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続 ここにある彼方 その後(8)

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先程のゆきの発言が癇に障わったのかムスッとしている。
「おまえなぁ、いくら酔ってるからと言って娘たちに手を出したりはしないって。
いくら似てても嫁と娘は違う。娘を抱きしめることはあっても手は出さないよ。
おまえは判ってないんだ、愛情表現で抱きしめるのと好きな女を抱きしめるのは全然違う別物なんだよ。
この前かなたを抱きしめて俺の考えは間違ってないと確信したわ!!」
フンガーと鼻息荒く力強く言い切り、手にしたビールを一気に飲み干す。
軽く茶化したつもりだったゆきにしてみれば、こんなに本気で反論されると予想してなかった。
本気でムスッとしているそうじろうにシュンとしてしまったゆき。
そんなときにゆいがビールを抱えて戻ってくる。
やりとりは全て聞こえていたようで
「まぁまぁ、とりあえず乾杯しましょう」
ごろごろっとテーブルの上にビールとつまみをラフに置くと二人に缶を渡す。
(なんかお父さんが正しいように聞こえてしまうけど、高3の娘相手には
それはな~んか違うんじゃないか?と思うんだけどね~)
でもそれは言わないでおくか、とこなたは思ったのだが
「う~ん、そう君の言ってることはもっともに聞こえるんだけど
こなたもゆたかちゃんも高校生となった今ではなにか違わないかしら?」
かなたの方からサクッと言われてしまった。
こなたが、思わずブプッ!と吹き出してしまう。
(あらららw意外な所から攻撃がwお母さんもおんなじこと感じてたんだねぇ~…)
「小学生くらいまでよねぇ~父親が娘や母親が息子を愛情表現で抱きしめるとか……
中学生くらいから…なんて言うのかしら、犯罪臭くなるというか
世間一般的には、よろしくはないような感じにならないかしら?
……まぁ、わたしも、こなたも、ゆたかちゃんも見た目は小学生とあまり変わらないけども……」
幼児体型なことはどうしてもトラウマってしまうようで、最後のところで少し影が入る。
(おおお!お母さんストレートにいきますね…
しかしお母さん、幼児体型なことをホントに気にしてるんだねぇ…)
そんなかなたの事も気になるが、それ以上にそうじろうの反応が気になるところである。
ニマニマしながらそうじろうの方を見てみれば
案の定、痛い所をつかれたぜ!!的な表情をしている。
(よし!わたしがトドメを刺してあげよう!!)
こなたが何かを思いついたのか、グッと拳を握る。

「前にも聞いたけど、あえてここでまた聞こう。
私が男の子でも同じようにベタベタひっついて来た?」
こなたからの意外な攻撃にそうじろうが一瞬たじろぐ。
ゴホンと咳払いをしてから神妙な面持ちで答えだす。
「………う~む、深いな」
独りうなずきだすそうじろうに、なにそれ?と聞き返す。
「なにが深いのかよく判らないんだけどさ、男の子だったら絶対してないでしょ」
そしてこなたが自信ありげに逆に言い切ってしまう。
「うわ、ひでーな。言い切ってしまいますか。お父さん信用されてないな~」
「信用があると思うその根拠はなんなのか判らないけどさ~」
「うがっっっ!!!ええ~~~……お父さんショーーーーック!!!」
雷にでも打たれたようにガクリと落ちる。
「いや…まぁ、その…なんだ?実際に息子が居る訳でもないからさ
本当のところはどうなのか、俺にだって判らないけど
子供は子供さ、性別関係なくかわいいと思えるとおもうぞ?」
そこまで言うと、ぐびっと手にしたビールを飲みこむ。
「え~~……それじゃ、もし私が男の子でさらにお父さん並に大男でも?」
こなたからの追加攻撃がかかる。
「む、むむ?!……なんだか今日はやけに厳しいくないか?
…………ま、まぁ、正直、そんな条件だと自信はないな
というよりもだ、女の子でもあれだ、柊さん達辺りでもすでになんだが
年相応の普通の女子高生とかならやらないと思うぞ?
さすがの俺でもそれは犯罪臭いと思うからな」
目を瞑ってなにかを想像しているのか頬の辺りがほんのり赤い。
「ぉぉぅ…なんか今、とんでもないことをサラリと言っちゃってない?」
ちょっと引くというか、そんな答えが来るとはちょっと予想外。
「つまりは、実年齢はともかく見た目的に小学生ちっくならおkと?
そう言いたい訳ですね?つまりリアルでもロリコンであると認めた訳か」
フムフムと納得顔に戻る。
「ロリって…いや、ロリとか、そうじゃなくて……そうじゃなくてだな……
むぅ~上手く、こう、言い表せないんだがロリとはまた違った要素なんだよ」
ロリ属性を持ってるがゆえにその違いを上手く表現できず、う~むと考え込んでしまう。
こなたにしてもそうじろうが言わんとしていることはなんとはなしには判っているつもりだ。
ただちょっと、皆が揃っているということで悪戯心が顔を出しただけだ。
周りのニヤニヤ顔を見るに、みんなも判ってはいるようだ。
「ちょっと話題変えるけどさ、お母さんがさ、ゆい姉さんやゆき叔母さんみたいな
普通の…って言うとなんかアレだけど私みたいな幼児体型じゃなかったら
結婚してなかった?そもそも好きにすらなってなかったりした?」
考え込んでいるそうじろうに助け舟を出すべく、話題を変えようと違う質問をだしてみる。

「それはそれで結婚してたと思うぞ。小さいから好きになった訳じゃないしな。
それに小さいころは小さくて当たり前なんだし、一時期は俺のほうが小さい時期もあったんだし
体型うんぬんは関係ないな~、小さかろうが大きかろうが、結局は惚れてたさ」
間髪入れず迷う事無く即答で帰って来た。
「いやいや~即答とは」
なんとなく予測はできていたが、ホントに即答で帰ってくるとは。
なんか良くわからないがニヤけてしまう。
「よかったね、お母さん」
と、話を振られたかなたは少し恥ずかしげに微笑む。
「本人前にしてこんなこと言うのはちょっと恥ずかしいものがあるなハハハ」
そうじろうも柄にもなく照れているようだ。
「へぇ~お父さんでも照れるんだ?でもさ、そのレベルのことはいつも言ってるじゃん?なにを今更照れてるのかな?」
「いや~~はははは、アルコール入ってるからかなぁ~~ははは」
「へ?…なんか普通と逆のような……」
いつもは恥ずかしげもなく言うくせに、アルコールが入ると恥ずかしくなるという。
こなたにしてみれば、どう考えても逆でしょう?と。
普通、アルコールが入ることによって羞恥心がどこかへ逝ってしまうものなのでは?と。
いろんな意味で、我が父親ながらほんと常識外な人だなぁ~と再確認。
「アルコールが入る事によって、より自分に素直になってるんじゃないかな~伯父さん、照れ隠しがうまいからねぇ~。
普段はウマく誤摩化してただけで、ほんとは言ってて恥ずかしかったんじゃない?」
ゆいが不思議そうににしているこなたにぼそっと自分なりの解説をしてみたりする。
「う~ん、そうなのかなぁ~」
「はははは、ま、まぁ~、そういうことにでもしといておくれ」
たはははと苦笑いを続けるそうじろうに
「ん~そうだね、そういうことにしときますか」
こなたも、ま、いいか、と同意する。
「兄さん、素直じゃないもんね」
ゆきから茶々が入る。
「……なにおー、おまえに言われる筋合いはないぞ」
「はいはーい、わたしもひねてますよ~だ。兄妹そろってひねてますよ~だ」
「おまえほど酷くはないがな」
「え~え~そうでしょうね、でもね、兄さんは昔から○△□・・・」
そんなこんなで兄妹喧嘩が始まったようだ。
「姉さん、なんか始まってるよ?」
「あはは、ま、ほっといていいんじゃないかな?お母さんと伯父さんって
昔からこんな感じになること多かったし。いつものことってところかな?」
「そうね、喧嘩の絶えない兄妹でもあったわねぇ~、大概そう君が悪いんだけどもね」
ゆいにしてもかなたにしても、どこかしら楽しそうではある。
「喧嘩するほど仲がいいってね、仲がいいって言ってもいろんな種類があるけども、悪い種類ではないわね」
かなたがあきれ顔のこなたに、にこやかに話しかける。
「う~ん、いろんな兄妹仲があるってことか」
世の中色々だよね、と納得してしまった。

「それはそうと兄さん、実家にもたまには顔出しなさいよね~
もうかれこれ軽く10年は行ってないでしょ?」
兄妹間のもめ事が一段落ついて、まるっきり違う話題が飛び出す。
「……あんま気が向かないんだよな~、メンドくさいし、遠いし」
そうじろうが、ふぅ~とため息まじりに呟く。
「母さんも父さんも、それにお姉ちゃんのおばさんもおじさんもそう先は長くはないわよ?
こなたちゃんにも逢いたがってたし。時間的にも金銭的にも一番余裕あるじゃない。
それにお姉ちゃんのお墓参りだって……って本人目の前にしてこれは変な話になるわね……
それともなに?まだ、お父さんと喧嘩中だとか言いたいわけ?」
最後のところでニマッとする。
痛い所をつかれたそうじろうが、ハハハとバツが悪そうに
「あ~いや~まぁ~……別におやじと喧嘩したからとかじゃなくてさ……
いや、したけどさ……もういいんだよ、つーかいつの時代の話を持ち出してんだよって。
喧嘩うんぬんはホントにもはやどうでもいいことさ、俺も人の親になって随分経つ訳だし、
当時おやじの言いたかったことだって今ならよ~く判る。
だからもういいんだ。
ただな、あっちに行くと、なんつーか……かなたのこと思い出してしまいそうでな。
墓参りなんかした日には葬式のときまで引き戻されちまいそうでな……
せっかく忘れていたものが吹き出して来てしまいそうでな。
……ん~~イマイチ言葉が悪いな。まるでかなたの事を忘れ去りたいみたいに聞こえるな。
そうじゃなくてさ……昔を思い出して寂しくなっちまうんじゃないかって……
また、抜け殻のような俺に戻ってしまうんじゃないかって、怖くてさ。
あ~~スマン、吹っ切れてなかったのは俺の方だったのかもしれん。
こなたの手前もあるし、無理にしまいこんでたんだろうな。
ただ、心の奥底でお前の死をずーっと引き摺ってたんだと思う。
……本人目の前にしてこんなこと言うのもおかしな話だが」
かなたの方に向き直して
「だから、戻って来てくれて…ほんとにありがとうな。
逢えて、話せて……おかげで色々と心の奥底にあったものが片付いたよ」
晴れ晴れとした顔で、ゆき、ゆい、こなたを見渡して
「そうだな……今度、金沢まで足伸ばしてみるか…
もしかすると俺の分の旅費は経費で落ちるかもしれんしな」
頭のなかでは、既にいろいろな算段が立てられているのか、むふふ~と
いつもの得意げな顔になっている。
「お母さんはそもそも幽霊だから旅費がかからないしね
……車ならお父さん分だけの旅費で私も行けるんじゃない?」
ん〜それならとこなたが提案してみる。
「車はちとキツいなぁ~、こなたが運転できればいいんだが免許まだだしな。
ここは素直に電車だろ~。ここから金沢って結構距離あるぞ?」
「電車なら私は子供料金で行けそうだね」
「確かに……ってこらこら、そういうズルは良くないって」
「えへへ」

そうじろうとこなたのやりとりを微笑ましく見まもりつつ
(わたしもあれ以来あっちには行ってないわね)
よくよく考えてみれば幸手の家にしか出現していないことに気がついた。
親より先に逝ってしまった親不孝をいつかあやまらないと、と思いつつ
同じくこの世に残して来てしまった娘の方がより気がかりだったからなのかもしれない。
(別に、お父さんとお母さんに逢いたくなかった訳じゃないのよ?
それでも、気がついたらいつもこなたの所にばかり現れてしまってたのよね…
…母親になって子供が先に逝ってしまう悲しみも少しは理解できたと思う……
ごめんね、お父さん、お母さん、次は逢いに行ってちゃんと謝るからね)
まだまだ健在な自分の両親を思い出して、自分が先に逝ってしまった罪を
改めて思い直し、ふと涙が流れそうになっているのに気がつき
周りにバレないようにそっと目元を拭うのであった。

「あ~ごめんごめん、放置するつもりは無かったんだけどさ思わず話が長引いちゃってさ~」
テレビの前でゲームをしていたかがみとつかさの元へと戻ってくる。
「いや~まぁ~久しぶりなんだろうし、別にうちらに気を使ってくれなくてもよかったんだけどな。
つかさの練習相手で十分楽しいし」
つかさ相手であれば、こなたに話しかける余裕はあるようだ。
一方のつかさはゲームに夢中でそれどころではないようだが。
「うわぁっ、また負けた!う~ん、いいところまでいったんだけどなぁ
ようやく思い通りに動けるようになって来たと思ったのになぁ~」
ゲーム終了と共にこなたの帰還に気がつく。
「あ、こなちゃんお帰り~なかなか難しいねぇ~」
つかさがコントローラーを置いてこなたに振り返る。
と奥の方から声がかかる。
「え~と、あなたたちが双子の柊さん達かしら?」
来て早々、かなたを見つけてしまった嬉しさで周りが見えてなかったのが
落ち着いてくるにしたがって徐々に周りにも目がいくようになり
こなたの行く先を見てみれば、写真で見た事のある二人が。
初めましてなのに、ろくに挨拶すらしていない事に気がつき
あ~シマッタ、といったところである。
かがみとつかさが立ち上がり
「はい、わたしが姉のかがみで」
「わたしが妹のつかさです」
「「はじめまして」」
ぺこりとおじぎをする。
「えへへ、ゴメンなさいね挨拶が遅れちゃって、ゆいとゆたかの母のゆきです。
いつも娘達が世話になってるみたいで。
それにゆたかが学校に行くのが楽しいっていつも言っててね…
そんな事言だしたのは初めてなんで皆さんにはホントに感謝してるわ、ありがとう」
深々と頭を下げる。
「え?や、そ、その、頭を上げてください、
友達の従姉妹で同じ学校の後輩だっていうことから普通に接しているだけで
私達は別段そんな…お礼を言われるようなことは……」
あわわといきなりの展開にかがみが驚く。
「その普通に接してくれてるというのが嬉しいんですよ、あの子には。
もうご存知かと思いますけど、あの子は身体が弱くて、そのせいで
特別扱いや、腫れ物に触るような扱いを今まで受けて来てしまったから……」
ゆきが伏し目がちにそんなことを伝える。
ゆたかから聞き及んでいたことと合わせて、ああ~と思う事も多々有る。
そんな重い空気をなぎ払うように
「ん~でも叔母さん、そんなに気にしなくてもいいんじゃない?
それ言ったら、わたしなんか叔母さんにどれほどお礼を言っても足りないくらいなんだし」
軽ーくこなたが返してしまう。
「それに、私達よりも、今はここにいないクラスメイトの
岩崎さんや田村さんの功績の方が大きいと思うよ?」
ゆきに対してゆたかの現状を伝える。
自分達なんかよりも、もっと大きな存在である同じクラスの友達のことについて。
「その二人についても良く聞かされているわ。有り難いことよね。
でも、こなたや柊さんたちのこともよく聞いてるのよ?」
「え?怖い先輩がいるって?」
「おい!!!!」
こなたとかがみのやり取りに思わず笑いがこみ上げる。
ゆきの笑いが取れたことでシリアスモードが緩和されたことを確認する。
「確かに私達の影響もあるのかもしれない。
でも、私達はこれといって特別なことはしてないし、
今のこの状況を造り出したのはゆーちゃん個人の力だと思うよ?」
こなたがゆたかのその隠された力……現状を生み出している力について述べる。
自分の力で今という時間を切り開いているんだよ、という事を。
「…そう…あの子もちゃんと大人になって来てるってことなのね……」
ゆきにとってはうれしいような、さみしいような。

ゆいに続いてゆたかも自分の手の内から巣立って行こうと頑張っている
……少し前までは、いつまでも巣の中でうずくまったまま、
永遠に巣立つことは出来ないんじゃないか?と心配で心配で堪らなかったのに……
自分の足でしっかりと立ち上がれるようになっていた。
(ゆいのようにいつかは巣立っていっちゃうわけか……さみしくなるわね…)
ゆいの時にはまだゆたかがいたからそこまで寂しさは気にならなかったのだが……
いつまでも自立しないで親のスネかじりも正直問題だけども
巣立たず、いつまでもそばに居て欲しいとも思ってしまう。
矛盾してしまう親のわがままな想い。
思わず、ぎゅーっとこなたを抱きしめてしまう。
「おぉ!?きゅ、急に何事?!」
「ゆいと同じくゆたかもそのうち巣立っていっちゃうのかと思うと
なんか居ても立ってもいられなくてね……思わず……」
スッとこなたを離すと
「売れ残っちゃうのは問題だけど、それでもどこにも行って欲しくなかったり…ね。
子供ってものはね、親がいくつになっても子供であって、そばにいて欲しいものなのよ。
親側のわがままよね、これって。
ゆいがお嫁に行く時もうれしかったけど、寂しかったし。
旦那なんか泣いてたしねぇ~」
ふぅ~とため息まじりに、その切なさを語る。
「やっぱそうなんだ、でも私達にはまだまだ先の話だと思うよ?」
こなたがだから大丈夫だよ?と言いたげに答える。
「そう思うでしょ?でも私がゆいを産んだのは二十歳前よ?
成り行きによってはあなた達だってそうなるかもしれないのよ?」
ニンマリした顔でこなた達に問いかけてくる。
「……そ、そういえば……私はもう18だから、種付けそのものは
来年中の話ってことになるのか……想像もつかないよ」
こなたがフームと考え込もうとするが
「……こらこら、種付けとか言うなよな」
かがみの赤面突っ込みが入る。
「はぁ……やっぱり兄さんの責任は重大よね」
ゆきが再びこなたをぎゅっと抱きしめる。
「えええぇぇぇ?!ちょ?!あんまりシリアスにならないように
あえてそう言う表現をしたんだけど、裏目にでるとは!!
というか叔母さん…………そんな抱きしめてこなくても……」
という言葉とは裏腹にこなたの前にまわされたゆきの腕をぎゅっと掴んで手元に引き寄せるのであった。
「昔も言ってたけど……まるでお母さんみたいだよね……」
ゆきに抱きしめられるのはまんざらでもないようだ。
その表情をうかがえば判る。
そんなこなたの言葉にハッとなる。
昔もこんな事を言われた。
確かに言われてた。
当時言われて嬉しかった。
そのまま、自分の娘にしたかった。
なんどそのままお持ち帰りしようと思ったことか。
でも、今は本当の母親が目の前にいる。
自分の好きだった義姉が居る。
だから、そんな事を言われるのはなんだか気恥ずかしい。
「でも、わたしと姉さんじゃ全然ちがうでしょ?本物とは全然違うでしょ?」
ゆきが若干狼狽しながらもこなたに答える。
「まぁ確かに、お母さんはこんなにおっぱい大きくないし背も高くない。
でも、匂いというか感覚というかなんかね……同じなんだよね
このおっぱいの大きさと柔らかさ、確かにお母さんには無いものなんだけど
そういう事は気にならないというか、おっぱい=お母さんな所もある訳ですよ。
私が記憶に無いくらい幼いころからだっこしてもらったからなのかもしれないね
私にとってはどっちも本物だよ」
ゆきの腕をさらにぎゅーっと強く抱き寄せる。
周りからは気がつかれないように。
「おっぱい=お母さんだとか、おっぱいおっぱいって……」
かがみからお約束のつっこみが入る。
「だ~ってしょうがないじゃん。このおっぱいだよ?
わかる?このみゆきさんを凌駕するレベルのおっぱい。これはもはや武器だよ武器」
といいつつ片方の手でゆきのおっぱいをポヨヨン~と掴んで揺らしてみせる。
「うぉ……」
かがみがその揺れっぷりに動揺する。
「ね?すごいでしょ?」
自慢げに語る。
「なぜあんたがそんなに自慢げなのかがよく判らないが、確かに凄いな」
かがみが少々あきれ顔に戻る。
となりのつかさはなんかさわりたさそうな顔をしてるが
下手につつかずに、あえて放っておいとくことにした。
だがしかし、目ざといこなたに見つかってしまう。
つかさの目をじ~と見て
「ん~~なんだかさわりたさそうな顔してるね~」
こなたの表情がによによ~となる。
「ひゃうっ!!べ、べつに、そんなことは…………あるかも…」
ムダな抵抗はせずにあっさりと陥落した。
「あははははは~もう、こなたちゃんってば、あいかわらずおっぱい好きね~」
3人のやりとりに妙なおかしさが込み上げて来て、思わず笑ってしまった。
「触っても別に減るものでもないし私は構わないけどね。
つかさちゃんも触りたければ別にいいわよ?かがみちゃんもどう?」
そんな問いかけにかがみは躊躇しているようだが
つかさはそそくさと近づき指先でぷにぷにっとつついて
「柔らかいね~すごいね~いいなぁ~大きくて。うらやましいよね、
……なにがつまってるんだろうね?」
「夢と希望じゃない?」
つかさの問いにこなたがほぼ即答な感じで答える。
「なんじゃそりゃ?」
かがみからの突っ込みもほぼ即応だ。
「なんじゃそりゃって……かがみは夢も希望もない人ですね」
こなたのによによ顔が止まらない。
「……くくくく…あははははは……あ~おかしい。
もう、あんた達の年代の子ってホント楽しいわよね~」
ひとしきり笑った後に
それじゃまたね、とこなたたちから離れて再び元の所へと戻っていった。

「う~ん、もう少しあの感触を味わっていたかったが……残念
かがみもせっかくなんだから触っておけばよかったのに、こんなチャンス早々ないよ?」
「別にいいっちゅうの!!」
「またまたムキになっちゃって、ほんとはつかさみたいに触りたかったんじゃないの?」
「なんか言えば言う程泥沼にハマりそうだからもう辞めとくわ」

ふわぁ~とつかさからおおきなあくびが飛び出す。
「つかさそろそろお寝むの時間かな?
電池が切れかかってるというか、眠そうだよね」
「う、うん……でももう少し大丈夫だよ?なんだか寝ちゃうのもったいなくて……」
時計の針は翌日の領域に侵入していた。
「あ、わかるわかる、寝ちゃうとそこで終わりだもんね、寝たら負けというか」
「だからって明け方までゲームやってていいって訳じゃないんだがな」
「う~んつれないなぁかがみは~」
「普段のあんたの生活が伺いしれるわ、そんなんだからいつも新学期には廃人なんだな」
「ん~ん、今日のかがみは厳しいねぇ~」
「んなことは……ふぁ~……というか、わたしもそろそろ限界かもね~」
かがみからも大きなあくびが出始めた。
「なにを言っているのかね?夜はまだまだこれからだよ?」
こなただけは元気だ。
「……いつも何時に寝てるんだ?」
「ん~~早くて4時とか、遅くても6時前に寝てるよ。
週末なんかだと社会人組も起きてて徹夜とかあるけどね」
なぜか誇らしげに語る。
「…なんだかなぁ~、うちに来たのがあの時間なのも当たり前だわ」
宿題写しに朝一でといいつつ、昼過ぎになった今日の出来事も納得である。
「しょうがないなぁ、それじゃ、いつでも寝れるように私の部屋に移りますかい」
「寝れるように、じゃなくて寝るんだからな?」
寝る気はなさそうなこなたに釘を刺す。
「またまたぁ~かがみったら……今夜は寝かさないヨ?」
上目使いでするするっと腕に絡んでくる。
ゴスッ!
かがみの頭突きが炸裂する。
ヒットした額から、しゅう~~と煙が出てきそうな勢いだ。
「バカ言ってないで、行くぞ、ほら」
「ぐぉぉぉ……か、かがみってば……石頭?……」
ひそかにかがみも頭突きをお見舞いした額が痛いといえば痛いのだが、そのままスルーで通す事にした。
とりあえず、布団がある所へとっとと行こう話はそれからだ、といったところだ。
腕に絡んで来ているこなたはそのままに、こなた部屋へと移動を開始する。
「お母さん、というわけで私達は部屋にもどるね、おやすみ~」
「おやすみなさいこなた、それに、かがみちゃんにつかさちゃんもね
って、つかさちゃんはもう半分寝ちゃってるのかな?」
かがみにもたれかかるようにしてなんとか立っているつかさに、クスッと笑ってしまう。
「!!だ、大丈夫です、起きてます……おやすみなさい」
かなたの言葉に、はっと我に返って慌てて目を開けて、挨拶をする。
「それでは失礼します、おやすみなさい」
かがみも挨拶をして居間を後にする。

「こなたはかがみちゃんが大好きなのね、男の子だったらいい彼氏さんになってたかもしれないわね」
先程のやりとりといい、クスクスと思わず笑ってしまう。
こなたぐらいの時って何でもないようなことでも楽しかったなって。
「ね、そう君」
同意を求めた先のそうじろうは、だがしかし、軽く沈んでいた。
「ああ…そうだな…」
一応の返事は帰ってきたが、テンションは異様に低い。
「ちょっと、なに?どうしたの?……私が彼氏とか言ったもんだから?」
そんなかなたの問いに
「いや…ま、それもそうなんだが……さっきこなたがさ……
『お母さんおやすみ~』って……俺は完スルーだった……」
そう言うとさらに凹みだした。
「へ?…あ、ああ、まぁ、確かにそうだったかもね」
そんなことで?でもそんな大したことじゃ……
かなたにとっては予想外の事で凹んでいた。

「あほか~!」
そんな一喝と共にチョップがそうじろうの頭に叩き込まれる。
「うごっ!!…な、なにしやがるんだ!!」
「なぁ~にくだらないことで凹んでるのよ!!」
睨み合う二人の間に火花が飛び散る。
「くだらないだとぉ!」
「父親なんてものはそんなもんでしょう!今までが特例だっただけよ。
母親が居なかった今までがね!!
こなたちゃん位の歳の娘なら父親なんて母親に比べたら空気みたいな存在よ!!!!
特に兄さんみたいなダメ人間ならなおさらね!」
フッフッフッと見下すようにニヤつく。
「く、くそう、言わせておけば!!!
………………………………………………………………
…………そ、そういうものなのか?ゆいちゃん?」
ゆきの言葉にムカっとしたものの、否定できない面もあり真否の程を伺ってしまう。
「え?!……え~~あ~~う~~……そのですね……
こなたやゆたか位の時ですと……お母さんの言う通りかなっと……」
気まずいなぁ~と思いつつも当時の心境を語る。
「うぐっ……か、かなたも、高校生くらいのころってそうだったのか?」
四面楚歌になりつつあるそうじろうがかなたにすがる思いで振る。
「んん~~…そうねぇ~……わたしもお父さんとは距離とってたわね~
母と娘ってちょっと特殊な間柄だとは、私も思うわ。
だからってお父さんの事を嫌いになってた訳じゃないんだけども
なんか、こう…近寄りがたいというか、違う存在なんだっていう
だから、こなたのそう君に対する態度ってすごいなぁって思ってるのよ?
……ただ、父親としてなのか、同じ趣味の先輩としての態度なのか判らなくなる時が多々あるけど」
二人からも、ゆきの言葉を肯定する意見が出て来てしまった。
「……ふぅ…そうか…」
力なくうなだれる。
「いや…やっぱそういうもんなんだなって改めて思い直したぜ…
そういう話って良く聞くしな…でも、いざ自分がそういう条件にハマると辛いもんだな」
そのまま消えてなくなりそうなそうじろうに
「あくまでも高校生だったころの話だからね?」
かなたが助け舟を出す。
「社会に出て、結婚とかの話が現実味を帯びてくるような歳になれば、また違うのものよ?」
自身の過去の記憶をたぐり寄せるように言葉を紡いで行く。
「お父さん、今までありがとうって……」

そこまで言うと黙り込んで俯いてしまった。

と、かなたの瞳から涙がぽろぽろとこぼれ落ちてくる。
先ほど湧き上がってきていた思いが、ついに爆発してしまったかのようだ。
「………お父さん…お母さん…先に死んじゃってごめんね……」
震える声で呟くと、そのまま泣き崩れてしまった。
「お、おい、かなた?かなた!!」
あまりの急展開に鬱っていたそうじろうが現実へと引き戻される。
「私の……葬式の時…あんな顔したお父さんとお母さん見た事無かった……」
両手を顔に当て泣きじゃくる。
「それはかなたが悪い訳じゃなく、仕方がなかったことだろう?
おまえだって死にたくて死んだ訳じゃない。
誰のせいでもない。誰が悪い訳でもない。
どうしようもなかったことさ……人間がどうこう出来る代物じゃなかったんだって」
嗚咽し、小刻みに震えるその両肩。
泣き崩れうずくまるかなたを後ろから優しく抱きしめる。
「お父さんもお母さんも葬式の時、一生懸命、私に謝っていた……
でも違うの…本当に謝るべきなのは私…こなたがいるからこそわかるの……」
何も言わずにしばらく無言で抱きしめる……
自分の子供の葬式に出る……その意味、悲しさ…想像もつかない。
もしこなたが……俺だったらどうなってしまう?
抱きしめつつ変な考えが頭をよぎってしまう。
いやいや、いかんいかん、そんなマイナス思考ではイカン…何を考えてんだ俺は、まったく。
俺がしっかりしなきゃいけないつーのに。
(……うしっ!行くぞ、俺!!)
心のなかで考えを落ち着かせ、少し落ち着いてきた様子を見せてきたかなたの耳元に優しくささやく。
「……でもな、かなた独りでその罪を背負わなくてもいいんだぜ。
俺が半分背負ってやる。結婚するとき、楽しい事も、辛い事も二人で半分こって決めただろ?」
涙も止まり平静を取り戻しつつあるかなたがゆっくりと背後のそうじろうへと顔を上げる。
見上げたその顔は瞳が涙でウルウル、鼻先が若干赤い、いかにもさっきまで泣いてましたな顔。
(うぉっ!な、なんという破壊力!!可愛すぎる~!!!!)
咄嗟にぎゅぅーーーっと抱きしめてしまった。
(あぶねー、こんな場面で萌え~とか抜かしてたらみんなから殺されかねないぜ……よくぞ堪えた俺)
頭を切り替える為にもフゥと一呼吸入れて
「それに……おまえは今ここにいる。ここにいるんだ。……いるんだよ、いまここにかなたとして存在してるんだ。
お義父さんお義母さんよりも先に…そしてこなたを置いて逝ってしまったことを今でも罪に思ってるならさ…それは違うぜ?
死んじまった過去は消せないが、過去に生きてる訳じゃない、過去はあくまで過去さ。
大事なのは今さ。いつまたいなくなってしまうか分からないけど、今はこうして存在出来てるじゃないか。
贖罪としてはそれで十分さ、俺だっていつか死ぬ。そしたら賽の河原ゲームでもなんでも俺が手伝ってやるさ」
抱きしめていたかなたを床の上に座らせ、両方の肩をガシッと掴みまっすぐに見つめる。
「……そんな、都合のいい贖罪なんてあるの?」
「かなたに逢いたいと思っていた者達にとっては最高のな
異論は認めない。神が認めないというなら俺は神が相手でも闘うぞ!!」
「そう君……」
「大丈夫……俺は最後までかなたの味方だ……」
再び強く…強く、抱きしめる。


















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