――夕闇が、落ち始めていた。
「はい、お姉ちゃん」
「あ、ありがと……」
カラン、と音を立てながら、つかさが麦茶の注がれたコップを机の上に置いた。そしてかがみの隣に腰を下ろす。
「………」
「………」
すごく、静かだった。
窓から差し込んでくる日差しは、もうオレンジ色へと変化していた。
さっきまで、ここに溢れかえっていたあの活気も、もうどこかへと消えてしまっていた。
居間には、つかさとかがみだけ。
まだセミの鳴くころでもなく、扇風機の回る音しか聞こえてこない。
ゴーっと音を響かせながら、かがみの髪を舞い上がらせる。
つかさはおいしそうにお茶を飲み込んでいた。
「……楽しかったね」
「うん……」
「全部、…………終わっちゃったね」
「……うん」
机の上に、コップを置く音がした。
首を振る扇風機が、また髪の毛を舞い上がらせる。
かがみもコップに手を伸ばす。
冷たい。
水滴が指先を濡らす。
喉を潤わせると、冷たさが身体に染みこんでくる。
「ねえ、つかさ……」
「なに?」
「つかさは……」
つかさの気持ちは……。
「あ、ありがと……」
カラン、と音を立てながら、つかさが麦茶の注がれたコップを机の上に置いた。そしてかがみの隣に腰を下ろす。
「………」
「………」
すごく、静かだった。
窓から差し込んでくる日差しは、もうオレンジ色へと変化していた。
さっきまで、ここに溢れかえっていたあの活気も、もうどこかへと消えてしまっていた。
居間には、つかさとかがみだけ。
まだセミの鳴くころでもなく、扇風機の回る音しか聞こえてこない。
ゴーっと音を響かせながら、かがみの髪を舞い上がらせる。
つかさはおいしそうにお茶を飲み込んでいた。
「……楽しかったね」
「うん……」
「全部、…………終わっちゃったね」
「……うん」
机の上に、コップを置く音がした。
首を振る扇風機が、また髪の毛を舞い上がらせる。
かがみもコップに手を伸ばす。
冷たい。
水滴が指先を濡らす。
喉を潤わせると、冷たさが身体に染みこんでくる。
「ねえ、つかさ……」
「なに?」
「つかさは……」
つかさの気持ちは……。
――かがみ自身はどうなの?
親友の声が、頭の中に響いた。
「……ううん。やっぱりなんでもない」
「?」
つかさが不思議そうな顔をしていた。
風が吹いて、彼女の髪も舞い上がる。
「……お姉ちゃん」
小さな声が、部屋の中に響いた。
「……何?」
「………」
「……?」
「私も、やっぱり何でもないよ」
横顔を盗み見る。
彼女は寂しげに笑みを浮かべていた。
「……なによ」
「ううん」
目を伏せる、つかさ。
かがみはまたコップに手を伸ばした。
持ち上げたら、水滴が下に零れ落ちた。
ポタリポタリと、数滴だけ。
それはなんだか――。
「………」
「………」
「……ううん。やっぱりなんでもない」
「?」
つかさが不思議そうな顔をしていた。
風が吹いて、彼女の髪も舞い上がる。
「……お姉ちゃん」
小さな声が、部屋の中に響いた。
「……何?」
「………」
「……?」
「私も、やっぱり何でもないよ」
横顔を盗み見る。
彼女は寂しげに笑みを浮かべていた。
「……なによ」
「ううん」
目を伏せる、つかさ。
かがみはまたコップに手を伸ばした。
持ち上げたら、水滴が下に零れ落ちた。
ポタリポタリと、数滴だけ。
それはなんだか――。
「………」
「………」
――オレンジ色の空が、今夜は晴れると知らせていた。
♪
答えは始めから決まっていた――。
なんて、誰の言葉だったろうか。
それが分からないくらいに、いろんなところで使われる言葉で、確かにその通りなんだと思う。
私の気持ちも、最初から決まっていた。
ただ、気付けなかっただけ。
あの子の幸せなんて言いながら、逃げていただけ。
この願いが叶ってしまったとき、あの子を不幸にしてしまう――。
そんなふうに考えながら、……本当は、怖がっていただけなんだ。
私は、あの子のお姉さんだっていうのに。
しっかりしてないと、なんて言っていたくせに。
ただ、……自信が無かっただけだった。
なんて、誰の言葉だったろうか。
それが分からないくらいに、いろんなところで使われる言葉で、確かにその通りなんだと思う。
私の気持ちも、最初から決まっていた。
ただ、気付けなかっただけ。
あの子の幸せなんて言いながら、逃げていただけ。
この願いが叶ってしまったとき、あの子を不幸にしてしまう――。
そんなふうに考えながら、……本当は、怖がっていただけなんだ。
私は、あの子のお姉さんだっていうのに。
しっかりしてないと、なんて言っていたくせに。
ただ、……自信が無かっただけだった。
「………」
見上げた夜空は、星がよく見えた。
向こうの方に、夏の大三角形が光っている。
天の川は、さすがによくわからないけれど。
それでも綺麗に、星が見えていた。
向こうの方に、夏の大三角形が光っている。
天の川は、さすがによくわからないけれど。
それでも綺麗に、星が見えていた。
♪
「かがみさんと、何かあったんですか?」
「え?」
笹の葉に飾りつけた、あの少し前。
片づけをするつかさの隣で、みゆきがそう聞いてきた。
「ど、どうして?」
「かがみさんも、あまり元気がないように感じたので……」
みゆきが心配そうな顔をする。
「えっと、その……。……あった、けど、そんなに心配するようなことじゃないから……」
「………」
「だから、大丈夫だよ」
そう言って、つかさは笑顔を浮かべる。
せっかくこんなふうに祝ってくれたっていうのに、自分は何をやってるんだろう。
小さく頭を振って、気持ちを切り替えた。
「……あのプレゼントは、喜んでもらえましたか?」
「うん。ゆきちゃんのおかげで、お姉ちゃんもすごく喜んでくれたよ」
思い出す。
あの時、嬉しそうに微笑んでくれたあの人の笑顔を。
「………」
「……ゆきちゃん?」
みゆきが静かに、つかさのことを見つめていた。
「いえ……。つかささんは、本当にかがみさんのことが好きなんですね」
「え……」
そう言って、みゆきがクスリと微笑んだ。
確かにその通りだけど……。
なんだかちょっと、頬が熱くなった。
「その気持ちは……、ちゃんとかがみさんに伝わっていると思いますよ」
「………」
――そう、だよね。
多分、きっと。
それさえ伝わっているなら、それでいいと思う。
「……うん」
「え?」
笹の葉に飾りつけた、あの少し前。
片づけをするつかさの隣で、みゆきがそう聞いてきた。
「ど、どうして?」
「かがみさんも、あまり元気がないように感じたので……」
みゆきが心配そうな顔をする。
「えっと、その……。……あった、けど、そんなに心配するようなことじゃないから……」
「………」
「だから、大丈夫だよ」
そう言って、つかさは笑顔を浮かべる。
せっかくこんなふうに祝ってくれたっていうのに、自分は何をやってるんだろう。
小さく頭を振って、気持ちを切り替えた。
「……あのプレゼントは、喜んでもらえましたか?」
「うん。ゆきちゃんのおかげで、お姉ちゃんもすごく喜んでくれたよ」
思い出す。
あの時、嬉しそうに微笑んでくれたあの人の笑顔を。
「………」
「……ゆきちゃん?」
みゆきが静かに、つかさのことを見つめていた。
「いえ……。つかささんは、本当にかがみさんのことが好きなんですね」
「え……」
そう言って、みゆきがクスリと微笑んだ。
確かにその通りだけど……。
なんだかちょっと、頬が熱くなった。
「その気持ちは……、ちゃんとかがみさんに伝わっていると思いますよ」
「………」
――そう、だよね。
多分、きっと。
それさえ伝わっているなら、それでいいと思う。
「……うん」
あの時のみゆきとの会話を思い出しながら、つかさは今日貰ったものを眺めていた。
みゆきから貰ったのは、一冊の本。
ゆたかとみなみは二人で一緒のもので、これもまた本だった。といってもこちらはお料理の本だったけれど。
そして、こなたからはあのイベントを。
記念撮影をした後に、なるべく早く現像するからね、と言っていた。
もうすぐ、今日が終わる。
七月七日が終わりを迎える。
真っ暗になった外は、よく晴れ渡っていた。
夕御飯も食べ終わったし、お風呂にも入った。
パジャマに着替えて、髪も乾かして、歯磨きもした。
明日は日曜日だから、夜更かしも出来るけど、あまりそんな気分でもない。
でも眠ってしまうのも、もったいなくて。
今日という日が終わるのが、すごく寂しいと思った。
みゆきから貰ったのは、一冊の本。
ゆたかとみなみは二人で一緒のもので、これもまた本だった。といってもこちらはお料理の本だったけれど。
そして、こなたからはあのイベントを。
記念撮影をした後に、なるべく早く現像するからね、と言っていた。
もうすぐ、今日が終わる。
七月七日が終わりを迎える。
真っ暗になった外は、よく晴れ渡っていた。
夕御飯も食べ終わったし、お風呂にも入った。
パジャマに着替えて、髪も乾かして、歯磨きもした。
明日は日曜日だから、夜更かしも出来るけど、あまりそんな気分でもない。
でも眠ってしまうのも、もったいなくて。
今日という日が終わるのが、すごく寂しいと思った。
「………」
机の上に、小さな箱が置かれている。
つかさはそれを手に取ると、ベッドの上に腰をかけた。
手のひらに乗せて、そっと開く。
かがみから貰った、指輪が入っていた。
可愛いデザインをした、銀色に輝くリング。
大切なもの。
これからの自分にとって、なによりもかけがえの無いものに、なってしまったもの。
指先で少しだけ触れると、もう触れられないあの人の温もりを感じた気がした。
「……お姉ちゃん……」
そっと呟く。
くちびるから漏れるため息が、夏の空気の中へと消えていった。
「……?」
ブンッと、携帯が震える音がした。
机の上でガタガタと震えるそれを手に取り、画面を覗き込む。
メールの着信が一件。
――お姉ちゃんから。
机の上に、小さな箱が置かれている。
つかさはそれを手に取ると、ベッドの上に腰をかけた。
手のひらに乗せて、そっと開く。
かがみから貰った、指輪が入っていた。
可愛いデザインをした、銀色に輝くリング。
大切なもの。
これからの自分にとって、なによりもかけがえの無いものに、なってしまったもの。
指先で少しだけ触れると、もう触れられないあの人の温もりを感じた気がした。
「……お姉ちゃん……」
そっと呟く。
くちびるから漏れるため息が、夏の空気の中へと消えていった。
「……?」
ブンッと、携帯が震える音がした。
机の上でガタガタと震えるそれを手に取り、画面を覗き込む。
メールの着信が一件。
――お姉ちゃんから。
『少し話したいことがあるんだけど、庭まで来てくれないかな?』
つかさはそのメッセージを見ると、ベッド脇の窓に近づき、外を覗き込んだ。
窓から見える庭先で、かがみがこちらを見上げて小さく手を振っていた。
――なんだろう?
つかさは疑問に思いながら、手を振り返して、窓から顔を引っ込める。
とりあえず行ってみないと、わからない。
そう思って、部屋を出る。
それにやっぱり、あの人の顔が見たかった。
声が聞きたかった。
たとえもう、甘えることが出来なくても。
そう思うぐらいなら……いいよね。
手すりに手を掛けながら、階段を下っていく。
玄関で靴に履き替えて、ドアノブに手を伸ばす。
扉を開いて、外に出る。
「……あ……」
見上げた先に、広がる夜空。
いつかの空みたいに、遠く高く見えていて。
星がきらめく。
なんとなく手を伸ばした。
届かないと知りながら――。
窓から見える庭先で、かがみがこちらを見上げて小さく手を振っていた。
――なんだろう?
つかさは疑問に思いながら、手を振り返して、窓から顔を引っ込める。
とりあえず行ってみないと、わからない。
そう思って、部屋を出る。
それにやっぱり、あの人の顔が見たかった。
声が聞きたかった。
たとえもう、甘えることが出来なくても。
そう思うぐらいなら……いいよね。
手すりに手を掛けながら、階段を下っていく。
玄関で靴に履き替えて、ドアノブに手を伸ばす。
扉を開いて、外に出る。
「……あ……」
見上げた先に、広がる夜空。
いつかの空みたいに、遠く高く見えていて。
星がきらめく。
なんとなく手を伸ばした。
届かないと知りながら――。
かがみは庭の中で、あの笹を見上げていた。
そばの部屋には誰も居なくて、雨戸が閉まっているから、視界はだいぶ暗かった。
でも見えないわけじゃない。
月が照らしていた。
星が光を運んでいた。
そんな中に、彼女はたたずんでいる。
下ろした長い髪の毛が、星明りに反射して光って見えた。
「話って……なに?」
そんな彼女を、ずっと見ていられなくて、つかさは声をかけた。
かがみはその声を聞くと、つかさのほうへと顔を向け、かすかに微笑みかけた。
つかさは地面を踏みしめながら、彼女のそばへと近づく。
草木の匂いがした。
夏の香りがする。
わずかに聞こえる虫の声。
風が吹いて、ざわざわと笹の葉を揺らした。
かがみの隣に立つ。
彼女と同じように、笹を見上げる。
そびえる笹の後ろに、月と星が輝いていた。
そばの部屋には誰も居なくて、雨戸が閉まっているから、視界はだいぶ暗かった。
でも見えないわけじゃない。
月が照らしていた。
星が光を運んでいた。
そんな中に、彼女はたたずんでいる。
下ろした長い髪の毛が、星明りに反射して光って見えた。
「話って……なに?」
そんな彼女を、ずっと見ていられなくて、つかさは声をかけた。
かがみはその声を聞くと、つかさのほうへと顔を向け、かすかに微笑みかけた。
つかさは地面を踏みしめながら、彼女のそばへと近づく。
草木の匂いがした。
夏の香りがする。
わずかに聞こえる虫の声。
風が吹いて、ざわざわと笹の葉を揺らした。
かがみの隣に立つ。
彼女と同じように、笹を見上げる。
そびえる笹の後ろに、月と星が輝いていた。
「つかさは、覚えてる?」
「え……?」
かがみがポツリと呟いた。
その声はどこか優しげで、つかさの大好きな声だった。
「子どもの頃に……、七夕の日に約束したこと」
揺れる笹の葉。
見上げる星空。
夏のにおい。
子どもの頃の――思い出。
「……うん。覚えてるよ……」
目を閉じれば、あの頃に帰れそう。
今と同じように、あの時もここに笹が置かれていた。
それは親がどこかから貰ってきたもので、その年は家族全員で騒いでいたんだ。
二人はまだ、ずっと小さかった。
姉達のマネをしながら、無邪気にはしゃぎまわっていた。
今日と同じように短冊にお願い事を書いて、吊るしていた。
楽しかった。
いつも彼女と一緒だった。
だから、あの時二人は願ったんだ。
願ったはずだったんだ。
短冊に願い事を書いて、吊るしたんだった。
それは、約束。
それは、誓い。
忘れてない。
まだ、覚えてる。
これから先も、忘れたりなんてしない。
だって、もう。それは叶ったりなんて、
「え……?」
かがみがポツリと呟いた。
その声はどこか優しげで、つかさの大好きな声だった。
「子どもの頃に……、七夕の日に約束したこと」
揺れる笹の葉。
見上げる星空。
夏のにおい。
子どもの頃の――思い出。
「……うん。覚えてるよ……」
目を閉じれば、あの頃に帰れそう。
今と同じように、あの時もここに笹が置かれていた。
それは親がどこかから貰ってきたもので、その年は家族全員で騒いでいたんだ。
二人はまだ、ずっと小さかった。
姉達のマネをしながら、無邪気にはしゃぎまわっていた。
今日と同じように短冊にお願い事を書いて、吊るしていた。
楽しかった。
いつも彼女と一緒だった。
だから、あの時二人は願ったんだ。
願ったはずだったんだ。
短冊に願い事を書いて、吊るしたんだった。
それは、約束。
それは、誓い。
忘れてない。
まだ、覚えてる。
これから先も、忘れたりなんてしない。
だって、もう。それは叶ったりなんて、
「――私も、覚えてるよ」
「………」
「ずっと、忘れなかった。……ううん。忘れられなかった……」
かがみが微笑む。
つかさは、星の光を浴びながら、長い髪を揺らす彼女を見つめた。
「ねえ、つかさ」
かがみがつかさの方へと、振り向いた。
「私は、つかさと離れたくない」
優しく語りかけるように、かがみが言う。
「……昨日はあんなこと言ったけど……。でも私は、……つかさとずっと一緒にいたいと思ってる」
吸い込まれそうなくらいに、彼女はつかさを見つめていた。
光が反射して、きらめいている。
「本気で、本当に……、……つかさと一緒に……」
彼女は目を伏せる。
腕が震えていた。
強くこぶしを握りしめているのが見えた。
「………」
「ずっと、忘れなかった。……ううん。忘れられなかった……」
かがみが微笑む。
つかさは、星の光を浴びながら、長い髪を揺らす彼女を見つめた。
「ねえ、つかさ」
かがみがつかさの方へと、振り向いた。
「私は、つかさと離れたくない」
優しく語りかけるように、かがみが言う。
「……昨日はあんなこと言ったけど……。でも私は、……つかさとずっと一緒にいたいと思ってる」
吸い込まれそうなくらいに、彼女はつかさを見つめていた。
光が反射して、きらめいている。
「本気で、本当に……、……つかさと一緒に……」
彼女は目を伏せる。
腕が震えていた。
強くこぶしを握りしめているのが見えた。
「つかさは……」
声も、かすかに揺れていた。
「………」
息を呑みこみ一瞬ためらう。
そしてつかさのことを、じっと見つめた。
「…………つかさは、どう思う?」
そう言って、かがみは小さく首をかしげた。
そして顔に笑みを浮かべる。
「……私は」
つかさの口から、声が漏れた。
「私は」
笹のほうへ、顔を向けた。
短冊が揺れている。
あの時書いた、短冊が。
声も、かすかに揺れていた。
「………」
息を呑みこみ一瞬ためらう。
そしてつかさのことを、じっと見つめた。
「…………つかさは、どう思う?」
そう言って、かがみは小さく首をかしげた。
そして顔に笑みを浮かべる。
「……私は」
つかさの口から、声が漏れた。
「私は」
笹のほうへ、顔を向けた。
短冊が揺れている。
あの時書いた、短冊が。
「――ダメだよ、お姉ちゃん……」
「………」
「そんなこと言ったら……、……お姉ちゃんの言ったこと……守れなくなっちゃうよ……」
どうしようもなく、涙がこぼれた。
ぜんぜん視界がはっきりとしない。
「もっと甘えたくなって……、もっと頼りたくなって……」
それでも精一杯、彼女の顔を見つめ返した。
「もっといっぱい、お姉ちゃんに迷惑かけちゃうんだから……」
ぼやけてしまって、彼女の瞳が見えない。
溢れた涙に、星の明かりがきらきらと反射していた。
「……いいよ」
ごしごしと目をこする。
「いっぱい迷惑かけてもいいよ」
やっとちゃんと見えた彼女の顔は、――笑顔だった。
「いつだって甘えてきていいし、なんでも頼ってくれいいよ……」
つかさも、そっと笑みを浮かべた。
「だって、これからは……」
かがみの頬に、しずくが落ちた。
その頬に向かって、つかさは手を伸ばす。
「一生、つかさのそばにいるから……。ずっとつかさと一緒にいるから……。だから――」
そっと、その手を引かれた。かがみの手が、つかさの身体に回される。
優しく抱きしめられた。
「………」
「そんなこと言ったら……、……お姉ちゃんの言ったこと……守れなくなっちゃうよ……」
どうしようもなく、涙がこぼれた。
ぜんぜん視界がはっきりとしない。
「もっと甘えたくなって……、もっと頼りたくなって……」
それでも精一杯、彼女の顔を見つめ返した。
「もっといっぱい、お姉ちゃんに迷惑かけちゃうんだから……」
ぼやけてしまって、彼女の瞳が見えない。
溢れた涙に、星の明かりがきらきらと反射していた。
「……いいよ」
ごしごしと目をこする。
「いっぱい迷惑かけてもいいよ」
やっとちゃんと見えた彼女の顔は、――笑顔だった。
「いつだって甘えてきていいし、なんでも頼ってくれいいよ……」
つかさも、そっと笑みを浮かべた。
「だって、これからは……」
かがみの頬に、しずくが落ちた。
その頬に向かって、つかさは手を伸ばす。
「一生、つかさのそばにいるから……。ずっとつかさと一緒にいるから……。だから――」
そっと、その手を引かれた。かがみの手が、つかさの身体に回される。
優しく抱きしめられた。
「だから、もう一度……約束してくれる?」
あの日はただ、手を繋いでいた。
離さないからと、少女は言った。
放さないでと、少女が言った。
だからもう一度、そっと手を伸ばした。
ずっとこのまま、放したくなんてなかったから。
離さないからと、少女は言った。
放さないでと、少女が言った。
だからもう一度、そっと手を伸ばした。
ずっとこのまま、放したくなんてなかったから。
「……うん――」
ギュッと、彼女の手を握りしめた。
もう絶対に、離れたくなんてなかったから――。
もう絶対に、離れたくなんてなかったから――。
♪
「お姉ちゃん……」
「……なに?」
「好き……です」
「………」
「…………今日も、一緒に寝てもいい?」
「……うん」
かがみはつかさの頬に手をかざす。
つかさはキョトンとした顔で、かがみを見つめた。
つかさはキョトンとした顔で、かがみを見つめた。
――星の光に照らされながら、二つの影が一つに重なる。
どこかから風が吹いていた。
熱くなった頬をそっと撫でる。
熱くなった頬をそっと撫でる。
風に揺られて、笹の葉が音を立てる。
ようやく出逢えた二人を、祝福するように――。
ようやく出逢えた二人を、祝福するように――。
♪
それはいつかのこの日で、今日だった。
ぼんやりと夜空を見上げる少女に、髪の長い少女が声をかけた。
ぼんやりと夜空を見上げる少女に、髪の長い少女が声をかけた。
「――明日もちゃんとはれるって」
「………」
「つかさ?」
「………」
「つかさ?」
おとなしそうな少女は、ただ星空を眺めているだけだった。
「ねえ、おねえちゃん……」
「なに?」
「……おりひめ様とひこぼし様って、一年に一回しか会えないんだよね?」
「うん、そうだよ」
「なに?」
「……おりひめ様とひこぼし様って、一年に一回しか会えないんだよね?」
「うん、そうだよ」
少女の顔が曇っている。
活発そうな少女は、そんな彼女を心配そうに見つめた。
活発そうな少女は、そんな彼女を心配そうに見つめた。
「……わたしとおねえちゃんは……、そんなふうになったりしないよね?」
「………」
「そんなふうになったら……、ヤだな……」
「………」
「そんなふうになったら……、ヤだな……」
沈んだ顔で、小柄な少女が星空を見上げていた。
「……じゃあさ、おねがいしようよ」
「……?」
「ずっと二人でいっしょにいられますように、って」
「……?」
「ずっと二人でいっしょにいられますように、って」
悲しそうな少女の手をとり、笑顔を向けた。
「……ずっと?」
「そう、ずっと」
「ほんとうに……?」
「うん……、ほんとうに」
「そう、ずっと」
「ほんとうに……?」
「うん……、ほんとうに」
「………」
「だいじょうぶ……。ずっといっしょだから……」
「だいじょうぶ……。ずっといっしょだから……」
「……うん――」
そう言うと、彼女は笑ってくれた。
嬉しそうに、笑顔を浮かべてくれた。
嬉しそうに、笑顔を浮かべてくれた。
「――約束、だよ……?」
Wish and Drops – fin.
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- とても素晴らしい作品です -- 名無しさん (2011-01-10 16:41:15)
- なんでかがつかって姉妹百合が少ないんだろう? -- 名無しさん (2011-01-03 16:08:58)
- よかった...素晴らしいです -- 名無しさん (2010-11-01 19:28:39)
- 何回読んでも良い -- 名無しさん (2010-05-25 17:38:23)
- 名作過ぎる。GJ。 -- 名無しさん (2009-10-25 16:36:13)
- 真冬の今読んでも夏の星座の星空が頭に浮かぶすばらしい作品でしたGJ -- 名無しさん (2009-02-13 01:02:55)