その日、あきらの機嫌は絶好調だった。
収録中に駄目元承知で呟いてみたライブ企画。それがまさか通ってしまうとは。
本編に出演する筈が風邪をこじらせ、せっかくのチャンスをふいにしてしまったことを随分と長い間引き摺っていたのだが、
自分の為だけに用意された大舞台に立てるのだからそれも小さなことに思える。
OKが出た直後は目を見張ったが、直ぐにテンションが鰻登りになってしまい、
そうして盛り上がったまま廊下をスキップして控え室に飛び込んだ。
鼻歌を歌いながら備え付けの冷蔵庫を開き、オレンジジュースのペットボトルを手に取る。
興奮し過ぎてからからになってしまった喉を潤すべく、
行儀が悪いと思いながらもコップに注がずにそのまま口を付けた。
「失礼しまーす」
ごきゅごきゅと喉を鳴らしてジュースを飲んでいると、
あきらよりも入念にスタッフ一人一人に馬鹿丁寧に収録後の挨拶を済ませたみのるが部屋の扉を開いた。
直ぐさまペットボトルを口から離して机の上に置くと、あきらはポケットからクラッカーを取り出す。
とてとて、と足音に効果音が付きそうな位に軽い足取りで後ろ手に扉を閉めるみのるに駆け寄る。
何事かと首を傾げるみのるの顔面に向かって、
「ライブイベント決定、おめでとぉー!!」
あきらはクラッカーのしっぽを思い切り引っ張った。
人に向けて発砲してはいけません、との注意書きを完全に無視している。
おもちゃの割には耳をつんさぐ大きな破裂音に、みのるはあきらが笑ってしまう程体をびくつかせた。
降り注ぐ色とりどりのテープがみのるの頭の天辺に不時着して足の爪先に落ちるその様は、
今のあきらにとってはカラフルな雨が降っているように瞳に映った。
「あきら様ぁ……これ、誰が掃除するんですか?」
みのるは鼓膜を直撃した破裂音にじんじんと痛む耳を手で覆い、
足に絡まるテープを見下ろして情けない声を上げた。
いえどうせ僕が片付けるんですけどね解ってますよ、とのみのるの呟きは無視して、
あきらはポケットの中からもう一つクラッカーを取り出した。
頭に絡み付くテープを払っているみのるの手を背伸びして強引に掴み、小さな筒を握らせた。
次に椅子の上に立ち、そこから机の上に移動して、中央で仁王立ちする。
もちろん登る前に靴は脱いである。
はやくやはく、とたっぷり余った袖をあきらが振り回すと、
みのるは手の中の物を見て彼女がして欲しいことを会得したのだろう、
たまにしか見れない彼女の年相応の振る舞いにへにゃりと笑った。
「おめでとうございます、あきら様!」
斜め上に向けて発砲された紙テープは、あきらのピンク色の髪のとげとげした部分に二本程絡み、
それ以外は机やら床やらに落ちていく。
ただしあきらの安全の為に、みのるは彼女がしたのより大分距離を取ってクラッカーの紐を引っ張っていた。
「あーりがとぉー!」
既にライブで一曲歌い終わったかのように手を頭上高く降り、あきらはぴょんぴょん飛び跳ねた。
床より高い足場でそれをされると見ている側としては冷や冷やものである。
紙テープを踏んづけてバランスを崩し、滑り落ちて床に叩き付けられやしないか、と心配するのと、もう一つ。
「………あの、あきら様、大変言い難いんですけど……スカートの中見えてしまいますよ」
言ってから、どこ見てんだよボケ!
との怒号と共にキックが飛んで来るかもしれないことに気付き、素早く身構える。
しかし、
「いいもーん!スパッツ履いてるから」
等と的外れな答えが返って来た。
そうでなくて、もっとこう根本的な恥じらいを、
と云々言ってもあきらは全く聞く耳を持たないだろう。
「とにかく落ちたら危ないですから、降りて下さいよー」
「そんなに鈍臭くないもん、あんたじゃあるまいし」
ぶつぶつ言いながらも、気が済んだのかあきらは割とあっさりと机から降りた。
「ライブ、ライブかぁー……」
靴を履き直さずに椅子に腰掛け、肘を机に付いて両方の手の平で頬を押さえる。
鼻歌を歌いながら、身長が足りずに床に届かず、
宙ぶらりんになっている足はぱたぱたと交互に前後させる。
何時に無くご機嫌なあきらにみのるはさっきから情けない笑顔しか出てこない。
幼い頃から大人の世界で生きてきたせいで、
表舞台以外では滅多に見せない年齢に相応しい無邪気なはしゃぎっぷりが可愛らしい。
しかし、あきらをここまで浮き浮きさせるライブ企画にOKが出たその日付が厄介だ。
「まさか、これもエイプリルフールの嘘じゃないよね?」
そう、今日は四月一日。嘘を付いたって笑って許される日。
もしこれが嘘だとしたら笑って許すどころか、あきらはこれまでに無く荒れ狂うだろう。
「さぁ…?」
残念ながら、今回の企画がスタッフからあきらへの、
綱渡りのような命を賭けた嘘では無いという確かな証拠は今のところ一つも無い。
「ぶー」
頬を支えていた手が腕ごと机にべったりと張り付く。
頬を膨らませ、大きな目で睨み付けられると、機嫌を損ねてしまったかと焦ってしまう。
ここで自分が太鼓判を押してもそれで企画が本物だと証明される訳では無い。無いのだが。
「いえ、きっと絶対やりますよ!」
「だよね!」
ぱあっ、とあきらは一気に顔を輝かせ、冷蔵庫に駆け寄ると、
そこからサイダーのペットボトルを取り出してみのるの前に勢い良く置いた。
「小神あきらライブイベント決定を祝してぇー」
オレンジジュースのペットボトルを高く掲げたあきらに合わせるべく、
みのるは慌ててサイダーのペットボトルの蓋を開ける。
「かんっぱーい!!」
あきらの元気な声と、ぶつかったプラスチック容器の中の二色のジュースが数滴弾けた。
収録中に駄目元承知で呟いてみたライブ企画。それがまさか通ってしまうとは。
本編に出演する筈が風邪をこじらせ、せっかくのチャンスをふいにしてしまったことを随分と長い間引き摺っていたのだが、
自分の為だけに用意された大舞台に立てるのだからそれも小さなことに思える。
OKが出た直後は目を見張ったが、直ぐにテンションが鰻登りになってしまい、
そうして盛り上がったまま廊下をスキップして控え室に飛び込んだ。
鼻歌を歌いながら備え付けの冷蔵庫を開き、オレンジジュースのペットボトルを手に取る。
興奮し過ぎてからからになってしまった喉を潤すべく、
行儀が悪いと思いながらもコップに注がずにそのまま口を付けた。
「失礼しまーす」
ごきゅごきゅと喉を鳴らしてジュースを飲んでいると、
あきらよりも入念にスタッフ一人一人に馬鹿丁寧に収録後の挨拶を済ませたみのるが部屋の扉を開いた。
直ぐさまペットボトルを口から離して机の上に置くと、あきらはポケットからクラッカーを取り出す。
とてとて、と足音に効果音が付きそうな位に軽い足取りで後ろ手に扉を閉めるみのるに駆け寄る。
何事かと首を傾げるみのるの顔面に向かって、
「ライブイベント決定、おめでとぉー!!」
あきらはクラッカーのしっぽを思い切り引っ張った。
人に向けて発砲してはいけません、との注意書きを完全に無視している。
おもちゃの割には耳をつんさぐ大きな破裂音に、みのるはあきらが笑ってしまう程体をびくつかせた。
降り注ぐ色とりどりのテープがみのるの頭の天辺に不時着して足の爪先に落ちるその様は、
今のあきらにとってはカラフルな雨が降っているように瞳に映った。
「あきら様ぁ……これ、誰が掃除するんですか?」
みのるは鼓膜を直撃した破裂音にじんじんと痛む耳を手で覆い、
足に絡まるテープを見下ろして情けない声を上げた。
いえどうせ僕が片付けるんですけどね解ってますよ、とのみのるの呟きは無視して、
あきらはポケットの中からもう一つクラッカーを取り出した。
頭に絡み付くテープを払っているみのるの手を背伸びして強引に掴み、小さな筒を握らせた。
次に椅子の上に立ち、そこから机の上に移動して、中央で仁王立ちする。
もちろん登る前に靴は脱いである。
はやくやはく、とたっぷり余った袖をあきらが振り回すと、
みのるは手の中の物を見て彼女がして欲しいことを会得したのだろう、
たまにしか見れない彼女の年相応の振る舞いにへにゃりと笑った。
「おめでとうございます、あきら様!」
斜め上に向けて発砲された紙テープは、あきらのピンク色の髪のとげとげした部分に二本程絡み、
それ以外は机やら床やらに落ちていく。
ただしあきらの安全の為に、みのるは彼女がしたのより大分距離を取ってクラッカーの紐を引っ張っていた。
「あーりがとぉー!」
既にライブで一曲歌い終わったかのように手を頭上高く降り、あきらはぴょんぴょん飛び跳ねた。
床より高い足場でそれをされると見ている側としては冷や冷やものである。
紙テープを踏んづけてバランスを崩し、滑り落ちて床に叩き付けられやしないか、と心配するのと、もう一つ。
「………あの、あきら様、大変言い難いんですけど……スカートの中見えてしまいますよ」
言ってから、どこ見てんだよボケ!
との怒号と共にキックが飛んで来るかもしれないことに気付き、素早く身構える。
しかし、
「いいもーん!スパッツ履いてるから」
等と的外れな答えが返って来た。
そうでなくて、もっとこう根本的な恥じらいを、
と云々言ってもあきらは全く聞く耳を持たないだろう。
「とにかく落ちたら危ないですから、降りて下さいよー」
「そんなに鈍臭くないもん、あんたじゃあるまいし」
ぶつぶつ言いながらも、気が済んだのかあきらは割とあっさりと机から降りた。
「ライブ、ライブかぁー……」
靴を履き直さずに椅子に腰掛け、肘を机に付いて両方の手の平で頬を押さえる。
鼻歌を歌いながら、身長が足りずに床に届かず、
宙ぶらりんになっている足はぱたぱたと交互に前後させる。
何時に無くご機嫌なあきらにみのるはさっきから情けない笑顔しか出てこない。
幼い頃から大人の世界で生きてきたせいで、
表舞台以外では滅多に見せない年齢に相応しい無邪気なはしゃぎっぷりが可愛らしい。
しかし、あきらをここまで浮き浮きさせるライブ企画にOKが出たその日付が厄介だ。
「まさか、これもエイプリルフールの嘘じゃないよね?」
そう、今日は四月一日。嘘を付いたって笑って許される日。
もしこれが嘘だとしたら笑って許すどころか、あきらはこれまでに無く荒れ狂うだろう。
「さぁ…?」
残念ながら、今回の企画がスタッフからあきらへの、
綱渡りのような命を賭けた嘘では無いという確かな証拠は今のところ一つも無い。
「ぶー」
頬を支えていた手が腕ごと机にべったりと張り付く。
頬を膨らませ、大きな目で睨み付けられると、機嫌を損ねてしまったかと焦ってしまう。
ここで自分が太鼓判を押してもそれで企画が本物だと証明される訳では無い。無いのだが。
「いえ、きっと絶対やりますよ!」
「だよね!」
ぱあっ、とあきらは一気に顔を輝かせ、冷蔵庫に駆け寄ると、
そこからサイダーのペットボトルを取り出してみのるの前に勢い良く置いた。
「小神あきらライブイベント決定を祝してぇー」
オレンジジュースのペットボトルを高く掲げたあきらに合わせるべく、
みのるは慌ててサイダーのペットボトルの蓋を開ける。
「かんっぱーい!!」
あきらの元気な声と、ぶつかったプラスチック容器の中の二色のジュースが数滴弾けた。
午前十一時五十七分。
先程とは打って変わって一言も喋らずに、
数分前からずうっと壁に掛かった時計の秒針を目で追うあきらがそこにいた。
紙テープは既にみのる一人の手によって片付けてある。
先程とは打って変わって一言も喋らずに、
数分前からずうっと壁に掛かった時計の秒針を目で追うあきらがそこにいた。
紙テープは既にみのる一人の手によって片付けてある。
時計版の上を回る中で、一番長いその針が一周する度に分針が動く。
時たまその分針も確認しながら、他の物は一切目をやらずに時計だけを見つめるあきらに、
みのるは時計の何がそんなに面白いのかとぼんやり考えながら自分もそれを見つめる。
十二時に近付くに連れて、あきらはそわそわと体を揺すり始めた。
見たい番組でもあるのだろうかと思ったが、だとしたらもうテレビを付けていてもいいだろう。
先程のお祭り騒ぎの賑やかさはすっかりなりを潜め、テレビも付けず会話も交さず、
あきらの意図が掴めないままに並んで時計を見つめているこの空気はみのるを不安な気分にさせた。
かちっ、と音がして一番短い針の上に分針と秒針がぴったりと重なる。
午前から午後になったその途端、あきらはずっと見つめていた時計版から漸く目を離した。
重苦しい空気がやっと動き、ほっと息をついたみのるを真正面から見据えて一言。
「私、嫌いじゃないよ」
「………へ?」
唐突過ぎる言葉に固まる。
あきらに何かを好きか嫌いかなんて聞いていないというのに、いきなり嫌いじゃないと言われた。
一体何が嫌いでは無いのか。
答えは意外にも直ぐに出た。
「あんたのこと、嫌いじゃないよ」
「それは……どうも……?」
嫌われないに越したことは無いのだが、何故なんの前触れも無しに唐突にそれを言うのだろう。
と、そこまで考えて、ああ、エイプリルフール、とカレンダーを見直すまでも無く気付く。
嫌いじゃないというのは、けれど好きでもないというのとイコールで結ばれているものだ。
あきらの普段のみのるに対する扱いを見ていると、
それは好きじゃない相手にすることにばっちりと当て嵌まる。
では、嫌いじゃないが嘘だとしたら、その反対であることを言いたいのだろうか。
つまり、嫌いだと。
「表ではああやって弄り倒してるけど、ほんとは応援してるよ。陰ながらね」
だとしたら、質の悪いいたずらだ。
今回でみのるだけ番組から降板だというのだって心臓に悪かったが、
しかしあの時は直ぐに種明かしをしてくれた。
エイプリルフールの嘘だよー!と心底楽しそうな笑顔で人差し指を突き付けて。
いくら皆から好かれるのが仕事のようなアイドルでも、人間なのだから相性の合う合わないは当然ある。
それは仕方が無いにしても、応援しているという言葉が嘘だとすると、それは。
「い、いやですねー、あきら様ったら。微妙にマジとも取れちゃいそうな嘘は止めて下さいよぉ」
どうしても卑屈な考えに持って行ってしまう自分に嫌気が差し、
慌てて明るい声を出してあきらに遠回しにやんわりと釘を差す。
「どうせつくならもっとこう、ありえねーって直ぐに解るようなスケールの大きい方が、
ついてるあきら様もつかれる僕も楽しいでしょう?」
ぎこちなく意思を伝えると、あきらはぱちぱちと数回瞬いた後、俯いて黙り込んだ。
怒らせてしまったのだろうか。
先輩であるあきらに後輩であるみのるが意見したのが許せないのかもしれない。
無言で静かに怒りを溜めているのだとしたら、それは怒鳴り散らされるのより数万倍も恐ろしい。
「あきら様……?」
恐る恐る目の前のつむじに声を掛けると、ばね仕掛の人形のようにあきらは頭を跳ね上げた。
横の尖った髪がぴょんと揺れる。
大きくきらきらとした瞳の真中にみのるの姿を映し、彼女は一言。
「あきら、みのるおにーさんだーいすき!!」
呆気に取られてぴくりとも動けなかった。
ぽかん、と口が逆三角形を描く。
無言の数秒間を迎え、やっと我に返ることが出来たかと思えば、
そう、それですよ、そういうスケールの大きな……、
となんとか言葉を紡ごうと努力した結果に出た声は、笑ってしまう程震えていた。
ついたあきらは満足そうな表情をしているが、つかれた自分は全く楽しくなかったのだ。
こんなもやもやした気持ちになるのなら、あんなこと、言うんじゃなかった。
時たまその分針も確認しながら、他の物は一切目をやらずに時計だけを見つめるあきらに、
みのるは時計の何がそんなに面白いのかとぼんやり考えながら自分もそれを見つめる。
十二時に近付くに連れて、あきらはそわそわと体を揺すり始めた。
見たい番組でもあるのだろうかと思ったが、だとしたらもうテレビを付けていてもいいだろう。
先程のお祭り騒ぎの賑やかさはすっかりなりを潜め、テレビも付けず会話も交さず、
あきらの意図が掴めないままに並んで時計を見つめているこの空気はみのるを不安な気分にさせた。
かちっ、と音がして一番短い針の上に分針と秒針がぴったりと重なる。
午前から午後になったその途端、あきらはずっと見つめていた時計版から漸く目を離した。
重苦しい空気がやっと動き、ほっと息をついたみのるを真正面から見据えて一言。
「私、嫌いじゃないよ」
「………へ?」
唐突過ぎる言葉に固まる。
あきらに何かを好きか嫌いかなんて聞いていないというのに、いきなり嫌いじゃないと言われた。
一体何が嫌いでは無いのか。
答えは意外にも直ぐに出た。
「あんたのこと、嫌いじゃないよ」
「それは……どうも……?」
嫌われないに越したことは無いのだが、何故なんの前触れも無しに唐突にそれを言うのだろう。
と、そこまで考えて、ああ、エイプリルフール、とカレンダーを見直すまでも無く気付く。
嫌いじゃないというのは、けれど好きでもないというのとイコールで結ばれているものだ。
あきらの普段のみのるに対する扱いを見ていると、
それは好きじゃない相手にすることにばっちりと当て嵌まる。
では、嫌いじゃないが嘘だとしたら、その反対であることを言いたいのだろうか。
つまり、嫌いだと。
「表ではああやって弄り倒してるけど、ほんとは応援してるよ。陰ながらね」
だとしたら、質の悪いいたずらだ。
今回でみのるだけ番組から降板だというのだって心臓に悪かったが、
しかしあの時は直ぐに種明かしをしてくれた。
エイプリルフールの嘘だよー!と心底楽しそうな笑顔で人差し指を突き付けて。
いくら皆から好かれるのが仕事のようなアイドルでも、人間なのだから相性の合う合わないは当然ある。
それは仕方が無いにしても、応援しているという言葉が嘘だとすると、それは。
「い、いやですねー、あきら様ったら。微妙にマジとも取れちゃいそうな嘘は止めて下さいよぉ」
どうしても卑屈な考えに持って行ってしまう自分に嫌気が差し、
慌てて明るい声を出してあきらに遠回しにやんわりと釘を差す。
「どうせつくならもっとこう、ありえねーって直ぐに解るようなスケールの大きい方が、
ついてるあきら様もつかれる僕も楽しいでしょう?」
ぎこちなく意思を伝えると、あきらはぱちぱちと数回瞬いた後、俯いて黙り込んだ。
怒らせてしまったのだろうか。
先輩であるあきらに後輩であるみのるが意見したのが許せないのかもしれない。
無言で静かに怒りを溜めているのだとしたら、それは怒鳴り散らされるのより数万倍も恐ろしい。
「あきら様……?」
恐る恐る目の前のつむじに声を掛けると、ばね仕掛の人形のようにあきらは頭を跳ね上げた。
横の尖った髪がぴょんと揺れる。
大きくきらきらとした瞳の真中にみのるの姿を映し、彼女は一言。
「あきら、みのるおにーさんだーいすき!!」
呆気に取られてぴくりとも動けなかった。
ぽかん、と口が逆三角形を描く。
無言の数秒間を迎え、やっと我に返ることが出来たかと思えば、
そう、それですよ、そういうスケールの大きな……、
となんとか言葉を紡ごうと努力した結果に出た声は、笑ってしまう程震えていた。
ついたあきらは満足そうな表情をしているが、つかれた自分は全く楽しくなかったのだ。
こんなもやもやした気持ちになるのなら、あんなこと、言うんじゃなかった。
同日同時刻、別所。
「あ、ねぇあんた知ってる?」
「なーに?」
「エイプリルフールってさ、一日中嘘ついていいんじゃなくて、
それが許されるのは午前中だけなんだって」
「へぇー、てことは午後からは嘘ついちゃいけないの?
それは初耳だなぁ。で、ソースはどこにあるんだい?かがみん」
「ソース…?食堂にあるんじゃない?」
「あ、ねぇあんた知ってる?」
「なーに?」
「エイプリルフールってさ、一日中嘘ついていいんじゃなくて、
それが許されるのは午前中だけなんだって」
「へぇー、てことは午後からは嘘ついちゃいけないの?
それは初耳だなぁ。で、ソースはどこにあるんだい?かがみん」
「ソース…?食堂にあるんじゃない?」
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- オチが上手い -- 名無しさん (2007-10-03 21:02:06)