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陵桜学園桜藤祭岩崎みなみミニシナリオ ~チェリー視点~

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家に帰ってきたみなみちゃんは、いつもの私服に着替えず、
音楽をかけながら、コーヒーを飲んでいた。
目が虚ろで、何かに後悔しているように見える。
わたしは、シッポを振りながらみなみちゃんと遊ぼうとしたけど、
ただ、黙っていつものオヤツを差し出して、トボトボとリビングに入っていった。
チェリー『なにかあったのかな……?』
わたしは、もらったオヤツを半分食べていつもの場所に埋めにいこうとした。
大好きなオヤツを誰にも食べられないところに大切にしまう。
それがわたしの楽しみだった。
けれど、みなみちゃんの元気のない表情を見ると、いつものオヤツ埋めも、あまり
楽しくない。
チェリー『本当に……、どうしたんだろう……』
わたしは、寂しさのあまりに大声で鳴いてしまおうかと思ったその時、
いつのまにか庭に、友達のペルシャ猫――フレデリックさん――が遊びに来ていた。
フレディ『よっ、また来たぜ。今日もお前のご主人さまは、いい音楽を聴いてるな。
     QUEENのNews Of The Worldに収録しているAll Deadか』
チェリー『あ、フレデリックさん。こんにちは』
フレディ『おいおい、何回も言ってるだろ?フレディでいいって。
     それよりどうしたんだ?しけたツラしやがって』
チェリー『実は……』
わたしは、帰ってきたみなみちゃんのことをフレディさんに話した。
フレディ『……なるほど、帰ってきたら、ご主人さまの元気が無いってか』
チェリー『みなみちゃんって、中学のころ友達がいなかったから、
     いつも寂しそうだったんだ。それで、高校生になってからは、小早川さんという
     友達が出来て、ご主人さまも明るくなったんだけど……。
     あんなに落ち込んでるご主人様、初めて見るよ。
     中学生の頃でも、あんなに寂しそうにしてるのなんて見た事ないのに……
それに、聞いてる音楽もちょっと暗い音楽っぽいし……』
フレディ『ふむ……、もしかしたら、その小早川というヤツとケンカしちまったんじゃねぇのか?』
チェリー『分かるの?』
フレディ『俺は百万回生きた猫だからな……。何回も死んで、何回も生まれ変わったんだ。
     んで、今まで色んなご主人さまの元で暮らしてきて、
     色々な人間を見てきた。なんとなく分かるんだよ。それに、暗い音楽を聴くのは
     悪いことじゃない。今の心境に反映している音楽を聴くことによって、心が安らぐんだ。
     今のお前のご主人さまにピッタリの音楽だ。ただし、暗い音楽を聴いてばかりでは
     だめだ。徐々に明るい音楽を聴いていくことにより、心を安定にさせる。
     これを、音楽療法と言うんだ』
チェリー『へぇー、フレディさんって凄いなぁ。物知りで』
フレディ『いやなに。ただゴロゴロして適当に生きてきただけさ……
     しかしまぁ、ケンカできるってことは、いいことだな』
チェリー『えぇ?そうなの?みなみちゃん、あんなに落ち込んでるのに?』
フレディ『どうでもいい相手だったら、あんなに落ち込まねぇだろ?
     真剣に考えるほどの相手を持てたのであれば、お前のご主人さまは幸せモンだ。
     俺なんざ、そこらじゅうをただブラブラうろついているだけだから、
     本当の友達っつぅのはいねぇんだ。俺が死んでも、本気で泣いてくれるやつなんか
     いやしないさ。「自分が死ぬとき、本気で泣いてくれる人が身近にいるヤツは、幸せ者だ」。
     どっかで聞いた、言葉だ。俺は、そんなのいねぇから、不幸せな猫だぜ』
チェリー『わたしだったら……大声で泣く、かな……。フレディさん、いい猫なんだもん……』
フレディ『……ありがとう。俺は幸せな猫だ』
フレディさんは、照れくさそうに顔を洗った。
チェリー『でも、本当にみなみちゃん、どうしよう……』
フレディ『ほっとけよ。人間のケンカに俺たちが入るべきじゃない。
     さっきも言ったろう?真剣に考えるほどの相手だったら、互いが仲直りするために、
     何らかの行動を起こして自然に解決するさ。それに、ケンカはしたほうがいいんだぜ?
互いの本音をぶつけあい対極してしまうが、本当の友人だったら、いつかは
仲直りし、その際互いの心を深く知り合い、友情が深まるってんだ』
チェリー『う~ん、でも、不安だよぉ……
     なんだか、みなみちゃんがずっとあのままになるんじゃないかって……』
フレディ『ふむ……確かに、お前のご主人さまは、消極的だからな……
     だが、さすがにAll Dead(全て終わってしまった)ということにはならんだろう』
チェリー『でもぉ……』
その時、わたしはよく知っている匂いに気がついた。
フレディ『どうした?』
チェリー『この匂いは……小早川さん!?』
わたしは、玄関のところにこっそり行きました。
フレディさんも一緒に付いて来ました。
ゆたか「………………」
フレディ『ほう、あの子が小早川さんか。ふくよかな優しさが漂っている、魅力的な女性だ』
チェリー『小早川さ……!』
フレディ『おい待て待て!呼ぶんじゃない!』
チェリー『どうして?小早川さん、家に来てくれたんだよ?』
フレディ『さっきも言っただろ?大抵は人間が解決する問題だって。それに俺の経験上、
     お前がここで呼んだりしたら、逆に小早川は、逃げると思うぜ。見ろよ。あの表情。
     悩んでる顔してるだろ?今この状態で呼びかけてみろ。
     きっと彼女はびっくりして逃げ帰ってしまうぜ』
わたしは、フレディさんの言うとおり黙って見てることにしました。
小早川さんは、全く動こうともせず、チャイムを押そうかどうか迷っている。
押そうとして決心したように顔を上げるけど、なかなか押そうとしません。
チェリー『大丈夫かな……』
フレディ『やれやれ、これじゃぁ、キリがねぇな……
     だが今は、様子を見るほうが得策だな』
チェリー『小早川さん……』
小早川さんは、散々悩んだ末に落ち込んで、トボトボと帰路につきました。
チェリー『あぁ……!』
フレディ『帰っちまったな……やれやれ』
わたしは再度、みなみちゃんの様子を見に行きました。
フレディ『どうだい?』
チェリー『様子は変わってないよ。ただコーヒー飲んでるだけ』
フレディ『あとは音楽がAll DeadからGet Down,Make Loveに変わってるぐらいか……
     お、なんか立ち上がったぞ』
みなみちゃんは立ち上がると、ここからは見えなくなりました。
すると、玄関のドアが開いて、相変わらず制服姿のままで、ウンチ袋と、サンポひもを持った
みなみちゃんが出てきた。
みなみ「チェリー、散歩いこ……」
チェリー『あ、散歩だ。フレディさん、どうする?』
フレディ『暇だから、俺も付き合うぜ。乗りかかった船ということもあるしな』
こうして、私とみなみちゃんは散歩することにしました。


みなみ「………………」
みなみちゃんは、家から出てもまだボォっとしてる。
みなみ「どうしよう……」
チェリー『みなみちゃん!前見ないと危ないよ!』
みなみ「あ……ごめん……散歩中だったね」
それから、またみなみちゃんはフラフラ歩きました。
みなみ「………………」
チェリー『ほらみなみちゃん!気をつけないと、石につまずいて転んじゃうよ!』
みなみ「……ごめん」
少しは注意力が働いたのか、みなみちゃんは今度は真っ直ぐ前を見て歩いている。
みなみ「そうか……今のように謝れれば……」
やっぱり、みなみちゃんは小早川さんとケンカしたことをひきずっている。
また、みなみちゃんはボケっとしだした。
フレディ『ダメだこりゃ……。完全に放心状態だな』
チェリー『そうだね』
フレディ『お前さん、これからどうするんだ?』
チェリー『……やっぱり、わたしはみなみちゃんと小早川さんを仲直りにさせるきっかけに
     なりたいよ』
フレディ『ふむ、それじゃぁ、どうするんだ?』
みなみ「どうして、あんな風になってしまったんだろう……」
チェリー『小早川さんを、みなみちゃんのところに連れていく』
みなみ「一人で帰るの……久しぶりだったな……」
フレディ『シンプルな作戦だ。だが、成功する自信はあるのか?』
みなみ「………………」
チェリー『分からないけど……でも、みなみちゃんと小早川さんは、本当に仲がいいから、
     きっと分かりあえるし、それに……』
みなみ「仲直り……ちゃんとしないと……」
チェリー『これ以上、苦しむみなみちゃんを見たくないよ!』
みなみ「ああ……ごめん」
フレディ『……分かったよ。お前の思い通りにやりな。
     ただし、後悔はすんなよ?』
みなみ「………………」
フレディ『だが、問題は、お前さんが小早川を見つけ、ご主人さまのところに連れていけるかだが、
     今の調子だったら、多分無理だな。逃げ出そうとしたら、ひっぱられるのがオチだ』
みなみ「私が悪かった……のかな……?」
チェリー『うん。そうだよね……。どうやって、逃げ出そうかな……』
みなみ「考え方の……違い?」
それからは互いに黙りあい、しばらく歩きつづけた。
すると突然、フレディさんが足を止めた。
チェリー『どうしたの?』
フレディ『いいニュースだ。向こうから車がやってくる』
チェリー『えぇ!?だとしたら、みなみちゃんに気をつけるように言わないと……』
フレディ『待った!利用してやるんだ。ご主人さまは驚いてリードを緩めるかもしれない。
     お前はそこを狙って、一気に逃げるんだ』
チェリー『な、なるほど……。でも、危なくない?』
フレディ『なに、運が悪けりゃ、死ぬだけさ』
チェリー『………………』
フレディさんのことをちょっと疑いながらも、わたしは車が来てることを黙っておくことにしました。
みなみ「やっぱり……ちゃんと謝ろう。……でも、そのきっかけが……」
フレディ『ご主人さまよ。今からあんたの愛犬がきっかけになってくれるぜ』
車が突然飛び出してきて、思わずみなみちゃんは驚いてしまいました。
みなみ「………………!」
フレディ『よし!今だ!』
わたしは、緩くなったみなみちゃんの手を振りほどき、一気に小早川さんの匂いのする方向に
走った。
みなみ「あ、チェリー……待って……!」
フレディ『待てと言われて待つヤツなんていないぜ。ご主人さまよ。待っててな。
     もう少しでケリがつくぜ』

わたしは、何も考えずに走った。ただ、小早川さんの匂いのする方向へと走った。
途中から匂いの途切れた部分もあり、捜すのが大変だったが、
何十分も走り回っているうちに、やっと小早川さんを見つけた。
ゆたか「あれ?もしかして、チェリーちゃん?」
チェリー『や、やっと見つけた……小早川さん……』
わたしは、小早川さんがヒモを持ってくれるように、その場に座りました。
ゆたか「どうしたのこんなところで一人で。みなみちゃんが心配しちゃうよ?」
小早川さんは、わたしの散歩ヒモを持ちました。
チェリー『さ、早くみなみちゃんのところに行こう!』
ゆたか「わわわ、ちょっと待ってよぉ!」
わたしは、全力でひっぱりながら、みなみちゃんのところに戻りました。

みなみ「……いない……。私は……何をしているんだろう。ゆたかとケンカをして、
チェリーにも……あんなに仲良くしていたのに……」
フレディ『おいおいまだかよ……。このままじゃ、ご主人さま帰っちまうぞ……』
みなみ「……とにかく、家に帰ってチェリーのことを伝えないと……」
チェリー『いた!みなみちゃーん!!』
ゆたか「あわわっ、チェリーちゃん!ひっぱらないでーっ!」
みなみ「ゆたか!?……どうして、ここに?」
ゆたか「あ……えっと、その……この子が一人だけで迷ってたから」
みなみ「……連れてきてくれたの?」
フレディ『むしろあいつが連れてきたようなもんだがな……』
ゆたか「うん。はい、リード。離しちゃダメだよ?」
みなみ「………………」
ゆたか「それじゃあ……ね」
みなみ「あ……」
フレディ『おいおい、そのまま帰るのか……?』
みなみ「……待って!」
突然、みなみちゃんが小早川さんの手をつかんだ。
ゆたか「わっ、な、何?」
みなみ「あの……ゆたか……」
ゆたか「う……うん……」
みなみ「………………」
チェリー『みなみちゃん、がんばって』
わたしは、二人の顔を交互に見つめた。
みなみ「あ……ゆたか、顔、赤いけど……大丈夫?」
ゆたか「……あ、ほんとだ。少し、熱が出ちゃったみたい」
みなみ「え……ど、どうしたの……?」
ゆたか「チェリーちゃんみたいな大きな犬を引っ張ったのは初めてだったから、
    たくさん振り回されちゃって……それで、ちょっと疲れちゃったのかも」
フレディ『おまえなぁ……もうちょっと加減というものを知らんのか……?』
チェリー『だ、だって……みなみちゃんが早く帰っちゃったらいけないかなと思って……』
みなみ「……ごめん」
ゆたか「大丈夫。気にしないで」
みなみ「でも、熱が……そうだ、うちで休んでいって」
ゆたか「……いいよ、迷惑になっちゃうし」
みなみ「そんな事ない……友達、だから」
ゆたか「……え?」
フレディ『ふぅ、やっと言えたか。あとちょっとだぜ』
みなみ「友達、だから……迷惑なんかじゃない」
ゆたか「……本当……に?」
みなみ「うん……休むぐらいいつでも――」
ゆたか「そうじゃなくて……まだ友達って、言ってくれるの?」
みなみ「え……?」
ゆたか「あんな風にケンカしちゃって……私、嫌われたんじゃないかって……
    それで、謝ろうと思ってここまで来たんだけど、チャイムを
    押す勇気が出なくって……」
みなみ「ゆたか……」
ゆたか「それで仕方なく帰ろうとしたら、チェリーちゃんが来て、それで……それで……」
チェリー『小早川さん……』
小早川さんの体が、震えている……。
やっぱり、小早川さんも、後悔していたんだな……。
みなみ「嫌うはずなんてない」
ゆたか「え……」
みなみ「私こそ……どうやって謝ろうか
    ずっと考えていて……でも……嫌われたんじゃないかと思うと
    ……切り出す勇気が出なかった……」
ゆたか「私がみなみちゃんを嫌うなんてそんな事、絶対に無いよっ!」
みなみ「それでも……怖かった。そんな事で……謝るのを先延ばしにして……」
ゆたか「みなみちゃん……」
みなみ「……学校ではごめん」
ゆたか「私も……ごめんね……」
みなみ「……まだ、友達でいてくれる?」
ゆたか「私こそ、お願いしたいぐらいだよ」
みなみ「……じゃあ、仲直り」
ゆたか「……うんっ!」
フレディ『やれやれ、やっと一件落着ってか』
チェリー『よかったね、みなみちゃん、小早川さん――』
みなみ「明日からも……よろしく」
ゆたか「……私、みなみちゃんが親友で良かった」
みなみ「私こそ、ゆたかと親友になれて……できれば、ずっと親友でいて欲しい」
ゆたか「……うんっ。私たち、ずっと親友だよっ!」
チェリー『わたしもわたしも!』
ゆたか「あはは、もちろんチェリーちゃんも親友だよっ」
みなみ「……うん。チェリーも親友」
みなみちゃんを見ると、目から一筋の涙が流れてるのが見えた。
ゆたか「みなみちゃん、どうしたの?目、痛いの?」
みなみ「……夕日がまぶしかっただけ。それより……早く家に入ろう?」
ゆたか「うん、ありがとう。それじゃあおじゃましまーす」

チェリー『よかったよ~。ちゃんと仲直りできて』
わたしは、みなみちゃんの家に無事帰り、庭でフレディさんとくつろいだ。
フレディ『ま、本当に仲が良かったからな。あの二人は。案外ほっといても解決したんじゃないか?
別にいいけどさ』
チェリー『あ、そうだ。たしかみなみちゃんからもらったオヤツを埋めるの忘れてた。
     ……ここらへんに埋めちゃおー』
フレディ『おまえなぁ……前々から言おうとしたんだが、そうやって食いモン埋める癖、
     やめねぇか?』
チェリー『えぇ、面白いよ?誰にも盗られることなんてないし』
フレディ『逆に言えば、お前も取れねぇじゃねぇか。過去の経験上、昔埋めたエサとか
     覚えてるのか?』
チェリー『う……別にいいじゃん!』
わたしは、穴を掘ってそこにオヤツを隠した。
フレディ『やれやれ……』
チェリー『あ、そうだ』
フレディ『なんだ?』
チェリー『フレディさんも、親友だよ♪』
フレディ『………………』
フレディさんは、顔を洗った。
その後、わたしの額にパンチを放った。
フレディ『……ばーか』
チェリー『ふえぇ!?』
フレディさんは、堀の上に登った。
フレディ『さて、そろそろ俺は帰るわ。腹も減ったしな』
チェリー『うん。バイバイ』
フレディ『また暇になったら、遊びにくるぜ。あとご主人さまには
     次はクリムゾン・キングの宮殿に収録してある21世紀のスキッツォイド・マンを
     かけてくれって、伝えておいてくれ』
チェリー『うん。分かったよ』
フレディ『よろしくな。またな』
そう言って、フレディさんは、堀の下に下りていった。



















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  • フレディさん、いいですね! -- チャムチロ (2012-09-09 10:18:31)

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