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こなたの手紙

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だれでも歓迎! 編集
私とお父さんは、休みを利用してある親戚の家に滞在している。
大自然がすぐそこら辺に転がっているようなところで、昼は蝉の声、夜は蛙の声が音を支配する人口の少ない村だった。
インドア派の私がこんなところに来たのは理由がある。
一夜明け、水筒にお茶をもらった私は、その目的を果たすべくお父さんに許可を得た後どことも知れぬ脇道へ入っていった。



空気が澄み、緩やかな風が流れていく山道。
雲一つ無い青空。青天っていうのはこういう天気のことを言うんだろう。
私は額の汗を拭いながら、雑木林で囲まれた道なき道を歩いていた。

途中から坂になっていて、結構な体力を消費する。
ただでさえ田舎なのに、少し奥に向かうとすでに未開拓地だ。

肩から下げたバッグから水筒を取り出し、蓋を開ける。
注いだ麦茶をちびちびと飲みながら、道程は続いていく。




どれくらい経ったんだろう。
歩き始めたころに比べてかなりスピードが落ちてはいたが、それでも着々と進んでいた。
気づけば一方向から光が差し込んできている。あと少しで開けた場所に出るようだ。
ゆっくりとその光に向かって進んでいく。

坂がゆるやかになっていき、平地になったとき、わたしは一面に広がる向日葵に見惚れていた。

鼻腔をくすぐる匂い。太陽に照らされた真っ黄色の空間が、そこにあった。
ざぁっ、と涼しい風が流れる。髪がなびき、抵抗を感じたので、片手で麦わら帽子を抑えた。
そのまま、向日葵の中へ進んでいくことにした。
踏み出す。先ほどまでのだるさは消え、爽快感が体を包んでいる。自分の体ながら現金だ。


周囲が全て向日葵の黄色い世界。どれも太陽をしっかりと見つめ、輝いている。
せめて見晴らしのいいところにと思ったが、これだけの場所を見つけられたのは誤算だった。

わたしがこんな田舎に来たのには理由がある。

それは、皆に手紙を書くことだ。

自分らしくないとは思ったが、この時期には少し感傷に浸ってしまうこともあったりするのだ。
みんなの雰囲気もなるべく壊したくなかったし、ここに来れたのは僥倖だった。
一人でやってみたいことも、ある。

さて。





拝啓
初夏の気配が感じられる今日この頃、皆様方におかれましては如何お過ごしでしょうか。

なんてね。
なんとなく、皆に手紙を書いてみました。今私は向日葵がいっぱいあって凄く綺麗な場所に居ます。
皆に言いたいことがあるけど、やっぱり少し恥ずかしいから、元気な向日葵に後押ししてもらいました。

手紙を書くのは久しぶりなので、いつもと違うところがあるかもしれないけど。
これに書くことはぜんぶわたしの真面目な気持ちなので、最後まで読んでくれると嬉しいかな。


まず、つかさへ。


つかさは、いつもほんわかしているように見えるけど、本当はずっと皆とのことを考えてくれていること、知っています。

でも、そんなに気張りすぎることはないと思います。
一人で空回りするのはともかく、皆が繋ぎとめようと思えば消えないものだから。
どう努めてもなくなってしまうものはあるかもしれません。可能性がある限り、それは仕方ないことだから。
いつか離れていってしまうものなのかもしれません。変わらないものなんてないから。

でも、距離とか、会えない時間とかは、皆で持ち寄って埋めればなんとかなるものだと思います。
やっぱり、さびしいかもしれないけど。その寂しさは、きっとわたしたちの時間があった証だから。

…ごめん。だんだん、わけわかんなくなってるね。
それでも、寂しくて嫌な気持ちが爆発しそうになったら、言ってね。
一緒に悩むことぐらいは出来るから。


つかさ、ありがとう。




みゆきさんへ。


まずは、いつもいろいろ教えてくれてありがとう。
わたしのしょうもない疑問に一々応答してくれて、感謝してます。

でも、たまに答えられなくても、落ち込むことはないと思います。
皆みゆきさんのことを尊敬してるし、みゆきさんの良いところは他にもあるから。
だから、疑問に答えるためだけに物知りになろうとしなくても大丈夫です。

わたしの早とちりだったらごめんなさい。でも、みゆきさんは引っ込みがつかなくなりそうだから、少し心配でした。
目が悪かったり、ちょっとドジっ娘だったりして大変なときもあるかもしれません。

そんなときはぜひわたしを頼って下さい。
迷惑どころかみゆきさんから頼られるとかなり嬉しいと思うので。

歯医者、早めに行った方がいいと思います。


みゆきさん、ありがとう。




そんで、かがみへ。


かがみは、もう少し素直になった方がいいと思います。
例えばクラスのこととか。
疎外感を感じたくないのは同じなので、皆にもう少し言ってもいいんじゃないかなー、と思います。

…ごめん。わたしのせいだよね。
いつも色々酷いこといってごめん。

かがみは優しいし、わたしの趣味も理解できるので、ついからかってしまいます。
信頼してるからこそ出来ることなので、わたしはかがみとこういう仲で居られることを密かに自慢に思っています。
でも、かがみがわたしにからかわれることでむかついたり、自分の気持ちを誰にも素直に出せなくなったりしたら言って下さい。
頑張って改善します。

あと、無理してうちのクラスにずっと来なくてもいいです。
別にたまに来ないだけで何かあるということはないので、自分のクラスでの付き合いを犠牲にしなくても、わたしはかがみが大切な仲間だってちゃんとわかってます。
あんまり心配しなくても大丈夫です。


いつも、叱ってくれてありがとう。わたしがかがみのことや皆のことを嫌いになったりするのはまずないので、これからもわたしが悪いことをしたら皆で叱って下さい。
かがみがいるから、わたしは安心してアクセルを踏めます。


かがみ、ありがとう。




最後に…お母さんへ。

私なりにだけど、友達は大事にしてます。
背もほんの少しだけど伸びたし、だいたい全部順調です。

こなたは良い子にしてます。
だから、たまには様子を見にきてください。
お父さんも寂しがってます。

他にもいろいろ伝えたいことはあるけど、なんだか泣いちゃいそうなので、これぐらいにしておきます。



お母さん、ありがとう。また手紙書きます。




みんな、いつもありがとう。
これからも私をよろしく。


敬具





気づけば陽が赤く染まっている。
熱中して書いている内に、思わぬ時間が経ってしまった。急がないと陽が落ちてしまう。

長時間休ませていたので思うように動かない足に喝を入れ、数枚の手紙を持って立ち上がり、周りを見渡す。

思わず目を細める。

先ほどまで強い日射しに光り輝いていた向日葵たちは、今度は沈んでいく夕日のオレンジに染まっていた。
手で軽く目を覆う。何故か涙ぐんでしまった。最近涙腺が緩くてだめだ。

私は風情を漂わせながら佇む向日葵に背を向け、歩き出した。陽光が影を作る。

雑木林の入り口で一旦立ち止まり、後ろを振り向く。
向日葵はこちらを見ず、ただ太陽だけを見ている。


また踵を反すと、帰路につくべくバッグに手紙をまとめて仕舞った。




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コメント:
  • ↓↓こらこら。 -- 名無しさん (2011-04-12 00:36:03)
  • 卒業間近のこなたの心情整理かな? 俺はそう解釈しました。
    こなたの性格だと恥ずかしくって3人に面と向かって言えない事を手紙に・・・てか、そうであってくれ!! -- kk (2009-12-14 22:12:19)
  • まさか自殺フラグ? -- dhh (2009-12-14 10:19:52)



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