? ごめん、かがみ……ちょっと、手……貸して」
その時にわたしにしがみ付いて来たこなたは、何だか羽根のように軽く感じた。
「……こなた。保健室行くわよ」
「え? ちょ、かがみ!」
わたしは、そのまま有無を言わさずこなたを保健室に連れて行った。
最初の方はこなたも抵抗していたが、今のこなたでは踏みとどまることはおろか
わたしの手を振り切ることも出来そうにない。
それをこなたも解ったのだろう、途中で諦めて無言で引っ張られ続けていた。
そのままお互いに何も話すことも無く、ただこなたの手を引っ張り続けること、数分。
保健室にたどり着いたわたしはノックもせずにドアを開けた。
「すみませーん……って誰も居ないみたいね」
つんとした、アルコールの匂いが充満している室内には、今入ってきたわたし達
以外は誰もいなかった。
……薬とか、使い方次第では如何わしいような事にでも使えそうな物を置いている
この部屋を、無人のまま鍵を掛けずに出かけるのは保険医として、それ以前に
教師と言う立場としてはどうかと思うが、今のわたしたちにとってはその方が
都合がよかった。何の説明も無くベッドを1台借りることが出来るのだし。まあ、途中で
先生が帰ってきても調子が悪くなったので休みに来た、と正直に言えば全く何の問題もないんだけど。
そのベッドにも誰も居ないのを確認したわたしは、一番近くにあるベッドの掛け布団を捲った。
「さ、こなた。ちょっとここで眠っていきなさい。ほんのちょっとでも仮眠を
取るだけで全然違うんだから」
こなたは、戸惑いながらも答えた。
「や、別にそこまでしてくれなくても全然大丈夫だけどさ……」
そう言いながらも目をこしこしと子供のように擦り始める。
「ほら、やっぱり眠いんじゃない。ちゃんとわたしが起こしてあげるから、心配しない」
半ば無理矢理にわたしはこなたの腕を引き、ベッドに腰掛けさせた。
「……うん。それじゃ、ちょっとだけ……その言葉に甘えよっかな」
たはは、と照れ隠しに薄く笑いながらもこなたはベッドに潜り込むことにしたようだ。
「それじゃ、30分くらい寝るね。……それと、やっぱりかがみは先に帰っててよ」
携帯でアラームをセットしながらこなたはわたしにそう言った。
「今のその状態のあんたを放って帰れるわけないでしょ? 30分眠るくらいだと
全然安心できないわよ」
「……でもあんまり時間もないし。30分くらいしか時間取れないや」
さっきからこなたは頻りに時間を気にしてる。何かこの後にでも誰かと約束でも
有るのだろうか? そう思うと、なぜか胸の辺りがちくりと痛むような気がした。
「今更、わたしに気を使わなくてもいいわよ。どうせわたしは今日も暇だしね」
自嘲気味にそう言ってこなたにはみかんだ。
「そこまで言うなら……頼もうかな。30分くらい経ったら起こして……」
言い終わるが早いか、こなたはそのまま夢の世界へと旅立っていった。
「もう寝ちゃった。まったく、自分の身体を考えて遊びなさいよね」
それにしても、本当にこなたは大丈夫なのかしら? 今までも、何回か朝まで
ネトゲーとかして眠そうなこなたを見たことはあったけど、こう何日も続けて
(しかも日に日に酷くなっているような気がする)というのは、初めてじゃ?
それともやっぱり何か言えない事件とかが起きてるとか……?
「くー…すかー……」
「そんな訳ないか」
とても幸せそうなこなたの寝顔を見ていると、そんな事を考えるのもばかばからしくなった。
たはは、と照れ隠しに薄く笑いながらもこなたはベッドに潜り込むことにしたようだ。
「それじゃ、30分くらい寝るね。……それと、やっぱりかがみは先に帰っててよ」
携帯でアラームをセットしながらこなたはわたしにそう言った。
「今のその状態のあんたを放って帰れるわけないでしょ? 30分眠るくらいだと
全然安心できないわよ」
「……でもあんまり時間もないし。30分くらいしか時間取れないや」
さっきからこなたは頻りに時間を気にしてる。何かこの後にでも誰かと約束でも
有るのだろうか? そう思うと、なぜか胸の辺りがちくりと痛むような気がした。
「今更、わたしに気を使わなくてもいいわよ。どうせわたしは今日も暇だしね」
自嘲気味にそう言ってこなたにはみかんだ。
「そこまで言うなら……頼もうかな。30分くらい経ったら起こして……」
言い終わるが早いか、こなたはそのまま夢の世界へと旅立っていった。
「もう寝ちゃった。まったく、自分の身体を考えて遊びなさいよね」
それにしても、本当にこなたは大丈夫なのかしら? 今までも、何回か朝まで
ネトゲーとかして眠そうなこなたを見たことはあったけど、こう何日も続けて
(しかも日に日に酷くなっているような気がする)というのは、初めてじゃ?
それともやっぱり何か言えない事件とかが起きてるとか……?
「くー…すかー……」
「そんな訳ないか」
とても幸せそうなこなたの寝顔を見ていると、そんな事を考えるのもばかばからしくなった。
―――こなたが眠り始めておよそ10分が過ぎただろうか。
特にすることのないわたしは、かなりの暇を持て余していた。こなたが目を覚ました時に
わたしが居ないと、こなたを待つと決めた意味が無いので保健室を出る事は最初から
考えてはいない。だからと言って、この部屋の中に今のわたしが時間をつぶせそうな
ものが何も無いのも事実。そして、わたしの鞄の中には今日の授業で使った教科書類
しか入っていないし。
(……とっても幸せそうな顔で眠っちゃって)
となると、することはこなたの寝顔観察しか残っていなかったのである。
べ、別に寝顔が見たいんじゃなくて、きちんと眠れてるか心配なの、ただそれだけなの!
と誰に聞かれてる訳でも無いのに、自分にそう言い聞かせてしまう。
(……それにしても)
特にすることのないわたしは、かなりの暇を持て余していた。こなたが目を覚ました時に
わたしが居ないと、こなたを待つと決めた意味が無いので保健室を出る事は最初から
考えてはいない。だからと言って、この部屋の中に今のわたしが時間をつぶせそうな
ものが何も無いのも事実。そして、わたしの鞄の中には今日の授業で使った教科書類
しか入っていないし。
(……とっても幸せそうな顔で眠っちゃって)
となると、することはこなたの寝顔観察しか残っていなかったのである。
べ、別に寝顔が見たいんじゃなくて、きちんと眠れてるか心配なの、ただそれだけなの!
と誰に聞かれてる訳でも無いのに、自分にそう言い聞かせてしまう。
(……それにしても)
このこなたの寝顔は反則だ。何の感情も込めずに客観的に言うならば『死んだように
眠っている』のだが、その手の道の方に語っていただくならば、『もう、食べちゃいたい』
とお墨付きを頂けることだろう。
(……何考えてるのよ、わたし。こなたに悪い影響受けすぎかも)
一人顔を赤面させ、心の中で自分にツッコミを入れてみる。
(それにしても……)
少し落ち着いたところで、また先程と同じ言葉が浮かぶ。
(こなたも熟睡してるみたいだし、ちょっと位なら触っても……いいよね)
「すー……すー……」
その間も、こなたからは規則正しい寝息が聞こえていた。まあ、何も音を立てて
いないし、当然と言えば当然か。
(ちょっとだけ……ちょっとだけ……)
わたしは、しずしずと右手の人差し指でこなたのほっぺを突付いてみた。
「うわっ!」
思わず声がでてしまった。でも、それほどにこなたのほっぺは柔らかく、本当に
柔らかいの一言で形容していいのかわからないほどだ。全国的に有名な某幼稚園児
のモノマネが他からの視線が気になるほどそっくりなのも頷ける。
(はぁ……きもちいい。これはくせになるかも)
「ううっ……むにゃむにゃ…んんぅ」
よほど深い眠りにあるのか、嫌がる素振りは見せるものの起きる様子はない。
そして、無抵抗の相手だとエスカレートしてしまうのが人と言う生き物。調子に乗った
わたしは、つい両手でこなたの両頬を突付き始めてしまった。―――特に後先も考えずに。
(うりゃ、えいっえいっ)
「んむぅ……んん、あむっ」
「うひゃぁっ!? こ、こなたっ!?」
「ちゅぱっ、じゅじゅ、じゅる……」
この時ばかりは完璧に油断していた。おそらく寝苦しかったであろうこなたは、寝返り
による抵抗でわたしの両の魔の手から逃れ、こなたの無意識の逆襲がここから始まった。
寝返りの方向により、逃げ送れたわたしの右手がこなたの口に捕獲されてしまったのだ。
つまりは、俗に言う指しゃぶ状態という事である。
「ちょ、こ、こなた! あんた、起きてるんじゃないの!?」
「じゅるじゅる、ちゅぱっ、んむっ」
返事はない。今も指を吸い続けているのでただの屍ではないようだが(あきらかに
こなたの影響)、どうやら意識は本当に無いようだ。今も一心不乱にわたしの指を子供、
というよりも赤ちゃんのようにしゃぶっている。いや、それも少し違うような……
赤ちゃんならこんなに舌を絡ませたり、涎を塗りたくったりはしないか。
眠っている』のだが、その手の道の方に語っていただくならば、『もう、食べちゃいたい』
とお墨付きを頂けることだろう。
(……何考えてるのよ、わたし。こなたに悪い影響受けすぎかも)
一人顔を赤面させ、心の中で自分にツッコミを入れてみる。
(それにしても……)
少し落ち着いたところで、また先程と同じ言葉が浮かぶ。
(こなたも熟睡してるみたいだし、ちょっと位なら触っても……いいよね)
「すー……すー……」
その間も、こなたからは規則正しい寝息が聞こえていた。まあ、何も音を立てて
いないし、当然と言えば当然か。
(ちょっとだけ……ちょっとだけ……)
わたしは、しずしずと右手の人差し指でこなたのほっぺを突付いてみた。
「うわっ!」
思わず声がでてしまった。でも、それほどにこなたのほっぺは柔らかく、本当に
柔らかいの一言で形容していいのかわからないほどだ。全国的に有名な某幼稚園児
のモノマネが他からの視線が気になるほどそっくりなのも頷ける。
(はぁ……きもちいい。これはくせになるかも)
「ううっ……むにゃむにゃ…んんぅ」
よほど深い眠りにあるのか、嫌がる素振りは見せるものの起きる様子はない。
そして、無抵抗の相手だとエスカレートしてしまうのが人と言う生き物。調子に乗った
わたしは、つい両手でこなたの両頬を突付き始めてしまった。―――特に後先も考えずに。
(うりゃ、えいっえいっ)
「んむぅ……んん、あむっ」
「うひゃぁっ!? こ、こなたっ!?」
「ちゅぱっ、じゅじゅ、じゅる……」
この時ばかりは完璧に油断していた。おそらく寝苦しかったであろうこなたは、寝返り
による抵抗でわたしの両の魔の手から逃れ、こなたの無意識の逆襲がここから始まった。
寝返りの方向により、逃げ送れたわたしの右手がこなたの口に捕獲されてしまったのだ。
つまりは、俗に言う指しゃぶ状態という事である。
「ちょ、こ、こなた! あんた、起きてるんじゃないの!?」
「じゅるじゅる、ちゅぱっ、んむっ」
返事はない。今も指を吸い続けているのでただの屍ではないようだが(あきらかに
こなたの影響)、どうやら意識は本当に無いようだ。今も一心不乱にわたしの指を子供、
というよりも赤ちゃんのようにしゃぶっている。いや、それも少し違うような……
赤ちゃんならこんなに舌を絡ませたり、涎を塗りたくったりはしないか。
「本当に……起きてないのよね? あんた……」
わたしの問いに答えずに、一心不乱にわたしの指を嘗め回すこなた。それこそ、
赤ちゃんのように両手でわたしの指を掴んで吸っているわけではないので、引き抜こうと
思えば簡単に抜ける筈だ。それでも、わたしは指を引き抜くことが出来なかった。
急な事で驚いていた事もあるけれど……それ以上に、ある感情がわたしの中に渦巻いていた。
「……!! も、もういいわよね…」
瞬時に我に帰ったわたしは、恐る恐る右手をこなたの口から抜き出した。案の定と
言うか何と言うか。私の人差し指はこなたの涎でベタベタになっている。あまり
長い時間ではなかったものの、その少ない時間を上回り、それでも有り余る程の水分と
先程までの行動により、人差し指は学校の水泳の後のようにふやけきっていた。
少し湯気が立っているのが変に生々しい。
「うわぁ……やりすぎでしょ……これ」
わたしはまじまじと今までこなたの口内に居た人差し指を見つめた。今まで生暖かい
場所にあったため、少し外の空気が冷たく感じる。わたしは急いで保健室の隅に設置
されている水道へと向かった。流石に、この手のままでは色々と具合が悪い。ただ、
一番の理由はこなたの涎がもの凄く粘着性が高いことで、こなたに指を吸われた
(舐められた?)こと事態は全くと言っていいほど気にはしていなかったけれど。
蛇口を捻り、水が勢いよく流れ始める。でも、わたしは右手をその流水へとすぐに
浸す事はできなかった。別に咄嗟の行動と言うほどのものではないけれど、そのときの
わたしには、それを止める事は出来なかった。
右手を顔の前まで持って行き、再度観察。指先が完璧にふやけているのはさっきの通り。
それ以外に特に変わっているところは無い。そして次にわたしの取った行動は、指先の
匂いを嗅ぐ事だった。正しく言い換えるならば、『指先の匂い』ではなく、『指先に
ついたこなたの匂い』の確認である。それは、少し甘い匂いがしていて、わたしの心を
さらにどぎまぎとさせた。
(これが……こなたの、におい)
思う存分に匂いを堪能したあと、その間ずっと流れていた水道へと右手を伸ばした。
火照った指先に、冷たい水道水が気持ちよく流れる。そして、その冷たさがわたしの
心の火照りも徐々に冷ましてゆく。それとは反対に、わたしの頭は真っ赤な血が上って
いくのが目の前の壁に設置されている鏡で否応なしに確認させられた。
(…って! なにやってんのわたし!? 舐められた指の匂いなんて嗅いで……
そんなのただの変態じゃないの!!?)
水道水が流れる量と比例するかのごとく、わたしは段々と自己嫌悪に陥っていった。
だが、そんな心の奥底でもまだ、先程のこなたの匂いが染み付いて離れなかった。
わたしの問いに答えずに、一心不乱にわたしの指を嘗め回すこなた。それこそ、
赤ちゃんのように両手でわたしの指を掴んで吸っているわけではないので、引き抜こうと
思えば簡単に抜ける筈だ。それでも、わたしは指を引き抜くことが出来なかった。
急な事で驚いていた事もあるけれど……それ以上に、ある感情がわたしの中に渦巻いていた。
「……!! も、もういいわよね…」
瞬時に我に帰ったわたしは、恐る恐る右手をこなたの口から抜き出した。案の定と
言うか何と言うか。私の人差し指はこなたの涎でベタベタになっている。あまり
長い時間ではなかったものの、その少ない時間を上回り、それでも有り余る程の水分と
先程までの行動により、人差し指は学校の水泳の後のようにふやけきっていた。
少し湯気が立っているのが変に生々しい。
「うわぁ……やりすぎでしょ……これ」
わたしはまじまじと今までこなたの口内に居た人差し指を見つめた。今まで生暖かい
場所にあったため、少し外の空気が冷たく感じる。わたしは急いで保健室の隅に設置
されている水道へと向かった。流石に、この手のままでは色々と具合が悪い。ただ、
一番の理由はこなたの涎がもの凄く粘着性が高いことで、こなたに指を吸われた
(舐められた?)こと事態は全くと言っていいほど気にはしていなかったけれど。
蛇口を捻り、水が勢いよく流れ始める。でも、わたしは右手をその流水へとすぐに
浸す事はできなかった。別に咄嗟の行動と言うほどのものではないけれど、そのときの
わたしには、それを止める事は出来なかった。
右手を顔の前まで持って行き、再度観察。指先が完璧にふやけているのはさっきの通り。
それ以外に特に変わっているところは無い。そして次にわたしの取った行動は、指先の
匂いを嗅ぐ事だった。正しく言い換えるならば、『指先の匂い』ではなく、『指先に
ついたこなたの匂い』の確認である。それは、少し甘い匂いがしていて、わたしの心を
さらにどぎまぎとさせた。
(これが……こなたの、におい)
思う存分に匂いを堪能したあと、その間ずっと流れていた水道へと右手を伸ばした。
火照った指先に、冷たい水道水が気持ちよく流れる。そして、その冷たさがわたしの
心の火照りも徐々に冷ましてゆく。それとは反対に、わたしの頭は真っ赤な血が上って
いくのが目の前の壁に設置されている鏡で否応なしに確認させられた。
(…って! なにやってんのわたし!? 舐められた指の匂いなんて嗅いで……
そんなのただの変態じゃないの!!?)
水道水が流れる量と比例するかのごとく、わたしは段々と自己嫌悪に陥っていった。
だが、そんな心の奥底でもまだ、先程のこなたの匂いが染み付いて離れなかった。
「ふわぁ~。よく寝たー」
それからさらに数分。こなたは何事も無かったかのようにあっさりと目覚めた。
よく朝に寝坊をするような奴とは思えない程の寝起きの良さだった。
「それは、やっぱり昼寝と睡眠の違いだよ。かがみん」
「え? 昼寝と睡眠って何か違うの?」
「かがみってさ、意外と知らない事多いよね」
「うるさいっ! あんたが余計な事まで知りすぎなのよ」
「別に余計な事ととは思わないけどね。さて、それじゃ帰ろっか?」
そう言うとこなたは、ベッドから抜け出して大きく伸びをした。
「んん~、やっぱり30分だけでもしっかり寝ると違うねぇ」
「でしょ? それと、今日くらいは早く寝なさいよ」
「なんかかがみん……お母さんみたいだね」
「うっさい! あんたがそんなだからでしょ? っとに、つかさといいあんたといい」
そんな軽口を話しつつわたしたちは保健室を後にした。校舎の外に出ると、夕日と
呼ぶにはまだ少しだけ早いけれど、着々と日の入りの準備をし、赤くなりつつある太陽が
目の前にあった。さっきの事を考えるとまだ少し顔が火照ってしまうけれど、オレンジ色
の輝く太陽の前ではきっと誰にも気付かれることはないだろう。特に、わたしの隣を
歩いている身体が小さな、けれどその存在はとても大きな友人には、絶対に
気付かれたくなかったから好都合だった。
それからさらに数分。こなたは何事も無かったかのようにあっさりと目覚めた。
よく朝に寝坊をするような奴とは思えない程の寝起きの良さだった。
「それは、やっぱり昼寝と睡眠の違いだよ。かがみん」
「え? 昼寝と睡眠って何か違うの?」
「かがみってさ、意外と知らない事多いよね」
「うるさいっ! あんたが余計な事まで知りすぎなのよ」
「別に余計な事ととは思わないけどね。さて、それじゃ帰ろっか?」
そう言うとこなたは、ベッドから抜け出して大きく伸びをした。
「んん~、やっぱり30分だけでもしっかり寝ると違うねぇ」
「でしょ? それと、今日くらいは早く寝なさいよ」
「なんかかがみん……お母さんみたいだね」
「うっさい! あんたがそんなだからでしょ? っとに、つかさといいあんたといい」
そんな軽口を話しつつわたしたちは保健室を後にした。校舎の外に出ると、夕日と
呼ぶにはまだ少しだけ早いけれど、着々と日の入りの準備をし、赤くなりつつある太陽が
目の前にあった。さっきの事を考えるとまだ少し顔が火照ってしまうけれど、オレンジ色
の輝く太陽の前ではきっと誰にも気付かれることはないだろう。特に、わたしの隣を
歩いている身体が小さな、けれどその存在はとても大きな友人には、絶対に
気付かれたくなかったから好都合だった。
「あ~……なんか、変に疲れた」
何だか久しぶりのこなたと二人きりでの下校。結局どこにも寄り道をせずにそのまま
真っ直ぐに帰宅したわたしは、さっさと自分の部屋へと戻り、制服から着替えもしないで
ベッドへと突っ伏した。いつもの休憩時間と同じようなやりとりをこなたと交わしながら
の帰宅は何だかとても照れくさい感じがした。夢のような、それもとても酷い悪夢の
ような30分が過ぎたあとの所為なのだろうけど。
(夢のような……ね)
また、少し自嘲気味になるわたし。無意識とはいえ、他人に指を嘗め回されていたと
言うのに。その時の感情が嫌悪感だったなら、まだ正常だったのかもしれない……。
でも、その時、確かにわたしは……明らかな『快感』を覚えていた。もちろん、他人に
指を舐められた経験なんて、一度も無いけれど……きっと、こなた以外の人では、
あの時の感情には到らなかっただろう。
何だか久しぶりのこなたと二人きりでの下校。結局どこにも寄り道をせずにそのまま
真っ直ぐに帰宅したわたしは、さっさと自分の部屋へと戻り、制服から着替えもしないで
ベッドへと突っ伏した。いつもの休憩時間と同じようなやりとりをこなたと交わしながら
の帰宅は何だかとても照れくさい感じがした。夢のような、それもとても酷い悪夢の
ような30分が過ぎたあとの所為なのだろうけど。
(夢のような……ね)
また、少し自嘲気味になるわたし。無意識とはいえ、他人に指を嘗め回されていたと
言うのに。その時の感情が嫌悪感だったなら、まだ正常だったのかもしれない……。
でも、その時、確かにわたしは……明らかな『快感』を覚えていた。もちろん、他人に
指を舐められた経験なんて、一度も無いけれど……きっと、こなた以外の人では、
あの時の感情には到らなかっただろう。
(そっか……わたしってば……)
こなたと知り合って一年以上。初めは、気の合ういい奴と思っていた。最近になって、
暇な時には一緒に居るのが当たり前の存在になっていくのは自覚していたけれど……
そこから先の段階に進むことになるとは、想像だにしていなかった。
今、わたしは初めてその感情に向い合っている。意外にもスカッとさわやかな気分で
居る事が出来た。もっとどんよりとした気分で沈み込むものかと思っていたのだけれど。
(………なんだかなぁ)
そもそも、数日前に発売されたあのシリーズの最新刊だって、買い始めたきっかけは
こなたなのだ。別に、内容が面白くないわけではないけれど、こなたに誘ってもらわな
ければきっと出会うことの無い本だったとは思う。それ以来、新刊が発売されるごとに
こなたと一緒に書店へと向かい買い集める事になったのだった。(こなた曰く、発売元の
レーベルの一押し作品らしく、よく帯についてくる応募券目当てだったらしいが)
(はぁ、あいつは今ごろ気楽にゲームでもしてるんだろうなぁ)
仰向けになるように寝返りを打ち、こなたの事を思い返す。初めて会った時のこと。
2年に進級し、同じクラスになれなくて少しショックを受けたこと。そして、いつもの
4人と引率の黒井先生とこなたの従姉のゆいさんの6人での夏の海への旅行。みんな
一緒に入った大浴場。『てもてー、てもてー』と自らの長髪を使い、某CMの物真似
とかしていたっけ。(わたしには何をしてるのかよくわからなかったけど)
これまでのこなたとの思い出が走馬灯とまでは言わないまでも、色々と浮かんでは
消えていく。そして、様々に浮かぶ思い出の中でも先程の『てもてー』の部分、あの
一瞬にも満たない出来事が数回、頭の中に浮かんでは消え、浮かんでは消え、と言う事を
繰り返していた。さらに、先程のこなたの口内の感触と、指先に残っていたこなたの匂い
が頭を掠める。そんな事を考えていた所為だろう。気分は高揚し、顔は紅潮し、
知らず知らずのうちに、わたしは右手を自分の局部にあてがっていた。
制服のスカートを少し捲り、白いショーツの上から少しだけ自分の性器に触れる。
普段はトイレの時にしか触らないその場所は、すでにしっとりと湿り気を帯びており、
ショーツが肌にぴったりとくっ付くほどになっている。
(うわ……まるでおもらししたみたい)
何処か冷めた感覚で今の状態を把握している自分に少し驚きながらも、自分の右手の
動きを止めることは出来そうにない。それどころか、少しずつ動きはエスカレートして
いき、ショーツの上を行ったり来たりするのみではなく、ショーツの中に指を入れ、
直に性器に触れ始めていた。
こなたと知り合って一年以上。初めは、気の合ういい奴と思っていた。最近になって、
暇な時には一緒に居るのが当たり前の存在になっていくのは自覚していたけれど……
そこから先の段階に進むことになるとは、想像だにしていなかった。
今、わたしは初めてその感情に向い合っている。意外にもスカッとさわやかな気分で
居る事が出来た。もっとどんよりとした気分で沈み込むものかと思っていたのだけれど。
(………なんだかなぁ)
そもそも、数日前に発売されたあのシリーズの最新刊だって、買い始めたきっかけは
こなたなのだ。別に、内容が面白くないわけではないけれど、こなたに誘ってもらわな
ければきっと出会うことの無い本だったとは思う。それ以来、新刊が発売されるごとに
こなたと一緒に書店へと向かい買い集める事になったのだった。(こなた曰く、発売元の
レーベルの一押し作品らしく、よく帯についてくる応募券目当てだったらしいが)
(はぁ、あいつは今ごろ気楽にゲームでもしてるんだろうなぁ)
仰向けになるように寝返りを打ち、こなたの事を思い返す。初めて会った時のこと。
2年に進級し、同じクラスになれなくて少しショックを受けたこと。そして、いつもの
4人と引率の黒井先生とこなたの従姉のゆいさんの6人での夏の海への旅行。みんな
一緒に入った大浴場。『てもてー、てもてー』と自らの長髪を使い、某CMの物真似
とかしていたっけ。(わたしには何をしてるのかよくわからなかったけど)
これまでのこなたとの思い出が走馬灯とまでは言わないまでも、色々と浮かんでは
消えていく。そして、様々に浮かぶ思い出の中でも先程の『てもてー』の部分、あの
一瞬にも満たない出来事が数回、頭の中に浮かんでは消え、浮かんでは消え、と言う事を
繰り返していた。さらに、先程のこなたの口内の感触と、指先に残っていたこなたの匂い
が頭を掠める。そんな事を考えていた所為だろう。気分は高揚し、顔は紅潮し、
知らず知らずのうちに、わたしは右手を自分の局部にあてがっていた。
制服のスカートを少し捲り、白いショーツの上から少しだけ自分の性器に触れる。
普段はトイレの時にしか触らないその場所は、すでにしっとりと湿り気を帯びており、
ショーツが肌にぴったりとくっ付くほどになっている。
(うわ……まるでおもらししたみたい)
何処か冷めた感覚で今の状態を把握している自分に少し驚きながらも、自分の右手の
動きを止めることは出来そうにない。それどころか、少しずつ動きはエスカレートして
いき、ショーツの上を行ったり来たりするのみではなく、ショーツの中に指を入れ、
直に性器に触れ始めていた。
(な、なにこれ……とま…らな、い……!)
異性どころか同姓にすら見せた事の無い、自分の秘所に自分の指が侵入していく。
前にこなたの家で18禁のゲームをしているところを見たことがあったので、一人で
こういう行為をする、と言う事を知識では知っていた。だが、それがこれほどの快感を
呼ぶものとは全く想像の範疇外のことだった。
(ん……声に…出ちゃいそう……)
初めは無意識に行っていた行為だった。こなたの裸と、こなたの匂い。そして、
こなたの身体の柔らかさ。その全ての感覚が自分の中で、今まさに目の前にあるか
の様に感じられる。
(くふっ……はぁ…)
初めての自慰のため、膣内に指を挿し入れすることまでは出来ないが、今の自分には
クリトリス周辺を指で撫でる程度の刺激で十分だった。まして、今の自分の指の感覚は
ほぼ無く、第3者に触られているような錯覚に陥りそうになるくらいだった。そう、
つまりこなたに吸われたこの右手が、こなたの指としか思えなくなってしまうほどに。
くちゅっ、と水気の多い音が自分の耳にも聞こえ始める。自分の手の感覚でしか
わからないが、きっとショーツはもの凄いことになっていることだろう。だが、
そんな事に構いもせず、わたしは右手のこの動きを止めることは出来ない。
そして、遂にわたしの指は、この快楽によって敏感になっている性器の先端にある
陰核へと標的を定めた。
「ひゃうっ!」
つい、声に出してしまった。だが、それほどの快楽がそこには潜んでいたのだ。
今までのじわりじわりとした鈍痛のような快楽とは一変。まさに脊髄に直接ながされた
電流のような一瞬の快楽の波。その波にわたしはどこまでも流されていく。
「ひっ、や、と、とまんない…っ!」
人差し指と中指で自身の位置を主張し始めていた陰核を挟み、少しの摩擦を与える。
距離にして1ミリにも満たない往復でも、わたしの快楽の絶頂へと押し上げていく。
「んふっ! んんっ、ふっ……」
咄嗟に自分の左腕を自分の口に含ませ、声を抑える。ソコへの刺激は、一瞬により
わたしを絶頂へと連れて行った―――
異性どころか同姓にすら見せた事の無い、自分の秘所に自分の指が侵入していく。
前にこなたの家で18禁のゲームをしているところを見たことがあったので、一人で
こういう行為をする、と言う事を知識では知っていた。だが、それがこれほどの快感を
呼ぶものとは全く想像の範疇外のことだった。
(ん……声に…出ちゃいそう……)
初めは無意識に行っていた行為だった。こなたの裸と、こなたの匂い。そして、
こなたの身体の柔らかさ。その全ての感覚が自分の中で、今まさに目の前にあるか
の様に感じられる。
(くふっ……はぁ…)
初めての自慰のため、膣内に指を挿し入れすることまでは出来ないが、今の自分には
クリトリス周辺を指で撫でる程度の刺激で十分だった。まして、今の自分の指の感覚は
ほぼ無く、第3者に触られているような錯覚に陥りそうになるくらいだった。そう、
つまりこなたに吸われたこの右手が、こなたの指としか思えなくなってしまうほどに。
くちゅっ、と水気の多い音が自分の耳にも聞こえ始める。自分の手の感覚でしか
わからないが、きっとショーツはもの凄いことになっていることだろう。だが、
そんな事に構いもせず、わたしは右手のこの動きを止めることは出来ない。
そして、遂にわたしの指は、この快楽によって敏感になっている性器の先端にある
陰核へと標的を定めた。
「ひゃうっ!」
つい、声に出してしまった。だが、それほどの快楽がそこには潜んでいたのだ。
今までのじわりじわりとした鈍痛のような快楽とは一変。まさに脊髄に直接ながされた
電流のような一瞬の快楽の波。その波にわたしはどこまでも流されていく。
「ひっ、や、と、とまんない…っ!」
人差し指と中指で自身の位置を主張し始めていた陰核を挟み、少しの摩擦を与える。
距離にして1ミリにも満たない往復でも、わたしの快楽の絶頂へと押し上げていく。
「んふっ! んんっ、ふっ……」
咄嗟に自分の左腕を自分の口に含ませ、声を抑える。ソコへの刺激は、一瞬により
わたしを絶頂へと連れて行った―――
それから数分。わたしは自分の現状を客観的に見たあと、頭の中が真っ白になりながら
も、制服から着替える、という選択肢を選んだ。もちろん、ショーツも新しいものに
履き替えることを忘れない。
も、制服から着替える、という選択肢を選んだ。もちろん、ショーツも新しいものに
履き替えることを忘れない。
着替えの最中、廊下をパタパタ、という音をたてこの部屋に向かってくる気配がした。
そう思った瞬間、ドアが誰かの手によるノックが聞こえた。
「もう、お姉ちゃん。どこ行ってたの?」
それは、つかさだった。
「わたし、今日は日直だったから教室の戸締りとかしてたのに。知らないうちに
こなちゃんと二人でどっか行っちゃってたよね? 真っ直ぐお家に帰ってたのかな?
と思って帰ってきたらまだ帰ってきてなかったし。遊びに行くんだったらわたしも
誘って欲しいよー」
どうやら、つかさは自分ひとりが仲間はずれにされ、みんながどこか遊びに行った
ものと思ったようだ。
「あー、ごめんごめん。こなたがちょっと調子悪そうだったから保健室に行ってたのよ」
「え!? そうだったの? で、こなちゃん、どうだった?」
「んー、単なる寝不足じゃない? ベッドに寝かせたらすぐにぐっすりと寝ちゃったし」
「そっかー。……でも、お姉ちゃん。次は出来たらわたしにも一言掛けて欲しいな」
「うん。ゴメンね、つかさ」
そう言って、つかさは部屋を出て行った。つかさには申し訳ないが、すっかりつかさの
事を忘れていた。もし、つかさがあと数分この部屋に来るのが早かったら、と思うと
冷や汗がどっと湧き出て来るような気がする。
「ほんとに、ゴメン……」
つかさがこの部屋を出て行ってから、わたしは心からつかさに謝った
「わたし、最悪なお姉ちゃんだ……」
仲の良い友達同士で好きだ嫌いだの恋愛感情を持ってしまった。しかも、相手は同性、
妹として、いや、同じ女性として気持ちがいいわけがない。
そういった後ろめたさでいっぱいになりながらも、わたしはつかさに謝ることしか
出来なかった。いつか、つかさにこの事を伝えなくてはいけないけれど、今はまだ
その勇気はない。けれど、わたしは信じている。きっと、つかさにも、そしてこなたにも
この思いを伝えるその時が来ると。
「さて……と」
きっかけかどうだの、今までがどうだのと、うだうだ考えていても仕方ない。
ここは一つ、気持ちをすぱっと切り替えよう。
そう、だってまだ今日の宿題だって手をつけていないのだから。
とりあえず、自分の机に向かって教科書とノートを開くことにする。無心で勉強を
していればさっきの事を一時でも忘れられるはずだから。
そう思った瞬間、ドアが誰かの手によるノックが聞こえた。
「もう、お姉ちゃん。どこ行ってたの?」
それは、つかさだった。
「わたし、今日は日直だったから教室の戸締りとかしてたのに。知らないうちに
こなちゃんと二人でどっか行っちゃってたよね? 真っ直ぐお家に帰ってたのかな?
と思って帰ってきたらまだ帰ってきてなかったし。遊びに行くんだったらわたしも
誘って欲しいよー」
どうやら、つかさは自分ひとりが仲間はずれにされ、みんながどこか遊びに行った
ものと思ったようだ。
「あー、ごめんごめん。こなたがちょっと調子悪そうだったから保健室に行ってたのよ」
「え!? そうだったの? で、こなちゃん、どうだった?」
「んー、単なる寝不足じゃない? ベッドに寝かせたらすぐにぐっすりと寝ちゃったし」
「そっかー。……でも、お姉ちゃん。次は出来たらわたしにも一言掛けて欲しいな」
「うん。ゴメンね、つかさ」
そう言って、つかさは部屋を出て行った。つかさには申し訳ないが、すっかりつかさの
事を忘れていた。もし、つかさがあと数分この部屋に来るのが早かったら、と思うと
冷や汗がどっと湧き出て来るような気がする。
「ほんとに、ゴメン……」
つかさがこの部屋を出て行ってから、わたしは心からつかさに謝った
「わたし、最悪なお姉ちゃんだ……」
仲の良い友達同士で好きだ嫌いだの恋愛感情を持ってしまった。しかも、相手は同性、
妹として、いや、同じ女性として気持ちがいいわけがない。
そういった後ろめたさでいっぱいになりながらも、わたしはつかさに謝ることしか
出来なかった。いつか、つかさにこの事を伝えなくてはいけないけれど、今はまだ
その勇気はない。けれど、わたしは信じている。きっと、つかさにも、そしてこなたにも
この思いを伝えるその時が来ると。
「さて……と」
きっかけかどうだの、今までがどうだのと、うだうだ考えていても仕方ない。
ここは一つ、気持ちをすぱっと切り替えよう。
そう、だってまだ今日の宿題だって手をつけていないのだから。
とりあえず、自分の机に向かって教科書とノートを開くことにする。無心で勉強を
していればさっきの事を一時でも忘れられるはずだから。
わたしは、この一時間ほどの邪念をすべて打ち払う様に宿題に取り掛かった。
宿題自体は全然たいしたことのない内容で、量も少なかったけれど、わたしの気持ちを
落ち着かせるためには適度な量だった。
宿題自体は全然たいしたことのない内容で、量も少なかったけれど、わたしの気持ちを
落ち着かせるためには適度な量だった。
―――就寝前。再度こなたへの想いが胸によぎった。そして、夕方の自室での自慰。
明日、一体どんな顔をしてこなたと顔を合わせばいいのだろうか。それに、つかさの
こともあるし。何だか本当に沢山の問題があるけれど、一つだけ言えることがある。
誰が何と言おうとも、わたしはこなたが好きだ。
それを今日一日で感じる事が出来た事が一番嬉しい。そして、出来ればこの事を胸を
張って言える日が来ることを再度願いつつ、わたしの意識は明日の朝までの短い
休息に入った。
明日、一体どんな顔をしてこなたと顔を合わせばいいのだろうか。それに、つかさの
こともあるし。何だか本当に沢山の問題があるけれど、一つだけ言えることがある。
誰が何と言おうとも、わたしはこなたが好きだ。
それを今日一日で感じる事が出来た事が一番嬉しい。そして、出来ればこの事を胸を
張って言える日が来ることを再度願いつつ、わたしの意識は明日の朝までの短い
休息に入った。
そして、いつもと変わりの無い朝がやってきた。結局、あまり深い眠りに入ることは
出来なかったが、多少なりとも頭の整理は出来たようではあった。ただ、不安なことも
ある。というか、いったいどんな顔をしてこなたと話せばいいのだろうか? いや、
まあ勝手にこっちの見方が変わっただけであって、こなたにしてみれば、それこそ
いつもと変わらない朝なのだ。変に意識するほうがおかしい。でも、それは倫理的なことで―――
「お姉ちゃん、おはよー。今日は起きるの遅いね? もう少し早くでお家出ないと
遅刻しちゃうよー」
「え!? あ、もうこんな時間!? ありがと、つかさ!」
結局、ほぼ朝まで考え込んでいたことになってしまっていたが、つかさの一言によって
わたしの意識は一気に覚醒を果たした。
「……朝ごはん、抜きかなぁ」
パジャマを脱ぎ捨て、セーラー服に腕を通しながら呟く。べ、別に一食抜いたくらい
でなんとも無いんだから。それに、ちょうどダイエットしなくちゃ、とか思ってたし!
と、別に誰に聞かせるわけでもない言い訳を心の中で繰り返しつつ、髪を梳かす。
「いってきます!!」
そして、そのままの勢いで家を飛び出した。
「おねえちゃん、まってよー!」
わたしを待ってくれていたつかさを家に残したまま。
出来なかったが、多少なりとも頭の整理は出来たようではあった。ただ、不安なことも
ある。というか、いったいどんな顔をしてこなたと話せばいいのだろうか? いや、
まあ勝手にこっちの見方が変わっただけであって、こなたにしてみれば、それこそ
いつもと変わらない朝なのだ。変に意識するほうがおかしい。でも、それは倫理的なことで―――
「お姉ちゃん、おはよー。今日は起きるの遅いね? もう少し早くでお家出ないと
遅刻しちゃうよー」
「え!? あ、もうこんな時間!? ありがと、つかさ!」
結局、ほぼ朝まで考え込んでいたことになってしまっていたが、つかさの一言によって
わたしの意識は一気に覚醒を果たした。
「……朝ごはん、抜きかなぁ」
パジャマを脱ぎ捨て、セーラー服に腕を通しながら呟く。べ、別に一食抜いたくらい
でなんとも無いんだから。それに、ちょうどダイエットしなくちゃ、とか思ってたし!
と、別に誰に聞かせるわけでもない言い訳を心の中で繰り返しつつ、髪を梳かす。
「いってきます!!」
そして、そのままの勢いで家を飛び出した。
「おねえちゃん、まってよー!」
わたしを待ってくれていたつかさを家に残したまま。
「酷いよ、お姉ちゃん。待ってたのに先に出ちゃうなんて」
「ごめんってば、つかさー。急いでたし先に行っちゃってると思ってたんだって」
「あたしそんなことしないもん」
「だから悪かったってば―――」
少し早足での登校中。その時間はほぼ全てさっきの一件でずっと不機嫌だった
つかさの機嫌取りに費やした。
おかげと言うか何と言うか。昨晩眠れなくなるほど悩んでいたこなたのことは
すっかり考えなくなっていた。もちろん、こなたの姿を見るまでのことだったが。
「あ。あれって、こなちゃんじゃない?」
「え!? あ……そう、みたいね」
つかさが、前方を歩いているこなたを発見したようだった。わたしもつかさが
指さす方を見たが、どうやらこなたで間違い無さそうだ。
「おーい、こなちゃーん」
こなたの姿を確認したつかさは、駆け足でこなたの元へと駆けて行った。
「ちょっ!! つかさ!?」
昨日のもやもやが再度わたしの胸の中にあらわれた。しかし、つかさがこなたを
追いかけて行ったのなら、わたしもその後を追わないと。でも、まだわたしはこなたと
面を合わして話をする勇気は持っていなかった。
「こなちゃん、おはよー」
「あ、つかさ。はよー」
「もう、つかさ。急に走り出さないでよ! ……こ、こなた。おはよ」
こなたの名前を呼ぶだけなのに、少し声が上擦ってしまった。
(―――落ち着け、わたし! 単なる挨拶じゃない)
心の中では、その言葉を先程からずっと繰り返している。
「かがみんも、おはよー」
そして、いつものぼけーっとしたこなたがそこにいた。昨日までの朝とは少し違い、
ふらふらとした不安定さは見受けられなかった。その姿を見て、わたしは安心すると
同時に、次の言葉を発していた。
「どうやら、昨日はちゃんと寝たみたいね」
「あははー、流石にねー。ちょっと訳を話したらすんなりおっけー貰っちゃった」
「訳? 誰かと約束でもしてたの?」
「いや、こっちの話だよ」
何かが引っかかるけど……わたしが聞いたところで解る世界の話じゃないんだろう。
「それならいいんだけどさ。それよりもさ―――」
「ごめんってば、つかさー。急いでたし先に行っちゃってると思ってたんだって」
「あたしそんなことしないもん」
「だから悪かったってば―――」
少し早足での登校中。その時間はほぼ全てさっきの一件でずっと不機嫌だった
つかさの機嫌取りに費やした。
おかげと言うか何と言うか。昨晩眠れなくなるほど悩んでいたこなたのことは
すっかり考えなくなっていた。もちろん、こなたの姿を見るまでのことだったが。
「あ。あれって、こなちゃんじゃない?」
「え!? あ……そう、みたいね」
つかさが、前方を歩いているこなたを発見したようだった。わたしもつかさが
指さす方を見たが、どうやらこなたで間違い無さそうだ。
「おーい、こなちゃーん」
こなたの姿を確認したつかさは、駆け足でこなたの元へと駆けて行った。
「ちょっ!! つかさ!?」
昨日のもやもやが再度わたしの胸の中にあらわれた。しかし、つかさがこなたを
追いかけて行ったのなら、わたしもその後を追わないと。でも、まだわたしはこなたと
面を合わして話をする勇気は持っていなかった。
「こなちゃん、おはよー」
「あ、つかさ。はよー」
「もう、つかさ。急に走り出さないでよ! ……こ、こなた。おはよ」
こなたの名前を呼ぶだけなのに、少し声が上擦ってしまった。
(―――落ち着け、わたし! 単なる挨拶じゃない)
心の中では、その言葉を先程からずっと繰り返している。
「かがみんも、おはよー」
そして、いつものぼけーっとしたこなたがそこにいた。昨日までの朝とは少し違い、
ふらふらとした不安定さは見受けられなかった。その姿を見て、わたしは安心すると
同時に、次の言葉を発していた。
「どうやら、昨日はちゃんと寝たみたいね」
「あははー、流石にねー。ちょっと訳を話したらすんなりおっけー貰っちゃった」
「訳? 誰かと約束でもしてたの?」
「いや、こっちの話だよ」
何かが引っかかるけど……わたしが聞いたところで解る世界の話じゃないんだろう。
「それならいいんだけどさ。それよりもさ―――」
その後、わずかしか残っていなかった登校時間は、いつもと同じ3人での雑談タイムとなった。
結局、昨日寝不足になるまで悩んでいた事なのに、こなたの元気そうな顔を見るだけで
全て吹っ飛んだようで、その日の昼食の時間にはもうすでに、いつもと同じ様に接する
ことが出来るようになっていた。
結局、昨日寝不足になるまで悩んでいた事なのに、こなたの元気そうな顔を見るだけで
全て吹っ飛んだようで、その日の昼食の時間にはもうすでに、いつもと同じ様に接する
ことが出来るようになっていた。
―――放課後。今日は何だか久しぶりのいつもの4人での下校となった。
「こなた。今日はいつもみたいに急いでないんだ」
「まあね。昨日の今日だし、たまにはってことで。それよりさ、スタバとかよってこーよ。
甘いもの食べたいな」
「さんせーい。久しぶりにイチゴパフェ食べたいなぁ」
「いいですね、イチゴ」
周りの学生に混じって、いつもの面子で寄り道をして。取り止めの無い話をわいわい
とする。そんな数日前までは、ごく有り触れた一日の出来事の筈だけれど。どうして
だろうか。朝からこなたの言葉が少しだけ、何故かわたしの頭に引っかかる……
(……まあ、気にしても仕方ないか。もしかしたら、昨日あ、あんな事……をしたから
変に気になってるだけかもしんないし)
とはいえ、一人だけ深刻な顔で黙っていてもつまらない。それに、せっかくこなたと
楽しく話せる機会なんだし。わたしも、みんなの話の輪に加わろう。
「そう言えばさ、あのあれって―――」
昨日の保健室とは違い、楽しい時間というのはあっという間に過ぎるものだ。
結局、空が薄暗くなるまでわたしたちは店を出る事は無かった。
「こなた。今日はいつもみたいに急いでないんだ」
「まあね。昨日の今日だし、たまにはってことで。それよりさ、スタバとかよってこーよ。
甘いもの食べたいな」
「さんせーい。久しぶりにイチゴパフェ食べたいなぁ」
「いいですね、イチゴ」
周りの学生に混じって、いつもの面子で寄り道をして。取り止めの無い話をわいわい
とする。そんな数日前までは、ごく有り触れた一日の出来事の筈だけれど。どうして
だろうか。朝からこなたの言葉が少しだけ、何故かわたしの頭に引っかかる……
(……まあ、気にしても仕方ないか。もしかしたら、昨日あ、あんな事……をしたから
変に気になってるだけかもしんないし)
とはいえ、一人だけ深刻な顔で黙っていてもつまらない。それに、せっかくこなたと
楽しく話せる機会なんだし。わたしも、みんなの話の輪に加わろう。
「そう言えばさ、あのあれって―――」
昨日の保健室とは違い、楽しい時間というのはあっという間に過ぎるものだ。
結局、空が薄暗くなるまでわたしたちは店を出る事は無かった。
「お姉ちゃん。お風呂空いたよー」
「あ、ゴメン。あたし今日は最後でいいやー。お姉ちゃんに先に入ってって伝えといてー」
「わかったー」
つかさがお風呂の順番を伝えに来た。でも、何だか今はそんな気分じゃ無かったため、
つかさにその旨を伝え、後回しにしてもらった。とはいえ、今のわたしはベッドに
うつ伏せに寝そべっているだけだ。特に何かをしようとする気も起こらず、だからと
いってこのまま眠ってしまう事も出来ずに暇を持て余していたのだが。
(今日は宿題ないしなぁ。勉強する気も起きないし……)
となると、自然に考えは先程までのこなたたちとの寄り道の事に移っていった。
「あ、ゴメン。あたし今日は最後でいいやー。お姉ちゃんに先に入ってって伝えといてー」
「わかったー」
つかさがお風呂の順番を伝えに来た。でも、何だか今はそんな気分じゃ無かったため、
つかさにその旨を伝え、後回しにしてもらった。とはいえ、今のわたしはベッドに
うつ伏せに寝そべっているだけだ。特に何かをしようとする気も起こらず、だからと
いってこのまま眠ってしまう事も出来ずに暇を持て余していたのだが。
(今日は宿題ないしなぁ。勉強する気も起きないし……)
となると、自然に考えは先程までのこなたたちとの寄り道の事に移っていった。
(昨日までに比べて、今日のこなたは全然眠く無さそうだったな)
夕方にあれだけこなたと会話を交わした後だというのに、いや、むしろ少し前の
時間までこなたと話していた所為だろうか。こなたのあの抜けた笑顔がまた頭から
離れなくなってしまっていた。
(面と向かってる時は何にも無いのに……)
そして、そんな時には決まって胸が苦しくなる。さらに、それに伴い、何だか段々と
下腹部が熱を帯びていくような気がする。
「ハァ……」
自然とすこし熱っぽい溜め息が出るようになった頃には、わたしの右手は自然と
昨日と同じ行動を取り始めた。
(ダメ……また、止まらない……)
まだ生涯2度目の行為とは思えない程スムーズに動く右手に少し怯えながら、昨日と
同じく駆け足で高まっていく気分の高揚を抑えきれない。
「く……ふぅ、んん…。は、あぁ」
流石に2回目の自慰で自身のヴァギナに指を挿入する事まではせず、クリトリス周辺を
指で擦る程度だったが、それでもわたしには十分過ぎる刺激のため、数分でわたしは絶頂に達した。
「くふっ、んっ! ……はぁっ、はっ、ふぅ」
息を整えている最中に、もの凄い罪悪感と、空しさが同時にわたしの心の中を
駆け回っていたが、それも次第にどうでも良くなっていった。
「―――そろそろ、お姉ちゃんたちお風呂入ったかな……」
全身に伝わる脱力感もあるが、早く浴槽に浸かってこの心と身体を綺麗にしたかった
わたしは、あまり回っていない頭のままで階下に降りていった。
夕方にあれだけこなたと会話を交わした後だというのに、いや、むしろ少し前の
時間までこなたと話していた所為だろうか。こなたのあの抜けた笑顔がまた頭から
離れなくなってしまっていた。
(面と向かってる時は何にも無いのに……)
そして、そんな時には決まって胸が苦しくなる。さらに、それに伴い、何だか段々と
下腹部が熱を帯びていくような気がする。
「ハァ……」
自然とすこし熱っぽい溜め息が出るようになった頃には、わたしの右手は自然と
昨日と同じ行動を取り始めた。
(ダメ……また、止まらない……)
まだ生涯2度目の行為とは思えない程スムーズに動く右手に少し怯えながら、昨日と
同じく駆け足で高まっていく気分の高揚を抑えきれない。
「く……ふぅ、んん…。は、あぁ」
流石に2回目の自慰で自身のヴァギナに指を挿入する事まではせず、クリトリス周辺を
指で擦る程度だったが、それでもわたしには十分過ぎる刺激のため、数分でわたしは絶頂に達した。
「くふっ、んっ! ……はぁっ、はっ、ふぅ」
息を整えている最中に、もの凄い罪悪感と、空しさが同時にわたしの心の中を
駆け回っていたが、それも次第にどうでも良くなっていった。
「―――そろそろ、お姉ちゃんたちお風呂入ったかな……」
全身に伝わる脱力感もあるが、早く浴槽に浸かってこの心と身体を綺麗にしたかった
わたしは、あまり回っていない頭のままで階下に降りていった。
―――この時はまだ全然気付いていなかったことだけれど……今日この時の事が、わたしがほぼ毎日お風呂に入る前に行う日課が出来た瞬間となったのだった。
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- 続きが気になるー! -- 名無しさん (2010-09-19 09:47:32)
- 同じく続編お願いします。
こなたの態度の微妙な変化の理由が知りたいです。 -- kk (2010-06-17 00:19:48) - 続編希望 -- 名無しさん (2010-06-16 20:14:51)