旧約聖書の詩編第十九によると、
(主の裁きは)
蜜よりも 蜂の巣の滴りよりも甘い(新共同訳)
蜜よりも 蜂の巣の滴りよりも甘い(新共同訳)
のだそうだが、こなたがミュージカル俳優を真似てある短い一節を歌った時の教室の反応は、その甘さに酔う子羊の様でもあり、女王蜂を崇める働き蜂の様でもあった。
「え……っと、こんな感じだったんだけど……」
いつの間にか皆がひれ伏して聞き入っているのに戸惑いながら歌い終えると、特等席の三人が激発した。
「こなたぁぁぁぁぁ~~~!!」
その急先鋒は、いうまでもなくかがみである。泣きながら叫びながらこなたに抱きつき、
「私はあんたの匂いを嗅ぐだけでごはん3俵はイケるのよ!」
「食べすぎだよ、かがみ」
「あんたの声を思い出しながら、こっそり採取したあんたの髪をしゃぶりつつ、こっそり採取したあんたの吐いた空気をスーハースーハーしながら、あんたにキスされてる事を妄想するだけで、ごはん1ヘクタールはイケるのよ!」
「……それは生米を食べるってことカナ?」
「その上で何!? ミュージカル俳優の真似っていう予想外の萌え要素を付け加えて、私をさらに太らせようというのね!? 糟日部中のごはんを私のお腹に収めようっていうのね? そうやって太らせた挙句、『ダイエットの為に性的な意味でいい汗かこうよ』とか言ってベッドに誘う気なんでしょ!?」
「いや、そんなつもりは決して―」
「望むところよ!!」
「ええ~!」
「善は急げって言うわね。待ってなさい、今ベッドを作るから」
『それのどこが善なの?』と思うこなたを逃がさないように小脇に抱えると、かがみは空いている方の手で近くの机をつなげて小粋にベッドを作り始めた。
こなたは助けを求めてつかさの方を見たが、彼女は感動のあまり泣きながら、舌遣いも妖しくバルサミコ酢の一気飲みに挑んでいた。
「みゆきさ……」
ならばみゆきはと思い視線を転じたが、すぐに諦めた。彼女は今日に限って鼻の調子が良いのか……あるいは悪いのか、お祈りポーズのように手を組んで血混じり涙を流していた。
「濡れてしまいました……色々と」
これがこなたの歌唱に対するみゆきの感想であるようだった。血混じりの涙で頬が濡れる以外にどこが濡れてしまったのかは、言わぬが華、知らぬが仏、触らぬ神にナントヤラである。
孤立無援であることを悟ったこなたは、自分で解決する事にした。かがみの耳に息を吹きかけてみる。すると、明らかに死者を出さずには済まされないくらいの凄まじい爆発音がして、かがみが動かなくなった。頭からは噴煙が上がり、目は鳴門海峡か気象衛星が捉えた台風の俯瞰写真のようである。このままでは本当に死んでしまいかねないので、こなたはかがみの手を掴んで死なないでと懇願してみた。するとかがみはニヤけた。活動を再開するのは少し先のようであるが、死ぬ事はないだろう。
三本目のバルサミコ酢にかかっていたつかさと、
「どんどん濡れまーす……どんどん濡れまーす」
なみゆきもしばらく戻って来そうになかったので、こなたはこうなってしまった経緯を少し思い出してみることにした。
「え……っと、こんな感じだったんだけど……」
いつの間にか皆がひれ伏して聞き入っているのに戸惑いながら歌い終えると、特等席の三人が激発した。
「こなたぁぁぁぁぁ~~~!!」
その急先鋒は、いうまでもなくかがみである。泣きながら叫びながらこなたに抱きつき、
「私はあんたの匂いを嗅ぐだけでごはん3俵はイケるのよ!」
「食べすぎだよ、かがみ」
「あんたの声を思い出しながら、こっそり採取したあんたの髪をしゃぶりつつ、こっそり採取したあんたの吐いた空気をスーハースーハーしながら、あんたにキスされてる事を妄想するだけで、ごはん1ヘクタールはイケるのよ!」
「……それは生米を食べるってことカナ?」
「その上で何!? ミュージカル俳優の真似っていう予想外の萌え要素を付け加えて、私をさらに太らせようというのね!? 糟日部中のごはんを私のお腹に収めようっていうのね? そうやって太らせた挙句、『ダイエットの為に性的な意味でいい汗かこうよ』とか言ってベッドに誘う気なんでしょ!?」
「いや、そんなつもりは決して―」
「望むところよ!!」
「ええ~!」
「善は急げって言うわね。待ってなさい、今ベッドを作るから」
『それのどこが善なの?』と思うこなたを逃がさないように小脇に抱えると、かがみは空いている方の手で近くの机をつなげて小粋にベッドを作り始めた。
こなたは助けを求めてつかさの方を見たが、彼女は感動のあまり泣きながら、舌遣いも妖しくバルサミコ酢の一気飲みに挑んでいた。
「みゆきさ……」
ならばみゆきはと思い視線を転じたが、すぐに諦めた。彼女は今日に限って鼻の調子が良いのか……あるいは悪いのか、お祈りポーズのように手を組んで血混じり涙を流していた。
「濡れてしまいました……色々と」
これがこなたの歌唱に対するみゆきの感想であるようだった。血混じりの涙で頬が濡れる以外にどこが濡れてしまったのかは、言わぬが華、知らぬが仏、触らぬ神にナントヤラである。
孤立無援であることを悟ったこなたは、自分で解決する事にした。かがみの耳に息を吹きかけてみる。すると、明らかに死者を出さずには済まされないくらいの凄まじい爆発音がして、かがみが動かなくなった。頭からは噴煙が上がり、目は鳴門海峡か気象衛星が捉えた台風の俯瞰写真のようである。このままでは本当に死んでしまいかねないので、こなたはかがみの手を掴んで死なないでと懇願してみた。するとかがみはニヤけた。活動を再開するのは少し先のようであるが、死ぬ事はないだろう。
三本目のバルサミコ酢にかかっていたつかさと、
「どんどん濡れまーす……どんどん濡れまーす」
なみゆきもしばらく戻って来そうになかったので、こなたはこうなってしまった経緯を少し思い出してみることにした。
時は昼時、ランチタイム。
うららかな日差しを浴びて、午後は優雅に思いっきり弁当でも食べたいところであるが、その日は元々小食なこなただけでなく、他の三人も何故か主食のご飯しか持参してきてなかった。曰く、こなたの存在自体がオカズになるのだという。
そんなわけで早めに主食を食べ終えた三人は、チョココロネを食べるこなたを眺めていた。
「んーと、ごちそうさま……」
食べ終えたこなたが躊躇いがちに言うと、
「「「ごちそうさま!」」」
三人が続いた。
文字通りの意味だったらしい。何だろう、この新しいエネルギー伝達法……。ジアースもびっくりだ。
「時間が余っちゃったわね」
かがみが時計を一瞥して言う。一瞥しかしないのは、一瞬でも長くこなたを見つめていたいからだという。そのために、一瞬で文字盤を読み取る猛訓練を重ねたのだそうな。こなたは、腹時計を参照した方が正確なんじゃないの? と思っているのだが。
「どうしよう? こなたの視姦でもして時間潰そうか?」
「それも悪くありませんが……」
みゆきは制服の中に手を突っ込むと、胸の間に挟んでいた天体望遠鏡を取り出す。
「天体観測をしませんか?」
「昼間に星なんか見てどうすんのよ」
珍しくこなたに関係しなさそうな提案に、かがみが訝る。こなたはホッと胸を撫で下ろす。が、それもつかの間……。
「宇宙が泉さんを中心に回っているという事を証明するんですよ」
「それよりさ……」
つかさは料理本を取り出す。今度こそこなたとは関係がなさそうだ。今だけはつかさにすがってもいい……と思ったのも束の間。
「こなちゃんで女体盛りするのにぴったりな料理を、みんなで考えようよ」
「いいわね、それ」
「魅力的な提案ですね。泉さんご本人には及びませんが」
「ちょ、ちょっと待って」
慌ててこなたが止めに入る。このままでは、恥ずかしい自分の姿をダシに恥ずかしいことを考える三人につき合わされそうだった。下手すればこの場で実践なんて事もありえる。何せ、相手はフェチだ。
何とか話題をそらさなければならない。
でも、どの方向へ?
手っ取り早いのは昨日放送があったアニメの話題だが、最近のフェチどもときたらこなたがアニメ好きなのを受けて、自分たちでも可能な限り視聴し、情報を集め、話を合わせてくるようになったのである。
焦れば焦るほどにこなたの頭は、昨日のローカル局でやっていた再放送の、前半と後半の合間で流れたミュージカルの公演告知CMに釘付けになってしまう。
「ところでこの曲を聴いてくれ。こいつをどう思う?」
進退窮まったこなたは、そう言ってCMでミュージカル俳優が歌っていた曲を、すごく大きい声で歌ってしまったのである。
もう色んな意味でヤケだった。
うららかな日差しを浴びて、午後は優雅に思いっきり弁当でも食べたいところであるが、その日は元々小食なこなただけでなく、他の三人も何故か主食のご飯しか持参してきてなかった。曰く、こなたの存在自体がオカズになるのだという。
そんなわけで早めに主食を食べ終えた三人は、チョココロネを食べるこなたを眺めていた。
「んーと、ごちそうさま……」
食べ終えたこなたが躊躇いがちに言うと、
「「「ごちそうさま!」」」
三人が続いた。
文字通りの意味だったらしい。何だろう、この新しいエネルギー伝達法……。ジアースもびっくりだ。
「時間が余っちゃったわね」
かがみが時計を一瞥して言う。一瞥しかしないのは、一瞬でも長くこなたを見つめていたいからだという。そのために、一瞬で文字盤を読み取る猛訓練を重ねたのだそうな。こなたは、腹時計を参照した方が正確なんじゃないの? と思っているのだが。
「どうしよう? こなたの視姦でもして時間潰そうか?」
「それも悪くありませんが……」
みゆきは制服の中に手を突っ込むと、胸の間に挟んでいた天体望遠鏡を取り出す。
「天体観測をしませんか?」
「昼間に星なんか見てどうすんのよ」
珍しくこなたに関係しなさそうな提案に、かがみが訝る。こなたはホッと胸を撫で下ろす。が、それもつかの間……。
「宇宙が泉さんを中心に回っているという事を証明するんですよ」
「それよりさ……」
つかさは料理本を取り出す。今度こそこなたとは関係がなさそうだ。今だけはつかさにすがってもいい……と思ったのも束の間。
「こなちゃんで女体盛りするのにぴったりな料理を、みんなで考えようよ」
「いいわね、それ」
「魅力的な提案ですね。泉さんご本人には及びませんが」
「ちょ、ちょっと待って」
慌ててこなたが止めに入る。このままでは、恥ずかしい自分の姿をダシに恥ずかしいことを考える三人につき合わされそうだった。下手すればこの場で実践なんて事もありえる。何せ、相手はフェチだ。
何とか話題をそらさなければならない。
でも、どの方向へ?
手っ取り早いのは昨日放送があったアニメの話題だが、最近のフェチどもときたらこなたがアニメ好きなのを受けて、自分たちでも可能な限り視聴し、情報を集め、話を合わせてくるようになったのである。
焦れば焦るほどにこなたの頭は、昨日のローカル局でやっていた再放送の、前半と後半の合間で流れたミュージカルの公演告知CMに釘付けになってしまう。
「ところでこの曲を聴いてくれ。こいつをどう思う?」
進退窮まったこなたは、そう言ってCMでミュージカル俳優が歌っていた曲を、すごく大きい声で歌ってしまったのである。
もう色んな意味でヤケだった。
「それは『壁抜け男』ですね……」
しばらくして我に返った(正気を取り戻したわけではない。そもそも取り戻せるわけない)みゆきが、ぐしょぐしょになったハンカチを絞りながら言った。
マルセル・エイメというフランスの作家の小説を原作とする、珍しいフランス発のミュージカルだという。
「平凡な郵便局員が、ある日自由に壁を抜けられる能力を身につけたことから、大騒動を巻き起こすお話です」
「……なんだか、ラノベとかアニメにも普通にいそうな異能者ぶりだね」
そんな感想を漏らすこなたを、かがみが嬉しそうに抱き寄せて頬擦りをする。ラノベ好きの彼女は、最近ではこなたが「ラノベ」という言葉を口にするだけで狂喜し、時には絶頂するようにまでなってしまい、こんなカラダにした責任を取れとうるさいのである。
みゆきはといえば、
「泉さんの斬新な解釈に、また濡れてしまいました」
と絞ったばかりのハンカチをまた濡らし始めた。
つかさはバルサミコ酢の大瓶に取りかかっている。
話を逸らす事を企図したこなたとしては、この展開はわりと好感触である。そこでしつこく頬擦りを続けるかがみを引き剥がし、話題の方も引き離しにかかる事にした。
「みんなは壁抜けの異能力者だったら、どんな事したい?」
三人は一様に真剣な顔になって考える。フェチたる者、こなたの振る話題には真剣に臨まなければならないのである。
さて、どれだけ時間を稼げるかな……こなたが皮算用していると、早くもみゆきが手を上げる。名案が浮かんだらしい。どれだけ名案かによって、こなたの明暗も分かれる事になるかもしれない。
「私は、お風呂で使いたいですね」
「お風呂で壁抜け?」
……いやな予感がした。
「どうやって使うのカナ?」
「それはもちろん、入浴中の泉さんの元にお邪魔するためですよ」
本当に邪魔だろうなあ、とこなたは思った。
「ウチの浴室二階なんだけど……」
「問題ありません、愛さえあれば乗り越えられない障害などないのです」
「いや、大問題だよ……」
「はいはーい」
つかさがイ●ラちゃんみたいに手を上げる。
「はい、つかさ」
「私は、おトイレに入るために使うよ」
こんな変わり果ててしまってもつかさは友達だから、これを出来るだけ好意的に解釈してあげたいとこなたは思った。
「ああ、漏れそうでドアを開けてる暇も惜しい時とか?」
「ううん。こなちゃんが入ってるおトイレに入る為だよ」
つかさはさも当たり前の事のように答えた。
「そんなことしても楽しくないと思うよ?」
「そんな事ないよ。拭いてあげられるし。あ、拭いてもらうのもいいな」
「……」
「……」
「……そうだね」
「うん♪」
こなたはかがみの方を見た。
「……かがみは一パス、と」
「な、なんでよ!?」
かがみは答えなければ死んでしまうとばかりに叫んだ。
「私にも答えさせてよ」
「武士の情け……聞かないでおいてあげるよ」
こなたはそう斬って捨てたのだが……。
「是非伺いたいですね」
みゆきがニコニコしながら促した。
「お姉ちゃん、教えて」
つかさも知りたがる。
「寝室に入るために使うのよ」
その答えに、みゆきとつかさはおおっと声を上げた。
「さすがお姉ちゃん」
「正統派ですね」
社会的には異端だけどね、とこなたは思った。
誰の寝室に入るのかは言うまでもない。
「それで、こなちゃんの寝室で何をしたいの?」
「そうね……まずは部屋を物色して、『使えそうなモノ』を二、三収集しておくわ。それから写真を撮って、携帯とパソコンの中身とゴミ箱をチェックして、私の匂いをつけたら……」
「「つけたら」」
期待に満ち溢れた目で、二人が続きを促す。
「こなたと……」
ここにきて、かがみが急に口ごもる。
「こなたと……ひ……一つ…に……」
真っ赤になったかがみは、きゃーきゃーひーひー言いながら自分で作ったベッド(机)をバンバン叩く。弁護士になれなかったら、机解体業者になるべきである。
「言えるわけないじゃない! はづかし~」
急に乙女(←異論の余地あり)になって体をくねくねさせるかがみを、つかさとみゆきは微笑ましげに見ていた。
「さすがにそれ以上は恥ずかしいよね~」
「愛があっても、面と向かって言うのは憚られますよね~」
人として憚られるような事を散々言ってきたのに、何を今さら? とこなたは思った。
「それはそうと、泉さんはいかがなのですか?」
かがみの放置を決定したみゆきが、話を振ってくる。
「壁抜けはなさりたいですか?」
「う~~ん」
こなたは、机の叩き過ぎで手が腫れてしまいこなたに舐めて欲しそうにしているかがみ、口の周りについたバルサミコ酢を舐め取っている様で実はこなたが食べたくてしょうがなさそうなつかさ、存在自体がわいせつなみゆきを順繰りに見て考える。彼女らに囲まれている以上、答えは一つである。
「うん、私も壁抜けのアビリティ欲しいな」
そう言った途端爆発音がして、三人がヘッドショットされた狙撃目標のように崩れ落ちる。
「!?」
こなたは慌てて、窓の外にね広がる青い空を見上げて、狙撃手の姿を探したが、閉めたままの窓ガラスが無傷なのに気付いて室内に目を戻す。ゴルゴ13やシモ・ヘイヘみたいな人が、自分を憐れんだのかもしれないという可能性を一瞬でも考えてしまった事を恥じた。
つまり、三人は狙撃されたのではない。では、何があったのか? 屈みこんで倒れたままのみゆきの顔を覗き込む。
「……泉さんは壁抜けの能力を使い、入浴中の私の元においでになるつもりなのですね?」
つかさ。
「……こなちゃんが壁を抜けて拭きに来てくれる」
かがみ。
「……一つになるために、こなたが壁を抜けて私の寝室に来てくれる……」
しばらくして我に返った(正気を取り戻したわけではない。そもそも取り戻せるわけない)みゆきが、ぐしょぐしょになったハンカチを絞りながら言った。
マルセル・エイメというフランスの作家の小説を原作とする、珍しいフランス発のミュージカルだという。
「平凡な郵便局員が、ある日自由に壁を抜けられる能力を身につけたことから、大騒動を巻き起こすお話です」
「……なんだか、ラノベとかアニメにも普通にいそうな異能者ぶりだね」
そんな感想を漏らすこなたを、かがみが嬉しそうに抱き寄せて頬擦りをする。ラノベ好きの彼女は、最近ではこなたが「ラノベ」という言葉を口にするだけで狂喜し、時には絶頂するようにまでなってしまい、こんなカラダにした責任を取れとうるさいのである。
みゆきはといえば、
「泉さんの斬新な解釈に、また濡れてしまいました」
と絞ったばかりのハンカチをまた濡らし始めた。
つかさはバルサミコ酢の大瓶に取りかかっている。
話を逸らす事を企図したこなたとしては、この展開はわりと好感触である。そこでしつこく頬擦りを続けるかがみを引き剥がし、話題の方も引き離しにかかる事にした。
「みんなは壁抜けの異能力者だったら、どんな事したい?」
三人は一様に真剣な顔になって考える。フェチたる者、こなたの振る話題には真剣に臨まなければならないのである。
さて、どれだけ時間を稼げるかな……こなたが皮算用していると、早くもみゆきが手を上げる。名案が浮かんだらしい。どれだけ名案かによって、こなたの明暗も分かれる事になるかもしれない。
「私は、お風呂で使いたいですね」
「お風呂で壁抜け?」
……いやな予感がした。
「どうやって使うのカナ?」
「それはもちろん、入浴中の泉さんの元にお邪魔するためですよ」
本当に邪魔だろうなあ、とこなたは思った。
「ウチの浴室二階なんだけど……」
「問題ありません、愛さえあれば乗り越えられない障害などないのです」
「いや、大問題だよ……」
「はいはーい」
つかさがイ●ラちゃんみたいに手を上げる。
「はい、つかさ」
「私は、おトイレに入るために使うよ」
こんな変わり果ててしまってもつかさは友達だから、これを出来るだけ好意的に解釈してあげたいとこなたは思った。
「ああ、漏れそうでドアを開けてる暇も惜しい時とか?」
「ううん。こなちゃんが入ってるおトイレに入る為だよ」
つかさはさも当たり前の事のように答えた。
「そんなことしても楽しくないと思うよ?」
「そんな事ないよ。拭いてあげられるし。あ、拭いてもらうのもいいな」
「……」
「……」
「……そうだね」
「うん♪」
こなたはかがみの方を見た。
「……かがみは一パス、と」
「な、なんでよ!?」
かがみは答えなければ死んでしまうとばかりに叫んだ。
「私にも答えさせてよ」
「武士の情け……聞かないでおいてあげるよ」
こなたはそう斬って捨てたのだが……。
「是非伺いたいですね」
みゆきがニコニコしながら促した。
「お姉ちゃん、教えて」
つかさも知りたがる。
「寝室に入るために使うのよ」
その答えに、みゆきとつかさはおおっと声を上げた。
「さすがお姉ちゃん」
「正統派ですね」
社会的には異端だけどね、とこなたは思った。
誰の寝室に入るのかは言うまでもない。
「それで、こなちゃんの寝室で何をしたいの?」
「そうね……まずは部屋を物色して、『使えそうなモノ』を二、三収集しておくわ。それから写真を撮って、携帯とパソコンの中身とゴミ箱をチェックして、私の匂いをつけたら……」
「「つけたら」」
期待に満ち溢れた目で、二人が続きを促す。
「こなたと……」
ここにきて、かがみが急に口ごもる。
「こなたと……ひ……一つ…に……」
真っ赤になったかがみは、きゃーきゃーひーひー言いながら自分で作ったベッド(机)をバンバン叩く。弁護士になれなかったら、机解体業者になるべきである。
「言えるわけないじゃない! はづかし~」
急に乙女(←異論の余地あり)になって体をくねくねさせるかがみを、つかさとみゆきは微笑ましげに見ていた。
「さすがにそれ以上は恥ずかしいよね~」
「愛があっても、面と向かって言うのは憚られますよね~」
人として憚られるような事を散々言ってきたのに、何を今さら? とこなたは思った。
「それはそうと、泉さんはいかがなのですか?」
かがみの放置を決定したみゆきが、話を振ってくる。
「壁抜けはなさりたいですか?」
「う~~ん」
こなたは、机の叩き過ぎで手が腫れてしまいこなたに舐めて欲しそうにしているかがみ、口の周りについたバルサミコ酢を舐め取っている様で実はこなたが食べたくてしょうがなさそうなつかさ、存在自体がわいせつなみゆきを順繰りに見て考える。彼女らに囲まれている以上、答えは一つである。
「うん、私も壁抜けのアビリティ欲しいな」
そう言った途端爆発音がして、三人がヘッドショットされた狙撃目標のように崩れ落ちる。
「!?」
こなたは慌てて、窓の外にね広がる青い空を見上げて、狙撃手の姿を探したが、閉めたままの窓ガラスが無傷なのに気付いて室内に目を戻す。ゴルゴ13やシモ・ヘイヘみたいな人が、自分を憐れんだのかもしれないという可能性を一瞬でも考えてしまった事を恥じた。
つまり、三人は狙撃されたのではない。では、何があったのか? 屈みこんで倒れたままのみゆきの顔を覗き込む。
「……泉さんは壁抜けの能力を使い、入浴中の私の元においでになるつもりなのですね?」
つかさ。
「……こなちゃんが壁を抜けて拭きに来てくれる」
かがみ。
「……一つになるために、こなたが壁を抜けて私の寝室に来てくれる……」
「「「望むところ(です/だよ/よ)!!」」」
そう言い遺して、三人は2のカリフォルニア州知事のように親指を立てて力尽きた。
死んだかにも見えるが、実は冬眠のようなものであり、起きたらさらに性質が悪くなっているだろう。壁抜けが出来るようになっているかもしれない。
こなたとしては、壁抜けが出来ればこの人達から逃げる際に役立つだろうと思っただけなのであるが……
死んだかにも見えるが、実は冬眠のようなものであり、起きたらさらに性質が悪くなっているだろう。壁抜けが出来るようになっているかもしれない。
こなたとしては、壁抜けが出来ればこの人達から逃げる際に役立つだろうと思っただけなのであるが……
おわり
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- 比喩にシモ・ヘイヘとか使うのは貴方だけだww
なんつーか大好きです!w -- 名無しさん (2010-04-05 23:57:33) - ↓↓お前まだ居たんだ^^;
しつこいあやの狂信者だなぁ…… -- 名無しさん (2009-08-14 23:43:42) - こなたが壁抜けできても3人はできそうだし、瞬間移動なんかも愛の力で朝飯前にやってのけそうなんだが・・・ -- 名有りさん (2009-08-11 22:47:57)
- もし俺が壁抜けの能力を持ったらラ○ティスの本社に行って
あやののキャラソンを出すよう脅h・・頼みます! -- 名無しさん (2008-12-08 20:54:07) - とりあえずこなた逃げてーwwww -- 名無しさん (2008-12-08 20:34:48)
- ちょww壊れすぎwww -- 名無しさん (2008-11-10 21:15:14)
- 絶妙な壊れ具合wてかコメで吹いたww -- 名無しさん (2008-11-08 00:33:43)
- なんだ?下の人のコメントは…。 -- ワンブリッジ (2008-11-07 23:37:31)
- たきざわのうんこー -- 名無しさん (2008-11-07 23:36:27)
- >窓の外にね広がる青い空を見上げて、
なにげにひだまりネタがw
いつも読ませてもらってます。
新聞の天声人語(?)を粉々にして9拍子のワルツにしたような文章で大好きです。
これからも陰ながら応援させていただきますね。 -- たきざわ (2008-11-05 08:53:22)